地域課題に向き合い、社会に貢献する人材を育む「海星中学校・高等学校」の教育|中高一貫校

ぽてんをご覧の皆様に、注目の学校をご紹介する本企画。今回ご紹介するのは、長崎県長崎市にある共学の私立中高一貫校「海星中学校・高等学校」です。

カトリックのミッションスクールである同校。地元・長崎の地域課題の解決に取り組む探究学習のほか、授業を離れて幅広いテーマを学ぶ「講座制授業」など、生徒の知的探求心を向上させるプログラムに定評があります。また、グローバルで活躍する人材を輩出することを目指し、国際交流も活発に行っています。

今回、海星中学校・高等学校の教育方針や、具体のカリキュラムなどについて、中学教頭の前田先生にお話を伺いました。

学力を伸ばし社会に奉仕する。海星中学校・高等学校の建学の精神

海星中学校・高等学校の敷地内にある修道院

▲学校敷地内にある修道院。キリスト教の精神の下での教育が行われている

編集部

まず、海星中学校・高等学校の建学の精神や、校訓についてお聞かせいただけますでしょうか?

前田先生

本校は1892年、カトリック・マリア会のジャック・バルツ神父によって創設されました。同じマリア会である姉妹校は暁星学園(東京)、明星学園(大阪)、札幌光星学園(札幌)があります。

カトリックのミッションスクールである本校の建学の精神は、校訓である「神愛・人間愛」です。これは聖書の一節「心を尽くし、精神を尽くして、あなたの神である主を愛しなさい」(マタイ22章39節)から取られた言葉です。

具体的には「人間の尊さを学ばせる」「判断力と自立心を養わせる」「人間の社会性を理解させ、基本的なしつけを身につけさせる」という思いが、込められています。学力を伸ばすとともに、正しい価値判断ができ、社会に奉仕できる人材を育てることに取り組んでいます。

そのうえで、中学、高校にそれぞれ学校目標というものを立てています。私が教頭を務める中学校に関しては「自ら学び、共に拓く」という目標です。

育成すべき生徒の具体像としては5つあり、「自主性・主体性がある」「学びへの意欲や行動力を備えている「周囲と協働し、多角的、客観的な視野を持っている」「礼儀があり、周囲への感謝や気配りができる」「新たな道の開拓に積極的に挑戦する」という目標を持って、教育に取り組んでいます。

地域課題を見つめる海星中学校・高等学校の探究学習

海星中学校・高等学校では、地元長崎の課題に向き合い、生徒の探究心を育む学習に注力しています。このパートでは、同校の探究学習の特色についてうかがいました。

グローバルな視野を持った人材を育てる中学校の探究学習「長崎学」

探究学習に取り組む海星中学校・高等学校の生徒たち

▲探究学習として、地元にフォーカスした「長崎学」に取り組んでいる。教室にとどまらず地域の課題や魅力を見つめる

編集部

探究学習では、地元に密着した取り組みに注力されているそうですね。どのような内容か教えていただけますか。

前田先生

中学校では、本校の地元である長崎に焦点を当てた「長崎学」に3年間取り組んでいます。生徒は地方の身近な社会課題を前に、何が原因なのか、そしてどうすれば解決できるのかを考えるものです。

長崎学の狙いは、考える力を育むことで、将来グローバルな視野に立った未来志向型の地域創生を実現できる人材を作ることにあります。様々な調べものには、タブレット端末を使います。

中学1年では「長崎を知る」と名付けた校外学習に取り組みます。地元ならではの土地の魅力を調べてみたり、実際に足を運んだりします。

事業所や長崎の課題について2年生では職場体験があります。社会で働く方々とのやり取りを通じてコミュニケーション力を磨きます。さらに、事前学習を踏まえて実施したアンケートを元に、問題解決に向けた探究を深めます。

締めくくりの中学3年では、研修旅行の機会を活用して、視野を広げます。関西方面での旅行のケースでは、長崎と関西とで、企業数などの経済規模や、観光地としての違いを考察します。そのうえで、長崎の今後の発展のために必要なことを考えます。

