独自の教育を実践する注目の学校を紹介する本企画。今回は、大阪府豊中市にある私立共学校「箕面自由学園小学校」を紹介します。
同校は、同じ敷地内に幼稚園・小学校・中学校・高校を併設しますが、一貫校ではないため内部進学にこだわらず、自由な進路を描けます。豊かな自然環境の中で、さまざまな体験と実践を通して『なりたい自分を見つける』ことができる学校です。
今回は、そんな箕面自由学園小学校の建学の精神や特徴的な取り組みについて、学園長兼小学校長を務める田中先生と教頭を務める三宅先生にお話を伺いました。
この記事の目次
「体験と実践」を重視する、箕面自由学園小学校の教育
最初に、箕面自由学園小学校の建学の精神や教育理念についてお聞かせください。
本校は1つの丘の上に幼稚園・小学校・中学校・高校を併設している学校です。建学の精神は、幼小中高とも同じで「豊かな自然環境を基盤に、体験と実践をとおして、伸び伸びと個性を発揮できる、教養高い社会人を育成する。」です。
多様化した今の世の中において、社会全体で共有できるような幸せや成功の定義はありません。子どもたちは、これから人生を歩むうえでさまざまな分岐点にたちますが、その都度自分で決めていかなければなりません。そのために、小学生の今のうちに失敗を含めた多くの経験をする必要があります。
本校は自然環境が豊かな場所にあり、おおらかな気持ちで「経験」を大切にした教育を行っています。理科ではいろいろな実験を、そして算数でもグラウンドに出ることもあります。成功も失敗もたくさんして経験値をあげ自信をつけていくことで、世の中がどう動いても自己肯定感をもちながら進んでいけると考えています。
本校は1学年2クラスで定員50名のため、教職員が児童一人ひとりにかける熱量はとても大きいです。また、併設する高校の生徒にボランティアで来てもらい、理科の実験や放課後の学童保育をサポートしてもらっています。大人だけではなく、高校生の視点も加えながら子どもたちを育てていく、自己肯定感を育む教育をしています。
▲併設高校生徒との交流の様子
「危ないから」と経験の機会を奪わない。子どもの可能性を信じて引き出す教育
▲ファームステイの「ふるさと体験」で田植えをする児童たち
箕面自由学園小学校らしさはどういったところに表れているのでしょうか?
建学の精神の「体験と実践」が全ての教育活動の土台になっています。授業でもそうですし、学校行事でも、チャレンジを促す、少し背伸びをして頑張らせてみます。
子どもの才能は際限がありません。親は、小学生に包丁を持たせると危ない、マッチを擦るのは危ないなどと思いますが、教えてやってみれば十分にできます。子どもたちの可能性を見つけ出していくために、いろいろな体験をすることが大事だと思っています。
例えば、田植えや稲刈りをして、刈ってきた米でご飯を炊いておにぎりを作って全学年に振る舞うプログラムがあるのですが、これはなかなか家では経験できないことです。卒業するときに、この体験が一番印象に残っていると言う児童も多くいます。
田植えなど米づくりの経験をしたあと、ご飯を最後の一粒まできちんと食べるようになった児童もいます。将来、どんな進路に進むにしても、こうした経験は貴重です。
危ないから後にしようではなく、やり方をしっかりと教えて実体験を積んでいくというのが本校の方針です。
体験と実践を重視した教育の中で、先生方が重視されていることはありますか?
体験をしたらその結果をもとに、次に進みますが、そこで重視するのは「繰り返すこと」です。6年間の中で何度も繰り返す活動があります。知識を入れるだけではなく、何度も繰り返し体験することで理解を深めていく、それが本校の特徴だと思います。
中でも特徴的なのは、6年間に150以上の理科の実験や理科工作に取り組んでいることです。文科省が定める小学校のカリキュラムでは、1、2年生は生活科という単元が週に3時間設定されており、理科の教科はありません。
しかし、本校は生活科の中から理科だけを取り出して、理科の専科教員が週に1時間担当しています。その中で、いろいろな理科工作や観察を行っています。この理科の授業は、児童たちにとって楽しくて仕方ない時間になっています。
目で見て、体験して学ぶ「箕面自由学園小学校」の理数教育
▲算数の授業で校庭の面積を測る児童たち
箕面自由学園小学校の理数教育について教えてください。理科の実験に力を入れておられますが、その理由は何でしょうか?
