2025年共学部を併置!親和中学校・親和女子高等学校の変革と理数・探究学習の魅力|中高一貫校

注目の学校を特集するこの企画。今回は伝統校でありながら進化を続ける兵庫県神戸市灘区の私立中高一貫校「親和中学校・親和女子高等学校」を紹介します。

親和中学校・親和女子高等学校は1887年に開校し、140年近い歴史を持つ伝統校です。神戸市で最も古い女子校でありながら、2025年度からは共学部を併置するなど現在さまざまな改革が行われています。2024年度にはスーパーサイエンスハイスクール(SSH)(※)校に指定されており、理数教育や探究学習の分野においてこれまで以上に特色ある教育プログラムを展開していくことが期待されます。
※SSH…文部科学省が科学技術系人材の育成に特化した学校を指定する取り組み

今回はそんな同校の改革の内容や、理数教育、探究学習の特徴について、校長の中村先生、副校長の森上先生、入試広報部長の相宅(あいたく)先生に詳しくお話を伺いました。

約140年続く「親和中学校・親和女子高等学校」の教育理念

親和中学校・親和女子高等学校の高校3年性が文化祭でマイムマイムを踊る様子

▲親和の一大イベント文化祭。最後に有志生徒が踊り始めると、次第にその輪が大きくなり、やがて全校規模に!

編集部

まずは親和中学校・親和女子高等学校の沿革、そして教育理念を教えてください。

中村校長

本校は1887年(明治20年)に開校された、女子校としては神戸市で最も長い歴史を持つ学校です。校祖である友國晴子先生は女子教育が軽視される時代にあって、人間形成を第一に置き、国際社会で活躍できる女性の育成を志して教育を実践してきました。その教育理念は、137年大切に受け継がれています。

それが表現されているのが、開校から掲げている本校の3つの校訓です。1つ目が思いやりの心を表す「忠恕温和」、2つ目が耐え忍ぶ心を表す「堅忍不抜」、そして3つ目が誠の心を表す「誠実」。この3つの校訓は時代によって変わることのない本校の教育の根幹をなす理念として学校全体に浸透しています。

2025年共学部を併置!大きな転換点を迎える親和中学校・親和女子高等学校

親和中学校・親和女子高等学校の新制服を着る男子生徒と女子生徒

▲こちらが2025年からの新制服!

編集部

そんな歴史と伝統を持つ御校で現在さまざまな変革が行われているとのことですが、具体的に大きく変わる点を教えてください。

中村校長

まず最も大きな変革が、2025年度から共学部を設置するということです。

少子高齢化や多様性の進む時代の変化を鑑み、性別に関係ない教育環境が必要なのではないかというところから共学部の設置に至りました。完全に共学化するのではなく「女子部」として伝統ある親和女子を残しつつ、2025年度からは男子生徒も加えた共学部を併置する、新たな形で改めてスタートを切ることになります。

現在は共学部設置に伴い、校舎の大改修も行っています。生徒の意見も取り入れながら机や椅子の刷新も予定するなど、2025年度に新たなスタートが切れるように環境を整えているところです。理数系が好きな男子生徒も受け入れながら、新たな体制の中で我々も一緒に伸びていきたいと願っています。

もう1つ大きな変革として、2024年度から文科省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)校に指定されたことがあります。

このSSHを活用しつつ、中学校のコースを「スーパーサイエンスコース」「スティーム探究コース」「グローバル探究コース」に再編しました。「スーパーサイエンスコース」は理数系科目に重点を置いた教育を行うコース、「スティーム探究コース」は文理融合的なSTEAM教育を行うコース、「グローバル探究コース」は探究と国際教育に特化したコースとなっています。

ただし受験時点での細かいコース選択が難しいという背景もあり、2025年度からはスティーム探究コースとグローバル探究コースを統合して「探究コース」とし、「スーパーサイエンスコース」「探究コース」の2コース制となります。

探究コースの生徒は中学3年生時点でスティーム探究コースとグローバル探究コースのどちらかを選択できる仕組みです。また学びを深める中で興味の対象が変わることも想定されるため、2年生、3年生への進級時でのコース変更も可能となっています。

理系分野の強みを活かしつつ、新たなコースでは文理融合的な学びを展開

編集部

中学校の新しいコースでの学びにはどのような特徴があるのでしょうか。

中村校長

元々本校は昭和の時代から約半数の生徒が理系進学をするくらい、理数系分野に強みを持つ教育を行ってきました。SSH指定校となることで、その強みをさらに強化していけたらと考えています。

