ぽてん読者の皆さまに注目の学校を紹介するこの企画。今回は茨城県つくば市にある中高一貫教育を行なう私立の共学校「茗溪学園(めいけいがくえん)中学校高等学校」をご紹介します。
同校は、筑波研究学園都市の研究者の子どもたちの教育を目的として、筑波大学の前身である東京教育大学の同窓会「茗渓会」によって設立されました。開校以来45年以上前からグローバル教育に力を入れ、全員参加の海外研修を実施しているほか、帰国生や留学生の多い環境で日々の学校生活自体がグローバルな環境です。
今回は入試広報部長の清沢先生に、留学をはじめとしたさまざまな教育活動プログラムを展開するグローバル教育や、筑波研究学園都市の地の利を活かした探究学習について詳しくお話を伺いました。
この記事の目次
「茗溪学園中学校高等学校」の建学の精神と教育方針
▲取材に応じていただいた入試広報部長の清沢先生
初めに、茗溪学園中学校高等学校の建学の理念について伺えますでしょうか。
建学の理念は「人類ならびに国家に貢献しうる『世界的日本人』を育成すべく、知・徳・体の調和した人格の形成を図り、特に創造的思考力に富む人材をつくる」です。
茗溪学園中学校高等学校では、1979年の開校当初から国際理解教育を重視し、世界的人材を育成していくことを目指しています。
建学の理念の具体的な解釈として、「社会のウェルビーイングの実現」に重きをおいています。すなわち、自分自身だけでなく他者をも含めた社会全体の幸福を追求し、多様化する世の中で力強く柔軟に生き抜く人材の育成の場が、茗溪学園中学校高等学校なのです。
そのような建学の理念を実現するなかで、本校は2017年に「国際バカロレア(IB)認定校」となりました。IBは「多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成」を目的としており、本校の建学の理念とも重なっています。
茗溪学園中学校高等学校は国際バカロレア(IB)認定校とのことですが、特徴的な取り組みはありますか。
本校では、IBコースなどの教育プログラムがあり、“学び方を学ぶ”カリキュラムが特徴です。生徒は自ら学ぶ姿勢を養い、例えば数学の授業では生徒が解説をし、先生がそれをサポートするスタイルが採用されています。
中学から高校へ進学したときには、ディスカッションやグループワークを重視した授業がさらに進化するため、生徒たちのプレゼンテーション能力も大きく伸びています。生徒たちは自らの考えを明確にし、効果的に発信するスキルを身につけています。このことは受験などでの面接の場でも大いに役立つものと思われます。
▲IBコースの授業はディスカッションやグループワークがメイン
帰国生・留学生が2割以上在籍する茗溪学園のグローバル環境
▲連携協定を締結した米国Milton Academyの先生方来校時の生徒会長挨拶
次に、茗溪学園中学校高等学校のグローバル教育の特徴について教えてください。
本校は1979年の開校以来、45年間にわたり海外帰国生を受け入れてきました。現在では中学校700名程度、高校800名程度の合計1,500名ほどのうち300名以上が帰国生で、50名ほどの留学生も在籍しています。
留学生は将来の世界的人材を育てるために受け入れているため非常に優秀な学生が多く、例えば今在籍している生徒だと、東大模試で上位になった生徒がいるほどです。
帰国生や留学生が身につけている積極性や多様性が、本校の活気にもなっていますし、当たり前に英語を話す環境なので、生徒の英語力が伸びやすい環境でもあります。
また、希望者の中で選抜試験をクリアしている生徒だけが受講できる英語の特別クラス(EEC:Extended English Class)があり、海外のカリキュラムに基づいた授業を行なっています。これにより、さらなる英語力の向上を図ることができます。
英語に対する生徒の取り組みについて、清沢先生はどのように感じていますか。
互いに刺激を受けながら、学んでいく雰囲気があります。周囲の生徒の高い語学力とさらに能力を伸ばそうという意欲が刺激となって、自主的に語学力を伸ばす取り組みが当たり前のこととして考えられているようです。
特に英語の特別クラス(EEC)の生徒は、TOEFLやIELTSで高得点を獲得することが珍しくなく、そのことも学習意欲を高める要因となっています。
また、本校では近年、海外大学への進学を目指す生徒が増えており、毎年約20名が進学しています。帰国生だけでなく日本で生まれ育った生徒も含まれ、日頃からTOEFLやIELTSの高スコアを目指して努力しています。
そのためのサポートも充実しており、EECコースに在籍していない生徒についても、スピーキングやライティングなどの個別指導や授業内のトレーニングを通じて高いレベルの英語力を磨いています。
全員参加の海外研修から長期留学まで - 充実した海外プログラム
▲茗溪学園中学校高等学校はオーストラリアのモナッシュ大学マレーシア校と高大連携している
茗溪学園中学校高等学校の海外留学制度について教えてください。
各種留学プログラムが充実しており、異文化を体験し理解することで視野を広げ、国際感覚を養う環境が整っています。
長期(1年間)、中期(2.5〜5ヶ月)、短期(2週間程度)の留学制度があり、長期留学には1学年280名中10名以上が参加することも珍しくありません。中期留学も同様に多くの生徒が参加しており、短期留学プログラムも人気です。これらの制度は本学園のグローバル性を象徴していると思います。
また、全員参加のプログラムとしては、中学3年生のAC(アカデミアクラス)ではタイ、高校2年生はシンガポールへの研修旅行を実施しています。本校では世界的人材の育成を目指すという理念のもと、開校以来45年間にわたり海外研修を続けています。
「17歳の卒論」- 茗溪学園の特色ある探究学習プログラム
▲「茗溪学園のStudySkills」の集大成として取り組む個人課題研究のプレゼンテーション
続いて、茗溪学園中学校高等学校の探究学習についてお話しください。
高校2年生の必修単位として「個人課題研究」を行なっており、自分の興味関心のあるテーマについてリサーチし、1年かけて論文として仕上げます。本校では「17歳の卒論」と呼んでいます。
本校は研究学園都市とも呼ばれるつくば市に位置し、近隣の研究機関・企業や大学との連携が盛んです。そのため、研究機関・企業、大学などを訪問し、援助やアドバイスをいただきながら研究を進めていくことができます。
また、学園長を含め、教員全員が生徒の指導教官となって、各自の専門分野を担当し、自然科学から社会科学や人文科学まで幅広い分野をカバーします。大学のゼミナールのように、週に1度の個人課題研究の時間には、生徒はそれぞれの指導教官のもとに集まり、研究成果を発表し合います。
さらに、ただ論文を書き上げるだけではなく、プレゼンテーションも実施します。筑波大学の教授などに見ていただき、真剣に批評していただいています。時には厳しい意見もあり、生徒としては悔しい思いもしますが、この経験は大きな刺激となり、将来の進路や、どのように社会に貢献して社会のウェルビーイングを実現していくかについて深く考える機会になっています。
論文のテーマにはどのようなものがありますか。
例えば、スポーツ分野では「ラグビーにおいてタックルを受けても倒れないような体幹作りをするためにはどのようにしたらいいか」というテーマを扱ったラグビー部の生徒がいます。体幹強化のための科学的な方法をリサーチし、食事やトレーニングの効果を論文にまとめました。
自然科学の分野には多くの生徒が取り組んでおり、全国の高校生と高等専門学校生を対象とした国内最高峰レベルの科学コンテストであるJSEC(Japan Science & Engineering Challenge)で受賞して世界大会に出場するケースも珍しくありません。
清沢先生のゼミではどんなテーマが印象でしたか。
私のゼミでは国際教育、比較教育を扱っています。印象に残ったテーマは、英語を学ぶ上での臨界期仮説、つまり、「一定の年齢(臨界期)までに英語に触れる機会がないと、英語を完全に習得することが難しくなる」という仮説について研究したものです。
どの年次で、どのような学習方法で英語を学ぶと最も効果的であるかというテーマを、世界の英語教育を比較しながら研究しており、生徒自身の英語学習にも役立つテーマだと思いました。
▲自然科学や社会科学、人文科学など、個人課題研究のテーマは多岐にわたる
茗溪学園中学校高等学校の充実したスクールライフ
ここからは、茗溪学園中学校高等学校に入学したらどのような学校生活が待っているのか、その参考になるお話を伺いました。
茗溪学園の部活動:スポーツ推薦・芸術推薦ゼロでも全国大会出場
▲バドミントン部は中学・高校ともに全国大会出場経験がある
茗溪学園中学校高等学校のクラブ活動についてはいかがでしょうか。
本校ではスポーツ推薦や芸術推薦は実施しておりませんが、全国レベルの活躍をするクラブも多数あります。ラグビー部は中学は全国大会優勝、高校も過去には全国大会優勝の実績を残しており、2023年度には全国大会ベスト8、全国7人制大会ベスト3になりました。またバトントン部や器械体操部、剣道部なども強豪です。
ですが、全国クラスの活躍をあげているクラブであったとしても実質的な活動時間が2時間もないという点がポイントで、生徒はクラブ活動だけでなく、学業や他のチャレンジにも取り組む時間があるところが、本校の特徴だと思います。
文化系では世界選手権に出場したこともある科学部が特徴的で、全校生徒1,500名のうち科学部員が100名を超えています。科学部の中に生物班や化学班、物理班、天文班、地質班、無線班などさまざまな班があり、それぞれ興味関心があることを真剣に向き合って活動しています。