「わかったつもり」を無くし記憶に定着させるためです。
算数では、面積・速度など教科書を使った学習で終わると、その場ではわかったつもりなのですが、なかなかその先に繋がっていかないということがあります。
そのため、面積を学ぶのであれば、実際に運動場の面積を測ってみます。測り方は、子どもたちのアイディアに任せ、小さな物差しを使いながら測るチームもあれば、メジャーを使ったり、紐を使ったり、いろいろな工夫をしながら課題をクリアしていきます。
速度の勉強をしたときは、人間はどれぐらいの速度で歩けるのだろうか、車はどのくらいか、自転車はどのくらいか、などと実生活に繋がっていきます。速度は中学入試で出題される問題なので、自分が解いたときに「あれ、この速さは人間では無理だな」とピンときます。それは体験を通した学習の結果だと思います。
理科実験も同じで、机の上だけでわかったつもりでも、実際に自分でマッチを擦って、ガスバーナーを調整して行った実験で変化や様子を目の当たりにした場合、記憶の残り方が全然違います。
挨拶運動や異年齢との交流「箕面自由学園小学校」の心を磨く教育
体験と実践を重視し、心の成長を促す箕面自由学園小学校。ここからは、そんな同校がさらに児童たちの心を磨くために実施している教育について紹介します。
校長先生はハイタッチで朝の挨拶運動に参加
御校の感性・心を磨く教育についてお聞かせください。
本校には9つの約束があります。「登下校のマナーを守ります」「授業に向かう姿勢を整えます」「友だちを大切にします」「丁寧な言葉で話します」「時間を守ります」「整理整頓・清掃をきちんとします」「名前をさん、くんで呼びます」「身だしなみを整えます」「きちんと挨拶をします」の基本的な生活習慣を示す9つです。
その中でも挨拶は人間関係の第一歩なので、挨拶運動は重要視しています。幼小中高、みんな元気に挨拶をしようということで、理事長はじめ校長、副校長は、毎朝丘の上に立って、子どもたちに挨拶をしています。それも、しっかり目を見て挨拶をしています。
小学校高学年の児童たちは当番で一緒に挨拶をします。高校の生徒たちも、生徒会を中心に挨拶運動をしています。まずは朝から気持ちよく一日が始められるようにという心くばりです。
本校は少人数教育なので、先生方は児童の名前と顔を全員一致して覚えています。私は小中高で2000人以上いるので、全員の名前と顔は覚えられていませんが、小学校の校長になった2年前から、丘の上に立っているときに、ハイタッチするようにしています。
中には一生懸命におしゃべりをしてくれる低学年の児童もいて、それは多分、お父さんやお母さんにしゃべりたかったのだけど、時間が取れなかったのだろうと思います。そうした子どもたちとの触れ合いを大切にしながらも、先生と児童の距離感、礼節は保ちながら、子どもたちとのコミュニケーションを大切にしています。
宿泊学習は異年齢との交流あり
▲ファームステイの「ふるさと体験」で田植えをする児童たち
そのほか子どもたちの心の成長に関わる特徴的な取り組みとしてはいかがでしょうか?
普段の学校生活や行事において、異年齢と関わる機会が多くあることも本校の特徴かと思います。本校では、1年生から宿泊学習があり、1、2、3年生は同じ日程で、同じ場所に行きます。その中で、上級生の3年生は、2年生と1年生のお世話をします。
4、5年生もスキー学校や臨海学校で宿泊を伴う場合、2学年が一緒に行って、宿泊先のお部屋も横割りではなく、全部縦割りで活動をします。上級生は自分が体験したことを下の学年に伝えていきます。
田植えや稲刈り体験は5年生の活動で「ふるさと体験学校」で行います。ここでは農家にファームステイという形で、全く知らないご家庭のおじいちゃんやおばあちゃんのお宅に1泊して、農家の体験をします。
全然知らない方ですが、異年齢の体験、農家のご家庭での体験はとても印象に残るようで、みんな成長して帰ってきます。
▲学校行事では上級生が下級生のお世話をします
完全給食と学校の教員が担当するアフタースクール
箕面自由学園小学校では「完全給食」を用意されていたり、アフタースクールにも力を入れておられたり、保護者の方としてはとても助かるという声があると思うのですが、いかがでしょうか?
