国本小学校の校舎と運動場

人間国宝や大手企業とも連携!国本小学校の課題解決型学習で養われる能力とは

ぽてんをご覧の皆様に、注目の学校をご紹介する本企画。今回は、東京都世田谷区にある共学の私立小学校「国本小学校」をご紹介します。

1950年に創立した同校は、2024年で開校70年の節目を迎えました。創立から一貫して、知識の習得とともに人格を育む心の教育に注力。社会課題の解決する力や創造力などを養う課題解決型学習や、知的好奇心を育み芸術を愛でる心を育てる情操教育など、児童に寄り添ったきめ細かい教育カリキュラムに定評があります。

今回は、国本小学校の校訓や教育の方針、学習の特色について、校長の白井先生、教頭の齋藤先生にお話をうかがいました。

誠実さや謙虚さ、社会貢献への志を育む国本小学校

授業で積極的に手を挙げる国本小学校の児童たち

▲授業で積極的に手を挙げる国本小学校の児童たち

編集部

まず国本小学校が教育でどのようなことを大切にされているか、教えていただけますか?

白井先生

2024年に創立70周年を迎えた本校は、創立からずっと大切にしてきた3つの教育目標があります。

1つ目は「真心の発揮」です。どんな時も、まっすぐな心で自分にも他人にも誠実に生きていってほしいという思いが込められています。

2つ目は「自然に対する素直さの涵養」です。自然は私たちを生み、育み、生かしてくれています。それを謙虚に受け止めて生きていこう、という考えです。

そして3つ目が「恩を知り恩に報ゆる心の育成」です。自分が生かされていることに感謝し、日々の学校生活の中で感謝の心を育て、周囲や社会に貢献する志を育むことを目指しています。

この3つは、母体である学校法人国本学園が運営する幼稚園、女子中学校、女子高等学校が一貫して掲げている目標です。国本小学校では、小学生に分かりやすい言葉で、明るく元気な子供、思いやりのある子供、素直な子供、感謝ができる子供、という4つの目標としても掲げ、本校が力を入れている情操教育の基礎にもなっています。

環境をテーマに企業や地元と協働する国本小学校の課題解決型学習

国本小学校では、環境学習をベースとした課題解決型の学習に取り組んでいます。児童たちは、学習の中で企業や地元商店街などとの交流を経て、大きな成長の機会を得ます。このパートでは課題解決型学習の特色などについてうかがいました。

「サーキュラーエコノミー」を題材とした取り組みで、文部科学大臣賞を受賞

国本小学校は環境をテーマに課題解決型学習に取り組んでいる

▲課題解決型学習では、不要になった子ども服や古書を回収し、寄付・販売するプロジェクトに取り組んでいる

編集部

国本小学校の教育の特色である探究学習について、ご紹介いただけますか。

齋藤先生

先ほどご紹介した教育目標の一つ「自然に対する素直さの涵養」にあるように、子どもたちには持続可能な社会を担う人材になってほしいと考えています。そこで、主に環境をテーマに、子どもたちが何をやりたいかを発案していく、プロジェクトベースの課題解決型の学習に力を入れています。

課題解決型学習のテーマは毎年、学年ごとに変えています。昨年度は企業にご協力いただき、子ども服や古書などの身近な生活用品の再利用を通じて二酸化炭素排出量の削減などにつなげていく、サーキュラーエコノミー(循環型経済)に触れる機会を設けました。

子どもたちが気候変動の現状を理解したうえで、企業がどんな対策を講じているのかを知り、「自分たちでできることは何か?」を考えるというものです。

編集部

実際、どのようなことに挑戦したのですか?

齋藤先生

2022年度は「服のチカラ/本のチカラプロジェクト」と題したリサイクルの取り組みを行いました。

まず、不要になった子ども服や本学園の制服、古書を回収。集まった子ども服は企業や国際機関の協力でアフリカの難民の子どもたちに贈る一方、制服や古書は販売し、収益を慈善団体に寄付しました。この取り組みは、脱炭素を目的とした地球温暖化防止に関する地域活動のコンテスト「脱炭素チャレンジカップ2024」で文部科学大臣賞、「令和5年度気候変動アクション普及促進部門緩和適応分野」で環境大臣表彰を受賞しました。

子どもたちが社会課題について触れる際に、その課題をどれだけ自分事としてとらえられるかどうかがとても重要です。今回、子どもたちが発案したプロジェクトで地域や企業を巻き込み、持続可能な社会、ウェルビーイングの実現に向けて取り組めたのは、非常に貴重な経験になったのではないかと思います。

人間国宝の志村ふくみ先生の門下生による「草木染体験」や「ユニクロ」本部訪問も

編集部

「服のチカラ/本のチカラプロジェクト」以外には、どんなことに取り組んでいるのでしょうか?

齋藤先生

全学年がSDGsに関連した学びに取り組んでいて、2024年度の6年生はフードロスの問題、5年生は「森と人と水と、ともに ~都心世田谷から、森林を考える~」と名付けたプロジェクトが始まっています。こうした課題解決型の学習のほか、林間学校などの行事でも環境教育を行っています。

また5年生は、人間国宝である志村ふくみ先生のアトリエのスタッフの方にご協力いただいて、学園や多摩川沿いに生えている草木を使った草木染をします。このように、教室で座って考えるだけではなく、商店街や企業、行政、メディアなど外部の方と関わったり、様々な体験をしたりして、環境問題に関心を持つ機会を設けています。

ほかにも、例えば中古本を扱うブックオフ様の本社や、衣料品のユニクロ様の本部を訪問し、今までの環境に対する取り組みについてプレゼンテーションをしたり、質問したりすることもありました。児童たちは「これが聞きたい!」と積極的に挙手していて、質問タイムが終わらないくらいでしたね。

国本小学校では企業を訪問し、プレゼンテーションする機会もある

▲企業を訪問し、児童が学習内容をプレゼンテーションする機会を設けている

1年生から取り組む「1分間スピーチ」で、自信を持ってプレゼンできるように

編集部

このほか、探究学習に関連して特徴的な取り組みはありますか。

齋藤先生

本校では国語の学習内容に、「1分間スピーチ」という機会を設けています。1年生から自分の思いや意見を発表するという事に慣れ、探求学習におけるアウトプットのベースを作ります。

本校は1クラス25人と少人数教育を特色にしています。一人ひとりが互いに認め合う雰囲気があるので「1分間スピーチ」で皆が自信を持って発表できるようになります。

小学3年生になると、自身のタブレット端末を持ちますので、そういったツールも駆使しながら発表し、プレゼンのスキルを磨いていきます。

児童は発想力や課題解決力のほか、コミュニケーション能力や行動力も身に付ける

編集部

探究学習を通じて、児童の成長はどういった点に感じておられますか。

齋藤先生

プレゼンテーションのスキルやITツールを扱う力はもちろんですが、こういった課題解決型の学習を1年生から体系的に行っていますので、発想力や、問題を発見する力、解決する能力はかなり養われていると思います。

さらに5、6年生になると商店街の各店舗を巡ってプロジェクトを紹介したり、ポスターを持って行ったりと、大人とのやり取りも増えますので、コミュニケーション能力や行動力も自然と備わります。卒業生のなかには模擬国連に出るなど、今後の活動につなげている児童はたくさんいます。

全国の様々な小学校を見渡しても、本校の子どもたちはとても貴重な経験をしているのではないかと自負しています。

白井先生

中学校に進学後、先生からプレゼン力をすごく褒められるという話は、卒業生や保護者の方々からよく聞きます。小学校にいる間は、当たり前だったことが、卒業してみると、とても質の高いことに取り組んでいたと実感できるようです。児童も6年間で培った力に自信を持っているようで、それは教員としても大変誇らしいですね。

慈しみや感謝の心、勤勉さを育てる国本小学校の情操教育

編集部

国本小学校では、知的好奇心や創造性などを育む情操教育についても大変力を入れているとうかがっています。どのような特徴があるかについて、ご紹介いただけますか。

白井先生

先ほどご紹介した課題解決型の学習のベースになっているものが、児童の心を育てる情操教育です。

本校は、他人を慈しむ心や、命の尊厳を知る心、自然を愛する心、感謝する心、勤勉な心といった様々な心を子どもたちに育んでもらいたいと考えています。ITツールも使いながら、時には真逆の、鉛筆を持って文字や絵をかいたり、筆を持って習字をしたりしながらいろんなことを感じ取ってほしい。そんな思いで、情操教育にも注力しています。

今の社会ではタイムパフォーマンス(タイパ)や、コストパフォーマンス(コスパ)が追求される傾向にありますが、子どもはそういうものは関係なく、自分の好きなことがあれば、時間を忘れて、目を輝かせて没頭し、追いかけていきます。

そんなとても心が純粋・柔軟で、豊かであるうちに、教科や行事など、自分が興味のないことも含めて、様々な経験をさせてあげることがとても大切だと思っています。

集中力を鍛え、静かな時間の過ごし方を学ぶ習字の時間

国本小学校では情操教育の一環で書道を実践している

▲情操教育の一環で、6年間書道を行っている

編集部

具体的に、児童の心を育てるためにどのような取り組みをしておられるのでしょうか。

白井先生

一つは6年間にわたって行う習字です。1年生から毛筆でかなを書くところから始め、6年生では大判の作品に挑戦します。

本校習字の担当教員が一人ひとりと向き合いながら、丁寧に指導しています。記念祭という発表会で、小学校の廊下に全校児童の書道の作品を貼りだします。その風景は圧巻です。

編集部

習字を通して、子どもたちはどんな学びや気づきを得るのでしょうか。

白井先生

文字を書くことだけではなく、道具を用意し、墨を擦るという準備、そして、字を書くことに集中し自ら心をコントロールすること、静かな時の過ごし方などを学ぶ貴重な機会にもなっています。

齋藤先生

私は2年生と6年生の習字を担当していますが、技術面よりも、心を育てることを重視しています。なかなか2年生にとっては大変なことですが、授業の45分間全く声を出さずに、音を出さずに取り組むという普段の授業とは少し異なる環境で、書に向き合います。

6年間のうちにこうした作法は自然と身につき、精神を整える機会になります。もちろん、腕前もどんどん上達するので、記念祭では非常に見ごたえがある作品が並ぶんです。

茶道教室では裏千家の先生から、マナーや日本の伝統文化について学ぶ

編集部

習字以外の情操教育はどのようなことをされているのですか?

白井先生

本校にある和室で、茶道の裏千家の先生から各学年が毎年2時間ずつ手ほどきを受ける茶道教室や、和のマナーの教室も開いています。習字もそうですが、日本の伝統文化をしっかりと知っている子どもになってほしい、との願いを込めています。

国本小学校では情操教育の一環で茶道を行っている

▲和室を使って、裏千家の先生から茶道の手ほどきを受ける機会もある

白井先生

また、美しいものを感じる心。美しいものを美しいと聴き取れる耳、それらを育てることも大切なことと考えているので、音楽の教育にも力を入れています。

目玉の一つが、児童全員で臨む全校合唱で、年末に開く校内の音楽会で披露します。題材の曲は、命の尊厳に触れる歌詞のものを選び、皆でどのような意味なのか歌詞を吟味する取り組みも行っています。ベートーベンの交響曲第9番の「歓びの歌」をドイツ語で歌う機会もあります。4・5・6年生には楽器のパートもあり、本番の2、3か月前から週2時間ほど練習して、音楽を共に作り上げていきます。一人ではできないことをみんなで乗り越えていく喜びを、この時に知る子どもが多いようです。

音楽会はコロナ禍で一時中断していましたが、2024年度は久しぶりに開催する見通しが立ち、皆楽しみにしています。

2025年度から1クラス20人制に。少人数教育で子どもに寄り添う

工作に取り組む国本小学校の児童たち

▲国本小学校では少人数でのきめ細やかな教育を実践している

編集部

心を育てるうえで、1クラスを25人程度という少人数制もプラスに働くのではないかと感じますが、メリットを感じることはありますか?

白井先生

先生と児童の距離感がとても近く、子どもたちが信号を出せば、教員が気付ける距離にいることが非常に大きいです。

特に近年では就学前にコロナ禍を経験し、集団生活の機会が少なかった子どもが低学年に多くいますので、一人ひとりに寄り添うことが特に重要だと認識しています。それに柔軟に対応できるのが少人数制の良さだと感じています。

現在は1学年あたり1クラス約25人の2クラス制ですが、2025年度からは少人数制をより充実させ、1クラス20人の3クラス制に変更する方針です。より児童一人ひとりを大切にする教育を実現していけると考えています。

高学年と低学年が交流する「縦割り班」で、卒業後も途切れない絆が生まれる

編集部

情操教育では高学年と低学年の交流も重要になりそうですね。

白井先生

上級生は下級生を思いやり、下級生は上級生を見習うという、互いにいい人間関係を育てる仕組みとして「縦割り班」を設けています。

1年生は入学式の時に、1年間自分のお世話をしてくれる高学年の児童と顔を合わせます。7月中旬に全校で行く林間学校では、縦割りで1年生と6年生、2年生と5年生、3年生と4年生が、それぞれ同じ部屋で2泊3日を過ごし、とても親しくなり、絆が生まれます。

時折ですが、1年生の時に世話をした児童が卒業する際、わざわざ会いに来てくれる先輩卒業生もいるほどです。「先輩にお世話になったから、自分も頑張って後輩を面倒みなくちゃ」というような伝統のバトンがどんどんつながっていくのも、縦割りの良さだと思います。

国本小学校からのメッセージ

国本小学校の白井先生と齋藤先生

▲インタビューに応じてくださった国本小学校校長の白井先生(左)と教頭の齋藤先生(右)

編集部

この記事をご覧の受験生や保護者の方々にメッセージをいただければと思います。

白井先生

本校では今回お伝えした課題解決型の学習や情操教育のほかに、国際コミュニケーション力を育てる英語教育にも力を入れています。

8月には、コロナ禍で4年間実施できていなかった、オーストラリアでのホームステイを久しぶりに開催しました。全校児童の2割の60人が参加し、現地での生活を体験しました。また、これとは別に夏と冬の長期休暇にネイティブの教員と各3日間楽しく英会話をする教室を開くなど、生きた英語力を学べる機会も豊富にあります。

このように様々な魅力がある本校に興味を持っていただければ嬉しく思います。学校案内や授業見学、学校説明会などに、ぜひご参加いただければと思います。

齋藤先生

最高の環境、最高のカリキュラムが用意され、熱意を持った最高の教師がいる学校であると自負しています。6年間での児童の成長を最重要視し、少人数制ならではの一人ひとりに合った教育を、これからも実践していきます。本校に関心をお持ちいただければ嬉しく思います。

編集部

本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

国本小学校の進学実績

国本小学校の正門

国本小学校の2021年度~2023年度の実績では、男子は、開成中学校、灘中学校、筑波大学附属駒場中学校、麻布中学校といった難関校に進学した児童がいます。また女子も、女子学院中学校や鷗友学園女子中学校、フェリス女学院中学校、系列の国本女子中学校などに進んでいます。

また、綿密な保護者面談を実施しており、きめ細やかな進学指導には定評があります。

■国本小学校の進学実績(公式サイト)
https://kunimoto.ac.jp/primary/graduate/

国本小学校の保護者の口コミ

ここからは、国本小学校の保護者の口コミを一部抜粋して紹介します。

(保護者)
私立ならではの特色と、いい意味で公立の様な標準的な一面も持ち合わせた、絶妙なバランスのとれた学校だと思う。情操教育に力を入れており、それに賛同した家庭の子女が集まるので、素直でまっすぐなお子さんが多い。
引用元:国本小学校の公式サイト

(保護者)
先生がきちんと児童のことを考えて優しく接してくれる。学習についても、補習などがあり、できる子、できない子まで丁寧に接してくれる。
引用元:国本小学校の公式サイト

(保護者)
上級生は下級生の面倒見がとてもよく、縦のつながりもしっかりしているのが良い。音楽に力を入れており、楽器を頑張っている子は活躍の場が多いと思う。
引用元:国本小学校の公式サイト

国本小学校の口コミからは、少人数制がゆえに先生の目が行き届き、雰囲気がアットホームである点を支持する声や、一人ひとり丁寧に指導する丁寧な教育、最寄り駅からのすぐの立地で通いやすい点を挙げる意見など、高評価の声が目立ちました。

国本小学校へのお問い合わせ

運営 学校法人国本学園
住所 東京都世田谷区喜多見8-15-33
電話番号 03-3416-4721
問い合わせ先 https://kunimoto.ac.jp/contact/
公式ページ https://kunimoto.ac.jp/primary/

※詳しくは公式ページでご確認ください