「開智所沢中等教育学校」が実践する「探究する道徳」が育む広い知見と柔軟な思考|中高一貫校

本記事では埼玉県所沢市にある私立学校「開智所沢中等教育学校」を紹介します。

2024年4月開校の開智所沢中等教育学校は、学校法人開智学園を母体とする中高一貫校です。

「AIと共生する未来を創る」を教育理念に掲げる同校は、開智学園の質の高い教育と国際標準の学びをもとに、「探究型の学び」、「世界に通用する英語の学び、」「最新のICTを活用した授業」、「探究型のフィールドワーク」など未来に向けた特色あるカリキュラムを展開しています。

本記事では校長代理の小野正人先生と広報主任の太田渓介先生、1期生にあたる生徒2名にインタビュー取材を行い、開智所沢中等教育学校の環境や特徴的なカリキュラム、校風などを詳しく教えていただきました。

2024年4月開校の「開智所沢中等教育学校」は東京都から一番近い私立校

開智所沢中等教育学校の校舎

編集部

開智所沢中等教育学校は2024年4月に開校したばかりとのことですが、生徒や地域住民からはどのような声が届いていますか?

小野先生

おかげさまで出願者の総数が7,900人を超え、多くの生徒や保護者、地域のみなさまから支持をいただいていると感じています。生徒とわれわれ教員が一緒になって学校を創っていけることが、支持を得られた1番の理由と思われます。

加えて、新設校ではあるものの、全くのゼロから学校を作るのではなく、社会的評価を得ている開智学園が培ってきたグローバル教育・探究的な学びを始めとした教育内容を継承していることも、支持を得られた理由の1つと分析します。

また、生徒からのアンケートを紐解くと、都内から通いやすい武蔵野線沿線という立地も大きく関係していることがわかりました。

開智所沢中等教育学校校長代理の小野先生と生徒たち

▲開智所沢中等教育学校で校長代理を務める小野先生(写真中央)と生徒たち

東京都から最も近い私立校である当校の生徒は、半数以上が都内から通学しています。また、広いグラウンドを持ちにくい都内の私立校に比べ、敷地内に広い体育館やグラウンドを有していることも出願の理由と思われます。

加えて、新設校とはいえ、これまで培ってきたいわゆる開智学園のブランド力やグローバルな教育内容が、社会的に評価を得ていることも出願数につながったと分析します。

志望理由はきれいな環境とグローバル教育。1期生として自由に発言できる

開智所沢中等教育学校1期生の高根沢さんと高木さん

編集部

生徒さんに伺います。開智所沢中等教育学校を志望した理由についてお聞かせいただけますでしょうか。

高根沢さん

当校を志望した1番の理由は新しい学校だからです。他にも目指していた学校があったのですが、校舎がきれいな学校で学びたいと思い、当校を志望しました。また、英語があまり得意ではない僕にとって、グローバル教育に力を入れていることも入学の決め手になりました。

施設の中で気に入っているのが体育館です。4階建になっていて、バスケットのオールコートが2面も取れます。設備が整うのはこれからですが、ハンドボールもできます。

高木さん

志望した理由の中で私にとって1番大きかったのは、先輩がいないことです。自分のやりたいことを自由に発言できるのが素敵だなって思いました。あとは、制服がかわいいことも理由の1つです。スカートが膝丈なところが気に入っています。

充実した設備・個性豊かな教師陣のもと、生きた英語を学ぶことができる

開智所沢中等教育学校の英語授業の様子

編集部

開智所沢中等教育学校入学から約1ヶ月がたちましたが、印象に残っている授業や学校生活についてお聞かせください。

高根沢さん

まず、環境面で入学して良かったと感じるのは、体育館のバスケコートが2つあること、校庭が広いことです。授業では小学校ではなかった技術がとても楽しいです。ゲームが好きな僕は、授業で実際にゲームのプログラミングを学べることに魅力を感じます。

他にも、高校生クイズでQuizKnockの伊沢さんと共に2連覇をした開成高校のメンバーの大場先生がいること、担任の太田先生のようにすごい研究をされている先生のもとで学べることも魅力です。

小野先生

高校生クイズの話題が出たので少し補足させていただくと、大場先生と太田先生を含む当校の教員4名が開智日本橋学園で教鞭を執っていたときに「高校先生クイズ」に出場し、準優勝という成績を残しています。

編集部

個性豊かな先生方のもとで学べることは大きな魅力ですね。高木さんにも同じ質問をさせていただきます。入学から現在に至るまでの率直な感想をお聞かせいただけますか?

