ぽてん読者の皆さんに、いま注目の学校を紹介するこの企画。本記事では、東京・杉並区にある私立・中高一貫の男子校「佼成学園中学校・高等学校」の教育理念や特色あるカリキュラムを紹介します。
同校は、「平和な社会の繁栄に役立つ若者の育成」という建学の精神のもと、世界に通用する学力と人間性を養うためのグローバル教育に力を入れています。2021年度には国際社会で活躍するリーダーを育成する「グローバルコース」を開設したほか、2023年には海外大学への出願資格として世界的に導入されている英語試験「IELTS」の日本初の推進校に認定されました。
部活動では運動部も文化部も活発に活動しており、アメリカンフットボール部「LOTUS」は全国高校選手権大会で何度も優勝の経験を持つ強豪として知られています。
今回は、教頭の南井秀太先生と広報部の部長を務める小林計彦先生にインタビューさせていただきました。
この記事の目次
体験と学問を両輪とする「行学二道」を掲げる佼成学園中学校・高等学校
▲インタビューに応じていただいた教頭の南井先生(右)と広報部長の小林先生(左)
まず、佼成学園中学校・高等学校の建学の精神や教育理念について教えてください。
本校は「平和な社会の繁栄に役立つ若者の育成」を建学の精神とし、学力だけでなく情操豊かで健全な心と体を持つ「円満な人格」の形成を目指しています。
なお、学校を運営する佼成学園は宗教法人立正佼成会が母体となって1954年に設立された学校ですが、社会貢献の一環として学校教育を行っているため、基本的には学校生活において宗教に関連した儀式などを行うことはありません。
校訓に「行学二道」を掲げていますが、どのような思いが込められているのでしょうか?
「行」は体験による人格の向上を、「学」は学問による知識を表しています。体験と学問の両立に励むことで、「円満な人」になってほしいという思いが込められています。
体験と学問の2つを、人格形成の両輪だと考えているのですね。
そうですね。本校の過去の取り組みを振り返っても、勉強だけに注力すると生徒が「伸びきらない」という印象を持ったんです。そのため、さまざまな体験を通じて精神的に成熟し、自身の成長に合わせて伸びていってほしいと考えています。
佼成学園中学校・高等学校が取り組むグローバル教育の特徴
ここからは、佼成学園中学校・高等学校のグローバル教育についてお伺いします。まず、グローバル教育を推進する理由についてお話しいただけますでしょうか?
あらゆる問題や課題を国境なき地球規模で考えなくてはならない時代に突入した今、グローバルに活躍し平和社会に貢献できる人が求められています。
そのため、本校では英語教育や海外研修などを通じて考えを深め、広い視野を持ったグローバル人材を育成しています。
グローバル人材を育成するうえで必要となる英語教育にはどのような特色がありますか?
中学では英語の授業が週8時間あります。このうち、ネイティブ教員や海外移住経験のある教員と一緒に実践的な英会話スキルを習得する「Practical English」の授業は公立校の倍にあたる4時間を確保しています。
また、レベル別の英語授業にも力を入れています。例えば英語力が特に高い生徒向けには英語ネイティブ教員による取り出し授業「SEクラス」(Super English Class)を開講しています。
佼成学園中学校・高等学校には帰国生も多く在籍するということで、それぞれの習熟度に応じた授業がしっかりと受けられる環境があるのですね。
その通りです。本校は帰国生が90名ほど在籍する多様性ある学校です。英語圏で育った生徒のなかには中学生でも一般的な日常会話ができる子もいますので、それに応じた授業環境を用意しています。
周りの生徒はそんな姿に刺激を受けながら英語の学習に励んでいますし、帰国生が海外の学校で習ってこなかった国語や数学の内容を周りの生徒が教えてあげることもあります。お互いに触れ合い、教え合いながら相乗効果で伸びていくことができる学校だと言えます。
世界で活躍できるリーダーを育成する「グローバルコース」
▲グローバルコースでは、高校2年次に起業家精神を学ぶアントレプレナーシップ研修としてボストンを訪れ、現地の起業家を前にビジネスアイディアを披露する
2021年に新設した「グローバルコース」についても教えてください。
グローバルコースは、世界基準でものごとをとらえ、世界平和実現に貢献する真のグローバルリーダーを育成するための中高一貫のコースです。海外研修など多様な価値観に触れる機会を中学のうちから設け、国際社会で活躍するリーダーに必要な「グローバル・コンピテンシー」を育んでいます。
高校では起業家精神を育成するプログラムも導入しており、2024年1月にはロンドンで行われた世界最大のEdTech(※)のコンペティション「Global Edtech Startup Awards(GESA)」で発表を行いました。
(※)テクノロジーを活用して教育を支援する仕組みやサービス
どのような発表を行ったのでしょうか?
小学3、4年生向けの外国語教材アプリ「Diction」を提案し、その魅力などを英語でプレゼンしました。
メンバーの中には英語があまり得意ではない生徒もいたのですが、ロンドン行きが決まり英語力を高める必要に迫られたことで、英語の習得に積極的に取り組んでいました。
先ほどお話のあった中学生の海外研修についても、詳しい内容をご紹介いただけますか?
行き先については、その時の社会情勢などを見ながら生徒の安全を第一に考えたうえで決めています。過去には、中1がモンゴル、中2でフィリピンのマニラ、中3でタイを訪れました。
私はモンゴル研修に同行したのですが、移動式住居「ゲル」に泊まり、遊牧民族による羊の解体も見学しました。
モンゴルの遊牧民にとって羊は財産であり、お祝いの時などに自分の財産を分け与える意味で羊を解体します。
現地の方からは「命をいただくのだから血の1滴まで大切にする」という説明があり、生徒は貴重な羊の肉を食べさせてもらいました。生徒にとっては人生観を変えるような体験になったと思います。
異文化を深く知る体験を通じて、多様な価値観を理解する国際人を育てているのですね。「行学二道」という校訓のもと「体験」を重視する方針は、海外研修の中身にも現れているのだと感じました。
そのような経験を積んだグローバルコースの生徒さんは、どのような進路を歩むのでしょうか?
2023年度に初めての卒業生を出しましたが、早稲田大学や慶應大学といった難関私立に加え、東京藝術大学に合格した生徒もいます。
生徒が自らの進路をしっかりと選択できている証拠ですし、同じクラスでも異なる将来の夢に向かって切磋琢磨する環境を作ることができたと感じています。
2023年には日本初の「IELTS推進校」に認定
2023年7月に、御校は日本初の「IELTS推進校」に認定されたと伺いました。ぜひ詳しくお聞かせいただきたいです。
わかりました。まず、「IELTS」は世界の年間受験者数が350万人を超えるグローバルな英語4技能テストで、海外留学や就労、移住など多くの場面で英語力を測る試験として採用されています。
本校では目指す英語力の指標としてIELTSを採用しており、2021年に新設した「グローバルコース」の場合、卒業時までに帰国生はIELTSスコア6.5、一般生は英検準1級に相当する5.5の達成を目指しています。
IELTSを重視した英語教育を行うことは、海外大学への進学にも役立ちそうですね。
そうですね。本校には海外大学の進学に詳しい職員を配置しているのですが、進学の相談をしに来た生徒には「IELTSの結果が必要になる」といったアドバイスをしています。それを聞いた生徒はIELTSの必要性を感じ、自主的にスコアを上げる努力を行うようになります。
「将来のために必要だ」と生徒に気づかせ、自ら学習するように導いているのですね。
「teach」というより「coach」のアプローチと言えます。生徒には、チャレンジすることの意味を実感することで、将来に向かって自ら動き出してほしいと願っています。
佼成学園中学校・高等学校の部活動は運動部も文化部もハイレベル
佼成学園中学校・高等学校はトップレベルの部活動があることでも知られていますね。
クラブ活動は約30あり、男の子がやりたいと感じる部活はほとんどあると思います。
文化系の部活も活発で、例えば吹奏楽部は部員数が50人を超える規模です。オープンスクールや入学式などで吹奏楽が演奏するので、それを見て入部を希望してくれる生徒が多いようです。
▲吹奏楽部は、本格的なホールで定期演奏会を開催している
部活動に力を入れることは、教育面でどのようにプラスに働くとお考えですか?
好きなことに熱中することは、多感な時期を過ごすうえで大事なことだと考えています。部活動を通じて生徒は自分の力で頑張りながら、必要だと感じた時は教職員のサポートを求め、助言に耳を傾けるという姿勢が身についているように感じます。
全国優勝の常連、アメリカンフットボール部の強さの理由
体育系の部活ですと、アメリカンフットボール部が強豪校として有名ですね。強さの理由はなんでしょうか?
佼成学園中学校・高等学校のアメフト部「LOTUS」は、2016年から2023年までの8年間で5回、全国高校アメリカンフットボール選手権大会で優勝しています。
関東大会すら行けなかった時代もありましたが、コーチや監督が効率的で論理的な指導や、ケガをしない体づくりを推進してきた結果、どんどんレベルアップしていきました。
「なぜこれをするのか」といった論理的な説明をしてもらえると、部員も納得感をもって取り組みやすいですね。
その通りです。強豪校というと厳しい指導をイメージする方もいるかもしれませんが、本校のアメフト部の練習風景は驚くほど穏やかです。
体を使った練習だけでなく、iPadを使って相手チームの分析をしたり戦略を立てたりするなど、頭を使った戦い方もできるチームだと思います。
アメフト部の高いパフォーマンスの背景には、時代に合わせた指導があるのですね。
▲23区内で屈指の広さを誇る総合グラウンド
佼成学園中学校・高等学校の生徒が送る学校生活
ここからは、佼成学園中学校・高等学校の校風や学校行事についてお話を伺いながら、生徒がどのような学校生活を送っているのかを探っていきます。
生徒と教員の距離が近く、生徒が学校にアドバイスすることも
佼成学園中学校・高等学校の校風や、生徒さんについてどのような印象をお持ちですか?
非常に自由な校風で、先輩後輩の垣根もあまりなく、いろいろなタイプの生徒と接することのできる学校だと感じています。
また、失敗を恐れることなく個性を生かして伸び伸びと挑戦する子が多いので、お互いの強みや弱みを認め合いながら、良いところを伸ばしていけると思います。社会に出たらさまざまな人と関わることになりますが、本校のような環境で過ごせば自分と異なる意見も寛容な気持ちで受け入れたり、周りの意見を取り入れながら物事を進めることのできる人へと育つと思います。
生徒と教員の関係については、どのようにお感じですか?
本校は、生徒と教員の距離が近い学校です。教員に何でも言える関係なので、授業の内容で分からないことがあれば恥ずかしがらずに聞きに行くことができますし、生徒が学校に対して何かを提案することもあります。
先日、生徒が私のところへ来て、学校の広報活動について「もっとこうした方がいいんじゃないですか」というアドバイスをしてくれました。SNSやメディアへの発信の仕方について、改善した方が良いと感じたことを文書にまとめてプレゼンしてくれたんです。
そのような提案があった時、学校はどのように対応していますか?
しっかりと聞き、取り入れるべきところはしっかりと取り入れます。生徒たちは、学校が自分の発言に耳を傾け、変化につなげてくれるというイメージを持っているので、躊躇することなく提案してくれるのだと思います。
生徒と教員が信頼関係を築いているからこそ、何でも言い合うことができ、それがより良い学校づくりの面でもプラスに働いているのですね。
学年混合で行う中学体育祭や文化祭などの行事で、先輩の背中を見て学ぶ
学校行事の中で、生徒さんが最も楽しみにしているものは何ですか?
いちばん盛り上がるのは6月に開催する中学の体育祭ですね。1〜3年生で縦割りのチームを編成しカラー対抗で行うもので、最も白熱する競技は応援合戦です。応援の内容は3年生が中心になって考え、1〜2年生に教えながら本番に向けて練習しています。
また、文化祭もすごく盛り上がっていますね。体育祭と同様に、各クラスやクラブでの出し物や発表など、いろいろなプランを検討して自主的に取り組んでいます。
▲学校の文化祭である「渦潮祭」のようす。生徒たちのいきいきとした表情が印象的
異なる学年の生徒と触れ合うことで、普段とは違う学びもありそうですね。
体育祭では、中学3年生がリーダーシップを取って、同じチームの下級生を引っ張っています。入学間もない1年生からするとお兄さんたちの姿が頼もしく見え、「自分もああなりたい」と思うはずです。お互いに成長につながる良い機会だと感じますね。
友人や教員と一緒に合格発表を確認するのが伝統
高校では、大学入試の合格発表を同級生や先生と一緒に見ると伺いました。
合格発表の日は、生徒と教員がインターネット上で発表される合否を一緒に確認しています。合格が発表された瞬間は集まった仲間たちと一緒に喜びを分かち合っています。
6年間あるいは高校の3年間、友人や教員と共に密度の濃い時間を過ごし絆を深めてきたからこそ、このような伝統が生まれたのだと思います。
学校生活の集大成とも言える瞬間を、一緒に頑張ってきた仲間たちと迎えるのですね。佼成学園中学校・高等学校の生徒さんがいかに充実した学校生活を過ごしているかが分かるエピソードです。
佼成学園中学校・高等学校からのメッセージ
最後に、記事をご覧のお子さんや保護者の方に向けてメッセージをお願いします。
進路選びでは悩むこともあると思いますが、ぜひいろいろな学校に足をお運びいただき、ご子息に合う学校を選んでいただきたいと思っています。
ご家庭ごとに理想の生徒像や教師像をお持ちだと思いますので、実際に学校を訪れ、生徒がどのような学校生活を送っているのかをご覧いただき、ご検討いただければと思います。
本校は仲間と一緒にさまざまな活動を通じて、大きく成長できる学校です。ぜひ一度、学校説明会にお越しください。
ここまでお話を伺い、佼成学園中学校・高等学校の生徒さんが個性を認め合いながら伸び伸びとした学校生活を送っている様子がよくわかりました。
本日はありがとうございました!
佼成学園中学校・高等学校の進学実績
佼成学園中学校・高等学校では近年、難関大学への合格実績が伸びています。
2024年度の入試では、筑波大学や東京外国語大学、東京藝術大学、北海道大学など国公立大学に37名、早慶上理に64名、GMARCHに137名が合格したほか、医学部医学科にも8名の合格者を出しています。また、南洋理工大学やシドニー大学をはじめとする海外大学にも25名が合格しました。
学習サポートでは、午後8時まで自習室を開放し、東京大学や早稲田大学、慶應義塾大学などの難関大に在籍する学生がチューターとして受験のアドバイスや個別指導を行っているほか、長期休みには学習合宿を開催するなど、充実した支援を行っています。
■近年の進学実績(佼成学園中学校・高等学校の公式サイトより)
https://www.kosei.ac.jp/boys/carreer/passachieve/
佼成学園中学校・高等学校の卒業生・保護者の口コミ
最後に、佼成学園中学校・高等学校の卒業生や保護者の声を紹介します。
※卒業生の声は、佼成学園中学校・高等学校の公式サイトから一部抜粋しました。
https://www.kosei.ac.jp/boys/carreer/interview/
佼成学園中学校・高等学校へのお問い合わせ
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