特色ある教育プログラムを実践する注目校を特集するこの企画。今回は京都府京都市にある私立小学校「京都文教小学校」を紹介します。
京都文教小学校は京都岡崎の文教地区に立地する小学校です。運営法人の京都文教学園が2024年度に創立120周年を迎えるという節目にあたり、それまでの「京都文教短期大学付属小学校」から「京都文教小学校」に校名が変更されました。仏教精神に基づく心の教育や、小学1年生からネイティブな英語に触れるグローバル教育、児童の探究心を引き出す理数教育が魅力です。
今回はそんな京都文教小学校の教育の中心である「月影教育」の特徴や、グローバル教育、理数教育の内容について、教頭の横山先生に詳しくお話を伺いました。
この記事の目次
歴史と自然が調和する環境の中で、アットホームな少人数教育を実践
▲学校から徒歩10分の平安神宮で歴史を学ぶなど、恵まれた立地を活かしたさまざまな教育活動を行う
まずは御校の概要を教えてください。
京都文教小学校は国の重要文化的景観に指定されている京都岡崎にある学校です。近隣には平安神宮や八坂神社といった歴史的建造物、京都市動物園や美術館群が立ち並んでおり、教室からは東山の峰々と大文字山を望める、教育環境抜群の立地です。
本校は1学年1クラス、児童数は各クラス約20名という、全教職員が全校児童を把握しているアットホームな環境の中で少人数教育を実践しているのが特徴です。小規模校だからこそ縦割り活動にも力を入れており、毎年4月には6年生が班長を務める縦割り班「れんげ班」を構成し、多くの学校行事をこのれんげ班で行います。
全校児童で行う年に2回の「れんげ遠足」や班対抗のスポーツ競技、れんげ班での校内清掃など、さまざまな活動を通じて高学年をお手本に助け合い、支え合う精神を培っています。
▲「れんげ班」では6年生がリーダーシップを発揮して縦割り活動を行う
仏教精神に基づく心の教育“月影教育”で、感謝の心、謙虚な心、利他の心を育む
続いて御校の教育方針についても教えていただけますか?
京都文教学園は、仏教精神に基づく教育を行う「高等家政女学校」として1904年に開校しました。本校でも仏さまの教えを建学の理念に据え、「明るく正しく仲良く、そして優しい人になってほしい」という願いを持って教育を実践しています。
それを象徴するのが、本校の心の教育「月影教育」です。「月影」というのは、浄土宗宗祖・法然上人のご詠歌にあるお言葉で、阿弥陀様の慈悲の心を表しています。普段の授業や行事など、学校生活のあらゆる場面において「月影教育」を指導の中心に据え、感謝の心、謙虚な心、仲間を思いやる利他の心など人間力を高めていくのが本校の教育目標です。
具体的にどのように月影教育を実践されていらっしゃるのでしょうか。
月影教育の一環として、挨拶や掃除、返事をはじめとする人としての基本の行いを身につける指導をしています。例えば子どもたちは毎朝、校門で一礼し、明るい挨拶で1日をスタートさせ、朝の会や給食の時間、終わりの会にお念仏を称えて、感謝の心や謙虚な心、精進努力する心を育んでいます。さらに校長先生の講話や学級活動を通じて、豊かな人格形成、「明るく正しく仲良く」の心の育成を行っています。
また、本校の月影教育の探究的学習に、6年生の沖縄平和学習があります。現地で戦争体験を聞いたり、戦争の悲惨さを物語る戦争の跡を見たりする体験を通じて、平和の大切さを強く希求しています。
▲月影教育の集大成となる6年生の沖縄平和学習
日々の月影教育が、学校外での児童の行動や卒業後の絆につながる
▲1年生が6年生の感謝の気持ちを表し、お茶をもてなす「ありがとう茶会」の様子
御校の心の教育「月影教育」が児童の皆さまに浸透していると感じたエピソードはありますか?