一方でこれからの時代に国際的に活躍できる人材となるためには、理系や文系どちらかに偏ることなく幅広い知識を身に付け、グローバルな視点や科学的思考を養っていく必要があります。そのため新しいコースでは「サイエンスマインド」「グローバルマインド」の両方を併せ持つ人材育成を目的に、文理融合・教科横断的な学びを目指していきます。

SSH指定校「親和中学校・親和女子高等学校」の今後の理数教育の展開

親和中学校・親和女子高等学校の「実験理科の様子

▲「実験理科」と銘打つ授業では多くの観察実験を中学1年生から行う

編集部

理数教育のテーマについて伺います。御校の理数教育の特徴や、SSH校としての理数教育の今後の展望を教えていただけますか?

相宅先生

親和中学校では以前から教科書に載っている実験をすべて行うなど、理科の実験を多く行ってきました。それも先生がやっているのを見るだけでなく生徒自らが実験を行うことで、理科への興味や関心を深めてきた歴史があります。

SSH校1年目となる今年度は理科の実験から一歩踏み込んで、ALT(外国語指導助手)が英語で理科の実験の説明を行うという科目融合の授業を行っています。英語や理科それぞれに苦手意識がある生徒も、実験を通じてどちらの科目の楽しさも見出せるということで生徒からの評判も上々です。

親和中学校・親和女子高等学校の「科学英語」の様子

▲「科学英語」は科学を英語で学ぶため、実験もALTと理科の教員がペアになって英語で実施

中村校長

SSH校として、今後は最先端の科学研究を行っている施設や大学機関との連携も想定しています。実際に今年の夏休みには高校2年生を中心とした希望者30名で東京、京都の大学の研究施設を訪れる「サイエンス研修」を実施しました。

研修ではお茶の水女子大学理学部を訪れて英語の講演を聞いたり、東京理科大学名誉教授の秋山仁先生の講演を聞いたりと、生徒にとって非常に貴重な体験となったようです。

親和中学校・親和女子高等学校の夏の東京研修の様子

親和中学校・親和女子高等学校の夏の京都研修の様子

親和中学校・親和女子高等学校の夏の京都研修の様子

▲東京研修でお茶の水女子大学(1枚目)、京都研修で京都大学理学部(2枚目)、地球環境学研究所(3枚目)を訪問

編集部

普段なら行けない場所、触れ合わない方と出会うことは、生徒の皆さんの変化や成長にとってどのような影響がありますか?

中村校長

今の時代、具体的な夢や将来の目標をすぐに決めるのではなく、時間をかけてじっくりと考える生徒が増えているように感じます。

本校にも「数学や理科が好き」という漠然とした気持ちを持っている生徒が多いのですが、SSHの取り組みを通じて多様な経験の機会を提供することで、そこに具体的な進路・職業の可能性を指し示すことができると考えています。

「こういう分野もあるんだ」「こんな職業もあるんだ」というさまざまな選択肢を知ることで、自身の好きという気持ち、興味・関心を具体的な将来の目標につなげていくきっかけになればと思っています。

親和中学校・親和女子高等学校のSSH全国生徒発表会の様子

▲夏に開催されたSSH全国生徒発表会では、指定1年目(実質4か月)ながら親和中学校・親和女子高等学校が代表生徒として発表!

中学校から全コースで探究!対外的な評価も高い取り組みも生まれる

編集部

続いて探究学習のテーマに移ります。親和中学校・親和女子高等学校では2024年度から「スティーム探究コース」「グローバル探究コース」と探究に特化したコースを創設されていますが、中学校の探究学習は主にそちらのコースで行うことになるのでしょうか?

