特色ある教育や校風で注目を浴びる学校を紹介する本企画。今回は、東京都荒川区にある中高一貫型の女子校「北豊島中学校・高等学校」を紹介します。
同校の教育カリキュラムには、女性の権利のために活動し、女性の育成に尽力した創設者の思いがいたるところに組み込まれています。その中でも、グローバル教育やリベラルアーツ教育には、その特色が色濃く表れています。
また、「華道」「茶道」「ギター」や「土曜講座」、さらには「スクールコンサート」など、生徒の感性を育む取り組みも積極的に行っています。
今回は、そんな同校の教育理念や校訓、グローバル教育とリベラルアーツ教育を始めとした同校ならではの特色について、AO室長の塩川先生と、グローバル・プログラム・コース主任の吉留先生にお話を伺いました。
この記事の目次
女性の自立と活躍を軸とした北豊島中学校・高等学校の教育理念
まず初めに、北豊島中学校・高等学校の教育理念についてお教えいただけますか?
本校では、教育の基本として、すべての人には“天賦の芽”(可能性)があると考えています。そのため、教育理念として、真に才能ある者の芽を育て伸ばす“個性尊重の教育”に力を注いでいます。
この理念が生まれた背景には、本校の創設者である秋上(あきあげ)ハルの生き様が深く関わっています。日本の社会が大きく揺れ動いていた大正デモクラシーのさなか、秋上ハルは女性の地位向上や婦人参政権の獲得のために、平塚らいてうと市川房江らとともに女性解放の活動もしていたとも言われています。
女性の活躍に精魂を傾けていた秋上ハルは、今後必ず女性が輝く時代が来ると、そう予感し女子教育の重要性を感じ創設したのが本校になります。こういった経緯からも、本校は創立当初から、真に自立した女性、社会に貢献できる女性の育成を目指しています。
校訓についてもお教えいただけますか?
校訓は、「誠実・和敬・温雅」の3つです。「誠実」は、まごころがあっていつわりなく、まじめなこと、「和敬」は、心おだやかでつつしみ深く、相手を思いやること、そして「温雅」はやさしくあたたかな気持ちで、品位をたもつことになります。
一般的に創立当時は、校訓として「良妻賢母」を掲げる女子校が多い傾向にあったようです。しかし、本校では「社会での女性の活躍」を前提としており、その思いが校訓である3つの言葉の底にも流れています。
北豊島中学校・高等学校の充実したグローバル教育
ここでは、北豊島中学校・高等学校の中学・高校それぞれのグローバル教育の特色について伺いました。
高校英語での飛躍を視野に、丁寧に歩む中学英語
▲ネイティブの先生の授業で基礎力を身につける
続いて、御校のグローバル教育の特色についてお教えいただけますか?
本校のグローバル教育では、コミュニケーションツールとして活用できる英語力を身につけることを目指しています。そのため中学校から、英語の授業を週に7~8時間設けています。
英語の授業には、具体的にどのような特徴がありますか?
例えば、中学1年生ではアクティブラーニングの一環として体育の授業にネイティブの教員が加わり、体育の先生と生徒たちと一緒に授業に取り組む”コラボ授業”をしています。このような取り組みは、教科書では学べない日常の中の英語に触れることで、使える英語の基礎を育むことを目指しています。
英語と体育のコラボ授業では、どのような効果を感じていらっしゃいますか?
中学1年生たちは、英語に対する抵抗感が和らいだり、英語でコミュニケーションを取る楽しさに気づけたり、楽しみながら英語に触れています。
そもそも英語教育自体、小学生から始まっていますが、実は中学1年生の中には既に英語に対して苦手意識が芽生えている生徒もいるんです。特に、本校は英語教育に力を入れていますので、入学を控えた生徒からは「英語の授業が不安」「授業内容についていけるかどうか心配」といった声も多くあります。
体育とのコラボ授業は、単語を1つ2つ使うだけでネイティブの先生と意思疎通が取れることに気づけるので、生徒たちが英語での会話そのものを楽しめるようになる助けになっています。
中学2〜3年生の英語の授業についてもお教えいただけますか?
