この記事では、特色ある教育で注目される学校として、大阪府堺市にある共学・私立の中高一貫校「賢明学院中学高等学校」を紹介します。
2024年に創立70年を迎えた同校は「将来につながる学び」を大切にしており、なりたい姿に近づくための自己探究や、農業体験を通じて地域課題と向き合うプロジェクトなど、工夫を凝らした探究学習を行なっています。
また、理数教育では、系属校として提携する関西学院大学の理系学部への進学を目指す高校生向けに、大学の研究室と同じレベルの研究に取り組む「AP科目」を導入しています。
今回はそんな同校の探究学習や理数教育について、広報募集部長の前先生、探究担当の大前先生、AP主任の波田先生に詳しくお話を伺いました!
この記事の目次
生徒の能力を最大限に引き出す賢明学院中学高等学校
まず、賢明学院の教育理念についてお聞かせいただけますか?
本校はカトリックのミッションスクールとして、キリスト教の教えに基づく教育を行っています。
教育の柱として、「祈る」「学ぶ」「奉仕する」という三つを掲げており、生徒の能力を最大限に引き出しながら、他者のために貢献できる人材を育成することを目指しています。
それぞれの柱について、詳しく教えてください。
「祈る」は、心の平安や感謝の気持ちを育てることを意識した教育です。「学ぶ」は、ただ知識を詰め込むのではなく、生徒自らの学ぶ姿勢を育てることを指します。「奉仕する」は、他者への思いやりを持ち、社会に貢献する姿勢を養うことです。
教員は、生徒が日頃からこれらを意識しながら学校生活を送れるように努めています。
成長段階に応じて行う賢明学院中学高等学校の探究学習
生徒の能力を最大限に引き出す教育を行う賢明学院中学高等学校。その象徴的な取り組みが、自分自身を知り、なりたい姿に近づく「自己探究」や、農業体験を通じてSDGsへの理解を深め地域課題の解決策を考える「河南町プロジェクト」です。
ここからは、同校の探究プログラムについて詳しく伺っていきます。
中学ではなりたい自分に近づくための「自己探究」に取り組む
賢明学院では、成長段階に応じた探究活動を実施しているそうですね。まず中学のプログラムについてご紹介ください。
中学では主に自己探究とキャリア教育を中心に進めます。生徒自身が将来どのような職業に就きたいかを考え、その目標に向けてどのような学びが必要かを逆算して考える機会を提供しています。
自己探究の具体的な方法について教えてください。
生徒たちは「自己探究アプリ」を活用して、自分の強みや課題を認識します。このアプリを使うことで、自分の得意なことや足りないことを見つけ、なりたい自分に近づくための目標設定ができるようになります。
また、年に3回、「自分プレゼン」として、保護者や担任の前で自己探究の成果を発表します。これにより、生徒自身が自分の成長を実感し、自信を持って次のステップへ進むことができるようになります。
▲スライドを作成して本格的なスタイルで行う「自分プレゼン」
高校1年生は農業体験を通じてSDGsを学習。協働の大切さも知る
高校での探究学習はどのように進められているのでしょうか?
高校では1年生と2年生を対象に、大阪府河南町での農業体験を中心とした探究学習「河南町プロジェクト」を実施しています。
田植えや野菜の栽培などの体験を通じて農業の大変さを知ったり、SDGsについて考えたりするほか、2年生になると河南町を活性化させるためのビジネスプランを考える課題にも取り組みます。
農業体験に参加した1年生の皆さんの様子はいかがですか?
田植えでは、農作物の栽培がいかに大変かを身をもって体験してもらうため、あえて機械を使わずに手で作業してもらいます。体験を通じて自分が口にする食材を育てるのにどれだけの手間がかかっているのかを実感し、「食べ物を大事にしよう」と考えるようになる生徒が多いですね。
また、農業体験はチームワークの向上にもつながります。田植えでは、横並びになって声を掛け合いながら息を合わせますし、農作業は誰かひとりがサボれば全体の作業が遅れます。協力することを学ぶ良い機会にもなっていると感じます。
高校2年生は地域活性化のビジネスプランに挑戦!町長にプレゼンする機会も
高校2年生が取り組む地域活性化のビジネスプランについてもご紹介ください。
河南町の地域活性化に貢献するためのアイディアをグループごとに考えます。河南町は米作りが盛んなので米粉を使ったクレープを開発して町の名物にしようという案や、地元の観光施設を巡る街めぐり企画、過疎地域の医療をサポートする医療アプリの提案など、毎年さまざまなアイディアが出されます。
発表の際には、河南町の町長さんを学校にお招きしてプレゼンテーションを行っています。
ビジネスプランを考えるのは難しそうですが、どのように準備していますか?