先日、本校の児童が地下鉄で妊婦の方に席を譲ったそうです。そのときの対応が素晴らしかったと、その方から感謝とお褒めの言葉をいただきました。日頃から伝えている「利他の心を育み、勇気を持って実践する」姿勢が社会の中で活かされていると実感しています。
また学校内でも、日々の挨拶や校門での一礼、黙々と掃除に励む姿、気持ちの良い返事など、さまざまな場面で月影教育を通じた心の成長が見られます。特に異学年で関わるれんげ班活動では、5、6年生が下級生に対して思いやりのある声掛けや行動を行う姿から「明るく正しく仲良く」が実践されていると感じます。
れんげ班で一緒だった当時の1年生と6年生が、卒業後に一緒に学校を訪ねてくれることもあるんですよ。年齢が離れていても本校での活動を通じて心を通わせ、卒業後にもその絆が続いているのが、とても嬉しいです。
卒業生が訪ねてくるというのは、御校で過ごした時間が充実したものだったからこそですよね。
そうですね。卒業生の中には京都文教小学校を卒業して京都文教中学校・高等学校に進学をし、12年間過ごす生徒がたくさんいます。大学生になった卒業生が、京都文教中学校・高等学校の学習アドバイザーとして、後輩達に直接個別指導をしているケースもありますよ。
1年生からネイティブ教員の英語に触れる、京都文教小学校のグローバル教育
▲ネイティブ教員と横山先生の2人体制で、児童の英語理解を促進
グローバル教育のテーマについて伺います。御校では英語教育に力を入れていらっしゃるとのことですが、どのような内容なのでしょうか。
本校の英語教育は、「豊富な定型表現を話すこと」と「文の決まりを理解し、談話を生成すること」の双方の力をつけることを目的に、日々さまざまなプログラムを展開しています。
まず毎日の英語のルーティン学習として、子どもたちは登校後すぐに、自分のiPadを使って本校のオリジナル教材「EEシート」に約10分間取り組みます。EEシートはリスニング、リーディング、スピーキング、ライティングの英語4技能を高められる教材です。毎朝10分間を積み重ねることで、児童の英語力を底上げします。
英語の授業は、1年生から6年生まで週2時間実施しています。そこではネイティブ教員と触れ合いながら歌やゲーム、絵本で英語を学ぶほか、発話練習やTECS英語コミュニケーション技能検定試験の対策、国際理解教育などを学んでいきます。加えて海外のテキストやワークブックを使って音声学習法やライティングを学びます。
さらに英語の授業に加えて「フォーカスト・イマージョンプログラム」という英語で教科を学ぶ時間があるのも特徴です。1、2年生ではイギリス人教員が算数と体育を週に1時間ずつ英語で指導しています。3年生以上になると、環境学専門のアフリカの研究者から、アフリカを中心に世界の環境問題について学んだり、SDGsの17ゴールを英語で暗記したりして、SDGsや環境を英語で学びます。
フォーカスト・イマージョンプログラムの意義は、英語で知識や情報を得て、英語で自分の考えを表現できるようになることです。またSDGsに関連した地球規模の問題を英語で学ぶことで、将来グローバルに活躍できる人材となるための素地を育んでいくことも目的としています。
1年生からネイティブ教員と触れ合って英語を学んでいくとのことですが、1年生児童の皆さんの反応はいかがすか?
みんな、積極的です。リスニングでは、話の流れから内容を推測したり想像したりして、イメージしています。また、スピーキングでも、子ども達は間違いを恐れず発話し、体当たりでコミュニケーションする喜びを感じているようです。
日常的な海外観光客とのふれあい、韓国の小学生を招いた国際交流で生きた英語を学ぶ
▲海外観光客へのインタビューを通じて、英語コミュニケーションと国際交流を楽しむ
朝のルーティン学習や授業の他に、英語に触れる機会もあるのでしょうか。
校内放送の一部を英語でアナウンスしたり、各クラスで行う朝の会や終わりの会を英語で実施したりと、授業時間以外にも英語を話したり聞いたりする機会を積極的に設けています。また日頃から、英語ドッヂボールや鬼ごっこ、英語でのラジオ体操などさまざまな英語のイベントを開催し、楽しみながら自然と英語を身につけるように工夫しています。
また本校周辺は神社仏閣や様々な施設が数多くあるため海外観光客の方が非常に多くいらっしゃいます。そこで、私が担当する「英語クラブ」では、徒歩10分の平安神宮へ歩いて行き、そこで海外の方に英語でインタビューを行っています。メンバー達は、単に英語コミュニケーション力を高めるだけでなく、外国の方と心を通い合わせる喜びを感じているようです。
国際交流としては、韓国の小学生との交流会も実施されているんですよね。
はい。本校では2018年から韓国の小学生を招いた国際交流会を実施しているのですが、コロナ禍の関係で一時中断してしまいました。その間も手紙などで交流を続け、5年ぶりに実施できました。韓国の小学6年生91名の皆さんと挨拶や合唱、劇の発表、ゲームなどさまざまな国際交流を楽しみました。
また、子ども達だけの時間「リラックスおしゃべりタイム」も設け、そこでは高学年児童が書いた英語・韓国語・日本語の絵葉書を渡したり、英語を使った自己紹介や質問をしたりと互いのコミュニケーションを楽しみました。本校では週に1回、韓国語講座を実施しているため、韓国語を学ぶメンバー達は、韓国語を使う機会にもなったようです。
▲韓国の小学生と交流を楽しむ様子
韓国の小学生との交流では、お子様たちからはどのような感想があがっていましたか?