編集部

探究学習に取り組んだ生徒は、どんな発表をするのでしょうか。実例をお聞かせください。

前田先生

優秀な考察については、中学校の文化祭のような場である「文化発表会」で発表します。保護者の方や本校に関心をもっている小学生、職場体験でお世話になった企業の方も訪れますので、登壇する生徒は大変張り切っています。しっかりとデータを集めたり、関係者の話を聞いたりして練られたプレゼンテーションが多いです。

その中でも、ある生徒の発表が印象に残っていますね。この生徒は、「長崎の売りである長崎港の夜景がさらに美しくなれば、さらに多くの観光客が来てくれるのではないか」という提案をしたんです。そして実現のために、光の量をもっと多くして維持するにはどうすればいいかを考えました。

考察の中で気づいたのは、高齢化の進行です。山の上のエリアに昔から住んでいたお年寄りが、今後の生活のためにより便利な都市部に移住する動きが進み、夜景を構成している広く点在していた光が少なくなりつつあるという指摘でした。

それだけでもよく調べられていると思いましたが、生徒はそれだけにとどまりませんでした。さらに「そもそも高齢者の方々が山の上のエリアに住み続けるためにはどういう支援が必要か」という課題を見つけ、論理を展開していっており、教員たちはユニークな発想に感心していました。

中学生ですから知識や発想には限界がありますが、創意工夫して課題に挑むことが、生徒たちのさらなる成長につながっていると考えています。

高等学校の探究学習では、SDGsをテーマに企業と連携

探究学習に取り組む海星中学校・高等学校の生徒

▲探究学習の一環で「絵蝋燭」に取り組む生徒

編集部

一方、高校生の探究学習では、どんな取り組みをされているのか教えてください。

前田先生

企業と連携してSDGsをテーマに様々な取り組みを行います。例えば、地域の放棄地での農園プロジェクトや、認知症の方への支援の取り組み、観光地であるオランダ坂の除草作業などです。旅行会社や新聞社といった地元企業と連携して、SDGsに関するワークショップを行ったり、自分たちの調べた内容を新聞にまとめて発表したりしています。

中高6年間の探究学習を通して、生徒たちは学びの楽しみを知ったり、一つの課題に取り組むことの困難さに気付いたりと、大きく成長します。

私がいつも驚くのは非常にプレゼンテーションが巧みになっているということです。説得力のある発表を目指して多方面からデータを集めますし、聴衆を引き付けるようアニメーションや効果音をつけるなど習熟していて、説明する力もいつの間にか習得しています。

探究学習などを通して、生徒たちは様々なスキルを身につけていると実感していますね。

カメラや折り紙を学ぶ講座。学習に意欲的になれる海星中学校・高等学校の講座制授業

海星中学校・高等学校の校舎

編集部

そのほか、学習面で特徴的な取り組みがあれば、教えてください。

前田先生

中学校では、学びに対して意欲的に取り組む習慣を身につけてもらうことが一つの大きな目標になっています。そのきっかけとして、授業の5教科だけではなく、芸術やスポーツなど生徒が興味、関心がある分野を掘り下げられる機会を設けています。

具体的な「仕掛け」の一つが、週2回行う「海星ゼミ(講座制授業)」です。これは授業の枠を超えて教員が様々なテーマの講座を開くというもので、2024年度で4年目となりました。生徒はたくさんの講座から自分が関心のあるものを選びます。

学年を限定している講座もありますが、多くが全学年を対象にしたものです。先輩後輩と交流しながら、学びに対して関心を持つきっかけになってほしいと期待しています。

編集部

講座制授業ではどんなテーマが取り上げられているのでしょうか。また、生徒の評判はいかがですか。

前田先生

講座制授業を担当する教員は、学習に偏らないことを念頭に、授業を組み立てています。写真の奥深さを学ぶカメラ講座、黙々と本を読む読書講座など多彩です。音楽の先生がイタリア歌曲を取り上げる講座や、折り紙を使って立体の知識を学ぶ折り紙講座など、大変ユニークなものも少なくありません。

私は、SDGsに関することを学ぶSDGs講座を担当しています。放課後に行いますので、もちろん部活動に参加する生徒もいますが、生徒の6割程度が講座制授業に参加しています。多くの生徒が意欲的に、そして楽しそうに受講できているのではないかと思います。

