児童の自主性を育成する名門進学校「国立学園小学校」の取り組みとは

ぽてん読者の皆さまに、特色ある教育プログラムで注目を集める学校を紹介するこの企画。今回紹介するのは、東京都国立市にある私立共学小学校「国立(くにたち)学園小学校」です。

国立学園小学校は、麻布中学校、開成中学校などの難関校への合格者を輩出する歴史ある進学校です。中学受験に向けて学校が準備したカリキュラムをこなすのではなく、児童の自主性を育成し、自ら受験に向き合って行動する教育を実践しています。

同校では、「豊かな人間性を培う」という教育理念のもと、時代に先駆けて学校週5日制や教科担任制を導入するなど、先進的な取り組みを次々と実現しています。

今回は、国立学園小学校の進学校としての歴史や教育体制の変遷、児童の自主性を育む多様な教育プログラムについて、国立学園小学校校長・国立学園附属かたばみ幼稚園園長の佐藤先生にお話を伺いました。

進学校として名高い国立学園小学校の今と昔。時代を先取りした一大教育改革に迫る

編集部

はじめに、国立学園小学校の成り立ちや特徴について教えてください。

佐藤校長

国立学園小学校は1926年に西武グループ創業者の堤康次郎先生によって設立した小学校で、今年度で98周年を迎えます(2024年6月取材時点)。堤先生は国立に一橋大学を誘致された先生でもあるのですが、当時国立には小学校が1つしかなく、一橋大学の教職員のお子様のために本校を設立されました。

編集部

一橋大学の移転に合わせて、国立学園小学校が設立されたのですね。

佐藤校長

はい。これまでの約100年の歴史の中で、総勢8,299名もの卒業生を輩出しました(2024年6月取材時点)。卒業生は多方面で活躍していますが、特に医師などの医療従事者が多く、全体の37%を占めています。将来的に医学部を目指す児童が多いことから、当初より中学受験を意識した教育を希望される保護者が多くいらっしゃいました。

受験対策を熱心に行った結果、予備校が実施する学力テストの上位50位までを本校の児童が占めるほど、実力のある進学校となったんです。

編集部

国立学園小学校は進学校として今でも有名ですが、児童の学力の高さの背景にはそのような事情があったのですね。

佐藤校長

はい。受験対策が過熱した様子を表すように、当時の6年生がこのような記録を残しています。

「100人を超える全員が一つの教室、講堂に集められて授業を受けていた。図工・体育・音楽などは、6年生になって数日でまとめて消化し、理科も時間がかかる実験などを行わず、受験に必要な学習のみを勉強した。授業では、電話帳と呼ばれるような分厚い受験問題集を中心に進めた。席順は毎週のように成績順で入れ替わり、班には金・銀・銅から石までの名前が付けられていた。」

編集部

中学受験が唯一の目的とされ、学校生活のすべてが受験対策のために構成されていた様子が伺えます。

佐藤校長

はい。ですから設立当初から有名中学校への高い進学率を誇っていました。しかし、創設者のご子息である堤清二先生が二代目理事長に就任されたとき、このような受験至上主義ではいけないと一大教育改革を宣言されたのです。学校創設から48年が経った頃でした。

堤清二先生は、「一流大学、一流企業の枠を子どもに当てはめるのではなく、子どもの能力・才能・個性を伸ばす教育をしよう」とおっしゃいました。このとき掲げられた「豊かな人間性を培う」という教育目標が、現在まで続く国立学園小学校の教育方針となっています。

編集部

子どもたちが本来持つ力を伸ばす教育に舵を切られたのですね。受験対策を重視されていた保護者の方からは理解を得られたのでしょうか。

佐藤校長

保護者会で方針をご説明した際には、100件以上の苦情が寄せられたそうです。しかし、二代目理事長は「豊かな人間性を培うのが小学校教育である」という信念のもと誠意をもってご説明し、校長を含む教員人事を一新したり、カリキュラムを見直したりと、大胆な改革を実行されました。