高木さん

中学受験をするにあたり、母から私立中学校に入ると以前から英語を習っていて英語ができる人と、中学受験から英語学習に取り組んだ、あまり英語が得意ではない人に二分すると聞いていました。そのため、英語の授業には少し不安があったのですが、実際の授業はとてもわかりやすく、自分で単語を覚えるための勉強もしっかりできます。

また、英会話の授業では外国人の先生からネイティブな発音も学べるので、本格的に英語を勉強できることに楽しさを感じています。

AIと共生し、未来で生きる想像力、思考力、発信力を育む「開智所沢中等教育学校」

編集部

開智所沢中等教育学校では、どのような教育理念を掲げていらっしゃるのでしょうか。

小野先生

「AIと共生する未来を創る」を教育理念に掲げる当校は、未来で生きる想像力、思考力、発信力をもつ人間を育てることを目指しています。

その1つがAIやICTの活用です。授業では自身の可能性を広げることを目的に、日常的にAIやICTを活用できる環境を整備しています。また、道徳の「哲学対話」では、哲学の観点でAIやロボットを使いこなす力やAI・ロボットにはできない新しい力を生み出すことを学びます。

享受性や共感力が身につく「哲学対話」

開智所沢中等教育学校の哲学対話の様子

▲哲学対話は開智所沢中等教育学校の特徴的な授業の1つ。生徒1人ひとりの意見を尊重する授業となっている

編集部

「哲学対話」の具体的な授業内容について教えていただけますか?

高根沢さん

「ロボットに心はあるのか」を議題にディベートをする哲学対話について学びました。僕と高木さんは「心はない」のチームに入ったのですが、討論というよりも、答えのない問題をみんなで話し合う授業になっているので、論破するのではなく、結論も出す必要はありません。

編集部

「哲学対話」の目的や扱うテーマの特徴についてお聞かせください。

太田先生

高根沢君が話したように、「哲学対話」とは、生徒たちがさまざまなテーマについてじっくり考える授業です。テーマは「ロボットに心はあるのか」の他、「幸せとは何か」など、人によって意見が分かれる抽象的かつ、道徳的なテーマを扱います。

「哲学対話」はとにかく相手の考えを聞くことに重きをおき、享受性や共感力を身につけることを目的としています。

「ロボットに心はあるのか」というアプローチからAIとの共生を考えたとき、現段階では難しいのが実情です。では、実現するためには何が必要かを話し合うのが「哲学対話」です。ゼロから発想する力やコラボレーション力、相手をリスペクトする気持ちなど、AIにできない力を生徒自身が身につける大切さを学びます。

編集部

「AIとの共生」という言葉からは、プログラミングなど実践的な授業を想像しがちですが、御校ではまず、哲学的アプローチからAIやICTを使いこなす力を育まれているのですね。

小野先生

おっしゃる通りです。AIを使いこなし、共生をするには、ベースとなる考えや力が必要だと考えます。当校では道徳に限らず、さまざまなシーンで生徒自身が答えを見つけられる工夫をしています。

専門的知識を持った教員による生成型AIの基礎プログラミング指導

iPadを使った授業を受ける開智所沢中等教育学校の生徒

▲開智所沢中等教育学校では1人1台「iPad」を保有。授業に役立てている

編集部

今後、生成型AIについてより詳しく学んだり、PythonでオリジナルのAIを作成したりなど、実践的な授業の実施は予定されているのでしょうか。

太田先生

現時点でも課題に生成型AIを使ったり、課題に取り入れたりしています。また、技術の授業では生成型AIの基礎を学ぶことができます。

編集部

高木さんに伺います。技術の授業ではどのようなプログラミングをされたのでしょう。

高木さん

「ぷよぷよ」というゲームのプログラミングをしています。すでに発売されているゲームを作ることが目的ではなく、多くの人が楽しく遊べて、学習にも役に立つようなゲームに改造することを目標に取り組んでいます。

