滋賀県立河瀬中学校・高等学校の外観

琵琶湖の保全など、地域と繋がる滋賀県立河瀬中学校・高等学校の探究学習|中高一貫校

ぽてんをご覧の皆様に、注目の学校をご紹介する本企画。今回ご紹介するのは、滋賀県彦根市にある公立の中高一貫校「滋賀県立河瀬中学校・高等学校」です。

同校は「魅力と活力ある進学校」として、確かな学力とたくましさを育て、未来社会に貢献できる人材の育成を目指しています。特筆すべきは、独自の探究学習「アカデミックプログラム」を展開していることです。琵琶湖博物館での体験学習から、大学教授による専門的な講義まで、生徒の知的好奇心を刺激する多彩な学びの機会を提供しています。

また、全国大会出場の実績を持つ科学部の活動にも注目です。中高合同で琵琶湖の保全プロジェクトに取り組むなど、地域に根ざした実践的な活動を行っています。さらに、3年間を通じて段階的に討論スキルを身につける「ディベート学習」など、論理的思考力と表現力を鍛える取り組みも充実しています。

今回、河瀬中学校・高等学校の教育理念やカリキュラムの特徴について、宮永教頭先生と久保川先生にお話を伺いました。

河瀬中学校・高等学校の校訓「志成」とは

長浜バイオ大学で本格的な授業を受ける河瀬中学校・高等学校の生徒たち

編集部

まずは河瀬中学校・高等学校の校訓についてお聞かせください。

宮永教頭

本校の校訓は「志成」です。「志す」という字と「成る」という字を組み合わせた言葉で、中学校も高校も同じ校訓を掲げています。この言葉は、「志有る者、事ついに成る」という『後漢書』に書かれた一文が元になっています。

簡単に言うと、目的を持ってそれに向かって頑張れば、きっとその思いは叶うだろうという意味合いです。生徒たちには、将来の夢や目標を持ち、それに向かって着実に歩んでいってほしいという願いが込められています。

編集部

その校訓に基づいて、具体的にどのような生徒を育成したいと考えていらっしゃいますか?

宮永教頭

本校が目指しているのは、自分の思いや考えを自分の言葉で表現できる生徒です。

昨今では、自分のことを上手く表現できない子が増えている印象です。そのため本校では、積み重ねたさまざまな体験を発表する機会もしっかり設けています。こうして生徒たちが自分の言葉で伝える力を育てていけることを重視しているんです。

また、中高6年間という長い期間があるからこそ、自分が将来どんな大人になりたいのか、しっかり考えられる時間があります。その中で、自分にとって本当に必要な力は何かを見つけ出し、それを身につけていってほしいですね。

河瀬中学校・高等学校の探究学習「アカデミックプログラム」とは

滋賀県立大学でアカデミックプログラムを受講する河瀬中学校・高等学校の生徒たち

▲アカデミックプログラムでは、滋賀県立大学の教授による授業が受けられる!

編集部

河瀬中学校・高等学校の特徴である、探究的な学びについてお教えいただけますか。

宮永教頭

本校では、「アカデミックプログラム」という独自の探究学習を用意しています。これは校訓の「志成」の目標に沿って考えられたもので、自己理解、受容力、自立行動、論理的思考という4つのテーマで構成されています。

この「アカデミックプログラム」では、大学や研究施設の最先端の研究に中学生の内から触れることができます。中学3年生は、通常なら受験勉強に向き合う年代ですが、中高一貫教育の本校はこの期間を使って、学びを広げられるプログラムを通して、生徒たちに様々な体験活動を届けています。

編集部

「アカデミックプログラム」を通じて、生徒さんたちの成長を実感されることはありますか?

宮永教頭

特に、自分の考えを表現する力が着実についてきているのを日々感じますね。それに、いろんな体験を通じて、自分の将来について真剣に考える生徒が増えてきています。

やっぱり、中高一貫校ならではの6年間という時間が、生徒たちの成長にとって大きな意味を持っているんだと思います。目先のことだけでなく、長期的な視点で自分の未来を考えられる、そんな力が身についているのを見ると、本当にうれしいですね。

 琵琶湖博物館での体験から環境保全まで、多彩な学びの機会がある

アカデミックプログラムで琵琶湖の水質調査を行う河瀬中学校・高等学校の生徒たち

▲最先端の研究から地域に根差した活動まで幅広く学べる

編集部

アカデミックプログラムに関して、具体的にはどのような活動をされているんですか?

宮永教頭

例えば、中学1年生では琵琶湖博物館に行って、学芸員さんと一緒に実験や体験をしています。琵琶湖の水質調査や魚の解剖なんかをやるんですよ。

滋賀県の子どもたちは小学校5年生で「うみのこ」という船に乗って琵琶湖の水質調査をする経験をしているんです。アカデミックプログラムはそれをさらに発展させた取り組みになっています。

他にも、2年生では関西宿泊研修があります。明石海峡大橋の技術を学んだり、大阪の町工場を訪れたりしています。今年は少し趣向を変えて、淡路島で英語を使ったアドベンチャー活動もする予定です。

明石海峡大橋の技術を学ぶ河瀬中学校・高等学校の中学2年生

▲2年生で実施する関西宿泊研修はテーマも様々

編集部

かなり多岐にわたる活動ですね。これらの活動の狙いは何でしょうか?

宮永教頭

アカデミックプログラムの目的は、一つのことを深く掘り下げるというよりも、いろんな興味関心を持てるような体験を提供することなんです。子どもたちの学びの視野を広げるのが狙いです。

例えば、琵琶湖周辺に生えている「ヨシ」というイネ科の植物があります。近年このヨシが減少していることから、環境保全の一環として、「ヨシ笛コンサート」なども行っているんですよ。琵琶湖のヨシ保全活動をしているグループの方にもご協力いただき、ヨシ笛の演奏体験も行っています。

また、先ほどもお話ししたように、滋賀県立大学や長浜バイオ大学などの県内の大学で、生徒たちが模擬授業を受ける機会を設けています。中学生のうちから、大学の講義の雰囲気に触れられたり、専門分野の先生方からお話を聞けたりする体験は、生徒たちの探究心に良い影響を与えているようです。

大学教授による「スタープログラム」で専門的な学問に触れる

アカデミックプログラムの中でもより専門的な学習ができる「スタープログラム」を受講中の河瀬中学校・高等学校の生徒たち

▲普段はあまり学ぶ機会のない「日本語学」や「対応」「データサイエンス分野」が学べる

編集部

アカデミックプログラムの中に「スタープログラム」というのもあると聞きました。これはどのようなものですか?

宮永教頭

スタープログラムは、博士号を持つ大学の先生方を特別非常勤講師としてお招きして、授業をしていただくものです。例えば、日本語について学ぶ「日本語学」などのテーマで、それぞれの専門分野を中学生にもわかるように教えてもらっています。

本校では滋賀県立大学の教授をお招きし、データサイエンスなど比較的難しいテーマの授業もしていただいているんですよ。

編集部

中学生向けに大学レベルの授業を受けられるんですね。生徒の反応はどうですか?

宮永教頭

日本語学の授業なんかだと、「普段何気なく使っている言葉についてより考えるようになった」という感想をよく聞きます。データサイエンスの授業では、「こんな分野があるんだ」と初めて知る生徒も多いですね。

実際に、このプログラムをきっかけに「将来、海外で日本語を教えたい」と思うようになった生徒もいるんですよ。

編集部

こういった多様な経験が、生徒の皆さんの将来の選択肢を広げているんですね。

論理的思考力と表現力を鍛える「ディベート学習」

「ディベート学習」の授業を受ける河瀬中学校・高等学校の生徒たち

▲ディベートスキルを磨いて、自分の思いを届ける表現力を伸ばす

編集部

探究学習を進めていく中では、個人だけではなくグループで協力したり、ときには意見し合うこともあるかと思います。関連した取り組みはありますか?

宮永教頭

本校の特色ある取り組みの一つとして「ディベート学習」を実施しています。中学1年生から3年生が対象で、基本的にどの学年も2学期の終わりから3学期にかけて取り組んでいます。

編集部

いきなりディベートに挑むのは難しいように思うのですが、どうやって進めているのでしょうか。

宮永教頭

おっしゃるとおりいきなり本格的なディベートは難しいので、段階を踏んで指導しています。1年生はまず「ディベートとは何か、どういうものなのか」を学ぶところから始めていて、例えば賛成と反対に分かれて、自分の意見の根拠となる情報を集めて整理する方法や、発表の仕方などを学びます。

その後、最初はクラス内で議論し、それからクラス同士のディベートへと進んでいきます。こうやって、少しずつスキルを積み上げていくんです。

編集部

学年によってテーマも変わってくるんでしょうか?

宮永教頭

そうです。1年生は河瀬中学校に関すること、2年生は滋賀県のこと、3年生は日本全体に関することをテーマにしています。学年が上がるにつれて、視野を広げていく感じですね。

具体的には、例えば2年生だと「滋賀県の人口格差問題を解消するために、テーマパークを作るべきか否か」といったテーマで議論しました。賛成派は経済効果を主張し、反対派は自然環境の破壊を懸念するといった具合です。

編集部

そういったテーマは、アカデミックプログラムでの体験とも関連しているんでしょうか?

宮永教頭

特段、意識しているわけではないのですが、アカデミックプログラムで学んだことが、ディベートの際の論拠として活用されることもあります。例えば、琵琶湖博物館での環境学習が、環境保護の観点からの議論に役立つこともあります。

編集部

ディベート学習を通じて、生徒にはどのような力が身についていると感じますか?

宮永教頭

まず、情報を収集する力が着実についていきますね。3年生になると、プレゼンの資料作りも上手くなり、訴求力のあるものを作れるようになりますよ。その中でも、一番成長を感じるのは話す力です。

「河瀬推し本バトル」という本の紹介をする取り組みも1・2年生の1学期にやっているんですが、そういった経験も重ねていくことで、自分の意見や考えをまとめて発表する力がついてきます。

独自の研究で全国大会にも出場した「科学部」の活動

ワラジムシの研究発表をする河瀬中学校・高等学校の科学部

▲全国大会での科学部の発表風景。研究は生徒たちが主導し、自身の興味や関心を広げていく

編集部

河瀬中学校・高等学校の科学部は全国大会に出場するほどの実力があると聞きました。その活動内容を教えていただけますか?

久保川先生

科学部は中高合同で活動していて、過去10年で7回ほど全国大会に出場しています(取材は2024年8月)。

この大会は、「全国高等学校総合文化祭」というものです。簡単に言うと、運動部の全国大会の文化部版みたいなものですね。物理、化学、生物、地学、ポスター(パネル)の5部門があって、どの部門に出るかはその時々で変わるのですが、今回は生物部門で出場が叶いました。

編集部

具体的には、どんな研究をしていたのですか?

久保川先生

そのときは、ワラジムシの交替性転向反応に関する研究でした。ワラジムシが障害物にぶつかったときの行動パターンについて、従来の定説とは異なる新しい発見があったんです。

編集部

中高生がそんな専門的な研究をしているんですね。どうやって研究を進めているんですか?

久保川先生

論文や先行研究を調べるのはもちろん、大学の先生に自らアポを取って、アドバイスをもらったりしています。自分たちでビデオを撮影して、ワラジムシの動きを分析したりもしていますよ。生徒たちは本当によく頑張っていますね。

なお、研究に関しては生徒主導で、私たち教員はあくまでファシリテーター役です。生徒たちが「これをやりたい」と言ってきたら、それをサポートする形です。探究や研究は、型にはめるのではなく、生徒たちの興味や関心から始まるべきだと考えています。

中高合同で取り組む琵琶湖の保全プロジェクト

琵琶湖の沖島にある漁業組合を訪問する河瀬中学校の科学部

▲漁業組合の人たちから学び、琵琶湖の「今」を知る

編集部

先ほどの全国大会の発表は高校生だったと思いますが、中学生の科学部員はどんな活動をしているんですか?

久保川先生

中学生は別のプロジェクトを進めています。最終目標として琵琶湖の保全を掲げており、いくつかのプロジェクトを同時進行で行っています。

まず、琵琶湖にいる魚を全部飼育するプロジェクトがあります。それから、小学生向けの環境啓発活動や、未利用魚の活用についても研究しています。最近では、沖島という琵琶湖の島にある漁業組合を訪問して、現状を学んできました。

また、東京の中学生と連携して、都会の子どもたちに琵琶湖の環境について学んでもらうスタディツアーの企画も考えています。教育財団からの助成金も活用しながら、さまざまな活動を実施していますね。

編集部

そこでの経験は、生徒たちにどのような影響を与えていると感じますか?

久保川先生

やはり、視野が広がっていると感じます。目の前で1匹の魚を見るところから始まり、漁業全体や環境問題まで考えられるようになっています。

それに、こういった経験は進学にも良い影響を与えています。最近では国公立をはじめとする難関大学の実施する特色入試に挑戦する生徒も出てきています。学力だけでなく、探究心や問題解決能力が磨かれているんだと思います。

科学部での活動を通じて、生徒たちが自分の興味を深め、それを将来につなげていく。そんな姿を見られるのが、教員としての喜びですね。

滋賀県立河瀬中学校・高等学校からのメッセージ

滋賀県立河瀬中学校・高等学校の正門

編集部

最後に、入学を考えている生徒さんやその保護者の方々にメッセージをお願いします。

宮永教頭

河瀬中学校・高等学校では、今回お話しした「アカデミックプログラム」を始め、独自のカリキュラムを通して、生徒たちにさまざまなことを体験してもらっています。

また昨今、自分の意見を表現することに苦手意識を感じているお子さんが多いことをふまえ、本校では自分の思いや考えを自分の言葉できちんと伝えられるように発表の機会を意識的に設けています。

このように、自分の夢や目標に向かって、着実に一歩ずつ歩んでいく力を育みながら、大学進学だけにとらわれるのではなく、その先の将来に向けて「どんな大人になりたいか」ということを、思い描いていけるような学校生活を用意していますので、ぜひ、河瀬中学校・高等学校で、充実した6年間を過ごしてもらえたらうれしいです。

編集部

御校は生徒一人一人の可能性を大切にし、未来を見据えた教育を行っている素晴らしい学校であることがよくわかりました!本日はありがとうございました。

滋賀県立河瀬中学校・高等学校の進学実績

滋賀県立河瀬中学校・高等学校の令和5年の大学合格実績としては、滋賀大学、滋賀県立大学をはじめとする国公立大学に28名、早稲田大学、同志社大学、立命館大学、龍谷大学、京都産業大学などを含む私立大学に435名の合格者を輩出しています。

■進路実績(滋賀県立河瀬中学校・高等学校の公式サイト)
http://www.kawase-h.shiga-ec.ed.jp/education/career

滋賀県立河瀬中学校・高等学校の在校生の口コミ

滋賀県立河瀬中学校・高等学校の在校生から寄せられた口コミを紹介します。

河瀬高校での一番の思い出は、荒人漈、特に文化祭です。(中略)困難を乗り越えて、企画した自分たちも含めた全生徒が楽しめる文化祭になり、喜んでもらえたことにとてもやりがいを感じました。

私は、中高6年間吹奏楽部に所属していました。(中略)仲間と作り上げた舞台でいただく拍手に何度も救われ、この上ない達成感を感じることができました。この河瀬で最高の仲間に出会えて本当に良かったと思っています。

河瀬高校には自分のやり方や判断を結果に繋げられるような環境が充実しています。思い返すとそのような環境だったからこそ自分の可能性を信じ、総合型選抜で受験をすると決めることが出来たと思います。

滋賀県立河瀬中学校・高等学校の生徒は、行事・部活が充実していることや、生徒自身の考えを尊重してくれる学校環境を高く評価していました。また、受験のサポートも手厚く、安心して勉強に取り組めたことにも満足している様子も見られました。

■滋賀県立河瀬中学校・高等学校の学校案内より抜粋
http://www.kawase-h.shiga-ec.ed.jp/cms_kawase/wp-content/uploads/2023/07/07cc08a3536171f75c16bb4cd36cf39a.pdf

滋賀県立河瀬中学校・高等学校へのお問い合わせ

運営 滋賀県立河瀬中学校・高等学校
住所 滋賀県彦根市川瀬馬場町975
電話番号 0749-25-2200
問い合わせ先 http://www.kawase-h.shiga-ec.ed.jp/contact
公式ページ http://www.kawase-h.shiga-ec.ed.jp/

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