中村校長

本校では探究コースに限らず全コースで探究学習を行っています。通常は高校に入ってから本格的に探究学習をスタートさせるのが一般的ですが、本校ではコース再編以前から中学校での探究学習を実践してきました。

中学1・2年生の「探究入門」、中学3年生・高校1年生の「課題研究入門」を経て、高校2年生で「課題研究」を行う一連のプロセスで探究の学びを深めていくのが本校の探究学習の特徴です。

高校2年生のときには探究学習の集大成として発表を行います。この探究学習の発表は、2年前から本校主催で近隣の私学4校合同での発表会としています。

SSH校として今後は学校外の方と協働したり、専門機関から鋭い視点での評価を受けたりする機会がより増えることが想定されるため、その前段階としてこの発表会を通じて学校外での発表や外部からの質問に答える経験を積んでもらいたいというのが狙いです。

親和中学校・親和女子高等学校の探究の授業の様子

▲中学1年生から「ラーニングコモンズルーム」で探究の授業やプレゼン発表の練習を行う

編集部

これまでの探究活動で印象に残っている生徒さんの取り組みはありますか?

相宅先生

本校の中学生が外部のビジネスコンテストで受賞した事例が印象に残っています。その生徒が提案したのが、故人のデジタルデータを閲覧できないという課題を解消するための「デジタル遺品整理」というビジネスアイディアです。

アイディアそのものも斬新ですが、それを伝えるためのプレゼンテーション力も高く、堂々と人前で伝えていたのが印象的でした。本校では人前での発表機会が多いため、人前で物怖じせずにプレゼンテーションを行うことができる力が培われているのだと思います。

中村校長

私が印象に残っているのは、麹菌と醤油を組み合わせて美味しい醤油をつくるという探究活動です。

その探究を行ったグループは、麹菌の発酵期間や醤油の種類を何パターンも組み合わせて研究を重ねていました。「美味しい」というのも個人の主観になるため、アミノ酸の量や糖度の数値で「美味しい」の定義をしたのも特徴的です。

この探究の取り組みは、全校代表として全国大会での発表も行いました。そこで名古屋市立大学医学部の先生の目に留まり、さらに研究を深めていけるよう関係する研究所の所長をご紹介いただきました。専門機関とのご縁をいただいたことで、今後のさらなる探究の発展が期待される取り組み事例となっています。

海外での「異文化探究研修」など、グローバルな探究学習も体験

編集部

中学校に新設されたコースで特徴的な探究学習はありますか?

森上先生

夏休みにはそれぞれのコースに応じた特別講座を実施しているため、授業以外の部分で探究学習を深められる機会があるのが特徴です。コース問わず参加可能な講座が多く、生徒にとってさまざまな体験ができる良い機会となっています。

また本校は中国や台湾、韓国、オーストラリアなど海外校とのつながりが多く、以前から交換留学などの形で交流を深めてきました。今後はグローバル探究コースを中心に、さらに異文化交流を活性化し、国際理解教育を進めていけたらと考えています。

実際に今年度の夏休みには、高校1年生までの生徒が参加できる韓国への「異文化探究研修」を行いました。そこにはグローバル探究コースの生徒よりも、スティーム探究コースの生徒の方が多く参加していたのが印象的でした。

多くの生徒が理数分野・国際分野での探究学習を深め、「サイエンスマインド」「グローバルマインド」の両方を育んでいくような環境をさらに整えていきたいと思います。

教科の授業にも探究的手法を取り入れ、学びに対する主体性を引き出す

編集部

その他にも御校の探究学習で特徴的な取り組みがあれば教えてください。

相宅先生

本校の探究学習で特徴的なのが、探究の授業だけでなく多くの授業で探究の視点を取り入れた“探究型授業”を実施している点です。

インターネットで何でも調べられる今の時代、教員から一方的に知識を教えるだけの授業では生徒の関心を引くことはできません。そのため親和中学校・親和女子高等学校では生徒たちが主体的にディスカッションし、フィールドワークなどで実際に調べる過程を通じて生きた知識を身に付ける、そんな探究のサイクルを取り入れた授業を志しています。

編集部

例えば相宅先生のご担当教科である国語ではどのような探究型授業を行っているのですか?

相宅先生

4、5人のグループをつくり、まずは教科書に載っている小説をそれぞれに読んでもらいます。ここで重要なのが、教員からは基本的に何も指示をしないことです。生徒一人ひとりがその小説を読んだ上で感じた疑問点や分からない表現を考え、それをグループ全体で共有していきます。

例えば先日の授業では、小説の中で出てきた「つぶれた菱形に切り取られた青空」という表現が分からない、というグループがありました。そういう共通の疑問から、生徒それぞれの考察を考えたり、他の小説に出てくる同類の表現を調べたりしながらその表現が意味するところの結論を導き出して発表を行っていきます。そして教員から最後に解説を加えまとめていく、という流れになっています。

当然普通に授業を行うよりも時間はかかるのですが、課題発見から調査、発表という探究のサイクルを導入することで生徒たちの授業に対する向き合い方が格段に変わります。

「今まで教科書の小説をこんなに深く考察したことはなかった」という意見もよく聞きますね。国語だけでなく数学の授業でも数式の検討をするなど、各授業でこうした手法を取り入れた授業を行うことで、生徒の学びに対する主体性やモチベーションを引き出しています。

親和中学校・親和女子高等学校からのメッセージ

親和中学校・親和女子高等学校の先生方

▲インタビューにご対応いただいた中村校長(左)森上副校長(中央)相宅先生(右)

編集部

最後に、親和中学校・親和女子高等学校での学校生活に興味を持った読者の方に向けてメッセージをお願いします。

森上先生

2025年度は親和中学校・親和女子高等学校として138年目となる年ですが、同時に共学部設置によって新たなスタートを迎える年でもあります。そんな新たな親和中学校・親和女子高等学校の1期生として、ぜひとも一緒に学校をつくり上げていけるような生徒さんに来ていただきたいと思っています。

相宅先生

現在さまざまな改革が行われていますが、その中でも変わることのない親和中学校・親和女子高等学校の一番の魅力は「生徒」です。親和中学校・親和女子高等学校には外から来た人に対して壁を設けず受け入れる“ウェルカム”な校風が学校全体にあります。

中学校からの一貫校ではありますが、高校から入学した生徒もすぐに馴染むことができ、卒業生もよく遊びに来てくれます。そんな優しくて温かい生徒が集まる親和中学校・親和女子高等学校にぜひ来ていただけると嬉しいです。

中村校長

共学部を設置して新たに男子生徒を募集するため、理数分野に興味がある男子生徒はぜひ親和中学校・親和女子高等学校に入学していただければと思います。もちろん男子に限らず女子生徒も、皆さんが好きな分野を突き詰められる設備や環境をしっかりと整えて待っています。

親和中学校・親和女子高等学校ならではの校風や教育環境の中で、人間的にも成長していただけると思います。

編集部

中村先生、森上先生、相宅先生、本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!

親和中学校・親和女子高等学校の進学実績

親和中学校・親和女子高等学校の正門に掲げる学校看板

インタビュー中にもあったように親和中学校・親和女子高等学校では女子校には珍しく理系大学への進学実績が多く、約半数が理系進学を選択しています。

また進学実績をみると、関西圏では大阪大学をはじめとする国公立大学、関関同立(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)をはじめとする有名私立大学への合格者を輩出しています。

またアジア圏やアメリカ、オーストラリアなど海外大学への合格実績が生まれてるのも特徴的です。

■親和中学校・親和女子高等学校の進学実績(公式サイト)

https://www.kobe-shinwa.ed.jp/guidance/results/

親和中学校・親和女子高等学校の生徒、保護者からの口コミ

ここでは、親和中学校・親和女子高等学校に寄せられた生徒や保護者からの口コミを一部抜粋して紹介します。

(在校生)活気のある生徒が多く、皆仲良くてとても雰囲気が良い!伝統校の安心感もありつつ、新しい教育や行事も多く毎日とても楽しく通えている。

(卒業生)図書館や自習室など勉強できる環境が整っており、チューターも常駐しているため、自分で学習する習慣が身に付く。

(保護者)勉強だけでなく、人間性を考えた教育が魅力。伝統を重んじつつ生徒の自主性も尊重しており、子どもが人間として成長できる環境がある。

(保護者)満足感のある学校生活を送れる。祖母・母・子ども代々で親和という方も多い。

伝統校としての厳格さもありつつ、生徒の自主性も尊重した自由な雰囲気があることが口コミから伝わってきました。

施設面に関しては充実しているという意見と、古くなってきているという意見の両方が聞かれましたが、2025年度の共学部の設置に向けて改修が進められているとのことなので、さらに充実度が増していくことが期待されます。

親和中学校・親和女子高等学校へのお問い合わせ

運営 学校法人 親和学園
住所 兵庫県神戸市灘区土山町6-1
電話番号 078-854-3800
資料請求 https://mirai-compass.net/usr/shinwah/request/reqIndex.jsf
公式ページ https://www.kobe-shinwa.ed.jp/

※詳しくは公式ページでご確認ください