ぽてん読者の皆さんに、いま注目の学校を紹介するこの企画。本記事では、100年以上の歴史と伝統を持つ大阪府茨木市の「関西大倉中学校・高等学校」の理念やカリキュラム、学校の雰囲気などを紹介します。
知・徳・体のバランスの取れた人の育成を目指す同校は「徳育」を土台にした教育を実践しており、全員が難関大学への進学を目指すと同時に全国レベルの成績を残す部活も多い「文武両道」の学校として知られています。
約12万平方メートルの広大なキャンパスは自然豊かなエリアにあり、2022年には創立120年の記念事業の一環で多機能型図書館やコミュニケーションラウンジなどを備える中央共用棟が完成しました。
今回は、入試広報部の部長を務める松村健司先生にインタビューさせていただきました!
この記事の目次
社会で活躍する人を育成する関西大倉
はじめに、関西大倉中学校・高等学校の成り立ちや教育方針についてお話しいただけますでしょうか?
本校は、1902年に工学博士の平賀義美先生が創立した関西商工学校と、大成建設や帝国ホテルなどを創業した実業家の大倉喜八郎翁が1907年に創立した大阪大倉商業学校が合併してできた学校です。関西商工学校は、パナソニック創業者の松下幸之助氏が学んだ学校であり、大倉喜八郎翁は渋沢栄一氏らと共に明治時代の産業界の育成に貢献しました。
両校は、100年、200年後の日本の将来を展望し、国際社会で活躍できる人材の育成を願って創立されており、これら創業者の「実学主義」や「先進性」を受け継いでいます。
難関校への進学者を多く輩出する関西大倉ですが、大学受験だけでなく、社会に出た後までを見据えた教育を行っているのですね。
その通りです。学力だけでなく、マナーや節度、自覚ある行動ができるバランスのとれた人へと成長してほしいと考えています。
大学進学をゴールとしない。その先の人生に役立つ特色ある教育とは
ここからは、関西大倉が大切にする「実学主義」や「先進性」が、日々の教育でどのように実践されているのか紹介します。
さまざまな価値観に触れ国際感覚を養うプログラムが充実
国際社会で活躍できる人の育成を掲げる関西大倉では、どのようなグローバル教育を行っているのでしょう?
代表的な授業に、中学校で週に1コマ実施する「グローバルコンピテンスプログラム」があります。この授業では、言語を学ぶだけでなく、異文化の人々と効果的なコミュニケーションをとるための能力を育成し、グローバル社会における様々な視点や世界観をネイティブ教員と一緒に学ぶことを目的としています。
どのような形式で授業が進んでいくのですか?
授業は生徒が中心となる参加型の形態をとり、生徒自身で考え、それをアウトプットすることに重点を置いています。様々な活動を通して、生徒が考えたことを共有する場を多く設けています。
実際に海外の人たちと交流できるような機会もあるのでしょうか?
中学3年生以上が参加できるプログラムとして、オンラインで海外の学生と交流する「PBL型オンライン国際交流」を実施しています。
長期期間中に5日間にわたって行うPBL(課題解決型のプログラム)で、温暖化やゴミ問題などの社会課題をテーマにして、その現状や原因、解決方法をグループでディスカッションし、発表し合います。
多様な考えや視点に触れることができるのは貴重な経験ですし、英語でのコミュニケーション力もつきそうですね。
生徒の中には、初日は「正しい英語を話さないと」と考えて緊張したり照れたりする生徒もいます。しかし、3日目くらいになると意識が変わり、どの子も自分の言葉で積極的に表現できるようになりますね。
このプログラムのほかに、高校では2024年から探究活動の一環でベトナム研修が始まります。ベトナムを代表する高校を訪れ、さまざまなテーマでディスカッションを行い、国際的な視野を広げる機会にしたいと考えています。
国語力は「すべての教科の土台」と考え書く力・読む力を伸ばす
中学での特色ある学びとして「作家の時間」、「読書家の時間」という授業を行っていると伺いました。
これは中学1・2年生の国語の授業に取り入れているものです。「作家の時間」は生徒が作家になったつもりで本の題材を見つけて書き、作品を「出版」します。書くことを通じて自分の考えを整理したり、深く考える力や、自分の考えを伝えて他人を動かす力を伸ばします。
「読書家の時間」では、みんなで同じ本を読むのではなく、各自が選んだ本を読みます。読むことを通じて他者の思考や感情を理解したり、他者の思考や感情を自分のそれと関連付けたり比較する力を養います。
それぞれの時間で「書く力」と「読む力」を身につけるのですね。このような授業が必要だと考える理由はなんでしょうか?
当校は国語力はすべての教科の土台と捉えています。最近はスマートフォンの時代になり、長い文章を読んだり文章で表現する機会が少なくなっていますので、まずは本を読むことや文章を書くことの楽しさを体感してほしいという思いからスタートしました。
「作家の時間」で書いた作品は、どのような形で発表しているのでしょうか?
図書館や廊下に掲示したり、学内誌で紹介したりするほか、各種コンクールなどで多くの賞をいただいています。
授業の手応えについて、どのように感じていますか?
本を読む量は確実に増えましたし、表現力も高くなっていると感じます。
生徒へのアンケートでも、9割以上が「文章を書くことが好きになった」と回答しました。「ゲームをする時間が減った」という声もありましたよ。
「大学の学びの楽しさ」を知り主体的に進路を考える
関西大倉では多くの生徒が難関大学への進学を目指すということですが、進学や受験に対するモチベーションをどのように維持・向上させているのでしょうか?
生徒が主体的に大学進学を意識できるよう、中高の6年間を通して「アカデミックな種まき」を行っています。その一例が、現役の大学教授に講義を行っていただく「学問体感」です。
大学の学びの楽しさを体験・体感し、自分の進路を考えるきっかけにしてほしいと考え、京都大学や大阪大学といった主に国公立大学の教授を本校に招き、定期的に開催しています。
専門性の高い大学の授業を体験することは、自分の興味や関心を具体化することにつながりそうですね。
このほか、高校1〜2年生の希望者を対象とした「野生動物学初歩実習」では、大学の研究施設や動物園などへ行き、野生動物の生態を調査します。
この実習では京都大学の学部生の指導のもと、本校の生徒が主体的に研究テーマや研究手法を決め、約1年間にわたって動物を観察し、最後は学会での成果発表に参加します。
実習に参加した生徒からは、どのような感想が寄せられていますか?
高校では経験できないような学術的な研究に触れることで「目的意識を持って学ぶことの楽しさ」を知ったという声や、学びが自分の進路につながっていくイメージを描くことができたという声など、前向きな感想をたくさんもらっています。
▲弁護士などの専門家を招いて理論的思考や多面的な見方を養う「高校生模擬裁判選手権」に参加した。兵庫県大会では優勝の経験も。
自然豊かなキャンパスで送る関西大倉の学校生活
関西大倉は、創立120年を記念して高校棟と中央共用棟を新築したほか、中学棟の改築を行いました。
ここからは、松村先生に新校舎をご紹介いただきながら、関西大倉の生徒がどのような学校生活を送っているのか探っていきます。
緑あふれる静かな環境は集中した学びに最適
まず、キャンパスの周辺環境について教えてください。
本校は駅から離れた森の中にある学校です。そのため、常に自然を感じながら、静かな環境で学びに集中することができます。
敷地面積は甲子園球場約3個分に相当する12万平方メートルで、大阪でこれだけ広大な敷地を持つ学校は珍しいと言えます。大学みたいな雰囲気があると言っていただくこともありますね。
新校舎には生徒たちが集える空間がたくさん
新校舎の特徴はどのような点にありますか?
校舎を「生活の場」と考え、生徒が過ごしやすい空間を作ることを意識しました。
そのため、教室以外にも生徒たちが集まって勉強したり交流したりする場所として、各フロアの中央部に「コミュニケーションラウンジ」を設けているほか、4つの理科実験室を備えるフロアには開放的な自習空間「サイエンスラウンジ」を設置しています。
ICT設備などの機能面についてもご紹介いただけますか?
全教室にプロジェクターを完備しているほか、全館WiFiを利用できるのでタブレットなどのICT専用端末をどこでも使用することができます。
空調システムも整っているので、校舎が新しくなってからは夏休みなどに自主的に学校に来て勉強する生徒が増えました。
5万冊の蔵書を誇る図書館は自習スペースとしても人気
中央共用棟の図書館の特徴についても教えてください。
図書館は人気の本屋さんのような洗練された雰囲気があります。緑に囲まれた落ち着いた空間なので、ここで自習をする生徒もたくさんいます。
学校見学にいらした子どもさんが図書館を気に入って受験を決めていただくこともありますよ。
蔵書数はどのくらいありますか?
蔵書は約5万冊を誇ります。中央共用棟は横長の造りなので、両サイドに本棚に本が並ぶ通路は「ブックストリート」と呼ばれています。
進学校でありながら全国レベルの部活も!
「文武両道」を掲げる関西大倉では、部活動も盛んだと伺いました。
本校は進学校でありながら、クラブ加入率は中高ともに60〜70%と高く、全国大会レベルの部活も複数あります。
どのような部活が高い実績を収めているのでしょうか?
例えば高校の囲碁将棋部は全国高等学校将棋選手権の女子団体戦で全国優勝しました。また、高校ダンス部は、2023年の全国高等学校ダンス部選手権で4位の成績を収めました。
進学校でありながら、部活でも活躍できる理由には何があるとお考えですか?
勉強や、大学と連携したプログラムなどに日常的に打ち込むことが、部活のパフォーマンスにもプラスの影響を与えているのではないかと感じます。
関西大倉中学校・高等学校からのメッセージ
最後に、記事をご覧の読者に向けてメッセージをお願いします。
本校は大学進学だけをゴールに据えた指導ではなく、大学や社会に出てから目的に向かって取り組めるような人の育成を行っています。知・徳・体のバランスを重視し、総合的な力を伸ばしたいとお考えの方には非常にマッチすると思います。
また、都会の学校にはないゆったりした環境で6年間過ごすことは、内面のおおらかさや優しさにもつながるのではないかと思います。
ご興味をお持ちいただけましたら、周辺環境に恵まれた本校にぜひお越しいただき、生徒たちの様子や学校の雰囲気をご覧ください。
関西大倉では、大学の学びを経験する「学問体感」や異なる価値観に触れるグローバル教育を通じて、自らキャリアを切り拓く力や国際感覚を養うことができそうだと感じました。
本日は、ありがとうございました!
関西大倉中学校・高等学校の進学実績
関西大倉中学校・高等学校には、この記事で紹介した「学問体感」以外にも、最前線で活躍する著名人や大学教授による講演会など、進路選択のモチベーションになるキャリア教育が充実しています。
学習支援では、希望者を対象とする放課後の「学習会」や、3つの長期休暇に希望者が参加する特別講習があります。また、進路指導担当には予備校での進路指導経験を持つ人を配置して、先生と生徒が二人三脚で受験対策を行っています。
難関国公立大学への進学に定評のある同校は、京都大学や大阪大学に複数の合格者を出しています。
■近年の進学実績(関西大倉中学校・高等学校の公式サイトより)
https://www.kankura.jp/education/university/results/
関西大倉中学校・高等学校の卒業生の声
ここでは、関西大倉中学校・高等学校で学んだ卒業生の声を紹介します。
恵まれた環境で充実した学校生活を送ることができたという声が目立ちました。また、信頼できる先生のもと安心して勉学に打ち込めたという人も多くいました。
お問い合わせ
問い合わせ先 | 学校法人関西大倉学園 関西大倉中学校・高等学校 |
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住所 | 大阪府茨木市室山2-14-1 |
電話番号 | 072-643-6321 |
公式サイト | https://www.kankura.jp/ |