例えば、古墳時代を象徴する埴輪のような絵を組み込んだプログラミングをすることで、歴史への興味関心につなげる工夫などをしています。

太田先生

具体的にはコードが虫食いになっていて、自分たちでコードを変えながらプログラミングするなど、ユニークな発想でベースになるプログラミング的思考を育むことを目的としています。技術の教員がさまざまな企業の方とやり取りができる立場にあり、専門的なプログラミングの知識を生徒に共有できるのも当校の特徴です。

柔軟な思考を養う「探究する道徳」

編集部

開智所沢中等教育学校では「探究する道徳」に力を入れていると伺っております。その狙いについてお聞かせください。

小野先生

当校が掲げる「探究する道徳」は、1つのテーマを粘り強く探究し、自分自身や世界を深く掘り下げる姿勢を身につけることを目標としています。自分の考えや経験を共有したり、他の人の意見を聞いたりすることで考えが広がり、柔軟な思考が養われます。

具体的には座学による「哲学対話」の他、「探究型」と「ワークショップ型」があります。身近な話題をテーマに仮説や調査、分析、考察などを行う「探究型」は、調査結果を授業で発表し合うことでさまざまな考え方に触れ、知見を広げることを目的としています。

「ワークショップ型」では自己主張を取り入れた授業や、学校生活を送るなかで浮き彫りになった課題を、委員会活動と連携しながら協働的に学びます。

探究心を育むを2泊3日のフィールドワーク

編集部

今後予定している探究型の授業についてお聞かせください。

太田先生

直近では7月に千葉県大房岬でのフィールドワークを予定しています。

2泊3日で行うフィールドワークでは1日目は海でさまざまな生き物を見つけ、生徒が自分で疑問を発見します。その後、テーマを立てて観察、考察をし、翌日に検証と考察結果を発表します。

通常、時間がかかるこれら一連のサイクルを2泊3日の短い期間に凝縮して行うため、レクリエーションのような雰囲気はありませんが、当校の教育の核である「探究」を如実に表す授業になると思われます。

小野先生

あえてレクリエーションの時間を設けない予定ですが、移動中のバスや生き物を探す時間、部屋に戻った後の自由時間で楽しんでもらいたいと思っています。

全生徒が宣言する「夢」を教師が全力でサポート

開智所沢中等教育学校の入学式の様子

▲入学式では、生徒1人ひとりが自分の夢を宣言

編集部

開智所沢中等教育学校の入学式では、生徒1人ひとりが自分の夢を発表する「夢宣言」というイベントがあると伺っております。どのようなイベントなのでしょう。

太田先生

われわれ教員が生徒1人ひとりの夢を全力でサポートすることを目的に、入学式で夢宣言という時間を設けています。当校の入学式は来賓からの祝辞などはほとんどなく、主役はあくまで生徒です。式次第では夢宣言がメインとなっていることからも、生徒の夢を応援する当校の姿勢が表れていると感じていただけば幸いです。

編集部

高根沢さん、高木さんはどのような宣言をされたのでしょう。

高根沢さん

僕はバスケ部に入部し、大会で成績を残したいと宣言しました。1期生なのでまだ部としての活動はありませんが、すでに同じ志を持つ仲間がマネージャーを含め27名ほど集まっていて、これから自分たちの手でバスケ部をつくる予定です。

高木さん

私が入学式で発表したのは、「住んでる人が心地良いと思える家を作る建築士になる」という夢宣言です。小学生から目標としている建築士になるため、これから6年間、しっかり勉強していきたいと思っています。

前向きな姿勢で取り組む開智所沢中等教育学校の生徒

開智所沢中等教育学校の校長代理と生徒との対談の様子

編集部

開校から1ヶ月が経った今、生徒さんはどのように学校生活を楽しんでいると思われますか?印象に残っているエピソードなどがあればお聞かせください。

小野先生

来年以降、当校を受験するお子さんや保護者向けの学校説明会の際に、生徒に手伝いをお願いすると、多くの生徒が手を挙げてくれたことが印象に残っています。日曜日にもかかわらず、大勢の生徒が参加してくれたことがとても嬉しかったです。

また、塾の先生が当校を見学に訪れた時は、昼休みだったこともあり、その塾の出身生徒が歓声を上げながらその先生のもとに集まって、学校生活の様子などを前向きに楽しそうに話していたことも思い出されます。塾の先生の中には子供たちの元気な様子を見て涙ぐんでいる方もいました。

当校は私立校なので、生徒の中には当校が第1志望ではなかった生徒もいます。そのような生徒も前向きに学校生活に取り組んでいることに喜びを感じます。

編集部

学校生活の中で、生徒の前向きな姿勢が伺えるシーンなどはありますか?