全学年で日本人による英語の授業と、ネイティブ教員によるい英語の授業を行っています。ネイティブ教員の授業は週3回あり、日本人の教員による英語の授業と結びつくようにカリキュラムを作っているんです。例えば、日本人の教員の授業で使っている教科書を、ネイティブの授業でも活用し、その学習に沿ったアクティビティに取り組んでいます。
また、中学1年生のときに習った単語や文法を、中学2年生になるとネイティブの授業でスピーキングを中心に学んでいきます。そしてこれは中学1年生にも共通することですが、ネイティブの授業の中間考査、期末考査では、「インタビューテスト」というものを実施します。この際にも、これまでに習ったことを利用しながら、英語でどのくらいコミュニケーションを取れるかを定期的に確認しています。
▲ネイティブの先生たち
インタビューテストは、具体的にどのような内容なのでしょうか?
中学1年生のインタビューテストは比較的簡単なのですが、中学2年生、中学3年生になるとぐんと難易度が上がります。まず、1つの絵を見せられ、生徒たちはそこに添えられた文章をリーディングしていきます。そしてその絵と文章に対する質問に答えていくという形式をマンツーマンで行います。
加えて、見せられるピクチャーカードについて、これまで学んできた英語を使って説明していきます。例えば、比較の文法を習っていたら「この子はこの子よりも背が大きい」という具合に英語で話すことに挑戦します。また、インタビューテストでは、自分自身についても質問されます。
インタビューテストを行う一番の目的は何ですか?
インタビューテストによって、生徒1人ひとりの英語力を認識できるんです。英語をアウトプットする場として、ネイティブの授業を活用していますが、例えばペアワークを行うと、相手のペアの英語力に助けられることがしばしばあるんですね。そうなると英語のスキルを生徒ごとに正確に測るのが困難になります。
だからこそマンツーマンで行うインタビューテストでは、「この子はここまで喋れるんだ」「この子はここの部分でつまずいたんだ」というように、生徒ごとの強み・弱みを把握するのに役立っています。
RDP(Reading Development Program)というプログラムについても、詳しくお教えいただけますか?
RDPはいわゆる多読のプログラムです。生徒たちは難易度別に分けられた洋書をしっかり読み込み、ブックレポートを書きネイティブ教員に提出をする取り組みをしています。わからない単語を調べる時間も必要なので、週に1度としています。もちろん、このブックレポートは英語で書きます。
書いたレポートは、ネイティブの先生がチェックしてくれますが、内容が不十分な場合は呼び出され、きちんと書けるようにサポートしてくれます。
かなり厳密にチェックされるんですね...!
はい。加えて、年に数回のレベルチェックも実施しています。多読する洋書が難しいようだったら下のレベルに、スラスラ読めるようだったら上のクラスに行くようにアドバイスがもらえます。
ネイティブの先生と接する機会を多く設けている御校では、中学校の英語教育においてどのようなことを大切にされているのでしょうか?
中学校の3年間では、英語をペラペラ話せることよりも、基礎力を育てていくことを重視しています。高校生になってしっかり肉付けしていくための骨組み作りを中学英語で取り組んでいるため、基本的に英語の学習は急がず、丁寧に進めていくことを第一に置いています。
正しい学習方法から学ぶ高校での英語教育
続いて、高校のグローバル教育の特色についてもお教えいただけますか?
高校では3つのコースに分かれており、コースによっても内容が異なります。特進コースの「インスパイアリング・プログラム」と総合コースの「バリュアブル・プログラム」、そして国際英語コースの「グローバル・プログラム」があります。
今回は、グローバル・プログラムについて詳しくお教えいただけますか?
グローバル・プログラムに所属する生徒たちは、海外大学を含む幅広い進路を視野に入れています。そのため、このプログラムでは、世界の多様性を総合的に理解することを目指し、ライティングとスピーキング、リーディング、そしてリスニングの4つの技能を磨いていきます。
また、このプログラムでは、ネイティブ教員が担任もしています(日本人教員も担任の2人担任制)。だからこそ、授業以外でも、ホームルームや掃除など、日常的な場面でネイティブ教員とかかわるため、英語に触れる、英語を使う機会が多く設定されている環境になります。
そして、週10時間設けられた英語の授業の中では、英語そのものを学習することはもちろん、英語の学習方法も含めてベースを養い、本人の努力次第ではいくらでも成長できる学習環境です。ネイティブ教員と触れ合う機会が多く、一緒に過ごすことで発音の勉強や、リスニング力も身についていきます。
英語の勉強方法を身につけた上で、どのように授業を進めていくのでしょうか?