完全給食は、国内産の食材選びから献立づくりまで独自に行なっているので手間暇はかかりますが、食育の観点からも大事なことだと思うのでずっと続けています。幼稚園と小学校は給食で、中高は食堂で提供しています。
ご両親とも働かれているご家庭が当たり前になっているので、そうした世の中の流れを考えるとアフタースクールは必要です。子どもたちにも「サードプレイス」があって良いと思います。
先ほど申し上げましたように、高校生のボランティアが来てくれるので、高校生のお兄ちゃんお姉ちゃんと遊んだり、勉強したり、いろいろな活動ができます。本校は幼小中高がありますので、中学生や高校生と接する機会も多く、学ぶことも多いです。
本校のアフタースクールはアウトソーシングではなく、本校教員が担当しています。昼間も顔を見て、夕方もまた顔を見るので体調不良や心配ごとがあって様子がおかしい場合はすぐに気づきます。保護者の方はより安心かと思います。
箕面自由学園小学校からのメッセージ
▲取材に対応いただいた、田中校長先生(左)と三宅教頭先生(右)
最後に、箕面自由学園小学校に興味を持ったお子さまや保護者の方に向けてメッセージをお願いします。
子どもがこの先どうなるか、どのように育っていくのかは、そのときにならないとわからないですが、それはとても楽しみなことだと思います。この先の未来にどんなことが待っているのか、一緒に夢を描いて、一緒に歩んでいける学校でありたいと思っています。
もし箕面自由学園小学校に興味を持たれたのなら、ぜひ見に来ていただきたいと思います。空気感や雰囲気があると思うので、実際に見て感じてください。お待ちしています。
やはり体験させることが、とても大事なことです。疑似体験はiPadでできますが、本校が大切にしているのは実体験です。さまざまなことをしっかりと体験して学ぶことができます。
本校が少人数にこだわっているのは、プラスの声掛けをしながら、手をかけて子どもたちを育てたいからです。本校の卒業生たちが、中学校・高校に行っても、学校の中心になっているのは、本人が自分たちはできると信じているからなのです。
自分はやればできるということを実体験として持ってもらうためには、少人数でなければできませんし、この自然豊かな環境は最適だと思っています。まずは、ぜひ一度足を運び、学校の雰囲気を感じてみてください。
本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
▲なかよし体験学校ではシーカヤックも体験。「危ないから」という理由で子どもの経験の機会を奪わない同校ならでは。
箕面自由学園小学校の進学実績
箕面自由学園小学校では、4年生進級時から「発展コース」と「進学コース」の2コース制となっています。進学コースでは難関中学受験に向けたカリキュラムがあるほか、放課後には希望者に「進学発展演習」の講座を開くなど、サポートも充実しています。
内部進学者数は、年度によって差がありますが、1学年のうち約半数が併設の箕面自由学園中学校へ進学します。箕面自由学園高等学校の進学実績の上昇傾向とともに中学への内部進学者数も増えています。なお、エスカレーター式の一貫校ではないので中学受験があります。
■コース制について(箕面自由学園小学校公式サイト)
https://mino-jiyu.ed.jp/ps/2course.html
箕面自由学園小学校の在校生・保護者の口コミ
ここからは、箕面自由学園小学校の口コミを紹介します。実際に通学している在校生や保護者の声をまとめました。
■在校生の声は学校公式サイト(デジタルパンフ)から引用しています。
https://mino-jiyu.ed.jp/ps/pamphlet2025/#p=6
箕面自由学園小学校へのお問い合わせ
運営 | 箕面自由学園小学校 |
---|---|
住所 | 大阪府豊中市宮山町4丁目21番1号 |
電話番号 | 06-6852-8110(代表) |
問い合わせ先 | https://mino-jiyu.ed.jp/ps/ns_top.html |
公式ページ | https://mino-jiyu.ed.jp/ps/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください