特色ある教育に取り組む“注目の学校”を紹介するこの企画。本記事では、神奈川県鎌倉市にある中高一貫校の私立男子校「鎌倉学園中学校・高等学校」を紹介します。
同校が力を入れるのは、生徒ひとりひとりが毎年テーマを決めて取り組む「探究学習」。さらには、約40の中から選べるバリエーション豊富なクラブ活動も特徴的です。
そんな同校が重視しているのは、日々の学習だけでなくクラブ活動を含めた「自分の好きなこと」への探究にも手を抜かない「文武両道」。大学受験を視野に入れるとついつい勉強だけに目が行きがちですが、「文」も「武」も大切にすることで、実はとても良い相乗効果があるようで、実際に同校からは有名国立大学や難関私立大学に進む生徒も輩出しています。
今回は、そんな同校の取り組みについて、教頭の小林健一先生にお話を伺いました。
この記事の目次
たくましく自律した人を育成する鎌倉学園中学校・高等学校の教育
まずは、鎌倉学園中学校・高等学校の建学の精神についてお聞かせください。
本校は、「質実剛健(しつじつごうけん)」「自主自律」を建学の精神として掲げています。「質実剛健」は“鎌倉武士のようにたくましい人間になってほしい”という思いを、また「自主自律」には“自分自身で物事を考えて、計画・立案・実行し、自分で自分自身を評価し、そしてまた次に繋げていってほしい”という思いを込めています。
そして「礼義廉恥(れいぎれんち)」を校訓に掲げています。これは、「節度を守ること、自分を実際以上に見せびらかさないこと、自分の過ちを隠さないこと、他人の悪事にひきずられないこと」を意味します。
学校の雰囲気はいかがですか?
本校は、鎌倉の緑豊かな自然と歴史あふれる文化に囲まれている、非常に環境の良い学校です。学校の雰囲気自体も、まさに鎌倉と同じく、伸び伸びとした自由な雰囲気があふれています。
生徒たちからも、「自然体でいられる」だとか「楽しく過ごせる」といった声をよく聞きます。
文武両道を叶える上での試行錯誤が、たくましさと自律心を育む
建学の精神である「質実剛健」「自主自律」を体現するために、どのような教育が行われていますか?
たくましく育ってほしいという「質実剛健」と、自分で物事を考えてほしいという「自主自律」、その両方を兼ね備えた学生を育てるため、本校では手段として文武両道を重視しています。本校では、文武の「武」というのは、クラブ活動に限った話ではなく、自分の好きなことすべてを指します。
なぜ文武両道がたくましさと自律につながるのかというと、文武を両立させようとするとそのうちに上手くいかなくなり、両方の調整や時間の使い方の工夫が必要になるためです。この調整や工夫をする中で、たくましさと自律心が磨かれていきます。
調整や工夫というと、例えばどういうものでしょうか?
例えば、熱心にクラブ活動をする中で勉強が思うように進まず、補習が必要になったとします。補習に出るためにはクラブ活動に影響が出るわけですから、クラブの顧問や仲間に「補習で遅れる」などの報連相をする必要があります。教員から顧問に共有することはできますが、本校では生徒が自分で報告するように指導しています。
これには社会のルールを身につけてもらいたい、という意図もあります。「誰かが報告して調整してくれる」と思っているのと「自分でしなくては」と思っているのとでは、普段の生活に対する責任感もかわってきます。
また、「好きなことに打ち込むためには、“やるべきこと”にも時間を作らなければならない」ということも自然と理解し、自己管理力も身につきます。
御校ではクラブ活動の兼部ができると聞いたのですが、二つのクラブ活動をするとなると、より高い自己管理力が必要になりますよね。生徒の皆さんはどのようにして両立しているのでしょうか?
まずは、「クラブ活動を一つ増やす余地があるのか」ということを生徒自身に見つけてもらっています。
例えば、軟式野球部の生徒が無線部にも入りたい場合、軟式野球部のオフの日に無線部に参加しますが、軟式野球部・無線部の両方のクラブ顧問・部員に報連相が必要です。クラブ活動を一つ増やしても、やるべきことをやりつつ、報連相もしつつ進めていけるか。これを生徒自身も実際にやってみて確認し、またそれぞれのクラブ顧問や教員に認められれば兼部できます。
このような学校生活を送る中で、時間の使い方が上手になり、どんどんたくましく、そして自律していきます。本校で「文」と「武」両者のバランスを取る試行錯誤のなかで、生徒たちは未来を切り開く力を自然と身につけていくのです。
プレッシャーを与えずフォローは手厚い。あえて特進コースを作らないクラス編成
文武両道の「文」を支えるために御校が工夫されていることはありますか?