名所を巡り、互いの文化を知る。海星中学校・高等学校の国際交流

韓国を訪れ国際交流する海星中学校・高等学校の生徒たち

▲海星中学校・高等学校では韓国など諸外国を訪れ、活発に国際交流を行っている

編集部

グローバル教育で注力している点について教えてください。

前田先生

中学校では国際プログラムとして外国人の講師の方々に来てもらって、4日間まるまる英語だけの授業を行っています。

これは英語力、語学力というよりもコミュニケーション能力を磨く時間だととらえています。生徒自身がメッセージを発信するとともに、相手の話に耳を傾ける力を身につけてもらうイメージです。最初は恥ずかしがって喋れなかった生徒も、4日後に堂々と会話しているほど成長します。

異文化交流をする海星中学校・高等学校の生徒たち

▲韓国から来た生徒たちと一緒に着物を着る体験も

編集部

国際交流の取り組みもされているとうかがいました。

前田先生

中学生は韓国に行っており、高校生はイタリアやその他の国への訪問を検討しているところです。校内で参加者を募ると、すぐに定員が埋まるほどの人気ぶりです。

反対に、韓国などから交換で生徒が来ることもあります。本校で授業を受けるのはもちろんのこと、日本や長崎の良さを教えるために、名所名跡に連れて行ったり、一緒に着物を着てみたりと、互いの文化を理解できるようなプログラムを設けています。

海星中学校・高等学校からのメッセージ

海星中学校・高等学校の中学教頭である前田先生

▲取材にご対応いただいた海星中学校・高等学校の中学教頭である前田先生

編集部

では最後に、海星中学校・高等学校にご関心をお持ちの読者の皆さんへメッセージをお願いします。

前田先生

海星中学校・高等学校で過ごす6年間は、思春期の最中という人生でも最も大切な時期です。それだけに教員の間では、全力で生徒に寄り添っていこうと常々意識して、教育現場に立っています。

本日ご紹介したような様々なカリキュラムをそろえてお待ちしていますので、この記事をご覧いただいた皆さんは、ぜひ本校での学びに関心をお寄せいただければうれしいです。本校にぜひ注目していただきたいと思います。

編集部

本日は貴重なお話をくださり、ありがとうございました。

海星中学校・高等学校の進学実績

海星中学校・高等学校の正門の写真

海星中学校・高等学校は例年、難関大学を含め、豊富な合格実績を有しています。2022年度の合格実績では東京大学(1人)をはじめ、地元の長崎大学(18人)などの国公立大学(準大学含む)に67人が合格しました。長崎大学医学部医学科には6年連続で合格者を輩出しています。

私立大学の合格者は254人。うち早稲田大学(2人)、慶應義塾大学(3人)、上智大学(1人)などの難関大学への実績も目立ちます。

■海星中学校・高等学校の進学実績(公式サイト)
https://kaisei-ngs.ed.jp/for-allvisitor/jukensei/kaisei-koko-shinro-jisseki/

海星中学校・高等学校の保護者の口コミ

海星中学校・高等学校の部活動の様子

ここでは海星中学校・高等学校の保護者から寄せられた口コミを一部抜粋して紹介します。

(保護者)
しっかりとした学力が身につく学校。先生方も一生懸命指導してくれる。また、海外との交互短期留学など、様々な体験が出来る学校。

(保護者)
先生が生徒と向き合い、生徒との距離が近く、なんでも話せる環境にあり、子供たちは生きいきとした表情で学校生活を送っている。行事についても積極的にクラスがまとまってしており、生徒の自主性と創造性をはぐくむことができる学校。

(保護者)
進学校なので、勉強に力を入れており、留学生の受け入れ等も多くて英語力も身につく。

口コミからは、海星中学校・高等学校の先生方による丁寧な学習指導をはじめとした、生徒に寄り添う姿勢を評価する声が目立ちました。また、運動施設などの学校施設について、評価する声も見られました。海星中学校・高等学校には、生徒がのびのびと豊かな学校生活を送れる環境が充実しているようです。

海星中学校・高等学校へのお問い合わせ

海星中学校・高等学校の空撮画像

運営 学校法人海星学園
住所 長崎県長崎市東山手町5番3号
電話番号 095-826-7321
公式ページ https://kaisei-ngs.ed.jp/

※詳しくは公式ページでご確認ください