▲科学部生物班(左)はJSEC高校生科学技術チャレンジ全国9位を獲得。吹奏楽部や書道部の活動も活発
来場5000人超の文化祭 - 生徒主体で運営される学校行事
学校行事での生徒の皆さんの様子はいかがでしょうか。
学校行事については完全に生徒主体で進められています。先日は文化祭を開催しましたが、各クラスが楽しいアトラクションなどを企画・製作しました。
アトラクションは安全性を考慮しながら、小さな子どもたちが楽しめるコーヒーカップやジェットコースターなどを手作業で作りました。例えばコーヒーカップは手動で回す方式で、木やタイヤを使用しています。
初日には約1,000人、2日目には4,700人もの来場があり、ありがたいことに地域社会にも受け入れられています。
ものすごい来場者数ですね。球技大会も盛り上がると聞いています。
はい、校技大会も毎年非常に盛り上がります。
本校では校技として、男子はラグビー、女子は剣道を全員に履修させており、校技大会はクラス対抗戦として試合が行なわれます。ラグビーでは、ラグビー部員の同時出場人数などが決められ、部員はいかにクラスをまとめられるかという力量が問われますし、剣道では中学生が高校生を破ることもあり、見応えがあります。
校技としてラグビーと剣道が選ばれた理由は、本校が英国のパブリックスクールをロールモデルにした学校であったことと、「攻めて打つ」という剣道の考えが、社会で活躍する女性に役立つと考えられたためです。
▲校技大会。高校2年生は5年間の体育の授業の集大成として特に力が入る
学園からのメッセージ
▲夏季休暇中に実施する屋久島研修。屋久島ならではの動植物や地質などを現地調査する
最後にぽてん読者にメッセージをお願いします。
茗溪学園中学校高等学校では、生徒一人ひとりの多様性に対応するため、個別のサポートを重視しています。例えば、理数系の教育やスポーツで全国レベルで活躍する生徒など、さまざまな才能や興味を持つ生徒がいます。我々教員は、生徒が自らの人生を豊かに生きるために、将来の進路や社会貢献について広い視野で考えることをサポートし、多様な選択肢を提供することに注意を払っています。
また、本校では、生徒と教員の関係は非常に近いです。教員は生徒の人生に対して親身になり、育てる責任を感じています。卒業生からは「教員が第2の親のようだった」という表現がされるほど、教員と生徒の間には深い信頼が築かれていると思います。
生徒一人ひとりの将来を見据えた教育を行い、将来の社会貢献のための資質や能力を育てる。この考えに共感していただける方には、ぜひ本校に足をお運びいただき、学園説明会などのイベントへご参加いただければ幸いです。
本日はありがとうございました!
■「学園説明会2024」開催のお知らせ
https://www.meikei.ac.jp/post/10825.html
茗溪学園中学校高等学校の進学実績
2024年度は卒業生254名のうち、69名が国公立大学・大学校・公立専門職大学に合格しています。学園設立の背景から筑波大学に進学する生徒が多い点が特徴です。
また、私立大学では早慶上理(※)に64名が合格しています。
(※)私立難関大学の総称で早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学、東京理科大学のこと
また、医学部 (国公立大学・私立大学)には合計33名が合格しています。
進路専門の教員に個別相談ができる点や、職業観セミナーや進路ガイダンスといった充実した進路行事が受験生の助けになったと思われます。
■進路実績(茗溪学園中学校高等学校公式サイト)
https://www.meikei.ac.jp/career/results
茗溪学園中学校高等学校の卒業生・保護者の口コミ
ここからは、茗溪学園中学校高等学校の卒業生・保護者の口コミを紹介します。
これらの口コミから、受験一辺倒でない自由な学びが得られる環境ということがわかります。
茗溪学園中学校高等学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人茗溪学園 |
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住所 | 茨城県つくば市稲荷前1-1 |
電話番号 | 029-851-6611 |
問い合わせ先 | https://www.meikei.ac.jp/contact |
公式ページ | https://www.meikei.ac.jp/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください