「企業探究」で社会性・自主性を身につける美濃加茂中学高等学校の生徒たち|中高一貫校

特色ある教育や校風で注目を浴びる学校を紹介する本企画。今回は、岐阜県美濃加茂市にある共学の中高一貫校、「美濃加茂中学高等学校」を紹介します。

同校では、自主性・創造性・社会性の3つの言葉を校訓として掲げ、独自の教育カリキュラムや海外研修を通して、校訓に沿った生徒の育成に力を入れています。

また、中学生の生徒たちが実際に企業でインターンを体験する探究学習では、働くことを前向きに柔軟に捉えられる機会を作っています。

今回は、そんな同校の校訓を始め、グローバル教育や探究学習、新たに導入した一般教養のプログラムについて、中学主任の前田先生にお話を伺いました。

美濃加茂中学高等学校の校訓「自主性・創造性・社会性」

美濃加茂中学高等学校の大学見学

▲生徒たちが大学を見学している様子

編集部

まず初めに、美濃加茂中学高等学校の校訓について教えていただけますか?

前田先生

本校では、自主性・創造性・社会性の3つを校訓として定めています。日頃から生徒たちにも、3つの言葉の重要性について伝える機会を作るようにしています。

自主性とは、何事も自分の判断と責任において行動する自己の主体性の確立を意味しています。また創造性とは、他から与えられたものに依存し満足するのではなく、自ら進んで与えられたものを吸収して新しいことに取り組んでいく努力を続けていくことを指しています。そして社会性とは、社会の一員として社会全体に貢献することを表しています。

学校生活の様々なシーンを通して、自主性・創造性・社会性の3つが豊かに育つ機会を届けています。

全員参加の「オーストラリア研修」も!美濃加茂中学高等学校のグローバル教育

美濃加茂中学高等学校の授業の様子

▲姉妹校からの交換留学生も、楽しく授業に参加している

編集部

続いて、御校のグローバル教育の特色についてお教えいただけますか?

前田先生

本校では、中学校生活の集大成として中学3年時に全員参加のオーストラリア研修(11日間)を行います。現地では、ブリスベンにある姉妹校の授業に出席します。

研修のための特別な授業を本校の生徒たちのために用意してもらうのではなく、姉妹校の通常の授業に出席するので、語学だけでなく数学や体育の授業にも参加するんですよ。ちなみに体育では、現地で盛んなラグビーに挑戦します。

姉妹校でもあるので、向こうには日本語を勉強している生徒もいます。その生徒たちと一緒に日本語の授業に参加することで、こちらからも良い影響を与えられているのだと思います。

「英語インテンシブ講座」で英語漬けの時間を過ごし成長する

美濃加茂中学高等学校の英語インテンシブ講座

▲オーストラリア研修を目標に英語インテンシブ講座で英語に励む

編集部

研修に向けて、どのような準備をされているのでしょうか?

前田先生

中学1・2年では各1回、中学3年では2回の「英語インテンシブ講座」という授業を設けています。この授業では、10人の生徒に対し1人のネイティブの先生がつき、とにかく英語漬けの1日を過ごすんです。内容やレベルは、生徒たちの習熟度や学年によっても異なります。

例えば1年生では、まだ授業で習得している内容も多くないので、文法にこだわらず内容に特化した授業を行います。一方で、オーストラリア研修が迫っている3年生になると、空港でのやり取りの仕方や食事でのマナーなど、実践的な内容になっていきます。そして3年生が特に力を入れているのが、プレゼンの準備です。

編集部

どのような内容のプレゼンを作成するのでしょうか?

前田先生

日本のお城や折り紙など、主に日本文化をテーマとしています。オーストラリア研修で、現地で触れ合う生徒たちに日本のことを紹介できるような題材を念頭に置きながら作っているんです。こうして研修での発表に先駆けて、3年生たちは英語インテンシブ講座でプレゼンの質を磨いています。

美濃加茂中学高等学校の英語インテンシブ講座

ホームステイでオーストラリアの学校生活を疑似体験

編集部

オーストラリア研修に参加する生徒のみなさんの様子についてもお教えいただけますか?

前田先生

生徒によっても楽しみ方は様々です。積極的な生徒たちは、どの授業に出ても満足しているようですね。一方で、なかなか社交的になれないような生徒たちは、ホームステイ先の家族に一歩踏み出すきっかけをもらうなど、環境の力で前に進めていますよ。

ただ、中学3年生といっても、まだまだ大人ではないので、現地で精神的に不安定になったり、体調を崩してしまったりする生徒もいます。そんな時、姉妹校の先生方が本当に丁寧にサポートしてくれるんです。

それに、姉妹校の先生方や生徒たちは、2年に1度の交換留学で本校にもやってきます。お互いの様子がわかっていたり、文化の違いがあることもきちんと理解し合っていたりと、オーストラリア研修を進めるうえで、安心できる要素も多分にあるんですね。

編集部

研修中、生徒のみなさんはどこに滞在するのでしょうか?

前田先生

基本的にホームステイをします。1家庭に生徒2人あるいは1人で、7日間のうち6泊7日滞在します。そして残りの1泊はホテル泊ですね。「バディ」と呼んでいるホームステイ先は、ブリスベンにある姉妹校の近隣のお家で、基本的に同年代のお子さんがいます。そのため、学校の登下校もバディのお子さんと一緒に、保護者の方にお願いしているんです。

また、研修は必ず土日を跨ぐようにしているので、ホームステイ先の家族と海に行ったり、自然公園にコアラを見に行ったりなど、学校以外で過ごす1日を設けているんです。

編集部

オーストラリア研修に対し、生徒のみなさんからはどのような期待の声が寄せられていますか?

前田先生

本校を選んだ動機として、このオーストラリア研修を挙げる生徒も多いです。そのため研修をとても楽しみにしてくれている生徒がほとんどですね。また生徒だけでなく、親御さんも大きな期待を寄せてくださっているんですよ。

編集部

オーストラリア研修を通して、生徒のみなさんにはどのような感想がありましたか?

前田先生

異文化の魅力だけでなく、日本の良さも知ることができたことや、単語を一生懸命並べたり、ボディランゲージを交えたりして話した英語が通じたことなど、前向きな感想ばかりですね。こうした体験が、英語に対する苦手意識を払拭し、自信を持つきっかけになっているようです。

生徒の中には、高校を卒業した後、大学でオーストラリアに短期留学する生徒もいます。姉妹校には大学はないのですが、姉妹校を訪れたり、姉妹校の先生方のお家にホームステイしたりと、本校での研修がきっかけとなり次の体験に繋げていますよ。

美濃加茂中学高等学校の「企業探究」で生徒の視野が広がる

企業のインターンに参加する美濃加茂中学高等学校の生徒たち

▲「企業探究」の授業でインターン生として企業の課題や問題を模索

編集部

御校の探究学習の特色についてもお教えいただけますか?

前田先生

私たちは、中学2年生・3年生の総合的な学習の時間に独自の取り組みを設けています。

2年生では、社会問題の解説について話し合うコミュニケーションの場を作っています。世界の貧困などの大きなテーマを扱いながら、自分の意見も他人の意見も否定せずに、積極的に意見を言い合うことを大切にしています。また、この時間に用いている「教育と探求社」さんの教材も、積極的なコミュニケーションとして重要視しているんです。

2年生の総合的な学習の時間では、主体的に意見を述べることを習慣づけた上で、最終的に社会問題に対する原因や解決策を提案するプレゼンを行います。

そして3年生になると、「企業探究」というインターンを行います。インターン先として、株式会社吉野家さんやイオン株式会社さんなどの、生徒たちにも馴染みのある会社からあまり馴染みがなかった会社まで、本当に色々な企業の方にご協力いただいています。

インターン先の企業の社員になったつもりで、会社の認知度を確認するアンケートを実施し、その結果を企業の方に発表するなど、中学生ながら本格的な活動をしていますよ。発表時には、オンラインで企業の方にも同席していただき、生徒自身に講評をしてもらっているので、生徒たちにも良い学びになっているんです。

企業のインターンに参加する美濃加茂中学高等学校の生徒たち

編集部

インターン生として実施するアンケートとは、具体的にどのようなものなのでしょうか?