実際の企業の事例を参考にしています。例えば、スターバックスの店作り戦略を研究し、もし自分がスタバの店長だったらどのような店舗を作るかを考えたこともあります。
生徒からは、「スターバックスは若者向けの店舗が多いので、キッズルームを設けたり高齢者向けのメニューの開発をして、より幅広い世代に来てもらう」といったアイデアや、「長時間滞在するお客さんを減らすためにオンライン予約システムを導入する」といった具体的な案が出ました。
このようなトレーニングでビジネス的な思考を鍛えたうえで、河南町の地域活性化プランに取り組んでいます。
河南町プロジェクトにおいて、先生が生徒に指導をする際に意識していることがあれば教えてください。
アイデアを考える際は人件費や回転率などを考慮し、ビジネスとして成り立つかどうかをしっかり考えてもらうようにしています。こうすることで、生徒には「将来に直接つながる学びをしている」という実感を持ってもらえます。
また、探究学習では難しい内容に取り組む場面が多いので、生徒にいかに興味を持ってもらうかも意識しながらアドバイスなどをしています。
6年間を通じて探究学習に取り組むことで、生徒さんにはどのような成長が見られますか?
物事を突き詰めて考える力はもちろん、ディスカッションする力や、タブレットを用いたスライド作成術、プレゼンテーションのスキルが大きく向上します。
最近は総合型選抜型の大学入試が増えているため、6年間の探究学習の経験が大学入試においても大いに役立つと感じています。
学年が上がるにつれて視野が広がり、社会の課題に対して自分の考えを反映させる力もどんどんついていくと感じますね。
▲「世界探究」にも取り組む賢明学院。海外留学や、海外からの交換留学生との交流など、グローバル感覚を養う機会がたくさんある。
大学レベルの研究に取り組む!賢明学院中学高等学校の「AP科目」
賢明学院高校では、提携する関西学院大学の理系4学部への進学を目指す人向けの「特進サイエンスコース」を設置しています。
このコースでは、大学の研究室で行われるような学びを通じて大学での学びの素地をつくる「AP科目」という特色ある授業に取り組んでいます。
ここからは、AP科目を担当する波田先生に、その特徴について詳しく伺います。
プログラミングやドローン工学など、ハイレベルな研究に挑戦
AP科目について詳しく教えていただけますか?
APは「アドバンストプレイスメント」の略で、関西学院大学の理学部、工学部、生命環境学部、建築学部の研究室での学習を模したプログラムです。
各研究室には6名ほどの生徒が所属し、2年生からの2年間をかけてそれぞれの分野で大学レベルの研究に挑戦し、大学での学びに備えます。
それぞれの研究室で行う研究についてご紹介いただけますか?
理学部の研究室では、Pythonというプログラミング言語を使って自然現象を微分方程式でモデル化し、それを数値的に解いてグラフ化する試みがあります。
工学部の研究室ではドローンを用いた実験などを行います。ドローンが運べる荷物の重さの限界を調べたり、一時停止の標識や障害物にリアルタイムで反応する仕組みについて学んだりします。
生命環境学部では、昆虫や動物を用いたさまざまなテーマに取り組んでいます。ユニークなものとしては、カブトムシを巨大化させる試みや、カブトムシに特定の餌を与えて体の色を変化させる実験などがあります。
建築学部では3Dプリンターを使って複数の建物の模型を作り、どのタイプの家が最も風に強いかを調べる実験などをしています。
▲本格的な研究や実験を行うAP科目。成果をプレゼンする機会もある。
研究室や研究テーマは、生徒たちが自ら選ぶのでしょうか?
研究室については、生徒の興味や関心に応じて教員が割り振っています。
テーマについては基本的には生徒の興味に基づいて設定していますが、テーマが思い浮かばない場合には教員から提案したり、先輩の研究を引き継ぐようにアドバイスすることもあります。
最初は戸惑うこともありますが、研究が進むにつれて生徒たちは自ら進んで取り組むようになります。
AP科目を経験した生徒さんたちは、どのような感想を口にしますか?