子ども同士の交流がとても楽しかったという意見が多かったです。一方で、「次回の国際交流のために、英語を勉強しないとだめだ」と、英語の重要性を改めて認識した児童も多くいました。英語を学ぶことへの向上心を改めて持つきっかけになったようです。
児童の興味を引き出す理科体験で、科学的な視点を培う理数教育
▲迫力満点の創作ペットボトルロケットの発射
続いて理数教育について伺います。まずは理科の取り組みについて教えていただけますか?
本校では児童の思考力、探究心、課題解決力、科学的に事象を見る力を育んでいくため、さまざまな理科の活動を展開しています。
まず理科の授業では基礎基本学習を大切にし、2、3人で行う協働実験など、教科書にあるすべての実験を行いながら科学的な視点を養っています。さらに水溶液の単元では金属を溶かすときに出る水素を使った「しゃぼん玉実験」を行うなど、教科書にはない発展的な実験も実施します。
実験器具やデジタル機器などが充実しているのも本校ならではの特徴です。1人1台の顕微鏡や、1人1台のiPadでのロイロノート(教育ICTツール)などを活用して、より学びを深めています。
また本校には専科の教員だけでなく、大学で理科を専攻した教員など、理科の知識に精通した教員が多くいるのもポイントです。そういった教員と触れ合いながら、日頃から理科への興味を高めていける環境があるのが魅力です。
授業を離れた部分での学びとして特徴的なのが、夏に実施している「大江山自然教室」です。そこでは虫や生き物に触れ合ったり、森林や木々を観察したりする他、京都市内の川の水と京都府北部の山間の川の水を比較してCOD化学的酸素要求量に基づいた水質調査も行っています。さらに空気圧で飛ばせるペットボトルロケットの製作も行っており、仲間たちと五感を通して自然科学を体験しています。
科学に魅力を感じてもっと突き詰めていきたい児童に向けては、放課後の特別活動のクラブで授業よりも発展的な内容に取り組んでいます。例えば水圧と大気圧のつり合いを学ぶ「浮沈子」実験やジェット機のエンジン形状など、さまざまな学びを通じて理科への好奇心を高めています。
学校外と連携した理科の学びの機会も多いそうですが、具体的にどのようなことを行っているのでしょうか。
京都文教大学との連携事業では、「児童に思考力を問う」というテーマで磁石や水の温まり方、プログラミング的思考、音の不思議などの内容に取り組みました。
また産学官連携の取り組みとして、京都文教学園が提携する企業や団体との教育活動を積極的に展開しているのも特徴です。例えば京都文教学園と京都市都市緑化協会、京阪園芸の3者連携協定による緑を通じたまちづくり事業の一環として、京都府の絶滅危惧種の植物「キクタニギク」の育成活動を行っています。
▲キクタニギクの育成活動の様子
学校の理科の授業に加えて、特別活動や大学・企業とのつながりを通じて科学的探究心を高めていける環境があるんですね。御校は自然豊かな環境の中に立地しているため、日常的に自然に触れることで科学や理科への興味・関心が高まる児童も多いのでしょうか。
おっしゃる通り、自然が身近にあることで科学に親しみやすいというのは京都文教小学校ならではの特徴です。近くに流れている白川には蛍が生息しているため、時季になると本校にも飛来します。時々子ども達が目ざとく発見して、見せに来てくれますよ。京都市内の都会的な環境で暮らす児童が多いからこそ、周りに豊かな自然がある学校の環境をより新鮮に感じ、興味が高まっている部分もあるかもしれません。
基礎を徹底し、応用力や読解力を高める京都文教小学校の算数教育
▲皆で力を合わせて算数の応用問題にチャレンジ
理数教育の理科についてご説明いただきましたが、算数の取り組みについても教えていただけますか?
京都文教小学校の算数は、「算数的思考が楽しい!・先生の解説・友達との学び合いで『分かった』!」をテーマに、一斉指導のティームティーチング、学級を2分した少人数指導を組み合わせ、児童の算数の力を高めています。教科書の内容に加え、定着応用問題として、低学年では東京私立初等学校協会作成の問題プリント、中学年は演習問題集、高学年は塾講師も加わって厳選した入試問題に挑戦しています。
また、本校の算数指導で特徴的なのが、児童一人一人に算数問題を説明する機会を設けていることです。例えば先生があえて誤りの問題を出題し、児童がその誤りの理由を相手に分かりやすく伝えたり、発表したりします。そのような児童の説明表現力と読解力をキーワードに取り組んでいます。
英語のところでお話いただいた「EEシート」のような、授業時間外の学習時間もあるのでしょうか?
授業時間外の取り組みとしては、「朝根っこタイム」と「昼根っこタイム」という帯の時間、各15分を活用した学習があります。それらは基礎学力を育てるための時間です。子ども達は、基礎基本の計算力を高める演習を日々、取り組んでいます。
さらに毎日オリジナルの宿題プリントを出し、朝一番にそれを教員が答え合わせしてすぐにフィードバックをしているのが特徴です。やはり算数で最も大切なのは「直し」なんですね。ケアレスミスではなく一生懸命考えて間違えた問題については、すぐにフィードバックしてさらに考えてもらうことが、理解と応用につなげていくために重要なんです。そのため、朝は英語のEEシートと並行して算数の直し活動も行い、教員も手助けしながら理解につなげています。
もちろん、その直し活動を通じて一度理解したつもりでも、時間を置いたらまた分からなくなってしまうこともあります。だからこそ同じ問題や類似問題を繰り返し出題しながら、真の理解につなげ、応用力をつけてもらうことをサポートしています。
京都文教小学校からのメッセージ
最後に、京都文教小学校に興味を持った読者の方に向けてメッセージをお願いします。
本校では「月影教育」に基づく豊かな人間教育を実践しています。何事に対しても、おかげさまと感謝・謙虚の心を持ち、「人としての基本的な行い」を実践できる優しい人になってほしいと日々願いながら指導にあたっています。
今回中心的にお話したグローバル教育と理数教育以外にも、豊かな感性と創造力を育む図工や音楽、感謝の心を育む食育など、本校ならではの魅力的な教育活動を行っています。
小規模校でありながらダイナミックな教育を行う“Big education in small sizes!”、そんな京都文教小学校にぜひ遊びに来てください!
横山先生、本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!
京都文教小学校の進学実績
▲授業の中で中学の入試問題にも果敢にチャレンジするそうです
京都文教小学校では併設の京都文教中学校に進学する場合も受験が必要となるため、全員が中学受験を行います。京都文教中学校への進学は平均3割から4割程度となっており、ダンス強豪校であるなど、多方面で活躍する同校でクラブに打ち込んだり、学習をより深めたいなど、明確な目標を持って進学する児童が多いのが特徴です。
京都文教小学校の卒業生の口コミ
ここでは、京都文教小学校に寄せられた卒業生の口コミの一部を紹介します。
インタビュー中にもあったように、京都文教小学校での縁が卒業後もずっと続いているという口コミが寄せられており、充実した学校生活の中で良好な人間関係を築くことができる京都文教小学校の魅力が口コミからも伝わってきました。また京都岡崎という立地も高評価となっています。
京都文教小学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人京都文教学園 |
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