編集部

当時の時代背景から「良い大学に行き、大手企業に就職する」という価値観が世間全般に根付いていたのではないかと思います。児童本来の力を伸ばす教育に転換されたのは、時代を先駆ける改革だったのではないでしょうか。

佐藤校長

そうですね。当初は苦情の声もありましたが、「豊かな人間性を培う」という教育方針を貫くなかで児童が自ら考え、学び、行動する力を身につけていきました。懸念されていた中学受験対策に関しても、児童の自主性が育ったおかげで自然と良い成績をキープし続けられています。保護者の皆さまからも支持していただき、本校の教育方針は間違っていなかったのだと確信できていますね。

編集部

国立学園小学校の高い進学実績の背景には、時代の流れをいち早く汲み取り、児童自身の人間性や自主性を養う教育改革があったことがわかりました。

与える教育から見守る教育へ。中学受験をゴールにしない国立学園小学校の先進的な教育体制

国立学園小学校の理科の授業で栽培した野菜を収穫する3年生

▲理科の授業で栽培した野菜を収穫する3年生。受験勉強だけでなく多様な体験を楽しむ

編集部

「豊かな人間性を培う」教育へ舵を切られた国立学園小学校ですが、改革は順調に進んだのでしょうか。

佐藤校長

教育方針の大きな転換を始めてすぐの頃は、それでもやはり中学受験の合格率を落とすことはできないため、平日20時くらいまで学校で受験対策をしたり、土曜日も授業をしたりしていました。私が国立学園小学校に着任した頃ですね。

そんな中、卒業生が入学した中学校へ追跡調査訪問させていただいたとき、とある中学校の先生からとても衝撃的なお言葉をいただきました。「国立学園の児童には本校に入学してほしくない。成績はトップレベルだが、まるで『伸びきったゴム』のようだ」とおっしゃったんです。

編集部

『伸びきったゴム』とは、どのような意味合いだったのでしょうか。

佐藤校長

中学受験で燃え尽きてしまったのか、学校生活に身が入っていなかったようなんです。部活動には入らない、生徒会活動もしない、学校行事にも適当に参加する、といった様子で。そんな子どもたちには本校に来てほしくないと言われ、とてもショックを受けました。

編集部

せっかく希望する中学校に合格したのに、入学後に充実した生活を送れていないのは悲しいですね。

佐藤校長

そうなんです。私はこの話を職員会議で熱弁しました。すると先生方から賛同の声が上がり、「与える教育から見守る教育に変えよう」と、本格的に動き出すことになったんです。

そこでまず始めたのが、1991年の学校週5日制でした。土曜日を休みにして、児童たちに時間を返そう、と考えたのです。当時は月曜から金曜、隔週土曜日の授業が当たり前な中で、当校が先駆けて学校週5日制を導入しました。

編集部

完全学校週5日制が実施されたのは2002年度ですから、御校では10年以上前から土曜の授業を廃止されたのですね。「児童たちに時間を返す」とは、どのような想いがあったのでしょうか。

佐藤校長

自ら考えて生活し、行動できる子どもたちに育ってほしいと考えていました。自分で考える時間を持つために、学校に拘束され、指示される時間を短くしようと考えたんです。「人に言われたことだけをやる、与えられたことだけをやるような子どもには育てたくない」という、私たちの強いメッセージが込められています。

編集部

まさに時代を先駆けた教育改革に踏み切られたのですね。その他にも、先駆的な施策はありますか。

佐藤校長

近年、公立小学校の高学年で教科担任制が進んでいますが、国立学園小学校では1974年から導入しています。1年生から音楽・図工・体育・英語の授業を教科担任制で実施し、3年生からはすべての教科で教科担任制を導入しているんですよ。

編集部

まだまだ教科担任制に踏み切れない小学校が多い中で、御校では1974年から実施されているというのは驚きです。教科担任制になることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。

佐藤校長

小学校では担任の先生が複数の科目を教えるのが一般的ですが、教科担任制にすることで教員それぞれが余裕をもって得意分野を指導できるようになります。

1人の先生が国語も社会も算数も、すべての教材研究をするのはかなりの負担がかかります。受験対策に向けた効率面も考えて、かつては教師主導で一方的に授業を進めていくスタイルになっていました。

しかし、教科担任制になったことで教員に余裕が生まれ、児童たちの声を丁寧に聞くことができるようになったんです。児童一人ひとりの発言に丁寧に向き合い、児童の疑問に対してみんながディスカッションできる「子どもとつくる授業、一緒に共につくる授業」が実現しています。

編集部

教科担任制を導入したことで、先生たちに余裕が生まれ、児童たちの主体性を生かす双方向の授業が可能になったのですね。いろいろな教育改革を実現される中で、学外からの評価にも変化はありましたか。

佐藤校長

はい。以前は中学校の先生から「国立学園の児童は入学してほしくない」とまで言われた本校ですが、今では18の中学校が学校説明会を実施してくださっています。「ぜひ国立学園の児童に来てほしい」と宣伝しに来られるんです。

さまざまな教育改革を経て、卒業生たちが部活動や生徒会活動、学校行事などで活躍してくれているおかげです。中学受験で燃え尽きることなく、その後も自主性を発揮して活躍する児童を育成できていることを、とても嬉しく思っています。

編集部

国立学園小学校では、従来の常識や枠組みにとらわれない「豊かな人間性を培う」教育を貫かれたからこそ、学外からも評価される自主性のある児童たちが育っていることがわかりました。

学力キープの秘訣は児童の「自主性」。国立学園小学校のサポート環境と特徴的な取り組み

国立学園小学校の生徒たちの授業風景

編集部

中学受験に特化した学習スタイルを廃止された後も、国立学園小学校では難関校への進学率をキープされています。高い進学率を維持できている秘訣は、どこにあるのでしょうか。

佐藤校長

「豊かな人間性を培う」という教育方針を実現するため、生徒の自主性を育み、「自ら考え、自ら学び、自ら行動する子ども」の育成に注力していることがポイントだと考えています。

国立学園小学校では、運動会などの学校行事や、遠足・修学旅行などの校外行事など、あらゆるシーンで児童の自主性を大切にしています。教師から与えられるのではなく、自分の問題を自分で考えて行動する力は、中学受験にそのまま通じます。中学受験だって、児童自身の問題ですからね。

編集部

中学受験用に学校が一律のカリキュラムを用意するのではなく、あくまでも児童が自分で必要な受験勉強に取り組める力を身につけているのですね。

佐藤校長

はい。学校は、児童たちが自主性を発揮し、自分事として中学受験に向き合える環境を整えています。

公立と私立の違い、中学受験の仕組みや各中学校の特徴を児童にプレゼンテーションしたり、受験に関連する図書や動画も用意しています。卒業生の追跡調査として毎年30校以上の中学校を訪問して情報を収集したり、卒業生のリアルな声を集めたアンケートを実施したりしています。これらの豊富なデータは児童も保護者も自由に閲覧できますし、教員へ相談したり児童同士で相談したりする場もあるんですよ。

編集部

放任して児童に委ねるのではなく、児童が自主性を発揮するために必要な環境の整備に注力されているのですね。

佐藤校長

はい。環境という観点でいえば、当校は全員が中学受験をするため自然とみんなが学習に向き合える状況が築けています。受験をせずに地元の公立校に進学したり、小中一貫校で内部進学したりするわけでないので、高学年になるにつれて自ら受験勉強に向き合うようになります。

学校側が強制する教育とは全く異なるスタイルだからこそ、児童が自主性を発揮し、高いモチベーションを維持して受験に取り組めていると感じますね。

編集部

学校から受験対策を強要しなくても、児童が受験を自分事として捉えて取り組むことで高い学力と進学率を維持できているのですね。

プランニングから実行まで児童主体。遠足や修学旅行で育まれる自主性

国立学園小学校の修学旅行の様子

▲修学旅行で広島の平和記念公園を訪れた生徒たち。旅のプランニングは自分たちで行う

編集部

ここからは、国立学園小学校が実践されている児童の自主性を育む取り組みについて、具体的にお話を伺いたいと思います。具体的に、どのような場面で児童の自主性が培われているのでしょうか。

佐藤校長

あらゆる学校生活で児童の自主性を意識しているのですが、特徴的なシーンは遠足や修学旅行などの校外活動です。例えば、2年生と4年生が合同で高尾山に遠足に行く際、通常は教員が児童を引率してコースも日程も決めますよね。

編集部

そうですね。先生の指示に従って子どもたちがついていく、という形式が一般的かと思います。

佐藤校長

国立学園小学校の場合、遠足のプランニングから児童が行います。事前に4年生に対して教員がプレゼンテーションし、高尾山に3つのルートがあることなどを伝えます。そのうえで、グループごとに自分たちがどのルートを選び、どのように進んでいくか決めるんです。

4年生と2年生がペアになり、10人程度の小集団で山頂を目指します。教員と事前に打ち合わせをし、地図を見ながらどこで休憩するかといった詳細な計画を立てます。遠足当日、先生たちは先に山を登り、児童は自分たちで山を登ります。

編集部

4年生と2年生だけで山頂を目指すのですか。

佐藤校長

はい。迷子にならないように4年生が選んだルートを責任を持って調べ上げ、2年生を山頂まで連れて行くんです。遠足に限らず、宿泊を伴う行事でも児童たちが自分で計画を立てます。3年生から学校に宿泊するイベントがありますが、自分たちでどんな生活をしたいか話し合って決定しています。

編集部

小学生の段階から、自分たちのことは自分たちで決める習慣が身につきそうですね。

佐藤校長

そうなんです。6年生では金沢へ3泊4日の修学旅行に行きますが、1日目の金沢市内探索ではルートや内容を児童がすべて自分たちで決定します。2日目は班行動、3日目は「ホテルを7時半から8時までに出て、4時半から5時までに帰る」というルールしかありません。

どの観光地を巡るか、コースや移動手段、食事の手配などもすべて子どもたちが決めています。全員にGPS付きのタブレットを持たせたり、先生たちがグループに同行したりして、安全を確保したうえで生徒の自主性に任せるようにしています。

編集部

児童たちが3泊4日のほぼすべての行動を意思決定し、行動するのは素晴らしいですね。トラブルなどはないのでしょうか。

佐藤校長

もちろん、グループ内でケンカをしてしまったり、些細なトラブルが発生したりと、うまくいかないこともたくさんあります。しかし、失敗も含めて教育です。やはり失敗から学ぶことがたくさんあると感じています。

先ほどの高尾山の遠足の例でいえば、4年生と2年生の異学年の交流の中で、相手とどう接すればいいのかわからないと悩む児童もいます。でも、他者への優しさや配慮は、言葉による教育だけでは身につきません。

ある程度の失敗を想定しつつ、児童が体験して学んでいける環境を仕掛けていくことが、自主性を育むために必要だと考えています。

編集部

自分たちで考えて行動するからこそ、失敗からも学び、成長していけるのだと感じました。

児童の発案を教師がサポート。興味・関心を突き詰める特別活動

国立学園小学校の鉄道研究クラブの児童たち

▲児童自ら計画して群馬県「碓氷峠鉄道文化むら」を訪問する道すがら、憧れのSLと記念撮影

編集部

国立学園小学校では、自主性を育む取り組みとして「特別活動」に注力されていると伺いました。特別活動とは、どのような活動ですか。

佐藤校長

当校の特別活動は、クラブ活動や委員会活動を指します。現在は児童の興味や関心に合わせて、サッカーやブラスバンドなど15のクラブと、児童会本部や保健美化など11の委員会が活動しています。児童の自主性を重視しているため、児童から試合に参加したい、先生に引率して欲しいとの声があれば、付き添うようにしています。

編集部

教員が試合のスケジュールを組んで参加させるのではなく、児童からの希望に合わせてサポートしているのですね。特に印象に残っている活動はありますか。

佐藤校長

国立学園小学校には鉄道研究部があり、私も顧問していたのですが、とても精力的に活動しています。

あるとき児童から、群馬県にある「碓氷峠(うすいとうげ)鉄道文化むら」に行きたいという声が上がったんです。しかし国立から群馬県はかなり距離がありますから、私は難しいのではないかと伝えました。そうすると児童たちが月曜に出発して戻ってこられるスケジュールを組み立てて、私に提出してきたんです。

編集部

群馬県までの旅程を小学生が自分たちでプランニングしたのですか。

佐藤校長

はい。交通手段や乗り継ぎのタイミングなど、すべて自分たちで行程を組みました。そのスケジュールに合わせて小学生10数人を私が引率することになったのですが、自分の好きなことに対する児童のエネルギーには本当に驚かされましたね。鉄道文化むらの所長さんも生徒たちの熱量に大変感心されていました。

編集部

強制ではなく自分たちが考えたプランだからこそ、熱量高く行動できたのですね。

佐藤校長

そう思います。最近では歴史クラブの児童たちから小田原城に行きたいとの声があり、やはり自分たちで行程を組んで教員が付き添いました。帰りは有名な蒲鉾づくり体験をするなど、しっかり計画して実行していましたね。

自分たちで計画を立てて希望すれば先生がサポートしてくれるという安心感があるからこそ、児童たちが自ら行動しやすいのだと感じます。

編集部

国立学園小学校の特別活動は、先生方のサポートを受けつつ、児童たちが自分たちの興味を突き詰めて行動する力を養う場になっているのですね。

本気で取り組む。熱くなれる。国立学園小学校の運動会

国立学園小学校運動会の5段構造の組み立て体操の様子

▲万全の安全体制のもと5段構造の組み立て体操に挑戦。本気で取り組んだ運動会は生涯の思い出に

編集部

国立学園小学校の口コミを拝見すると、学校行事が多くてとても熱量が高い、子どもたちが本気で取り組んでいるという声がたくさんあります。特徴的な行事があれば教えてください。

佐藤校長

たくさんの行事がありますが、特に運動会は盛り上がりますね。梅組・松組・桜組という昔のクラス名がそのまま残っており、学年縦割りのチーム対抗戦になっています。近年では組み立て体操を廃止する小学校が多いのですが、本校では今も5段構造の組み立て体操を行っているんですよ。

騎馬戦も行っていますが、大将のハチマキを取ったら終了ではありません。ハチマキを取るスタイルはかえって危険です。相手の騎馬が倒れるまで続けます。まさに「合戦」の様相ですね。

編集部

運動会の競技で生徒同士が本気で競い合っているのですね。しかし、やはり組み立て体操や騎馬戦などは怪我のリスクが高いのではないでしょうか。

佐藤校長

本校では安全に運動会を実施するために、夏休みに教員が集まって研修会をし、怪我につながる危険な個所を特定したり、安全に実施するための施策を考えたりと、万全の打ち合わせをしています。練習時にも必ず教師がサポートに入り、見守りながら完成させていきます。本番も先生たちを周囲に配置し、しっかり見守っています。

児童たちの「やりたい」という気持ちを実現させるために、綿密なサポート体制を築いているんです。

編集部

「危険だから」と一律に禁止するのではなく、実現するための方法を考えて実行されているのですね。組み立て体操や騎馬戦などに取り組む児童の様子はいかがでしょうか。

佐藤校長

自分たちがやりたいと思うことに本気で取り組むので、ものすごく熱気があります。対抗戦で負けたチームの児童は、高学年でも涙を流しています。それだけ熱くなっている、本気になっているのだと感じますね。

競技だけでなく、運動会の運営も児童たちが主導します。ゴールテープを持ったり、レースのピストル打ちをしたりと、自分たちでイベントを作り上げている実感があるため、余計に運動会への思い入れも高まっているのだと思います。