勉強面で生徒が窮屈な思いをせず過ごせるよう、あえて特進コースを作らず、能力や成績で分けない「フラットなクラス分け」をしています。
レベル分けされていると、例えば何かで悩んだりした時に勉強面で少し成績が落ちてしまうと、今いるクラスから外れてしまうプレッシャーがあります。本校では、勉強もクラブ活動も好きなことも、伸び伸びと楽しんでほしいという思いがあるため、窮屈さを与えないクラス分けにしています。
このように、システムとして成績でわけず締め付け感のない環境ですが、学習面のフォローはしっかり実施しています。例えば、生徒の習熟度別に授業を行ったり、個別対応や補習、あるいは土曜日にセミナーを行うなど、学習面のサポートが手厚いです。
運動部も文化部も全国大会出場!鎌学のクラブ活動
鎌倉学園中学校・高等学校のクラブ活動についても教えてください。
本校には、合わせて約40もの運動部、文化部、同好会があります。本校のイメージとしては運動部が目立っていると思いますが、実は数的には文化部(同好会含む)の方が多いんです。
そして運動部・文化部のどちらも全国大会へ出場した経験があります。
運動部では、2023年は、剣道部が全国大会へ、硬式野球部が秋季県大会でベスト4に進出しました。さらに、2024年にはアメリカンフットボール部が県大会で優勝をおさめました。
▲硬式野球部の生徒たち
文化部では、考古学部や弁論部、囲碁・将棋同好会などは全国大会への出場経験も豊富です。書道同好会は県の書道展やコンクールなどで入選したり、演劇部は地区の春季大会で金賞や最優秀俳優賞を受賞したりしています。
▲2022年に団体奨励賞を受賞した書道同好会の生徒の作品
御校ならではのクラブはありますか?
本校ならではと言えるのは、ESS(English Speaking Society)同好会の活動です。ESS自体は他校でもありますが、本校では鎌倉の環境を活かした活動として、鎌倉駅で外国人観光客に声をかけ、英語で観光案内をしています。
行き先などは相手の要望を聞きつつ決め、一緒に鎌倉を回ります。自分たちの言葉で鎌倉の魅力を伝え相手に満足してもらうという体験を通し、生徒たちは授業では学べないかけがえのない経験をしているようです。
▲ESSに所属する生徒たちと外国人観光客
納得いくまでクラブ活動に打ち込むからこそ、受験勉強にも火がつく
クラブ活動が盛んな御校ですが、受験勉強とのバランスはどのようにしているのでしょうか?
大学の合格実績を見ると、実はクラブに所属していなかった生徒よりも、クラブ活動を最後までやりきった生徒のほうが納得のいく進路を得ている印象があります。
保護者の方からは、「そんなにクラブに力を入れていたら受験に不利なのでは?」という相談を受けることもあるのですが、むしろ勉強ばかりしている生徒のほうが時間の使い方がうまくいかず、消化不良になっている姿を見かけます。
文武両道の「武」の部分で自分なりに納得したからこそ、「文」の部分も頑張れるのだと思います。たとえばラグビー部などは大会に勝ち進むと高校3年生の秋頃まで活動が続きますが、自分で時間をやりくりして受験に挑み、国立の最難関大学に現役合格した生徒もいました。
コンテスト優勝も。鎌倉学園中学校・高等学校の探究学習
鎌倉学園中学校・高等学校の探究学習について教えてください。
本校の探究学習は、高3以外の学年すべて、毎年年度始めにテーマを設定し、1年間かけて探究活動を行っています。中学生のうちは各学年でテーマを設けますが、高校生になると、教員が用意したテーマから選ぶ以外に、自分でテーマを考えることもできます。
これが結果的にどうなるかというと、クラスの半数以上の生徒が自分で好きなテーマを決めて探究学習を進めます。本校は“自分の好きなこと”を見つけている生徒が多く、この探究学習にもその特徴が出ていますね。
生徒自身が考えたテーマの一例を教えていただけますか?
2023年に当時の高校2年生の生徒が考えた「クラゲアラート」ですね。これは、海でのフィールドワークとAIを駆使して毒クラゲ発生のメカニズムを研究して開発した、海水浴客向けにSNSでクラゲの発生日と場所を知らせる予測システムです。
この生徒は全国の中高生が競い合う「中高生探究コンテスト2024」に出場し、応募総数1857の中から「困りごと部門」で最優秀賞に選ばれたんです。のどかで伸び伸びとした校風の中で、自分で時間の使い方を考えながら探究に打ち込んだことが成果につながった、本校らしい例だと思っています。
この生徒に限らず、探究学習の成果は、論文にまとめたりスライドを作ってプレゼンテーションをしたりと、何らかの形でアウトプットしています。探究学習がきっかけとなり自分の興味を知り、高校卒業後の進路の手がかりを得ている生徒も多いです。
鎌倉学園中学校・高等学校でのスクールライフ
ここからは、鎌倉学園中学校・高等学校の学校生活ならではの取り組みをご紹介します。
理数教育に海外研修。「体験」を重視したプログラムが豊富
鎌倉学園中学校・高等学校の学校生活ならではの取り組みを教えてください。
理科教育・海外研修もあります。たとえば、中学校の理科教育では、週に1回必ず実験観察の授業があります。高校では、一日かけて科学のおもしろさに触れる「サイエンスデー」、さらに高校2年生、3年生で理系に進むと、理科教育に特化した「K-Labo(鎌倉学園ラボラトリー)」という授業も用意しています。
K-Laboでは実験を行い、その結果を考察して、考察にもとづいた入試問題を演習します。2コマ連続の授業となっていて、1週目に実験と考察を行い、2週目に演習授業を進めています。理系大学をめざす生徒に、特に力がつく環境が整っていると言えます。K-Laboでの経験は、大学に進学してからのアドバンテージにもつながっています。
海外研修についても教えてください。
中学3年生の希望者は、春休みにベトナム研修旅行もしくは台湾研修旅行に参加できます。また、高校1年生から2年生で行う探究学習で、世界遺産探究もしくはヨーロッパ探究を選択すると、カンボジアもしくはポーランド・ドイツへ研修に出かけます。どれも単なる海外留学ではなく、現地の人と交流し意見交換をしながら自分自身に向き合うことを主な内容としています。
ただ訪問するだけではなく、現地の小学校で支援活動を行ったり、生徒たちと交流したりするのがメインです。他にも、英国語学研修などもあります。
▲ベトナム研修のようす
心がスッキリする坐禅教室も。学校隣のお寺で行う仏教教育
▲建長寺で行われる坐禅教室のようす
学校生活の中で、特徴的な取り組みがあれば教えてください。
年に数回、学校の隣にある建長寺さんで坐禅教室を行っています。1回につき10〜20分の坐禅を行うのですが、生徒たちからは「心がスッキリした」といった声を聞きます。
特に通常の授業に仏教を取り入れているわけではありませんが、お釈迦さまの誕生を祝う「花祭り」など、年に数回、建長寺の行事に参加します。
また、この建長寺がけんちん汁発祥のお寺という説があることから、高校1年生の家庭科の授業の一環として「けんちん汁研修」も実施しています。この研修は、仏教的な食事の作法を学びながら、実際にけんちん汁をいただくというものです。
▲けんちん汁研修のようす
鎌倉学園中学校・高等学校からのメッセージ
最後に、記事をご覧のお子さんと保護者の方に向けてメッセージをお願いします。
鎌倉学園中学校・高等学校は、自分の好きなことに力を入れつつ勉強も頑張りたい、そんな方にぴったりの学校です。学習面の不安は教員がしっかり見守って取り除くので、ご安心いただければと思います。
共学ではないことで生徒たちはみんな自然体で伸び伸びと過ごしており、おだやかな校風でもあります。鎌倉の緑豊かな自然と歴史あふれる文化に囲まれた、非常に環境の良い本校では、理想の中高6年間が過ごせると思います。ぜひ、鎌倉学園中学校・高等学校も進路選択のひとつに加えていただければうれしいです。
多様な教育内容や充実したクラブ活動などのお話から、まさに文武両道の学校生活のようすを感じ取ることができました。本日はありがとうございました!
鎌倉学園中学校・高等学校の進学実績
高校1年生の段階から、将来就きたい職業を意識したきめ細やかな進路指導を行う鎌倉学園中学校・高等学校では、有名国立大学や難関私立大学に進む生徒も多いです。
2023年度は、一橋大学、京都大学、東京工業大学をはじめとする国公立大学に89名、早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学、東京理科大学(早慶上理)に185名、明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学、学習院大学(GMARCH)に434名、その他私立大学に607名が合格しています。
■近年の大学合格実績(鎌倉学園中学校・高等学校公式サイト)
https://www.kamagaku.ac.jp/counseling/results.html
鎌倉学園中学校・高等学校の保護者・在校生の口コミ
最後に、鎌倉学園中学校・高等学校に通う生徒の保護者や在校生から寄せられた感想の一部をご紹介します。
とても自由で活気があるという声が多く見られました。受験前に学園祭へ行き、楽しそうな雰囲気を感じて入学を決めたという生徒もいるようです。また、先生の手厚いサポートや、文武両道を意識した学校生活のようすを口コミからも感じ取ることができました。
鎌倉学園中学校・高等学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人 鎌倉学園中学校・高等学校 |
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問い合わせ先 | 学校法人 鎌倉学園中学校・高等学校 |
公式ページ | https://www.kamagaku.ac.jp/ |
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