特色ある教育に取り組む“注目の学校”を紹介するこの企画。本記事では、三重県県四日市市にある私立中高一貫の共学校「エスコラピオス学園 海星中学校・海星高等学校」を紹介します。
問題解決力を養う探究学習や真の英語力を磨くグローバル教育を行う同校は、キリスト教精神に則った穏やかな校風と生徒が伸び伸び育つ環境が特徴的です。また、日本にいながらカナダ・ブリティッシュコロンビア州の教育を受けることができ、カナダと日本両方の高校卒業資格が得られる「ダブルディプロマ科」があることも注目すべきポイントです。
そんな海星中学校・海星高等学校の取り組みについて、同校の副教頭である位田先生と、ダブルディプロマ科の生徒が在籍するKaisei Canadian Double Diploma School校長のメーガン先生にお話を伺いました。
この記事の目次
新時代こそ大切にすべきキリスト教精神。海星中学校・海星高等学校の教育目標
まず初めに、海星中学校・海星高等学校の教育目標などについて伺えますか?
海星中学校・海星高等学校は、キリスト教的世界観に則った人格教育を行っています。目標とするのは、「万人を愛し、奉仕と献身の精神をもち、社会に貢献する人物」の育成です。多感な青年期にこそ「隣人愛」を大切にするキリスト教の教えを学ぶことはとても重要だと考えています。生徒たちにも、「勝ち負けよりも周囲の人をリスペクトできる人になりましょうね」といった声かけを常にしています。
キリスト教にもとづいた教育を行う意義はどんなところにあると考えられていますか?
高度経済成長期を終えた今、他人と競争し、進学実績で個人のレベルを測る時代は終わりを告げようとしています。これからは、個々の人間性を重視した余裕のある発展を目指すべき時代。この新時代に、精神的価値や他者への愛を重視するキリスト教の世界観は非常に合うと思います。
私たちは、保護者の方が安心して我が子を学校へゆだね、生徒が周囲の人と笑顔で交わり伸び伸び育つ環境を提供することこそが本校の使命だと考えているのです。
▲教室前方には十字架と聖母子像、学園創立者の肖像画が掲げられている
習慣化で英語脳をつくる。海星中学校・海星高等学校のグローバル教育
海星中学校・海星高等学校は、英語教育に非常に力を入れていると伺いました。
その通りです。英語を自在に使えるようになることで未来への可能性が広がると考え、英語4技能「話し・聴き・読み・書く」スキルを習得するための環境を作ることに全力で取り組んでいます。
英語で考え、英語で思いを伝えることを目標にカリキュラムを作っており、中学1年・2年では基礎の定着と中学文法の完成、中学3年・高校1年では高校文法の完成、高校2年・3年では英語4技能の習得と発展的読解力の完成を目指します。
英語学習の習慣化に向けて、ふだんどんな取り組みをされていますか?
英単語力を向上させるため、全学年共通の単語帳で毎週25単語ずつの習得を目指しています。週に1回小テストを行うほか、100単語ごとに共通テストも実施します。また、授業は習熟度別で実施し、定期テスト毎に入れ替えがあります。
希望者はオーストラリアやイギリスなどへの短期留学にも参加でき、渡航前にはオリジナルテキストを使って手厚いサポートもしています。ほかにも、授業で英検対策をしているほか、毎年2月には各学年の代表が出場する英語暗唱大会も行っています。
外部と連携した独自の授業もあるそうですね。
はい。世界で活躍する同時通訳者の方を講師に迎え、英語学習を習慣化し英語脳を作る独自の英語習得法を授業に取り入れています。また、株式会社ECCと提携し、ネイティブ講師に月1回オリジナル講義をしていただいています。
国内でも数校のみ。日本とカナダの高校卒業資格が取得できるダブルディプロマ科
▲Kaisei Canadian Double Diploma School校長のメーガン先生(右)と教員のミカエル先生(左)
海星高等学校は2024年に「ダブルディプロマ科」を新設したそうですね。こちらはどんなコースなのでしょうか。
ダブルディプロマとは、日本の教育を基盤にしつつ、カナダのブリティッシュコロンビア州のカリキュラムにもとづいて学んでいくグローバルプログラムです。
このコースに在籍する生徒は、海星高等学校とブリティッシュコロンビア州の教育制度を取り入れたオフショアスクール「Kaisei Canadian Double Diploma School(以下、KCDDS)」の2つの学校に同時に在籍することになります。このような学校は2024年現在、東京、大阪、そして本校と、日本に3校しかない非常に珍しいものになります。
KCDDS校長のメーガン先生にもぜひお話を伺わせてください。ダブルディプロマ科はどんな教育を目指していますか?
