この記事では、独自の教育に取り組む注目の学校として、大阪市天王寺区にある中高一貫の男子校「大阪明星学園明星中学校・高等学校」を紹介します。
他者を理解する寛容な心を持ち、答えのない社会課題の解決に向け行動する「明星紳士」を育む同校。注力する探究学習を通し、生徒は数々のビジネスプランコンテストで輝かしい実績を残しています。また、難病患者への支援、こども食堂でのボランティアといった社会貢献活動も盛んです。
さらに、豊富な海外研修制度も設けるなど、グローバルに活躍できる人材の育成にも励んでいます。
今回は、そんな大阪明星学園明星中学校・高等学校の教育理念やカリキュラム、学校生活について、副校長の上畑卓治先生に詳しく伺いました!
この記事の目次
他者に奉仕する人材を育む大阪明星学園明星中学校・高等学校
▲大阪明星学園明星中学校・高等学校で副校長を務める上畑卓治先生
まず、大阪明星学園明星中学校・高等学校がどのような学校か、ご紹介いただけますか?
本校は、「マリア会」というローマに本部を持つ修道会が経営母体となるカトリックのミッションスクールです。姉妹校は世界30カ国に存在し、国内にも4校あります。キリスト教をベースにした教育を通し、他者に奉仕する人物を育てることを理念としています。
他者に奉仕するためには、寛容な心を持つ必要があると同時に、自己中心的にならないよう自分を律する力も求められます。これらの素養を持つ人を、本校では「紳士」と考えています。
また本校は非常に社会貢献活動が盛んです。根底には、社会課題や社会的に弱い立場にいる方々に対し、聡くあってほしいという思いがあります。
人格教育をとても大切にしているのですね。
調査や検証、プレゼンを体系立てて行う探究学習「リベラルスタディーズ」
学びの特徴はどんなところにありますか?
本校では、「リベラルスタディーズ」と呼ぶ探究学習を推進しています。自ら社会の課題を見つけ出し、それを解決に導く力を養うことが狙いです。
リベラルスタディーズでは、各学年の生徒が自らテーマを決め、調査、問題点の抽出、検証・ディスカッション、プレゼンテーションといった流れで課題を整理し、その成果を年度末にエッセイや論文としてまとめます。
論文やエッセイは、クラスごとにまとめて製本し、生徒全員に配ります。中学3年生は卒論という形になるので、特に大掛かりな執筆になりますね。
▲中学3年生の生徒が執筆した卒業論文
論文やエッセイでは、どのようなテーマが扱われているのでしょうか?
クラブ活動に関連した話題を扱う生徒もいれば、本校で聞いた起業家の講演をもとにビジネスプランを立てる生徒もいます。基本的に教員からの指示はなく、自由に書いてもらっています。
ビジネスプランを立てる生徒の中には、教育機関や自治体が主催するビジネスコンテストに出場する子もいますね。
探究学習の成果を各地のビジネスコンテストで披露。優勝を遂げる生徒も
ビジネスコンテストに出場した生徒について、具体例を伺えますか?
2023年度の高校1年生では、特定外来生物のアメリカザリガニを道の駅で食材として販売するというアイデアを発案したグループがいました。実際にザリガニを調理して食べ、食材としての需要の調査もしていましたね。
そのグループは、名古屋大学などが主催する中学生から大学院生までが対象の「Tongaliアイデアピッチコンテスト」で、高校生として史上初の優勝を飾りました。さらに、岐阜県多治見市主催のビジネスプランコンテスト「TAJICON」でもグランプリを受賞しました。
別のグループは、全国各地の飲食店などから出されるミッションを地元住民と協力してクリアすることで、アプリ上の図鑑に当該市町村が登録され、図鑑のコンプリートを目指すというアイデアで、「Tongaliアイデアピッチコンテスト」で三井不動産や東海東京証券から企業表彰を受けました。また、岩手県内の地域課題解決に貢献するアイデアを募る「いわてDX-1グランプリ・DXビジネスアイディアコンテスト」では、北上市長賞を受賞しました。
生徒のビジネスアイデアは、対外的にも高く評価されているのですね。
語学教育にも力。多彩な海外研修を用意
▲カナダにターム留学をした生徒
ほかにも、カリキュラムの特徴がありましたら教えてください。
語学教育にも力を入れています。本校は、125年前に海外から来た3人の宣教師によって外国語学校として設立された背景がありますから。
語学教育にはどんな特色がありますか?
留学の制度が充実しています。特に生徒に好評なのは、中学3年生の3学期におよそ100日間、アメリカ・カナダ・ニュージーランド・イギリスのいずれかで過ごすターム留学です。1学年あたり40人ほどが参加するプログラムで、生徒一人一人が別々の中学校で学校生活を送ります。
留学した生徒はどのような学びを得られるのでしょうか?
語学の学びはもちろん大きいのですが、留学先の生徒が授業で積極的に発言している姿などにカルチャーショックを受ける生徒も多いですね。
帰国後、学習に臨む姿勢にも良い影響をもたらしそうですね。
そう思います。海外研修はほかにも、中学3年生から高校2年生の生徒が夏休みにカナダかオーストラリアで学ぶ語学研修や、高校1・2年生が発展途上国の文化や社会課題に触れるカンボジア研修、高校2年生がアメリカのハーバード大学で学ぶ「次世代リーダー養成プログラム」があります。
▲カンボジア研修で記念撮影する生徒ら
高校2年生がハーバード大学で研修。英語を使い、一流の学生と民主主義などを討論
高校2年生が体験できる、ハーバード大学での「次世代リーダー養成プログラム」とは、どのようなプログラムなのですか?
夏休みに約10日間をハーバード大学で過ごし、現地の学生とディスカッションやプレゼンをします。
これは「英語を学ぶ」というより、「英語で考え発信する」力を養うプログラムです。したがって、本校で最もハードな海外研修となっています。例年、40人ほどが参加を希望するのですが、実際に送り出す生徒は20人に絞り込んでいます。
渡航の3ヶ月ほど前から準備に入り、月に1、2回、日曜日にディスカッションやプレゼンの方法を学んでから現地に向かいます。
一流の大学生たちと学ぶには、周到な準備が必要ということですね。ディスカッションは、どんなテーマで行われるのですか?
「民主主義とは何か」「市民の責任とは」といった社会的なテーマが多いです。当然、テーマに関する知識も求められるので、実際に研修に行った生徒からは「頭から火が出るくらい脳を使う」といった話も聞きますね。
ハイレベルな環境で学べる分、生徒は大きく成長できそうです。
難病患者を支えるプロジェクトをはじめ、社会貢献活動も盛ん
▲RDの子どもたちと交流する生徒
大阪明星学園明星中学校・高等学校では社会貢献活動も盛んだという話がありました。この話についても具体的に伺えますか?
2018年度から毎年、「RDD明星」というプロジェクトを実施しています。RDDとは「Rare Disease Day」の略、つまり「世界希少・難治性疾患の日」を意味しています。難病と戦う患者の方やその家族に対する理解を深め、支援を進める取り組みです。これはスウェーデンで2008年に始まった活動ですが、実は、RDDに日本の高校が取り組んだのは、本校が初めてでした。
「RDD明星」では前談として、RDに関する課題解決を図るNPO法人「ASrid(アスリッド)」の代表を本校に招き、講演をしてもらいます。内容は「難病とはどういうものなのか」「どんな社会的な支援が必要なのか」といったものです。
そこで関心を持った生徒有志が、夏休みごろから「RDD明星」の活動を始めます。
どのような活動をするのですか?
