独自の教育を実践する注目の学校を紹介する本企画。今回は、東京都豊島区にある女子校「川村中学校・高等学校」を紹介します。
同校は、1924年の創立以来、「感謝の心」を基盤とした女子教育を行っている伝統校です。人間性を高めるための月間目標を定め、歴史あるイギリスへの語学研修やオンライン交流等を通じて、美しい英語力を身につけることができます。
今回は、そんな川村中学校・高等学校の建学の精神や特徴的な取り組みについて、同校の副校長を務める舘野先生にお話を伺いました。
この記事の目次
川村中学校・高等学校の建学の精神と12の目標
まずは、御校の建学の精神や教育目標についてお聞かせください。
本校は、関東大震災の惨状を見た創立者・川村文子が、女性がしっかりと教育を受けて、自立し世に貢献していかなければ復興を成し遂げられないと考えたことをきっかけに、震災からわずか約半年後の1924年4月12日に前身となる「川村女学院」として開校しました。2024年には、おかげさまで卒業生3万人を輩出し、100周年を迎えました。
建学の精神は、「感謝の心」「女性の自覚」「社会への奉仕」の3つです。このうち、大きな柱は「感謝」です。本校では、万事に対して感謝の心を持ち、また謙虚な気持ちで相手を敬い、ありがとうの気持ちを大事にすることに重きを置いた教育を行っております。
この3つの建学の精神に基づき、学園一貫の「月間目標」を定めています。順にお伝えすると4月は平和、5月は報恩、6月は健康、7月は勤勉、8月は努力、9月は感謝です。本校創立の背景にある震災が起こった9月は、原点に戻るという意味を込めて「感謝」としています。
そして10月は本分、11月は整頓、12月は反省で1月が向上です。このあたりは繋がっていますね。11月の「整頓」とは、身の回りだけではなく、頭の中の整理整頓も含めます。それがしっかりできないと、反省に繋がりません。
この「反省」は振り返るだけではなく、次はどうすれば良いかを考えることまでを含めています。頭を整理整頓し、反省し、そして1月の向上に繋げていきます。最後に2月は礼節、3月は質素となっています。このように本校には月ごとに12の目標があります。
本校の特徴として給食を中学1年生から高校3年生まで実施しています。また、給食を「会食」と呼んでいます。食事は、命をいただくことになりますので、そこにも感謝の気持ちがあると考えています。また、マナーの修得の場であるので本校の指定のカトラリーセット等を用意して会食をいただいています。
川村中学校・高等学校が力を入れるグローバル教育
ここからは、川村中学校・高等学校の英語教育・グローバル教育への取り組みについて伺いました。
現地の学校へ通いながらホームステイを体験するイギリス語学研修
▲イギリス語学研修に参加した生徒たち
御校のグローバル教育についての取り組みを教えてください。
本校は、英語教育に力を入れております。一つは、中1から高3までの希望者が参加する15日間のイギリス語学研修です。現地の学校に通いながら、コッツウォルズ、オックスフォード、バースのエリアに分かれ、全員別々のご家庭にホームステイします。
1人1家庭ですので、英語の研修がしっかりできるプログラムとなっております。2024年に関しては、最後にロンドンの観光もスケジュールに入れています。
▲イギリス語学研修に参加した生徒たち
イギリス語学研修を経験した生徒さんの成長や変化がありましたらお聞かせください。
イギリス語学研修は1人1家庭でのホームステイですので、全て自分で意思の疎通を図らなければいけません。そうした状況を乗り越えて帰ってくるわけですから、帰ってきたときの生徒たちの表情は、こころなしか大人になったように感じます。保護者の方からもそのようなお話を聞きますね。
やはり10代でイギリスの学校に通い、現地の学校にホストファミリーが迎えに来てくれて一緒に過ごすというのは、語学だけではなく、異文化を体験できる貴重な経験です。
イギリス語学研修を経験した生徒さんの感想はいかがでしょうか?
イギリスのホストファミリーは、非常に入念な準備をして臨んでくださっています。そうしたこともあり、とにかく現地の方が優しく温かく迎えてくれたという声を聞きます。食事を食べるスピードまで気を使ってくださるそうです。
現地の生徒さんとはどういった交流をされるのでしょうか?
自分たちが現地の文化を体得するだけではなく、留学する生徒は日本の文化を紹介するために事前に日本文化について十分な準備をして臨みます。例えば、浴衣を持っていって着てみせたり、日本の伝統的な遊びや書道を披露したり、ソーラン節を踊ったこともありました。英語でのプレゼンテーションなので、個々の生徒は緊張していましたが素晴らしい経験になったと思います。
「英語漬け」の特別プログラムやAIアプリの活用
▲イングリッシュ・チャレンジ・プログラム(ECP)の実施風景
そのほか英語教育・グローバル教育への取り組みとしてはいかがでしょうか?
本校では「イングリッシュ・チャレンジ・プラグラム(ECP)」を実施しています。連続した3日間、通常の授業を全く行わず、特別なプログラムを組み、英語漬けの生活を学校で体験するので、いろいろな国の方が話す英語に触れ、リスニング力の向上も図れます。
その中でも、歴史的な背景が大きいことからイギリスを意識しています。イギリスの文化や歴史などにも触れながら、1日の最後にはイギリスの学生やファミリーとオンライン交流を実施します。
さらに本校では、英語の4技能をしっかりと学習できるAIを活用した英語学習アプリを取り入れていますので、その中で英検や共通テストの対策講座など、それぞれの進度に合った自学自習ができるようになっています。
英語学習アプリは、ライティングだけでなく、スピーキングやリスニングの機能もあります。本校は英検の準会場にもなっていますので、年3回、全員が慣れた環境で団体受験をしております。
ECPについては具体的にどのように実施されるのでしょうか?
英語は中1から高3まで、習熟度別授業に分かれていますので、こちらのECPに関しても、そのクラスに分かれて実施しています。会話や実践を多く取り入れており、英語でのクッキングやドラマレッスン・ダンスの授業もあり、楽しみながら学んでいます。
▲イングリッシュ・チャレンジ・プログラム(ECP)では英語を使いながらイギリスのお菓子作りに挑戦
ECPを通して生徒さんの英語力の向上は感じられますか?
進級するに従って恥ずかしさが払拭され、慣れてきます。例えば、今まで英語がちょっと苦手で自分から英語を遠ざけていた生徒も、ECPを機会に、とても楽しいものだとわかるケースが多くあります。英語でコミュニケーションを取れる楽しさを知り、多くの生徒が英語に興味を持ち、更なる向上を目指すようになってきます。
社会課題に取り組み、プレゼン力を伸ばす川村中学校・高等学校の探究学習
御校の探究学習についての取り組みをご紹介ください。
総合的な学習の時間を設けており、中1では「地球環境」、中2では「国際交流・国際理解」をテーマに学習します。そして、中学3年生では、「自覚」というテーマで社会で困っている課題を自分たちで見つけ、自分たちで解決策を考え、最後にポスターセッションを行う社会課題コースに取り組みます。
例えば、LGBTQの問題をテーマに考え、皆が差別されることなく過ごしやすい社会を作るためにはどうすれば良いか、ベビーカーを押しているお母さんがより過ごしやすい社会にするにはどうすれば良いかなど、自分たちで身近な問題を取り上げてグループで解決策を考えます。
中1から少しずつ探究の力をつけて、3年生でテーマを決めて発表するわけですね。
そうです。発表はとても重要な機会だと捉えています。それが個人発表であっても、グループ発表であっても、自分たちの考えをみんなに知ってもらうために、どう訴えかけていくのか、どうすればわかりやすく伝わるか、みんなの心に残るかを考えながら、発表のスキルを磨きます。
そのためには慣れが必要です。社会に出ると必ず発表の場がありますから、中高は練習の場です。失敗を繰り返しながら成長していきます。そのため、中高では発表の経験を多く持つようにしています。
中1・中2の総合的な学習のテーマをもとに進め、中3ではポスターセッションになり、高校1年生ではまたクエストエデュケーション(※)の企業探究コースで職業探究プログラムに取り組んだ上でプレゼンをしますので、その力に繋がっていると思います。
(※)中高生向けの探究学習プログラムで、企業との連携などを通して「生きる力」を育む内容となっている
▲クエストエデュケーション
クエストエデュケーションでは、どんなことをされているのでしょうか。
2024年は、7社の企業にご協力のもとでミッションをいただき、その課題に取り組んでいます。正解はありませんから、このミッションをどう捉え、どのような方向に持っていくかは生徒自身の発想力を延ばすチャンスでもあります。よく考えて、いろいろなデータも取りながら、只今奮闘中です。
プレゼン力は、中1から徐々に育っています。高校1年生のクエストエデュケーションでプレゼンをして、優秀なチームは全国的な発表の場「クエストカップ」に出場します。
▲クエストカップに参加したときの様子
中3のテーマ設定はどのように決めるのですか?
あまり生徒たちが新聞やネットの情報でいろいろと探してきます。今の社会がどうなのか、自分を取り巻く社会はどうなっているのかを、しっかり調べるようになります。そのため課題設定も時間がかかります。
そういった過程で、先生方はどのようにサポートされていますか?
正解のないミッションに取り組み、探求していくことは社会に出てからは必要とされる力です。その第一歩として友人がどのような考えをもっているかを意見交換しながらさぐっていくことも大切です。生徒たちは、自分の言いたいことだけを言ってしまいがちですが、そのあたりは教員も見守り、サポートしております。
川村中学校・高等学校からのメッセージ
▲取材に対応いただいた副校長の舘野先生
最後に、御校に興味を持たれたお子さまや保護者の方に向けてメッセージをお願いします。
本校は、1924年の創立以来、感謝の心を育む女子教育を行っている学校です。制服は、創立以来変わっていないセーラー服です。3本ラインは川村の「川」をモチーフにしており、独特のあしらいが可愛らしいと評判で、生徒たちはみんなこの制服が大好きです。
校章には3羽の鶴がかたどられています。正面を向き、まっすぐ前に進もうとしている真ん中の鶴は生徒です。それを左右から支え導いている鶴は、片方がご家庭で、もう片方は私たち学校です。
本校では、成長著しいお嬢様をお預かりするにあたり、学校と家庭が同じ考えで生徒を支えていくことは、とても大切だと考えており、本人・家庭・学校の三位一体の教育を通して、豊かな人格を育んでいます。
部活動も盛んで、楽しい学校行事もたくさんあります。安心して大切なお嬢様を通わせることができる学校であると自負しております。もし本校に興味をもっていただけたのであれば、ぜひ一度足を運び、学校の雰囲気を感じてみてください。
本日は、貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。
▲部活動も活発。フラダンス部や陶芸部など、幅広いクラブがある
川村中学校・高等学校の進学実績
川村中学校・高等学校では、ほとんどの生徒が進学しており、2024年度4月の進路状況としては、73%が4年制大学へ、2%が短期大学へ、17%が専修・各種専門学校へ進学、8%は浪人として次年度の受験を目指しています。
併設の川村学園女子大学への進学希望者に対しては「優先推薦入学制度」があり、同校の合格を確保した上で、外部大学を受験できる「推薦資格保有制度」があるので、安心して他の大学を受験することができます。
また、同校からは多くの生徒が指定校枠を利用して進学しています。東京理科大学、学習院大学、成蹊大学、成城大学、東洋大学、日本大学、女子美術大学、武蔵野音楽大学、北里大学、順天堂大学、東邦大学、麻布大学ほか多くの大学の指定校推薦があります。
■進学実績(川村中学校・高等学校公式サイト)
https://www.kawamura.ac.jp/cyu-kou/high/track.html
川村中学校・高等学校の卒業生・保護者の口コミ
ここからは、川村中学校・高等学校の口コミを紹介します。実際に通学していた卒業生や保護者の声をまとめました。
▲温水プールなど、施設も充実している
川村中学校・高等学校へのお問い合わせ
運営 | 川村中学校・高等学校 |
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住所 | 東京都豊島区目白2-22-3 |
電話番号 | 03-3984-8321(代表) 03-3984-7707(入試広報室) |
問い合わせ先 | https://www.kawamura.ac.jp/cyu-kou/jyuken/access.html |
公式ページ | https://www.kawamura.ac.jp/cyu-kou/ |