小野先生

通常、校長室は生徒が出入りできない閉ざされた空間ですが、当校は校長室を「グランパズルーム」と呼び、ドアが開いているときは生徒が自由に出入りができます。おしゃべりを楽しむ生徒もいれば、やりたいことを自分の言葉で発言する生徒、なかには入口のそばにそっと立っているだけの生徒もいます。

このように、いろいろな性格、特徴を持つ生徒がいる当校ですが、気持ちのうえでは前向きな生徒が多いと感じています。

地域に新たな学校を設けることは、少なからず地域の方々にご迷惑をおかけする場合があります。当校も通学時のマナーなど、お叱りを受けることがありました。その際、1期生として学校を創るにあたって、どんな先輩になりたいかと生徒と話をしました。以降、学校側からあえてルールを設けずとも生徒はマナーとして自覚し、行動しています。

私自身、これまでさまざまな学校に携わってきましたが、この学校を預かることができ、本当に嬉しく思っています。

開智所沢中等教育学校の1番の“売り”は生徒

編集部

太田先生は高根沢さんと高木さんの担任と伺っております。おふたりを含め、御校の生徒の特徴をどのように感じていらっしゃいますか?

太田先生

進学フェアなどで「開智所沢の一番の売りは何ですか?」と聞かれたら、迷わず「生徒です」と答えています。取材に同席している2名の生徒の担任である私は、当日のお昼休みに急遽取材対応をお願いをしました。すると「はい」と快諾してくれました。このような前向きな姿勢こそが、生徒を一番の売りとする理由です。

また、授業の開始や終了時にチャイムが鳴らない当校は、自分たちで時間を守って行動することをモットーとしています。例えば、8時15分からの朝読書の時間は、教員が入らないとうまくいかないケースもあるのですが、当校では時間になると生徒が自主的に本を広げています。もちろん、私語もありません。

当校は都心にある立派でおしゃれな施設を持つ学校ではなく、普通の学校です。その普通の学校を生徒たちの色で染めてほしいと思っています。施設が未完成な部分が多いのも、生徒にも参画してもらいながら完成したいという理由です。

開智所沢中等教育学校からのメッセージ

開智所沢中等教育学校の生徒と先生

編集部

1期生である高根沢さん、高木さんから中学受験を検討している子供たちやその保護者に向け、メッセージをお願いします。

高根沢さん

当校には広い体育館やグラウンドがあります。勉強と両立しながら部活動に力を入れたいという人にぜひ、入学してほしいです。先生方も優しく、良い先生ばかりです。志望校に迷っている方はまずは一度、見学に来てもらえたら嬉しいです。

高木さん

2024年開校の当校は、設備面で足りない部分もありますが、とても楽しい学校生活を送ることができる環境が整っています。授業も座学だけではなく、探究型のように体験できる授業もたくさんあるので、楽しく学ぶことができます。ぜひ、一緒に開智所沢の伝統を創っていきましょう!

編集部

自分の目標を高く持ち、自分で考え決定し、行動する1期生がお手本となり、開智所沢中等教育学校の歴史や伝統が築かれていくのですね。本日はありがとうございました。

開智所沢中等教育学校の保護者の口コミ


最後に、開智所沢中等教育学校に寄せられた、保護者からの口コミをまとめて紹介します。

グラウンドが天然芝。とてもきれいです。

子供は毎日「学校が楽しい」と言って元気に通っています。

2024年4月開校の新設校なので、施設や実験器具などは徐々に揃えられていくと思われます。

初年度で出願者の総数が7,900人と聞き、来年以降はさらに倍率が高くなることが予想されます。

保護者の口コミからも、開智所沢中等教育学校の施設の充実さや、楽しい学校生活の様子が伺えますね。学校見学や校舎での受験が可能となるため、出願数はさらに上回ることが予想されます。入学を志望する場合は情報収集など、早めの対策が必須と言えるでしょう。

開智所沢中等教育学校へのお問い合わせ

運営 学校法人開智学園
住所 埼玉県所沢市大字松郷169
電話番号 04-2951-8088
問い合わせ先  問い合わせフォーム
公式ページ https://secondary.kts.ed.jp/

※詳しくは公式ページでご確認ください