前田先生

インターンでは、1つの企業に対し3、4人を割り振り、グループで活動します。アンケートでは、企業目線を意識して作成しています。アンケートの対象者は地元の方たちです。「この企業を知ってますか?」「どんな企業だと思いますか?」「どんなイメージを持っていますか?」「どれぐらい利用していますか?」など、本当に一社員になったつもりで、アンケート調査に取り組んでいますよ。

ただ、会社のことを調査する立場になるからこそ、まずは会社のことをしっかりと理解している必要がありますよね。インターン生として関わる上で、こうした社員としてのあり方や心構えを身に付けることも大切にしています。もちろんアンケートの協力をお願いする場面でも、「お忙しいところ申し訳ありませんが」といった言葉遣いなど、礼儀に関わる部分も指導していますよ。

インターンでは、インプットとアウトプットの両方を体験できます。生徒を見ていると、インプットが得意な子、アウトプットが得意な子、本当にそれぞれです。しかし、その得意を活かしていくのが、彼らそれぞれの役割だと思っています。

インターンの経験が成長するきっかけとなる

編集部

総合的な学習の時間では、生徒のみなさんにどのような力が養われていますか?

前田先生

インターンを通して、生徒たちの働くことに対するイメージや定義がガラリと変わっていたのが印象的でした。働くことは社会への貢献だけでなく、夢を叶えるための準備や、楽しさそのものにも成り得ることを知り、働くことをより前向きに捉えられるようになっているようです。

また、インターン先の企業の方々が本校に提供してくださる動画を観る時間があります。そこには働いている方々が「働きがいは何ですか?」「なぜ働いてるんですか?」などの問いに答える様子が映し出されているんですが、回答の中には「暇つぶしです」なんていう回答も含まれているんですね。

働くことは真面目な行為という認識がある生徒たちは、動画を通していろんな価値観で仕事と向き合っている人がいることも知り、視野が広がる機会になっているようです。

このようなインターンの体験を経て、生徒たちは様々な学校行事に対しても、積極的に自分たちの意見を述べるようになったと感じています。それにただ意見を主張するのではなく、なぜやりたいのかという理由もきちんと伝えてくれるんです。生徒会の活動や授業中の発言など、様々なシーンでこうした成長を感じています。

編集部

自主性・創造性・社会性の3つの校訓とも繋がりを感じますね。

前田先生

小学校でのインプットが中心の教育に6年間慣れ親しんだ後、本校の中学校では、活発なコミュニケーションを通して、互いの理解を深める機会があります。違う意見と出会ったり、認められたりを繰り返しながら、生徒たちは自信をつけています。本校の生活で自分や友人の意見を大切にしていくことで、温かな主体性が築かれているのだと思いますよ。

「リベラル・アーツ・プログラム」でさらに教養を深める

編集部

その他、御校での特色ある取り組みがありましたらお教えいただけますか?

前田先生

2024年度から、新しく「リベラル・アーツ・プログラム」という一般教養のプログラムを導入しました。「LAP(Liberal Arts Program、通称:ラップ)」と呼んでいる本プログラムでは、いわゆる大学の講義のように好きな講座を自主的に選択できるようにしています。このラップの講座を選択するかどうかも、生徒たちに委ねています。これまで設置していた7時間目を廃止し、6時間目の後の放課後の時間にLAPを設置しました。

LAPには、心理学やAI、カードゲームの他、地元岐阜で有名な地方銀行の大垣共立銀行の銀行員による金融リテラシーを高める講座など、幅広い分野の講座を用意しています。また、模試対策の講座や具体的な大学を念頭に置いた入試対策講座、小論文の対策講座など、学習系の講座ももちろんあります。私自身も数学の講座を担当していますよ。

さらに、希望があれば高校生の講座に中学3年生を受け入れることもしているんです。このようなLAPの柔軟な取り組みも、本校の自主性・創造性・社会性を反映したプログラムだなと思いますね。

編集部

LAPにはどのくらいの割合の生徒が参加していますか?

前田先生

だいたい7割くらいですね。LAPと部活両方に参加することもできるので、生徒たちは柔軟に活用していますよ。もちろん中には、部活に集中している子や図書館で勉強に励んでいる子などもいますが、それでも7割という比率は多いと思いますね。

美濃加茂中学高等学校からのメッセージ

インタビューに答えてくださった美濃加茂中学高等学校の中学主任の前田先生

▲インタビューに答えてくださった美濃加茂中学高等学校の中学主任の前田先生

編集部

最後に、美濃加茂中学高等学校に興味をお持ちのお子さま・親御さまに向け、メッセージをお願いします。

前田先生

本校では、校訓を元に学校改革に取り組んでいますが、大学入試ばかりに力を入れる実績重視の教育は、本校の目指す教育ではないと思っています。むしろ生徒たちが社会人として活躍する未来まで、きちんと見越した教育を目指しています

とりわけ本校は、教員の入れ替わりもほとんどなく、卒業した生徒たちも時々遊びにきてくれる場所となっています。折に触れて、卒業生たちの姿を見せてもらいながら、生徒たちの”その先”を私たちも伴走していく。このような教育に少しでも共感していただけるお子さん、保護者の方には、ぜひ本校をおすすめします。

編集部

海外研修や探究学習など、生徒たちの未来まで見越した教育について知ることができました。貴重なお話をありがとうございました!

美濃加茂中学高等学校の進学実績

美濃加茂中学高等学校の校外行事

▲中学生が参加する「乗鞍研修」

美濃加茂中学高等学校の2023年度の大学合格実績としては、東京大学に1名、東京工業大学に1名、名古屋大学に2名、岐阜大学に11名(医学科4名を含む)を含めた41名の国公立大学の合格者と、自治医科大学に1名、慶応義塾大学に4名、早稲田大学に1名、明治大学に2名、法政大学に2名、青山学院大学に2名、中央大学に1名、東京理科大学に2名、同志社大学に7名、立命館大学に11名、関西大学に1名、関西学院大学に6名を含めた私立大学に382名の合格者を輩出しています。

■進路実績(美濃加茂中学高等学校の公式サイト)
http://www.minokamo.ed.jp/high-school/dream

美濃加茂中学高等学校の卒業生・保護者の口コミ

美濃加茂中学高等学校の卒業生・保護者から寄せられた口コミを紹介します。

中学生からかなり難易度の高い内容の勉強ができます。ただ、先生方はとても優しく、親身になって教えてくれたため、授業には問題なくついていけました。(卒業生)

子どもは部活に熱中していましたが、大会など部活の行事で授業を休んでも、しっかりとフォローしてくれる体制が整っていました。部活と勉学、両方に打ち込める学校です。(保護者)

とても綺麗な校舎やICT教育など、整った環境で勉強ができました。公立の学校と比べても、先生方の数が多いので、質問や相談もしやすかったです。(卒業生)

口コミからは、勉学と部活が両立しやすい学校環境だったことに満足する声が聞かれました。また、充実した設備や先生方との関係性に関しても、満足している様子が見られました。

美濃加茂中学高等学校へのお問い合わせ

運営 美濃加茂中学高等学校
住所 岐阜県美濃加茂市本郷町7-6-60
電話番号 0574-26-7181
問い合わせ先 http://www.minokamo.ed.jp/form/contact-ja.php
公式ページ http://www.minokamo.ed.jp/