新潟市立高志中等教育学校の授業風景

次代のリーダーを育む「新潟市立高志中等教育学校」のグローバル教育|中高一貫校

独自の教育や校風で注目を浴びる人気の学校を紹介する本企画。今回は新潟県新潟市中央区にある共学の中高一貫校「新潟市立高志中等教育学校」を紹介します。

同校は“新しい価値を生み出す人”への土台づくりに重きをおく、新潟市立として唯一の6年制の中等教育学校です。地域課題の発見・解決から始まり、海外の大学生との議論などに活動を広げていく探究学習や、少人数制の英語の授業などを通し、世界で活躍できるリーダーの育成を目指しています。

今回は、学校長の灰野先生と教頭の竹内先生にインタビューし、地域を超えて活躍できる人材を育むグローバル教育や同校が力を入れる探究学習についてお話を伺いました。

「社会に変革を起こせる生徒」を育む高志中等教育学校

新潟市立高志中等教育学校の体育祭

▲高志中等教育学校の人気行事である体育祭で奮闘する生徒たち

編集部

まずは、新潟市立高志中等教育学校の教育理念について教えてください。

竹内教頭

本校は「志の涵養を中核に据えた6年間の一貫した教育により、社会に変革を起こせる生徒を育成する学校」という理念のもと、人間性豊かで高い志やグローバルな視点を持ち、ワールドワイドに活躍できる次世代のリーダーを育てることを目指し、特色ある教育に取り組んでいます。

この理念は、新潟市が策定するスクール・ミッションとスクール・ポリシーに基づくものです。

編集部

“社会に変革を起こせる生徒を育成する”というミッションを達成するために、どのようなポイントに力を入れておられますか?

竹内教頭

日本だけを見ていては、社会に変革を起こせる人材や次代のリーダーを目指せません。我々は、新潟や日本に加え、世界にまで目を向け教育活動を展開していく必要があると考えております。

また、国内で働く外国人労働者に目を向けると、10年前と今でその人数は約3倍にも膨れ上がっており、こうした現状だけでも他言語を用いたコミュニケーションが取れないとリーダーや変革を及ぼす人物にはなれないことが分かります。

そのため、本校では探究学習で地域貢献に加えて世界を視野に入れた考え方を学び、グローバル教育でコミュニケーションに必要な英語能力を習得できるよう教育プログラムを組んでおります。

「課題解決×グローバル」で学ぶ高志中等教育学校の探究学習とは

高志中等教育学校の探究学習は、6年間かけて少しずつ学びを深めていけるよう工夫されています。どのような流れで実施されているのか、学年ごとの狙いや具体的なテーマ、オリジナリティ溢れる行事と合わせて紹介します。

地元・新潟の課題解決から世界に目を向けた学びへ、視野を広げていく

新潟市立高志中等教育学校の授業風景

▲高志中等教育学校での授業風景

編集部

御校の探究学習は、学年ごとにどのようなプランで進められているのでしょうか?

竹内教頭

探究学習は、中学年代に当たる前期課程のうちは総合的な学習として取り入れています。新潟市内全域の小学校から進学してきた生徒と共に、小学生の頃よりも広い視野で新潟市全体について学習していきます。

1年生は「新潟を知る」を目標に、企業訪問を通して地元を理解することに注力します。2年生では「新潟で学ぶ」を掲げ、職場訪問や職場体験で実際に現場に関わりながら課題に気付けるよう学びを深めていきます。

3年生の目標は「地域へ貢献する」です。それまでに気付いた課題を踏まえて改善点を模索し、これまでお世話になった職場の問題解決を図ります。SDGsや業務環境における課題解決を視野に入れ、新たに地域貢献型の起業プランを立てる取り組みもしており、完全な解決に至らずとも多くの生徒が視野を広げる経験を得ています。

編集部

高校年代に当たる4年生以上(※)の後期課程ではどのように発展させていくのでしょうか。
(※)同校では中学1年生から高校3年生までを「1年生〜6年生」と表している

竹内教頭

後期課程では、前期課程で広く新潟市を学ぶなかで明確化した、生徒一人ひとりの興味や問題意識に合わせて完全個別化で探究を深めていきます。個別化しているのは、1人1人の学ぶ意欲や興味関心を大切にしたいと考えてのことです。

さらには生徒一人ひとりが次代のリーダーかつ社会変革を起こせる人材になるために、世界にも目を向けていきます。コロナ禍以前は、5年生のフィールドワークとして東南アジアへの海外研修も実施しておりました。