このコースでは、ただ英語を学ぶだけではありません。日本にいながら教育水準が高いカナダの授業を受けて創作力や問題解決能力を磨き、将来的に成功を掴むためのヒントを提供することを目標としています。
ダブルディプロマ科で学ぶメリットはどのようなところにありますか?
何といっても、進路の幅が広がる点です。このコースを修了すると日本の高校と同時にブリティッシュコロンビア州の高校を卒業したとみなされ、日本とカナダ2つの卒業証明書を同時に取得することができます。
このため、通常は必須となる英語の検定試験がなくても英語圏の大学に出願できますし、日本の大学でも特別入試枠が使えることもあります。そもそも、このコースで養う分析力や洞察力はこれからの日本の入試に必要なスキルですから、ダブルディプロマ科で学べば、海外大学・国内大学ともに進学が有利になるんです。
すばらしいですね。カリキュラムの特徴はどんなところにあるのでしょうか。
ブリティッシュコロンビア州のカリキュラムは、ひとりひとりの個性に合わせてスキルを伸ばすことに重点を置いています。知識を得るだけではなく、応用することを重視しているため、自分で計画を立てて科学実験をしたり、学んだり読んだりしたことをプレゼンテーションしたりといった機会を多く設けています。
スクロールで授業の様子をご覧いただけます→
ブリティッシュコロンビア州の履修科目は現地の教員免許を持つネイティブの講師が英語で行い、日本の高校の履修科目は海星高等学校の教員が日本語で教えます。
つまり、生徒たちは西洋的教育を受けつつ、日本文化も維持した環境で学ぶことになるんです。これも完全に英語文化に則ったインターナショナルスクールと大きく違う点ですね。視野が広がり、グローバル意識を身につけることにもつながると思います。
生徒ひとりひとりを見守るために、少人数制にもこだわっておられるそうですね。
はい。KCDDSの定員は24名で、現在は8名の生徒が在籍していますが、教室には教員が2名いることもあります。教員と生徒との距離が近く、常に手厚いサポートを受けることができるんです。
このため、授業では生徒の理解度に合わせて教員が教え方や内容を細かく調整することが可能になります。オーダーメイドの教育を行うことにより、効率よく学ぶことができるよう工夫しているんです。
在籍している生徒たちからはどんな反応がありますか?
年度の始めは、生徒たちに英語で話しかけても戸惑った様子でした。ですが徐々に積極的に授業に参加し、進んで自分の考えを発言してディスカッションしてくれるようになりました。
KCDDSの学習プログラムでは、周囲と協力して取り組みながら自由に質問したりすることを推奨しているので、その働きかけが生きてきた結果だと思います。今では、生徒たちはもちろん保護者の方からも、「楽しんで通っている」といった非常にポジティブな感想をいただくようになりました。
▲生徒の理解度に合わせて丁寧に指導
社会問題を自分ごととして捉える力を磨く探究学習
▲意見をかわす生徒の表情は真剣そのもの
他にも、海星中学校・海星高等学校の特徴的なプログラムがあれば教えてください。
本校では、6年間通して段階を踏んだ探究学習を行っています。中学1年生ではまず自分を知ることに取り組み、中学2年生からは他者を知って人生の指標になるようなロールモデルを見つけます。
中学生が中心となって学園祭で上演する「創立者劇」も見応えがあります。本校はエスコラピオス修道会によって設置された教育機関、「エスコラピオス学園」のひとつなのですが、この創立者劇は同学園の創設者であるヨゼフ・カラサンスの生涯を描いたものです。
生徒たちは合唱の練習や役作りに励みながらひとつの舞台をつくることを通して、本校の教育理念を理解するとともに周囲と協力する能力も磨いていきます。
▲創立者劇上演中のようす
高校ではどんな取り組みがありますか?
高校1年生ではSDGsを学び、社会問題を解決するために何ができるかを考えます。提携する企業でインターンシップも行って企業から出されたミッションに取り組むことで、新しい答えや価値観を見出すための力を養ったりもしています。
高校2年生では、地域住民と関わりながら、地域が抱える課題解決に取り組みます。自分たちでアイデアを出し合い、グループディスカッションを行って、地域活性化のためには何ができるかを考えていくといった内容です。世の中の問題を自分ごととして捉え、実際に解決に導くまでのプロセスを実践の中で学んでいきます。
幸い、学校のある四日市市周辺では、本校のOBがたくさん活躍しています。ですから、企画を考えるときにも協力してもらいやすいですし、逆に「こういうことができるんじゃないか」とか「こんな人を紹介してあげるよ」といろいろと提案してもらえる環境でもあります。地域の方に温かく見守られて、横の繋がりがどんどん広がっていく感覚がありますね。
素敵ですね。生徒たちの様子はいかがですか?
みんなそれぞれに頑張っています。地域の課題に対する答えはひとつではありません。ですから、個々が考えたアイデアひとつひとつを、お互いに「いいね!」と讃えあいながら前向きに解決していくんです。
最初は地域課題にさほど興味がないようすだった生徒も、市政の取り組みを間近で見たり、住民と関わったりしているうちに、どんどんアイデアを出すようになります。この授業がきっかけで、将来は街づくりに取り組みたいと、社会学部に進んだ生徒もいるんですよ。
▲地域住民とも関わりながら地域課題の解決を考えていく
海星中学校・海星高等学校からのメッセージ
最後に、記事をご覧のお子さんと保護者の方に向けてメッセージをお願いします。
日本にいながら英語や海外について学びたい方には、ダブルディプロマ科を強くおすすめします。このコースを卒業すれば、間違いなく進路選択の幅が広がります。興味があれば、ぜひ一度見学にお越しください!
海星中学校・海星高等学校はもともと男子校だったこともあって、活気あふれる雰囲気があるのが特徴です。3年前に共学化して、現在の男女比はほぼ半々になりましたが、その明るい校風は変わっていません。勉強にも部活にも前向きに取り組み、文武両道で活躍している生徒がたくさんいる本校なら、楽しいスクールライフが送れると思います。ぜひ海星中学校・海星高等学校を進路選択のひとつに考えていただけたらうれしいです。
他者を思いやる心を育むキリスト教精神にもとづいたプログラムが印象的でした。また、実践力が身に付くグローバル教育や、6年間通して学びを深めていく探究学習も、将来の選択肢を広げる工夫が存分に感じられました。本日はありがとうございました。
海星中学校・海星高等学校の進学実績
視野を広げ考える力を伸ばす教育を行う海星中学校・海星高等学校では、毎年国公立大学や有名私立大学へ合格者を輩出しています。
また、同校はカトリック校だけに与えられる特別入試枠を保有しており、この制度を利用して南山大学や上智大学などのカトリック系大学へ毎年15〜20名の生徒が進学します。さらに、グローバル教育に力を入れる同校では、海外大学への合学者がいることも特徴のひとつです。
2023年度は、名古屋大学や東京外国語大学をはじめとする国公立大学や、南山大学、上智大学、明治大学、立教大学、法政大学などの有名私立大学に多数の生徒が進学しています。また、マレーシアのTaylor’s University、アメリカのWesternTexas CollegeやArizona Western Collegeといった世界の名門大学に合格を決めた生徒もいました。
■近年の大学合格実績(海星中学校・海星高等学校公式サイト)
https://www.kaisei.ed.jp/course/results/
▲ICTもフルに活用し効率的な授業を実施している。
海星中学校・海星高等学校の卒業生・保護者の口コミ
最後に、海星中学校・海星高等学校に通う生徒の卒業生や保護者から寄せられた感想の一部をご紹介します。
伸び伸びと学校に通っている、とにかく楽しい、といった声が上がっていました。日本の伝統に縛られず、伸び伸びした校風でもあるようです。また、卒業生からは「海星で学んだことがその後の進路に活きた」といった声も多数ありました。
スクロールで学校行事の様子をご覧いただけます→
海星中学校・海星高等学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人エスコラピオス学園 |
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住所 | 〒510-0882 三重県四日市市追分1-9-34 |
電話番号 | 059-345-0036 |
問い合わせ先 | 海星中学校・海星高等学校 |
公式ページ | https://www.kaisei.ed.jp/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください