中学受験に興味があるお子さんや保護者に向け、注目の学校を取り上げる本企画。この記事では、神奈川県横浜市の「公文国際学園中等部・高等部」について紹介します。
1993年に創立した同校は、共学の中高一貫校です。「公文」という学校名からも分かるように、朝学習・放課後学習には自分のペースで進められる公文式を導入しています。生徒の自主性を大切にしており、型にはまった制服・校則はありません。探究活動の内容から修学旅行の業者選びなど、生徒が考えて判断する機会がたくさん設けられています。
今回は、広報・渉外部長の亀井先生と広報担当の野崎先生、中学3年生の担任で社会科を教えている大山先生にインタビュー取材し、同校の教育理念や探究活動、グローバル教育などについて詳しく伺いました。
この記事の目次
公文国際学園の「自由と自立の精神」を重視した教育
▲取材にご対応いただいた野崎先生(左)、亀井先生(中)、大山先生(右)
最初に、公文国際学園中等部・高等部の教育理念をお聞かせいただけますか?
本校の教育理念は、生徒1人ひとりの可能性を伸ばし、国際社会で活躍する人材に育てることです。特に「自由と自律の精神」を重視し、生徒たちの教育にあたっています。
世界を舞台にアイデア・能力を発揮するためには、「自分で考えて行動する力」が欠かせません。自分の意思で決める経験が責任感を生み、「もっと考えを伝えてみよう」という意欲につながります。
そのため本校では、授業や行事を含めた学校生活で、生徒自身が選択・判断・行動する機会をたくさん設けています。例えば、本校には制服がありませんが、これも「自由と自律の精神」に関係しているんです。
制服が決まっていないと、生徒たちは毎日「学校に何を着ていくか」を考える必要がありますよね。制服がないことで、決められたものに従うのではなく、自分でふさわしい服を選択・判断する力が鍛えられるんです。
私は現在中学3年生の担任をしていますが服装はさまざまで、冬に半袖・短パンで登校する生徒も少なくありません。一方で始業式・終業式といった正式な場では、多くの生徒が襟付きの服を着てきたり、ジャケットを羽織ったりしていますね。自由といっても、TPO(とき・場所・場面)を考えて、その日の服を決める生徒が多いです。
中にはジェンダーフリー(※)な服装を着て登校する生徒もいますが、他の生徒たちが「なぜその服を着ているの?」と指摘することはありません。気をつかって触れないわけではなく、他人の選択について尊重するのが当たり前になっているようです。
(※)性差に捉われないこと
校則の代わりに「生徒憲章」を提示。それぞれの個性を認め合う校風
▲弓道部の生徒たち。生徒たちは個性が尊重される環境の中、勉強や部活、またそれ以外の活動に励んでいる
御校には校則がないそうですが、これも生徒さんたちの選択・判断を促すためなのでしょうか?
そうですね。ただ、校則がないからといっても、何をしても許されるわけではありません。日本には憲法があるように、本校には「生徒憲章」があります。この生徒憲章は、本校の教育理念を支えるものとなっています。
「人としての誇りを持ち、しあわせに生きる権利を持っている」「ひとりひとりの個性を尊重される権利を持っている」などの生徒の権利を保障し、権利を行使する責任を求めています。
生徒憲章にも記載されていますが、校長がよく生徒たちに対して「異質の他者を認める」という話をします。生徒たちの間にも多様性が根付いているので、違う価値観の人を攻撃する雰囲気はあまりありません。
もちろん入学して間もない中学1年生ではそれなりに意見がぶつかることもありますが、中学3年生の頃にはうまく折り合いがつけられるようになってきます。
生徒の意思に寄り添う!公文国際学園の探究学習
公文国際学園の自主性を尊重する教育は、中等部・高等部の探究学習にも現れています。具体的にどのような取り組みをしているのか、お話を伺ってみましょう。
現地で見て、聞いて学ぶ。中学校の「日本探究」は体験重視
▲日本文化を学ぶために柿の葉寿司をつくっているようす。体験を重視するのが同校の特徴だ
公文国際学園では生徒の自律性を育てていくということでしたが、関連する取り組みはどのようなものがありますか?
本校は、中等部・高等部ともに生徒主体の探究学習に力を入れているのが特徴で、その中で生徒の自主性や積極的にアイデアを出すような積極性も培われると考えています。
具体的には、中1・中2は基礎を作る時期ですので、段階的に探究の準備を進めていきます。例えば、中1では「インタレストスタディーズ」というプログラムでテーマに沿った企画に5日間集中して取り組み、自分の興味・感心を掘り下げます。
中3になると、3泊4日の「日本探究」というイベントがあります。これは、2023年度までは「日本文化体験」という名称で、和傘制作や柿の葉寿司づくりなどの伝統文化を体験し、理解していくという内容でした。ただ、2024年度からはその枠を外し、さらに範囲を広げています。
その結果、生徒からは日本探究で扱いたいテーマとして「日本の建築」「戦争と平和」など、いろいろな案が出てきましたね。戦争と平和をテーマにしたグループからは、「広島県に行きたい」「自衛隊の方々に連絡して、お話を聞いてみたい」など、活発な意見が飛び交っています。
また、もちろん地域の産業やビジネスに興味を持ったなら「自動車産業の未来」というテーマで愛知県豊田市に行ってもいいですし、自由度はかなり高いですね。もちろん日本の文化に興味がある生徒は、これまでのように伝統文化について調べることも可能です。
▲体験した後はみんなの前で研究結果を発表する。こういった機会を通してプレゼンに慣れていく
さまざまな体験ができる機会があるのですね。御校の独自性は、どんなところにあらわれていますか?
とにかく、生徒の意志をできる限り反映させることは公文国際学園らしさといえるかもしれません。
たとえば日本探究は宿泊型の取り組みですが、その行き先選びについては、生徒全員の希望に応えることはできませんよね。それでどうするかというと、プレゼンで「その場所に行きたいという思い」を発表し、中3の全員が投票することで、最終的な6コースを決めます。
教員は基本的に票を入れないので、私たちが「この場所になるんじゃないか」と予想した行き先が外れることも少なくありません(笑)。それだけでなく、旅行業者も生徒たちが選びます。業者の方々に生徒たちの前でプレゼンをしてもらい、こちらも生徒が投票をおこないます。教員はあくまでもサポート役として、生徒たちの選択・決断を見守ります。
高校の「プロジェクトスタディーズ」では、主体的に学ぶ力を伸ばす
▲社会科を担当する大山先生の授業風景
探究学習について、先ほどは中等部の取り組みについてお話を伺いました。高等部ではいかがでしょうか?
中学校はグループ学習が基本ですが、高校からはより主体的に学ぶ力を養うべく「個人」にフォーカスしていきます。
中でも高校1年生を対象にした「プロジェクトスタディーズ」(※)は、個人で興味のあるテーマを決めて研究し、研究成果をまとめて表現祭(文化祭)で発表するというプログラムです。教員がサポートするゼミ形式で研究を進めていきます。
(※)プロジェクトスタディーズの実施時期について、2025年度からは高2に変更予定
また、これまでは発表方法が論文に限定されていましたが、2024年度からはプレゼンテーションや作曲といった別のアウトプットも認めています。
発表の選択肢が広がる分、オリジナリティあふれる発表になりそうですね。過去のプロジェクトスタディーズで、印象に残った発表テーマを紹介していただけますか?
現在、高3で生物部に所属している女子生徒の、「海綿の抗菌作用」についての研究発表が心に残っていますね。
テーマの難しさはさることながら、彼女の研究意欲に感心しました。学校の理科室で実験するほか、海や川に出向いて実地調査もしていましたし、生物教員から紹介を受け、Zoomやメールなどを活用して大学の先生からアドバイスを受けながら、研究関連のコンテストにも挑戦していました。
一方で、私はクオリティの高さだけが全てではないと考えています。質を追求すると、どうしても「これをやってほしい」という学校の押し付けが入ってしまうんです。そうではなくて、生徒自身が興味のあることを探究し、何らかの気づきを得ることが大切だと思います。例えば、好きなことを調べていくうちに、「そこまで好きではないかも」と気づくことも立派な発見です。
ほかには、文系・理系の選択で悩んでいるという理由で、「文理選択」を研究テーマにした生徒もいました(笑)。自分自身を研究対象にする発想も、自由度が高いからこそ生まれるのだと思います。
グローバルに活躍する能力を育む模擬国連プログラム
▲カタール模擬国連に参加した生徒たち。2023年度には学校を代表してカタールの会議に参加した
御校は2002年ごろから、模擬国連プログラムを続けていらっしゃいますよね。実際に、生徒の皆さんが海外の会議に参加するのでしょうか?
そのとおりです。本校は年に2〜3回のペースで、生徒たち(中2以上の希望者から選抜)がオランダ・シンガポール・カタールなどで開催される模擬国連に参加しています。2020〜2022年度は新型コロナウイルス感染症で渡航できなかったものの、2023年度にはカタールへの訪問が実現しました。2024年度からは本格的に、模擬国連への参加を再開させていく予定です。
模擬国連では、生徒1人ひとりが国の代表者として議論し、課題解決のためのプロセスを体験します。そして、決議案を他国と共にまとめます。そのために、他の国の代表者と英語でコミュニケーションを取りながら賛同者を集める必要があるんですね。そのため、グローバルな視点で物事を考える力や、相手に意見を伝える英語力が求められます。
海外の模擬国連はかなりレベルが高いため、準備プログラムを作成して参加者たちをサポートしています。具体的には校内で日本語と英語の模擬国連を1回ずつ実施し、段階的に生徒たちの交渉力や言語力を鍛えているところです。2回目にあたる英語の模擬国連には他校の生徒さんも呼び、参加者たちに緊張感を味わってもらいます。
▲校内の「校内模擬国連」では、英語での議論にも挑戦する。他校の生徒と英語でやり取りする場面もある
この準備プログラムは、先生たちの主導で行われるのでしょうか?
模擬国連に限らず、学校行事では生徒たちが前面に出るのが本校の伝統です。先生たちは生徒たちの意向を尊重し、うしろからそっと支えます。具体的には、生徒たちで構成される実行委員を中心に、校内模擬国連の進行を含めたルールを決めていくんです。
共同生活で絆を深め、人間力を育む。公文国際学園の寮生活とは
▲学習スペースが確保された寮。集団生活を送る中で、人間として成長していく
公文国際学園中等部・高等部は、「寮教育」を柱のひとつに掲げていらっしゃいますよね。寮生活を導入している意図をお聞かせいただけますか?
バックグラウンドが異なり、それぞれ違う価値観を持つ生徒たちが共同生活を送ることで、成長してほしいからです。本校の校長もよく説明会などで「価値観を混ぜ合わせることで成長していく」と話しています。
中1・中2のうちは4人部屋で活気がある一方、思いどおりになることばかりではありません。違う考え方を持つ人と生活すると、少なからず葛藤が生まれます。だからこそ、お互いに意見を伝え合ったり、妥協点や解決策を探ったりしながら、人間性が磨かれていくんです。
現在、寮生は全校生徒の2割ほどですが、そのうちの半分は神奈川県内をはじめとする近隣地域に住んでいる生徒が占めています。残りの半分は、北海道から沖縄県まで、遠方に実家がある生徒です。中には海外で生活していた帰国子女もいるので、寮自体が多様性を実感する環境だといえます。
「いきなり寮に入るのは不安」という場合、体験してみることは可能ですか?
もちろんです。中1の4〜7月(前期)と9〜12月(後期)に、希望制で寮の体験プログラムを実施しています。4か月間、寮の生活を体験し、「これならやっていけそうだ」と感じて正規の寮生になるケースも多いですね。
中1から高3まで受け持った卒業生を振り返っても、寮生同士の関係はまさに家族のようでした。例えば志望校に合格した寮生がいれば、みんなが自分のことのように喜ぶんです。6年間、ほぼ毎日一緒にご飯を食べ、勉強する中で、家族と変わらない深い関係を築いていくのでしょうね。
保護者の方からはよく、「寮で生活するようになってから、身の回りのことができるようになった」との喜びの声をいただきます。寮生活を通して洗濯・掃除などの家事スキルが身に付くので、帰省した際の成長ぶりに感激される方もたくさんいらっしゃいます。
公文式で自主学習力を伸ばす!公文国際学園の進学実績
▲朝学習の公文式風景。タブレットを活用して自分のペースで学習を進める
公文国際学園中等部・高等部の大きな特徴は、やはり「公文式」だと思います。学校生活の中で、どのように公文式の学習を取り入れていらっしゃるのでしょうか?
朝学習や放課後学習に、公文式の学習方法(※)を取り入れているのが本校の特徴です。
(※)学年や授業の進度にとらわれず、個別の学力に合わせて学ぶ。同校では数学・英語・国語の3教科が対象
説明会でもよく「公文式で授業をするんですか?」と質問されますが、授業の中では全く公文式を行いません。まちの公文式教室が学校に併設されているイメージで、あくまでも自主学習のサポートとして公文式を導入しています。もちろん、公文式の経験がないお子さんにも入学していただけます。
公文式のメリットは学年の枠にとらわれず、自分のペースで学習を進められることです。理解度に合わせて、上の学年の学習内容にもどんどんチャレンジできます。
自主学習とのことですが、参加は任意なのでしょうか?
中1・中2のうちは必修ですが、中3以降は自由参加です。卒業するまで学習できるので、高3になってからも公文式に取り組む生徒もいます。やはり公文式を続けている生徒は、その多くが大学入試でも志望校への合格を勝ち取っていますね。
なお、2023年度の卒業生だと、東京大学・京都大学・大阪大学・筑波大学といった難関国立大学にも進学しています。私立大学を選ぶ生徒も多く、早稲田大学に25人以上、上智大学に20人以上、慶應義塾大学に10人以上が合格しました。そのほか、医学部系の大学や海外大学に進んだ卒業生もいます。
公文国際学園中等部・高等部からのメッセージ
公文国際学園中等部・高等部に興味をお持ちのお子さんや保護者に向け、メッセージをお願いします。
本校では、校内を歩いていると自分からあいさつをしてくれたり、友達どうしで議論している生徒の姿をよく見かけます。学校生活の中で生徒たちが選択・判断する機会をたくさん設けている分、大人とも対等に話ができる生徒が多いですね。
先日、校内のイベントにゲストをお呼びしたのですが、大人でも緊張するぐらいに威厳のある方に対して、生徒会の子たちは気さくに話しかけていたんです。ゲストの楽しそうな姿を見て、こちらが物怖じしないことが大切なんだと教員側も再確認しました。
自分で考えて行動する力を身につけたい、そして大人とも堂々とコミュニケーションを取れるようになりたいというお子さん・保護者には、きっと満足していただけると思います。
私が担任としていつも思うのは、公文国際学園には本当にいろんな生徒がいるということです。校則がなくて生徒憲章をみんなが守るという学校ですから、多様性を維持していくことを全員が肌で理解しているんですよね。「異質の他者」を認めるという学校の方針を、体現してくれているのだと思います。
一人ひとりキャラクターも違って、すごく積極的に発言する子もいれば、一歩引いて気を遣ってくれる子もいます。とても面白いコミュニティができているので、ぜひその一員になっていただければ嬉しいです。
▲ビーチバレーのコートがあるのは全国的にも珍しい。全国大会にも出場し、強豪として知られている
お話しできていなかったこととして、弓道部やバレーボール部(※)をはじめとする部活動も活発であることは伝えたいですね。だからといて勉強をおろそかにするわけではなく、部活で完全燃焼した生徒は受験にも全力投球して、良い結果を残しています。
(※)中学校、高校ともにビーチで活動している
本校に興味を持ってくださった方は、ぜひ一度来校して生徒たちの様子を見ていただきたいです。5月の体育祭や10月の表現祭(文化祭)は校外の方も参加していただけるので、ぜひ親子そろってお越しくださいね。
お話からも、自分から行動する生徒さんの姿と、個性を認め合う温かな校風が伝わってきました。御校の「自由と自律の精神」が、生徒の皆さんにしっかりと浸透していることがわかります。
本日は、貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!
公文国際学園中等部・高等部の在校生・保護者からの口コミ
▲広い敷地にはさまざまな施設・設備が揃う。食堂の焼き立てのパンは生徒に大人気!
最後に、公文国際学園中等部・高等部の在校生・保護者から寄せられた口コミを紹介します。
口コミからも、先生たちの温かなサポートのもとで、のびのびと生活する生徒たちの姿がうかがえます。そのほか、「自主学習の習慣が身についた」と、公文式の学習サポートを評価する声も見られました。
公文国際学園中等部・高等部へのお問い合わせ
運営 | 公文国際学園 |
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住所 | 神奈川県横浜市戸塚区小雀町777 |
電話番号 | 045-853-8200 |
公式サイト | http://kumon.ac.jp/k-gakuen/kokusai/ |
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