灰野校長

本校の強みは、本来中学校と高校に分けられる学習を体系的に行えるところです。前期課程の総合的な学習と後期課程の総合的な探究をより一体化できるような仕組み作りに注力し、時間の使い方をより精緻に考え、今後もさらにアップデートしていきたいとも考えております。

新潟市立高志中等教育学校の探究学習

▲探究学習で得た成果を発表する生徒

編集部

生徒さんは実際にどのようなテーマで探究学習を進めているのでしょうか?ぜひ具体例もご紹介ください。

竹内教頭

世界的にインクルーシブ社会の構築が重視されていることに関心を持ち、スポーツクラブに所属していた特別な支援を要する友人に着目した生徒が印象的でした。

この生徒は、友人がクラブを辞めた辛い経験があることを知り、支援が必要な人もほかの人と同じように社会活動に参加できる環境を作りたいという想いでテーマを選んだようです。

この生徒は特別支援学校の教員を目指しながら、一方的に相手に寄り添うのではなく、相手からも自発的に社会に関われるシステム作りについて探究を進めています(2024年9月時点)。

本校では、「とにかく本物体験が重要、じかに触れあうことで得られる刺激がある」という考えのもと、この生徒が特別支援学校に行くサポートもしました。生徒は特別支援学校に通うお子さんと接し、自分にどのようなことができるかを学んでいる最中です。

加えて、特別支援学校に通う生徒の保護者の考えやさまざまな社会的な見方があることに触れ、自分の考えの甘さも含めて多角的に課題をとらえられるようになり、机上の学びだけでは得られない収穫があったようです。

探究の成果について、海外大学生と英語でディスカッション

新潟市立高志中等教育学校の校舎

▲高志中等教育学校に海外出身の大学生を招く「グローバル・スタディーズ・プログラム」を開催

編集部

現在は海外研修に代わる行事として、探究学習で力を入れている取り組みがあるそうですね。

竹内教頭

はい。近年の円安や物価高の影響で従来のように海外でのフィールドワークが実現できないなか、灰野校長の意見のもと、発想の転換で「行けないならここを海外にしてしまおう」という考えに至りました。

企業様の協力を得て、2023年度から海外の大学生や日本で学ぶ留学生を本校へ招き、探究の延長線上として、「グローバル・スタディーズ・プログラム(GSP)」というディスカッションの場を設けています。

2023年度はイギリスのケンブリッジ大学とオックスフォード大学から30名、さらに国内難関大学に在籍する留学生12名の合計42名が来校し、3年生と4年生を対象に各学年3日間ずつ英語でディスカッションをしました。

探究学習で得た課題や考えについて、英語で伝えて意見をもらったり、相手の国の状況について尋ねたりと、グローバルな視点から自身の探究を見つめ直す経験は、大いに刺激になったと思います。

編集部

灰野校長はグローバル・スタディーズ・プログラム(GSP)の意義についてどうお考えですか?

灰野校長

国が抱えるさまざまな課題や文化を比較検討する海外でのフィールドワークは、本校の教育課程において大事な位置づけにありました。実施できなくなったコロナ禍以降、私は常々「机上の学びだけでは足りないだろう」と考えていました。

新潟市立の唯一の中等教育学校として、子どもたちのためにもう少しダイナミックな取り組みに踏み出したいと先生方と相談し計画を立て、保護者の方々の理解を得て2023年度に継続して2024年度も実施に至っております。

普段耳にする機会が多いアメリカ英語だけでなくイギリス英語にも生で接し、肌の色も出身国もそれぞれ違う学生たちと関わった経験は、多様性への理解を深める良い機会となりました。2年連続でGSPを開催して、間違いなく子どもたちにとっての世界に対するハードルが低くなっていると実感しています。

また、私は海外へ興味を抱いている生徒に対し、可能な限り現地へ足を運ぶ機会をつくってあげたいと考えております。希望者向けの海外研修の実施や、文科省の「トビタテ!留学JAPAN」で海外経験を希望する生徒の後押しなど、できることは惜しみません。機を見てまた海外でのフィールドワークも再開したいですね。

新潟市立高志中等教育学校の5年生フィールドワーク

▲以前実施された5年生のフィールドワークの様子

編集部

グローバル・スタディーズ・プログラム(GSP)に参加した生徒さんたちの反応やディスカッションの様子についてぜひ詳しくお聞かせください。

竹内教頭

初回の2023年度は、生徒たちはとにかく驚いた様子でした。新潟で生活していると、ほとんど外国の方に会いません。それが、いろいろな国の方が一堂に集まるわけですから…。初日は目を合わせるだけで緊張したり、モゴモゴしたりしている生徒も多くいました。

しかしみんな順応性が高く、日を追うごとに伝わることの喜びを得ながらどんどん自信をつけ、最終日にはすっかり馴染んでいました。英語を通したコミュニケーションを心から楽しみ、英語を学ぶモチベーションがグッと高まったように感じます。

灰野校長

GSPでは学習量や経験値に合わせて3年生向け、4年生向けとそれぞれプログラムを用意し、各自で考えをまとめ、きちんと準備してから臨みました。特に昨年3年生としてGSPを経験した4年生は、前回うまく英語で伝えられなかった悔しさをバネに、スタート時から高い意識で会話していたように感じます。

3年生はこれまで市内のALTの方たちとの交流はありましたが、より年齢が近い大学生との関わりは初めてで不安な様子が見られました。しかし、上手に雰囲気を作ってもらい、打ち解けてからは4年生より盛り上がっていたかもしれませんね。学年ごとにレベルに応じた内容で、大変充実していました。

日本人には「以心伝心」という言葉があるように、多くを語らずとも相手に伝わると信じている部分がありますが、これからの時代は相手が何を言おうとしているかしっかりと聞き、自分が思っていることを正しく伝えようとすることも大事です。それを肌で感じ取ってもらえたように感じます。

理想を言えば、GSPを経て英語検定の合格者が増える、外語大学に行く人数が増えるといった変化があれば嬉しいですね。今後何年も継続し、いまの参加者が6年生になったとき、語学を活かして進学したいという声がどれだけ増えるか、楽しみにしたいと思います。

一人一人に手厚く指導する高志中等教育学校の英語教育

新潟市立高志中等教育学校の英語の授業風景

▲前期課程の英語では1クラスに2名の教員が配置されています。

編集部

御校は、英語教育にはどのように取り組んでいるのでしょうか?

竹内教頭

グローバル教育の一環として力を入れて取り組んでいます。英語力は次代のリーダーを担うために必要な能力のひとつです。大学入試で英語は必修科目であり希望する進路の実現に欠かせませんが、入試がゴールではなく、組織のリーダーとなった際にコミュニケーションを取るための手段として身に付けることを重視しています。

本校の英語科の授業は、例えば1年生から3年生の前期課程では週5時間です。基礎がしっかりと身に付くよう、40人学級に2名の日本人教員が入り手厚く指導しています。ALTが参加することもあります。

4年生の英語コミュニケーションⅠや論理・表現Ⅰという英語の授業でも手厚さを重視しており、本来1つのクラスを2つに分け、教員1名に対して少人数で授業を展開できるよう工夫しています。

また、2年生では、新潟市に配置されたALT全員が本校に一堂に会して丸1日英語を用いながらコミュニケーションを取るイングリッシュサマーセミナーも行います。

新潟市立高志中等教育学校のイングリッシュサマーセミナー

▲2年生のイングリッシュサマーセミナーのひとコマ

編集部

こうした授業を介して、生徒のみなさんの英語力が向上しているように感じますか?

竹内教頭

そうですね。1人1人の成長を見ると少しずつ底上げされていて、模試結果は学年を重ねるごとに良くなっています。また、数字に表れない部分にも注目いただきたいです。

テストの点数だけで見ると“英語が得意とはいえない生徒”も、授業や行事では笑顔で楽しそうにコミュニケーションを取っているんです。臆することなく他者へ自分の考えを表現することができるようになってきています。こうした意識の高まりは嬉しいものです。

灰野校長

新潟の人々は、県民性としてどこか奥ゆかしさを持っているものですが、これからの時代はインバウンドで海外から押し寄せる人々と積極的にコミュニケーションをとる姿勢や自己主張することも必要です。

先ほど紹介したグローバル・スタディーズ・プログラム(GSP)も語学研修ではなく探究学習という位置づけにあるように、英語は自分の考えを相手に伝えるための手段という考えのもと、コミュニケーションの根本を知ることに重きを置き授業を展開しています。

大学教授らから専門的に学ぶ高志中等教育学校の「土曜活用講座」

新潟市立高志中等教育学校の土曜活用講座

▲土曜活用講座に意欲的に参加する生徒たち

編集部

これまでご紹介いただいた探究学習やグローバル教育以外で、特色あるプログラムや人気の学習があればぜひ教えてください。

竹内教頭

「生徒たちにより貴重な経験をさせてあげたい」「本物の体験を提供したい」という想いからPTAが中心となって立ち上げた「土曜活用講座」を紹介します。この講座は地域教育コーディネーターが専門分野に造詣が深い方々を講師として招聘し、PTAボランティアのみなさんの運営で開講しています。

通常学習している教科・科目にとらわれない、より心豊かに生きていく、あるいはより深く学ぶための講座で、年に6回ほど実施しております。例えば連携協定を結んでいる大学の先生にご協力いただき、医療系の講座であれば座学に加えて、実際に大学生が使用する医療器具を装着させてもらうなど体験の機会も作っていただいています。

灰野校長

講師の方々のご専門の分野を中学生・高校生向けに噛み砕いて教えていただき、探究学習とも絡めながら、課題意識をより深められるようなテーマを設定いただくこともあります。

多様な業種の社長さんや技術職の方をお招きしたり、行政の方々のお力を借りて新潟市を眺めたときに見える課題を示していただいたりすることもあります。2023年度は本校の教師と生徒が中心となり、演劇を絡めて大きな声で笑うワークショップも開催しました。

2023年度からは、テーマに興味を持った保護者の方々にも受講してもらい、活動がかなり広がってきた実感があります。土曜日のため開催には難しさもありますが、学校説明会の場でも反応が良く、引き続き拡充していきたいと考えております。

高志中等教育学校からのメッセージ

新潟市立高志中等教育学校の灰野校長先生(左)、竹内教頭先生(右)

▲インタビューに応じてくださった灰野校長先生(左)と竹内教頭先生(右)

編集部

最後に、高志中等教育学校を目指す生徒さんやその保護者の方々に向けて学校からメッセージをお願いします。

灰野校長

本校は新潟市で唯一の中等教育学校として、課せられた「社会に変革を起こせる生徒の育成」というミッションにしっかりと応えていけるよう、日々教育実践を重ねています。本校を卒業して難関大学に進学している生徒も多数おりますので、そういった先輩の姿を見て在校生も一生懸命学校生活を送っています。

そして、私たちは、自分の夢を叶えたい、志を実現したいと思う人たちに多様な形で機会を提供できる学校を目指しています。「力を伸ばして世界に羽ばたいていきたい」「地元のために貢献したい」と強く願う人たちに、本校の入学を積極的に考えていただけたら嬉しく思います。

編集部

インタビューから社会に変革を起こせる人材の育成に真摯に取り組む姿勢と、先生方の熱意が伝わってきました。本日は貴重なお話をどうもありがとうございました。

高志中等教育学校の進学実績

新潟市立高志中等教育学校の進路指導の様子

高志中等教育学校では4年制大学を中心に進学を目指す生徒が高い割合を占め、2023年度の卒業生は84.6%が4年制大学への進学を果たしています。東京工業大学や北海道大学、東北大学、千葉大学といった国立大学をはじめ、慶応大学や早稲田大学といった難関私立大学に合格した生徒もいました。

詳細は高志中等教育学校の公式ホームページをご参照ください。
https://kohshichuto.city-niigata.ed.jp/custom4.html

高志中等教育学校の在校生・卒業生の口コミ

ここからは高志中等教育学校に通う生徒や卒業生からの口コミや評判を紹介します。

校内には自主学習できる場所が多くあり、特にテスト前は放課後に質問教室が開かれ、各教科の教員が分からないところを丁寧に教えてくれます。またどのクラスも個性があり、とても良い雰囲気です。体育祭では“高志リレー”というおもしろい種目があり盛り上がります。

勉強したい人にはもってこいの学校です。授業がとても楽しく、親身になって指導してくれる先生が多くいます。課題は多いほうかもしれません。高校受験がない分、大学受験や将来を視野に入れた学習に早くから集中できます。

リーダー気質の人や真面目で優しい生徒が多いように感じます。学習面は、週課題でこつこつと実力をつけることができ、テスト後には分析ノートで振り返ることもできます。テストは点数によっては補習がありフォローも丁寧です。

高志中等教育学校には在校生や卒業生から“勉強に意欲的な生徒が多い”“クラスの雰囲気も良い”といった口コミが多く寄せられていました。教師陣の学習面のフォローに関しても評判が高く、目標に向かって安心して学べる環境であることが伺えます。

高志中等教育学校へのお問い合わせ

新潟市立高志中等教育学校の校舎

運営 高志中等教育学校
住所 新潟市中央区高志1丁目15-1
電話番号 025-286-9811
公式ページ https://kohshichuto.city-niigata.ed.jp/index.html

※詳しくは公式ページでご確認ください