製薬会社を見学したり、自治体を訪ねてRDに関する支援制度について話を聞いたり、病院でお医者さんやRDの患者さんにインタビューをしたりしています。RDの子どもたちやその家族に本校に足を運んでもらい、交流することもあります。
そういった活動の中で生徒は「自分には何ができるのか」と思いを巡らせ、年度末には活動の成果を発表します。
▲「RDD明星」で成果を発表する生徒
高校生にとっては、なかなか経験できない機会ですね。
そういった経験を通して、生徒は社会課題に敏感になっていくと感じます。「RDD明星」を機に、医師や医用工学の研究者、政治家を志す生徒もいます。
医療や政策を通じて、難病患者を助けたいという思いが芽生えるのですね。御校の理念にある「他者に奉仕する人物の育成」につながっている気がします。
100年以上続くボランティア委員会「小鳩会」はこども食堂の運営などを支援
▲「ルワンダの教育を考える会」永遠瑠(とわり)マリールイズさんと小鳩会委員との記念写真
「RDD明星」以外にも、活発な社会貢献活動がありましたら、教えていただけますか?
「小鳩会」という、100年以上続くボランティア委員会があります。最近では、こども食堂の運営を手伝ったり、日雇い労働者が多い大阪の西成区で炊き出しをしたりしました。活動には、小鳩会の委員以外の生徒が希望して参加することも多いです。
ボランティアに参加した生徒からはどのような感想がありますか?
こども食堂のボランティアに参加した生徒からは「子どもたちに『ありがとう』と言ってもらえて、心が温まった」「社会貢献ができたことが嬉しかった」「子どもの喜ぶ様子が見られて、とてもやりがいのある活動だと感じた」といった声がありました。
大阪明星学園明星中学校・高等学校からのメッセージ
最後に、大阪明星学園明星中学校・高等学校に興味を持った方へ、メッセージをいただけますか?
子どもたちには本校で得られるさまざまな経験を通して、生きる上でのこだわり、強みを身につけてほしいと考えていますし、それを後押しできる学校だと自負しています。
また、本校は対話をとても大切にしています。生徒が家庭の延長のようなイメージで学校生活を送れるよう、教員は親身になっています。
さらに、大阪市内の私立校では1、2を争うくらいの敷地の広さがあります。グラウンドがとても広く、体育館も3つあって、部活動にも伸び伸びと打ち込めます。そういった環境を求めている方にも、ぜひ入学をお勧めしたいですね。
インタビューを通し、大阪明星学園明星中学校・高等学校がいかに社会貢献を大切にしているかが伝わってきました。御校で過ごした生徒は、さまざまな社会課題に直面する今後の世の中でも力を発揮していけるのではないかと感じます。本日はありがとうございました!
大阪明星学園明星中学校・高等学校の施設・設備
ここでは、大阪明星学園明星中学校・高等学校の施設・設備を写真でご紹介します。
スクロールで写真がご覧いただけます→
大阪明星学園明星中学校・高等学校の進学・合格実績
大阪明星学園明星中学校・高等学校では例年、地元の近畿圏の難関国立大学に合格者を輩出しています。2021〜2023年度の3年間では、京都大学に24人、大阪大学に37人、神戸大学31人が合格。医学部医学科には87人が受かっています。
また、同校は「生徒の長所や興味・関心を考慮した進路指導」をしているといい、私立大学への進学実績も多彩です。
■進学実績(大阪明星学園明星中学校・高等学校公式サイト)
https://www.meisei.ed.jp/jhs/university_pass.html
大阪明星学園明星中学校・高等学校の在校生の声
最後に、大阪明星学園明星中学校・高等学校の在校生の声をご紹介します。
在校生の意見からは、勉強に打ち込める学習環境の良さがうかがえました。また、教員の親しみやすさや進路指導に魅力を感じているといった声もありました。
お問い合わせ
問い合わせ先 | 大阪明星学園明星中学校・高等学校 |
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住所 | 大阪市天王寺区餌差町5番44号 |
電話番号 | 06-6761-5606 |
公式サイト | https://www.meisei.ed.jp/ |