例えばリーディングでは、精読したり、パラグラフごとに要旨をまとめたり、あるいは文章全体の構成を俯瞰したりなど、幅広いアプローチで文章に向き合っています。
また、とりわけグローバル・プログラムの生徒たちは「話して伝えられる方が大事」という考え方をする子もいて、比較的文法を軽視する傾向にあります。そのため文法の授業では、その意識を変えることから取り組み、文法の重要性に気づいてもらえるように丁寧に進めていきます。
なお、日本人の授業では単語や文法、リーディングを学び、ネイティブの授業では、プレゼンテーションやディスカッションなどのアウトプットが中心となっています。
その他、グローバル教育の特色ある授業についてお教えいただけますか?
英語によるプレゼンテーションの授業も設けています。この授業ではまず、スモールステップでプレゼンテーションの仕方を学びます。立ち方や姿勢、アイコンタクト、ジェスチャーなどを学びつつ、プレゼンテーションの総合力を磨いていきます。
▲プレゼンテーションももちろん英語で!
プレゼンテーションの仕方を身につけ、具体的にどのようなことを発表するのでしょうか?
高校1年生のテーマは、外国人に紹介したい日本文化です。日本語になかなか訳すことができない日本語をプレゼンします。高校2年生のテーマは、何か1つトピックを決めて、日本と他の国を比較し発表します。そして、高校3年生は、SDGsがテーマです。生徒それぞれがゴールを1つ設定し、それに向かってアクションを起こしていくプロジェクトについて考え、発表します。
その他のグローバル教育の特色についてお教えいただけますか?
ネイティブ教員によるラウンドテーブルという放課後の学習サポートの時間を設けています。中学生も活用できる取り組みで、生徒自身が手助けが必要と感じる内容のサポートを受けられます。例えば、プレゼンテーションの発表が迫っている時期だと、ネイティブの教員と一緒にプレゼンテーションの練習をしている子たちもいますね。
華道・茶道・クラシックギターが必修のリベラルアーツ教育
▲茶道で日本人としての礼儀や作法を学ぶ
御校のもう一つの大きな特色であるリベラルアーツ教育についてもお教えいただけますか?
本校のリベラルアーツ教育は、正解が1つではない現代社会で、多角的・多面的に物事をとらえ考え判断し、その時々における「最善解」を導くための教育を行っています。そのために、学びを絞るのではなく、幅広い知識や情報を習得しながら、多様な価値観を持つ仲間とコミュニケーションをとりながら協働し、様々な体験や経験を通して「最善解」を導く力を養っています。
つまり、いわゆる勉強だけではなく、感性を磨き人間性を深め心を育てることを目的とした情操教育も、リベラルアーツ教育の一環として力を入れており、中学校で華道と茶道、そしてクラシックギターを必修科目に加えています。
華道では、花の茎の切り方1つでその花の命の長さが変わります。こうして命の大切さを学ぶこともできるんですね。年間でおよそ50種類のお花と触れ合うので、花の種類と知識も増やしながら、四季を感じられたり、空間デザインが学べたりと、幅広い教養が身につくのも特徴です。また、理科とコラボレーションして「MY植物図鑑」を作り、約50種の花の図鑑も作成しています。
茶道では、日本人としての文化、礼儀や作法を勉強していきます。本校には専用の茶道室もあるので、1年間の学習の成果をお披露目する「お茶会」などのイベントも開催しています。
クラシックギターに関しては、当初ピアノなどの楽器も候補に挙がったのですが、せっかくなら生徒みんながゼロからスタートし、演奏技術を磨きながら、チームワークも育める楽器のほうが勉強になるという考えにまとまり、たどり着いたという経緯があります。
世界には様々な弦楽器があるので、クラシックギターも1つのコミュニケーションツールになればという意図も込められています。
▲みんな一緒に学び始めるクラシックギター
クラシックギターの授業では、具体的にどのような曲を演奏するのでしょうか?
学び始めたばかりの中学1年生は「メリーさんのひつじ」など簡単なものに取り組みます。基本的にクラスで練習をしており、授業を重ねていくと、パートごとに分かれて弾けたり、より長い曲が演奏できたりと技術などを磨いていきます。
また、年に1回発表会があるので、そこに向けてクラスごとに練習を進めています。
ギターの授業の生徒のみなさんは、どのようなご様子ですか?
基本的にみんな初心者なので、最初はうまく弾けず悔しがっている生徒もいるのですが、弾けるようになってくると達成感が生まれ、スキルアップできていることを実感して楽しんで取り組めるようになっていきます。
また、発表会という大きな目標に向けてチームみんなで取り組むので、友達同士と協力する様子も多く見られるようになりましたね。
興味と関心、感性を育てる「土曜講座」と「スクールコンサート」
▲着物の着付けのような一生ものの知識が身に付けられる講座も
御校独自の取り組みである「土曜講座」についてもお教えいただけますか?
土曜講座は、教養講座と受験講座という大きな2つのジャンルに分かれており、2つ合わせるとおよそ30種類の講座から選ぶことができます。
例えば教養講座では、着物の着付けやピアノ、パーソナルカラー、洋裁、ヨガ、手話など、幅広い学びを用意しています。受験講座では、大学受験をサポートするための講座を設けています。土曜講座では、大学の授業のように生徒自ら豊富な講座から自由に時間割を組んで学びを深めていくことができます。
生徒のみなさんは、たくさんある講座の中からどのように選ばれているのでしょうか?
特に土曜講座は、生徒たちも楽しみながら参加してくれているので、生徒それぞれの興味関心で選ぶことがほとんどです。その他、保育園の先生を目指してる子だったら、ピアノを選択したりと、自分の進路と照らし合わせて決めている生徒もいますね。
▲プロの方をお招きし、指導をしてもらえる本格的なヨガの講座
土曜講座に参加している生徒のみなさんに対して、どのような印象を持っていますか?
土曜日に開催している講座でありながら、土曜講座は欠席が少ない傾向があります。出席率は90%ほどです。なにより楽しんでもらえている証拠かなと思っています。
その他に、御校の特色がありましたらお教えいただけますか?
毎年、プロの方々の演奏を聴き、本物に触れる「スクールコンサート」という機会も設けています。例えば、「ラグビーワールドカップ2019」の日本大会選手入場の際に演奏した実績を持つ「和太鼓グループ彩-sai-」の方々に依頼し、演奏を聴かせてもらった後に和太鼓の演奏体験もさせてもらいました。
毎年異なるプロフェッショナルの方々にご協力いただいているスクールコンサートでは、本物に触れることで生徒たちの感性を磨いていくことを目指しています。
北豊島中学校・高等学校からのメッセージ
▲インタビューに答えてくださった北豊島中学校・高等学校のAO室長の塩川先生
最後に、北豊島中学校・高等学校に興味をお持ちのお子さま・親御さまに向け、メッセージをお願いします。
英語を頑張りたい子や自分自身を磨きたい子はもちろん、気持ちとしては女子の皆さん全員に来ていただきたいと思うくらい、私たちは情熱を持って日々の教育に取り組んでいます。
コミュニケーションをとりながら、その子を知っていこうとする教員が多く、6年間もしくは3年間かけてそばでサポートします。自分のことをよく知ってもらえる環境で、自身をより輝かせながら、成長したり好きなことを追及したりするのにぴったりな学校だと感じていますので、ぜひご検討いただきたいです。
生徒のみなさんと丁寧に向き合われていることが、グローバル教育やリベラルアーツなど、さまざまな要所で感じられました。貴重なお話をありがとうございました!
北豊島中学校・高等学校の進学実績
北豊島中学校・高等学校の2023年度の学合格実績としては、ブリティッシュコロンビア大学とフロリダインターナショナル大学を始め、73の海外の大学への合格者と、早稲田大学と上智大学、立教大学、青山学院大学、明治大学、学習院大学を始めとした難関私立大学を含む私立大学に多数の合格者を輩出しています。
■進路実績(北豊島中学校・高等学校の公式サイト)
http://www.kitatoshima.ed.jp/publics/index/126/北豊島中学校・高等学校の卒業生の口コミ
北豊島中学校・高等学校の卒業生から寄せられた口コミを紹介します。
口コミからは、北豊島中学校・高等学校の先生方の面倒見の良さを評価している声が多く上がっていました。また、受験勉強のための環境に満足している様子も見られました。
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