高校時代に大学レベルの学習を経験することで、「大学進学後の学習にスムーズに移行できた」という声が多いです。大学でも引き続き同じ研究テーマに取り組む生徒も多く、AP科目がその先の進路にも役立っていると感じます。
高性能のPCや3Dプリンターなど研究機器・設備も充実
3Dプリンターやドローンなど、学びをサポートするための設備も充実しているように感じます。
そうですね。さまざまな設備において、一般的な学校に置いてあるもののワンランク上の機材や用具が揃っています。
理学部ではプログラミングで大量の計算をするので、処理スピードの速い最新型の高性能パソコンを導入しました。生命環境学部では魚介類の解剖などもするので、専門的な解剖道具を用意しています。
学校として、最高の研究環境を提供しようというお考えがあるのですね。
はい。「生徒が学びに没頭できる環境を整えよう」という前向きな雰囲気が学校全体にあるので、多少費用がかかったとしても、必要に応じて最新の設備を整えることを優先しています。
賢明学院中学高等学校の文武両道なスクールライフ
▲文武両道を掲げる賢明学院。高校でもクラブ加入率が8割を超える。
賢明学院では部活動もさかんだと伺いました。
生徒には、勉強だけに集中するのではなく、自分の目標ややりたいことを見つけ、それを追求できる環境を提供したいと考えています。
そのため、偏差値の高い大学への進学のみを目指すのではなく、学業と部活動や課外活動をバランスよく楽しみ、「欲張りな高校生活」を送ることを推奨しています。
▲部活動に快適に取り組める人工芝のグラウンドを完備。
文武両道は、生徒さんにどのようなプラスの影響を与えているとお感じですか?
学業とそれ以外の活動を切り替えながら過ごすことによって、自己管理能力が身に付いていると感じます。
本校では、うまく切り替えができるように手帳を使った自己管理を推奨し、毎日自分がやるべきことをしっかりと意識するように指導しているんです。
そこで自主性が育まれているのですね。
その通りです。70周年を迎えた2024年には教育改革の一環として「チャレンジタイム」を導入しました。1日の各授業時間を5分短縮して45分とし、その分、放課後に30分間のチャレンジタイムを設け、授業の振り返りや予習、テスト勉強など、それぞれの課題に応じた取り組みをします。
この時間は、自分自身で何をすべきかを考え、主体的に行動するための時間となっています。また、教員がチャレンジタイムに生徒と面談をすることもあり、彼らの伸びしろを最大限に引き出すよう努めています。
チャレンジタイムは生徒にとっては自己成長の時間、教員にとってはその成長をサポートするための時間になっているのですね。
そうです。本校は規模が小さい分、教員と生徒の距離が非常に近く、アットホームな雰囲気が特徴です。教員が生徒一人ひとりにしっかり寄り添い、いつでも相談できる環境を整えていますので、生徒たちも安心して学校生活を送っていますよ。
賢明学院中学高等学校からのメッセージ
▲読者の皆さんへのメッセージをお話しいただいた前先生
最後に、記事をご覧の保護者の方や子どもさんにメッセージをお願いします。
自分がどんな人になりたいのか、どんな場所で生活をしたいのか、何を頑張りたいのか、そんなことを考えながら自分を磨ける場所が賢明学院です。
生徒が輝き、夢を掴むために、教員は道しるべとして寄り添いながらサポートし、可能な限り本人の能力を伸ばしたいと考えています。
将来につながる力をつけ、それを誰かのために役立てたいと考えている方は、ぜひ本校で一緒に学びましょう。
賢明学院での学びは、未来を見据えた力を育んでくれると感じました。本日は、ありがとうございました!
賢明学院中学高等学校の進学実績
賢明学院中学高等学校では、難関大学への進学者も多く、2024年度は関西学院大学のほか関西大学、立命館大学、近畿大学などにも合格者を出しました。また、既卒生では国公立の大阪大学や和歌山県立医科大学医学部医学科の合格者もいました。
校内では、さまざまな大学の講師による講演会や、土曜講座、小論文講座など、手厚い進路サポートを行っています。さらに6年間を通じた探究学習により、生徒は将来を見据えた多様な進学を実現しているようです。
近年の進学実績(賢明学院中学高等学校の公式サイト)
https://kenmei.jp/highschool/course/result/
賢明学院中学高等学校の卒業生・保護者の口コミ
最後に、賢明学院中学高等学校の卒業生や保護者の口コミを紹介します。
口コミからは、勉強にもクラブ活動にも熱心に取り組んでいる様子が伝わってきたほか、小規模校ならではの良さを評価する声も多くみられました。
賢明学院中学高等学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人賢明学院 |
---|---|
住所 | 大阪府堺市堺区霞ヶ丘町4丁3-30 |
電話番号 | 072-241-1679 |
問い合わせ先 | https://kenmei.jp/contact/inquiry/ |
公式ページ | https://kenmei.jp/highschool/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください