この記事では、特色ある教育に取り組む注目の学校として、東京都昭島市の私立・共学の中高一貫校「啓明学園中学校高等学校」をご紹介します。
帰国子女の受け入れを目的として1940年に創立した同校は、生徒の3割以上が帰国子女や国内インター校経験者、来日外国人といった「国際生」で、グローバルで多様性あふれる環境のもと、個性や主体性を重視した教育を行っています。
また、学校の外での学びや経験の場を増やすため、土曜日の授業をなくして週5日制とすることなどを柱とする「学び方改革」を2025年度から推進することになっています。
今回は、そんな啓明学園中学校高等学校の教育について、校長を務める大坪隆明先生に詳しく伺いました。
この記事の目次
35%が国際生。多様性に富む環境で学べる啓明学園中学校高等学校
▲大坪先生は芝浦工業大学附属中学高等学校の校長などを経て、2022年度から啓明学園中学校高等学校の校長を務める。
はじめに、啓明学園中学校高等学校の教育理念についてお聞かせください。
本校は「世界を心に入れた人を育てる」という教育理念を掲げています。「世界を心に入れる」というのは、多様性を自分の中に取り込んでいくことを表しています。
本校は多様性に富む学校で、帰国生や国内のインターナショナルスクール経験者、来日外国人、複数の国籍を持つ生徒など、何らかの形で海外体験をバックグラウンドに持つ「国際生」が全体の35%にのぼります。
多様な国・地域から集まった仲間たちと、違いを受け入れ合い、学び合いながら成長できるのが本校の特徴と言えます。
普段の学校生活において、国際性や多様性を感じることはありますか?
本校に入学した生徒は、さまざまな見た目の生徒がいることにまず驚くでしょう。また、学校のあちらこちらから日本語以外の言語が聞こえてくることも本校ならではだと思います。
人それぞれ得意なことや不得意なこと、好きなことや嫌いなことがありますが、生徒たちの中には「バラバラだからこそ人間は楽しい」と考え、多様性を受け入れる姿勢が醸成されていると感じます。帰国生などが多い本校では、9月に編入してくる生徒も多いのですが、途中から入ってくる仲間をあたたかく迎え入れる雰囲気もあります。
啓明学園中学校高等学校が2025年度から推進する「学び方改革」とは
啓明学園中学校高等学校は、2025年度から「学び方改革」を推進します。
大きな施策は、土曜日の授業をなくして「授業週5日制」にすることと、生徒が自分で学習計画を立てみずから実行する「セルフ・スタディーアワー(Self Study Hour)」という時間の設置です。
ここからは、学び方改革の詳しい内容や狙いについて伺っていきます。
「週5日制」で学校以外の場所での成長につなげる
学び方改革として2025年度から導入する「授業週5日制」について、概要をご紹介いただけますか?
本校は現在、土曜日授業を実施していますが、2025年度から全学一斉に土曜日の授業をなくします。
現在は平日に6時限、土曜日に4時限、それぞれ50分間の授業を行っていますが、2025年度からは平日7時限、45分授業にする計画です。
週5日制の導入の狙いは何でしょうか?
文部科学省が週5日制を導入した目的は、学校と家庭と地域が協力して、子どもにさまざまな経験の機会を与え、成長につなげることでした。
本校も一度週5日としましたが、2012年から土曜日授業を開始しました。
ただ、これまでの経験から、授業数を増やしたことによる学力向上への効果は限定的で、むしろ子どもたちを疲れさせたり、自発的に学ぶ意欲を阻害する要因にもなっています。そのため、土曜日は趣味や関心事に取り組んだり家族と過ごしたりし、授業以外の経験を通じて成長してもらう日にしようと考えました。
週5日制が導入された本来の目的に立ち返り、学校以外での経験の機会を増やすのですね。
その通りです。今は昔に比べて校外での学習の場がたくさんあり、生徒が自分で世界を広げやすいと言えます。また、学校以外に「自分の場所」を持っていた方が、本人の成長機会も広がります。
さらに、大学受験が多様化し、総合型選抜では学校の外での経験も求められるようになっています。学校が生徒を縛ってしまうと、そのような機会まで奪ってしまうことになります。
週5日制にするにあたり、カリキュラムの内容にも変更があるのでしょうか?
中学では英語以外の主要4教科の時間を少し削って、その代わりに探究学習の時間を設けようと考えています。
これまでは授業横断型で各教科の中で探究学習を行っていましたが、2025年度からは独立した探究学習の時間を設ける予定です。
生徒自ら学習計画を立てて実行する「セルフ・スタディーアワー」
「セルフ・スタディーアワー」についてもご紹介いただけますか?
2025年度の中学・高校入学生から、授業時間のうち週2時間を「セルフ・スタディーアワー」にします。
これは生徒が「今学ぶべきことは何か」を自分で考え、学習計画を立て、実行する時間で、授業の復習や宿題、テストの準備などに充てることができます。教員は、必要に応じて生徒の学習内容や進捗に対してアドバイスなどを行います。
また、週5日制にして学校以外の場所での経験を増やすためには、授業の復習や課題は学校内で完結させる必要があります。そのため、放課後や部活動の後、長期休暇中などに自学自習できる場所を開設します。そこにはチューター(※)が在室し、生徒の学習のサポートも行います。
(※)生徒に対し学習面でのアドバイスなどを行う人
通常の授業ではなく、セルフ・スタディーアワーとして自学自習を重視する理由はなんでしょうか?
学校教育は「教員がいかに教えるか」よりも「生徒がいかに学ぶか」に重点がシフトしています。そのため、生徒が自ら学ぶ習慣の確立が特に大切だと考えており、それが実現するような時間と場所と方法を学校がしっかり用意したいと考えました。
また、セルフ・スタディーアワーや自習室の開設を通じて、勉強をなるべく家に持ち帰らず、塾にもなるべく行かなくて良い環境を作りたいと考えています。帰宅したら食事をして、お風呂に入って自分の好きなことをして、十分な睡眠を取る。学び方を変えることで生活の仕方も変えていきたいと思っています。
大学入試や社会で求められるスキルが変化するなか、啓明学園中学校高等学校はこれからの時代に合った学び方をしっかり考えているのですね。
啓明学園中学校高等学校ならではのグローバル教育とは
ここからは、啓明学園中学校高等学校ならではのグローバル教育について詳しく伺っていきます。
外国人と英語のショーに挑戦する「ミュージック・アウトリーチ」
グローバル教育にも力を入れているということですが、啓明学園中学校高等学校ならではの取り組みがありましたらご紹介ください。
2024年度から、中学1年生と高校1年生を対象に「ハートグローバル ミュージック・アウトリーチ」が始まります。
これはアメリカの表現教育団体「HEART Global」が手がけるプログラムで、キャストと呼ばれる外国の若者たちが学校を訪れ、生徒と一緒に英語の歌やダンスでショーを作り上げます。
導入のきっかけや、目的についても教えてください。
啓明学園の小学校では数年前からミュージック・アウトリーチを実施していたほか、近隣にも導入している私立の中高があり、見学させていただく機会がありました。
その学校の学年主任の先生にお話を聞いたところ、プログラムを通じて子どもたちが少しずつ殻を破っていく様子が見てとれて、驚きの体験だったとおっしゃっていました。
普段から生徒と接している教員は、「この子はこれが得意」とか「この子はこれが苦手」といったことが分かっているので、それを踏まえて子どもと接します。しかし、ショーのキャストはそれを知らないので、先入観のない指導をします。例えばソロを歌う生徒に、先生だったら指名しないような子を選ぶこともあり、それが生徒の自信につながることもあります。
生徒の新しい可能性を引き出してくれることが期待できるのですね。
その通りです。中高生になると他者の目を気にして自己表現することが難しくなりますが、ミュージック・アウトリーチは自分を解放し、殻を破り、表現力を高める良い機会になるはずです。
また、プログラムは11月に3日間に渡って行われる予定で、キャストの方々が本校生徒の家庭にホームステイすることになっています。数日間を外国から来たキャストと一緒に過ごすことは、子どもたちにとって大きな経験になると思います。
英語のスピーチコンテストは1968年から続く伝統
ミュージック・アウトリーチのほかに、グローバル教育にはどのような特色がありますか?
英語の授業では、「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能に加えて「考える」ことも重視しており、その集大成と言えるのが、1968年から続く「英語・外国語スピーチコンテスト」です。
中学1年生と2年生は習熟度によって英語詩の暗唱かスピーチを、中学3年生から高校2年生はスピーチを行います。クラスでの発表などを経て選ばれた数名のファイナリストは、市民会館などのホールを会場にして保護者や地域の人々の前でスピーチを行います。
スピーチを聞かれて、大坪先生はどのようなことをお感じになりましたか?
スピーチにテーマはなく、「生き方」「差別」「幸福」など、それぞれが「伝えたいこと」を話します。本校では人前で話すことを重視した教育を行っているので、その成果を発揮してしっかり自分の考えを話せていると感じます。
また、どの生徒もとても発音が良いことに感心させられますね。ネイティブ教員による授業を受けていることも理由ですが、日常的にさまざまな言語を話す生徒たちと過ごし、ネイティブの発音に抵抗がないことも大きく関係しているのではないでしょうか。
英語の授業でネイティブらしい発音をすることに恥ずかしさを覚える子もいますが、日常的に英語が聞こえる生活を送っていると、ネイティブの発音が当たり前になり、自然と良い発音が身につくのですね。
そうですね。国際生と過ごすことで「言語」に対して敏感になり、「音」を大事にする心も生まれ、それを支える授業も相まって、外国語に対する親密度が非常に高くなっていると感じます。
啓明学園中学校高等学校からのメッセージ
最後に、啓明学園中学校高等学校に興味をお持ちの子どもさんや保護者の方へメッセージをお願いします。
これからの子どもたちの成長の場は、学校だけではありません。学校の枠を飛び出して外の世界を見ることはとても重要です。ご家庭と協力しながら、子どもの成長の場を増やしていきたいと考えています。
また、留学や海外研修などのプログラムも充実している本校では、中高生の段階から日本の外を見るという大きな経験ができます。ご家庭にとっては、子離れ・親離れの良い機会にもなると思いますので、本校の国際交流プログラムを効果的に使っていただきたいと思います。
本日は、ありがとうございました!
啓明学園中学校高等学校の進学実績
啓明学園中学校高等学校は2023年度、北海道大学、筑波大学、東京海洋大学に合格を出したほか、青山学院大学に6人、上智大学に5人など、難関私立大学に複数の合格者を出しています。
また、過去3年間で合格実績のある海外大学はワシントン州立大学やインディアナ大学、オレゴン州立大学、カナダのトロント大学など17校にのぼります。
啓明学園中学校高等学校の卒業生・保護者の口コミ
最後に、啓明学園中学校高等学校の卒業生や保護者の声を紹介します。
多くの国際生がいる環境が、広い視野や多様性の理解につながったという声が目立ちました。
※卒業生の声は、2025年度の啓明学園高等学校デジタルパンフレットから一部抜粋しました。
https://hs-heigan.com/dp/2025/keimei_Seni
啓明学園中学校高等学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人啓明学園 |
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電話番号 | 042-541-1003 |
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