編集部

本気で取り組み、本気で喜んだり悔しがったりする体験を重ねるからこそ、普段の学習や特別活動、中学受験などにも熱量高く取り組めるのだと感じました。

放課後も楽しく有意義に。国立学園小学校の「アフタースクール」

編集部

国立学園小学校の特徴的な取り組みである「アフタースクール」についても教えてください。

佐藤校長

国立学園小学校には、1~3年生が参加する「放課後Lab.」と4~6年生が参加する「放課後プラス」の2つの制度があります。

「放課後Lab.」では、校庭にある専用施設「なかよし学習館」に児童が集まり、6時半までお預かりできる体制になっています。児童たちが自立した生活習慣を身につけられるよう、メリハリのある時間の流れを作っています。宿題のサポートはもちろんのこと、英語やサッカー、プログラミング、ダンスなど、児童の興味に合わせたプログラムを提供しています。

編集部

放課後の時間も自分たちの興味を追求できる環境があるのですね。高学年の「放課後プラス」についても教えてください。

佐藤校長

4、5、6年生が参加する「放課後プラス」は、中学受験を見据えて勉強したり、テスト対策に取り組んだりしています。専任の先生がサポートするほか、本校の優秀な卒業生がお手伝いに来てくれています。

「放課後Lab.」「放課後プラス」ともに長期休業中のお預かりもしているため、共働きの保護者の方からも喜ばれていますね。

編集部

国立学園小学校には、放課後や長期休業中にも児童の自主性を育む体制がしっかり整っているのですね。

児童たちの個性を尊重する「子どもを語る会」と「校内委員会」

国立学園小学校の先生同士が語り合うようす

編集部

児童の自主性を育てるにあたり、教員のみなさまはサポートをしたり、見守ったりする姿勢を大切にされていると感じました。児童と向き合ううえで意識されていることや、特別な取り組みはありますか。

佐藤校長

当学園には付属の中学校や高校がありませんから、「卒業後に何とかなるだろう」という指導は絶対にしません。小学校6年間でしっかり児童の特性と向き合い、それぞれにふさわしい進路などを見極めることを大切にしています。そのうえで重要な取り組みが「子どもを語る会」と「校内委員会」です。

まず「子どもを語る会」ですが、100名を超える児童一人ひとりの普段の行動や特性について、担任や授業の担当教員が集まって語る会を年に5回設けています。

例えば担任から1人の児童に対し「いつもクラスではふざけてばかりいる」という話があると、体育の先生から「体育の時間はリーダーとして率先して取り組んでいる」などの話があります。図工の先生からは「片付けを一生懸命してくれる」といった意見が上がる。そんなふうに、児童の行動は一面的ではありません。教員間で児童に関する情報を共有し、今後の関わりに生かしています。

編集部

児童の多様な側面を知ることで、偏見なくより的確なアドバイスができそうです。

佐藤校長

はい。児童全員を対象とした「子どもを語る会」に対して、気になる行動が見られる児童に関しては「校内委員会」という教師の相談の場を設けています。

校長である私や学年主任、カウンセラーなどが参加し、児童の行動に対するアプローチを検討します。カウンセラーが対話をしてみよう、まずは保護者と相談する方が良さそうだ、などと議論します。「校内委員会」も年に5回設けており、児童の行動を一方的にダメだと判断せず、適切なサポートを探っています。

編集部

国立学園小学校の児童たちがのびのびと自主性を発揮できる背景には、ひとりの個性を多面的に捉え、適切なサポートをするための教員のみなさまの真摯な取り組みがあることがわかりました。

児童だけじゃない。保護者も自主性を発揮する国立学園小学校の「後援会」

国立学園小学校の「もちつき大会」の様子

▲保護者といっしょに伝統的な杵と臼を使ったもちつき大会を楽しむ

編集部

国立学園小学校の特徴的な仕組みとして、一般的なPTAとは異なる「後援会」という組織があると伺いました。後援会の存在も、児童の自主性に影響しているのでしょうか。

佐藤校長

そうですね。国立学園小学校には後援会という独自の組織があるのですが、学校主体で保護者に何かを依頼するのではなく、後援会が主体となって活動しています。

例えば保護者同士で悩みを語り合う場に先生も同席してほしい、物づくり教室を開催するので来てほしいなどの働きかけが後援会からあるんです。低学年の内から受験情報を共有してほしいとのご要望を受け、幼稚園の保護者も参加できる「中学進学説明会」の実現に至っています。後援会独自の合唱サークルもありますね。

編集部

児童の学校生活だけでなく、保護者による後援会活動でも自主性が重視されているのですね。

佐藤校長

はい。保護者の皆さまが得意なことややりたいことに応じて、自主性を発揮してくださっています

保護者との関わりに関してはとてもおもしろい取り組みがあって、授業参観の後に我々教員と後援会の皆さまが対戦する「ミニ運動会」を実施しているんですよ。

編集部

教員と保護者の方による運動会はとても珍しいですね。

佐藤校長

はい。ミニ運動会などのイベントを通じて、保護者の皆さまと良い関係を築けていると思います。

編集部

保護者も積極的に活動する国立学園小学校のスタイルが、児童たちの自主性を育む1つの要素になっているように感じました。

国立学園小学校からのメッセージ

国立学園小学校校長・国立学園附属かたばみ幼稚園園長の佐藤先生

▲今回お話を伺った国立学園小学校校長・国立学園附属かたばみ幼稚園園長の佐藤先生

編集部

最後に、国立学園小学校に関心のある学生や保護者の皆さまに向けてメッセージをお願いします。

佐藤校長

国立学園は幼稚園と小学校までの学校ですから、お子様に「後で何とかなる」という指導は絶対に行いません。在学中にしっかりと児童と向き合い、気になることがあれば家庭と一緒に解決し、児童の強みを伸ばせるよう常に情報交換しながら見守っています。教育熱心な先生方ばかりですから、安心してお子様を預けていただければと思っています。

小学校のうちに多様な取り組みを行いますから、中学・高校と進学し、社会人になってからも、学びを発揮できる土台が形成されます。児童の個性に合わせて、それぞれがのびのびと成長できる学校です。

緑豊かで児童が思いっきり体を動かせる自然環境も、成長を促す一助になっています。児童には「どの木でも登っていい、でも怪我をしたら自分の責任だからよく考えて遊ぶんだよ」と伝えています。普段の遊びでも、生徒の自主性を大切にしているんです。

ぜひ一度本校に足をお運びいただけたらと思います。

編集部

今回の取材を通して、名門進学校と名高い国立学園小学校の進化や、受験勉強に留まらない一生ものの自主性を身につける多様な教育プログラムについて知ることができました。ありがとうございました!

国立学園小学校の進学実績

国立学園小学校は、全児童が中学受験に取り組みます。全員が同じ目標に向かって努力する中で、児童・保護者・教員が一緒になり、一人ひとりに合った進路選択を行っています。

過去5年間では、麻布中学校、開成中学校、灘中学校、大妻中学校、青山学院中等部などの難関校に合格者を輩出しています(2023年3月時点)。

公式:国立学園小学校「進路指導」

国立学園小学校の保護者の口コミ

最後に、国立学園小学校の保護者の口コミをご紹介します。

(保護者)文武両道で、良く学び良く遊ぶ。運動にもかなり力を入れています。勉強や運動だけではなく、全力で遊びます。木登りや泥遊び、虫取り、アスレチックなど、自然の中でたくさん遊び、体力もつきます。

(保護者)「自ら考え自ら学び自ら行動する子供」を理念にしている学校。学校に毎日提出する自学ノートのために色々調べるようになりました。学校が様々なことを子供達に任せているので成長できたのだと思います。

(保護者)昭和の時代の古き良き小学校の文化が漂う学校です。もちろん現代化した英語やIT教育などもありますが、昔の行事、必死に競争する運動会など、親世代からすると懐かしさを感じるシーンもあります。本気で悔し泣きをする行事がある学校は素敵だと思います。

勉強以外の豊富な体験学習や、児童の自主性を高める教育スタイル、本気で行事に取り組む姿勢などを高く評価する声が複数見つかりました。

国立学園小学校へのお問い合わせ

運営 国立学園小学校
住所 東京都国立市中2丁目6番地
電話番号 042-575-0010
問い合わせ先 https://www.kunigaku.ac.jp/elementary/contact/
公式ページ https://www.kunigaku.ac.jp/

※詳しくは公式ページでご確認ください