この記事では、中学校受験を検討中のお子さん・保護者に向け、香川県高松市にある「香川県立高松北中学校・高等学校」を紹介します。
同校は香川県内で唯一の中高一貫校です。公立校ならではの地元ネットワークを活かし、10カ国以上の外国人との交流や地域の歴史・文化を学ぶ「地域探訪」、命をテーマにした講演会といった独自の取り組みを実践しています。
今回は副校長の三野先生にインタビュー取材し、中高一貫校における教育理念やグローバル教育、心を磨く教育などについて詳しく伺いました。
この記事の目次
高松北中学校・高等学校の目標は、「次世代社会創生リーダー」の育成
最初に、御校の教育理念をお聞かせいただけますか?
本校は、香川県でただひとつの公立の中高一貫校です。「すべての生徒が輝き、未来を創造する」を教育理念に、次世代社会創生リーダーの育成を目指しています。
次世代社会創生リーダーとは、グローバルな感性と幅広い視野を持ち、行動力・実践力でこれからの社会を切り拓いていく人を指します。
学校生活では、自ら学び、考えて行動しようとする意欲を高めること、部活動で自らを鍛えて競技力を向上させること、他者を思いやる心や社会に貢献しようとする態度を育てることを重視しています。
地域とも連携!高松北中学校・高等学校のグローバル教育
香川県立高松北中学校・高等学校は「グローバル教育」に力を入れ、地域とも連携した教育活動を続けています。ここからは中高一貫における中学校での取り組みを中心にその具体的な実践について教えていただきましょう。
毎年、10カ国以上の外国人留学生・研修生と触れ合う
御校が重視する「グローバル教育」の特徴を、簡単に説明していただけますか?
本校は2019~2021年度に文部科学省の研究開発校に指定され、「グローバル化に対応した地域創生リーダーの育成」に取り組んできました。4つのT(体感力・対話力・耐久力・提言力)を育てる探究活動を中心に据え、大学や企業、高等学校、専門学校と連携しながら実践的な研究を行いました。
「グローカル(※)」をもとに推進してきた研究の成果を活かし、中高の6年間における国際交流・地域交流を軸とした探究的な学びを大切にしています。
※国際社会の「グローバル」と地域社会を意味する「ローカル」を組み合わせた造語
ここからは、グローバル教育の活動内容について教えてください。国際交流では、具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか?
国際交流では、さまざまな国との交流・訪問等を計画・実施しています。中学校では、国際貢献の活動を担うNGO団体等のご協力をいただき、10カ国以上の外国人留学生・研修生と触れ合う交流会を継続的に実施しているところです。
具体的には、中学2年生(合計3クラス)がクラスごとに国際交流の施設を訪問します。担当者から国際貢献やその活動事例に関する話を聞いた後、交流する留学生・研修生の出身国などが説明されます。全体の話が終わると外に出て、留学生・研修生と一緒に動物の飼育や農作業などを体験する流れです。
▲グループに分かれて、外国の方々とのコミュニケーションを体験
さまざまな国の方々とコミュニケーションを取ると、英語力も鍛えられそうですね。交流会に参加した生徒さんたちからは、どのような感想が寄せられていますか?
生徒たちにとって、ALT(外国語指導助手)の先生とは違う外国人と話す機会は貴重な体験です。国際交流ではさまざまな場面がありますが、コミュニケーションの中で自分のこと(自国のこと)をしっかりと伝えることができればと思います。
2023年度から韓国の中学生との文化交流をスタート
外国人の留学生や研修生との交流以外に、外国人と触れ合う機会はあるのでしょうか。
2023年度からは、韓国の中学生を招いての交流(2日間)がスタートしました。2024年度は37人の中学生が来校し、2日間を本校の生徒たちと一緒に過ごしたんですよ。
1日目は全員が体育館に集まり、交流を行いました。韓国の中学生たちは日本語での合唱を披露してくれたほか、韓国のお菓子を持ってきてくれました。お菓子を味わいながら共に楽しく語り合うことができました。
また、韓国の生徒による部活動見学や体験も行いました。個々の希望に沿って、レスリングの合同練習や邦楽(琴)・書道の体験、科学部の実験などに参加し、大いに交流を深めました。
▲韓国の中学生による挨拶・発表の風景
2日目には、どのような活動をしたのでしょうか?
2日目は韓国の中学生が各クラスに入り、一緒に英語の授業を受けました。英語ではグループワークを中心に、韓国の中学生とのコミュニケーションを体験します。人数が少ない分、一歩踏み込んだ対話ができるようで、生徒間の交流を通した学びが深まります。
2日間の交流を通して、生徒たちは韓国の中学生の話を聞きながら、日本との違いを感じていたようです。最初は生活文化や学校生活の違いに驚く姿も見られましたが、「違うことを楽しむ」多様性が育っていくようです。
韓国の中学生と話すのは楽しそうな一方で、初対面だと不安もあるかと思います。交流の前に、韓国の文化などを学ぶ機会はあるのでしょうか?
交流の前に韓国について学ぶ時間を設けています。具体的には、香川県の国際交流員の方が来校し、韓国の中学生の現状を説明してもらうんです。
韓国の中学生の間で流行っているものや服装の違い、学校の特徴なども詳しく話してくれました。例えば、日本の学校には靴箱がありますが、韓国にはないそうです。そのほか、運動会のプログラムにも、日本にはない競技が組み込まれています。ある程度の知識を持っていると会話もしやすいようで、韓国の中学生とスムーズに打ち解けていました。
2日間、一緒に学校生活を送ると、生徒さん同士の絆も強まりそうですね。韓国の中学生との交流会は、今後も続いていくのでしょうか?
来年度以降も交流を深めていきたいと思います。これまで実施してきた交流会に加えて、放課後の時間を使った「国際交流クラブ」を立ち上げて生徒を集め、オンラインでの実施を含めて、英語でコミュニケーション活動を行う案が両校の間で出ています。
地域探訪の取り組みを通して地元愛を育む
グローバル教育のもう一つの柱である「地域交流」についても、詳しく教えていただけますか?
グローバル教育では「グローバル・スタディ(総合的な学習の時間)」において探究的な学びを推進しています。中学校で展開する「地域探訪」には特に力を入れており、今年度は中学校1年生全員が学校周辺を歩き、史跡や美術館、産業施設などを訪れることで地域の歴史や文化、産業について学んでいます。
5月には1185年に行われた「屋島合戦(※)」の歴史について学び、現在も残る「源義経の弓流しの跡」「那須与一の祈り岩」などの史跡を巡りました。また、6月には「イサムノグチ庭園美術館」や「ジョージナカシマ記念館」を訪れ、地域にある貴重な文化や産業についても学びました。今後は、地元で盛んな石材産業(墓石・彫刻品)についても見学や調べ学習を行う予定です。
※平安時代後期の「源平合戦」のうち、讃岐国屋島(現在の香川県高松市)で行われた合戦
▲史跡を見て、地域の方から話を聞き、高松市の歴史を学ぶ
地域探訪で気付いたことなどを、人前で発表する機会はあるのでしょうか?
9月に開催される中高合同の「北稜祭(文化祭)」で、本校の生徒たちや保護者、外部のお客さんたちの前で発表する機会を設けています。ステージ上のプレゼンではなく、ひとつの催し物として、中学生が地域探訪について発表するコーナーを作っています。
地域探訪を通した気付き・感想などをまとめた資料を基に、コーナーを訪れた方々に地域の歴史や文化・産業について伝えます。
「いのち」をテーマにした心の教育
高松北中学校・高等学校は、生徒さんの心を磨く教育にも力を入れているそうですね。中学校では、どのような心の教育をしているのでしょうか?
毎年6月を「いのちの教育月間」とし、命をテーマにした講演会を実施しています。講演の内容は年度ごとに異なり、過去には「骨髄バンクの移植」について学んだこともあります。
2024年度は「戦争といのち」「平和といのち」をテーマに、福岡県にお住まいの佐々木雅弘さんをお迎えし、被爆(※)体験を話していただきました。
※原子爆弾によって発生する放射能を浴びること
雅弘さんは、広島県の平和記念公園にある「原爆の子像」のモデルになった佐々木禎子さんのお兄さんです。2歳のときに被爆した禎子さんは、10年後に白血病と診断され、「生きたい」との願いを込めて1,300羽以上の鶴を折ったそうです。残念ながら願いは届かず、12歳の若さで命を落としてしまいました。
雅弘さんは80代になった現在も、国内外で禎子さんの被爆体験を基に、戦争の残酷さ・平和の尊さを訴え続けておられます。
禎子さんの生涯は、「飛べ!千羽づる」という本にも書かれていますね。最近は戦争の話を聞く機会も減っていますが、生徒さんたちの反応はいかがでしたか?
生徒たちは、禎子さんの姿を間近で見てきたお兄さんの話を聞き、命との向き合い方を考えていました。講演会を通して、「もっと自分の命を大切にしよう」と決意した生徒も多いようです。
実は、講演会の前に体育館で「全校道徳」を実施し、みんなで禎子さんの心情を考えたんですね。全校道徳では、「きっと自分はもう死んでしまうのだろう」と感じた禎子さんが残したメモのコピーを使い、「もし自分が同じ状況なら、どのように命と向き合うか」などを伝え合いました。全校道徳で禎子さんの心情に迫っていたこともあり、生徒たちは自分と重ね合わせながら講演を聞いていました。
禎子さんの心情に迫る以外に、「全校道徳」を実施した意図があれば教えてください。
「戦争をしてはならない」といった表面的な学びではなく、「命を守るためにどうすればいいか」を考えさせたいと思いました。
世界では今もなお、紛争・戦争が起き、尊い命がたくさん失われています。戦禍で命と向き合ってきた方から直接お話を伺い、平和のありがたさを感じると同時に、自分や他者の命を守る大切さにも目を向けてほしいと思っています。
6月に講演会が終わったそうですが、今後も戦争・平和に関する学習は続いていくのでしょうか?
中学校3年生の「平和探究学習(修学旅行)」では、5月の広島訪問(平和集会)に続いて沖縄を訪れます。これまでの学習を活かし、平和やいのちの尊さに関する学びをさらに深めてほしいと思います。
高松北中学校・高等学校からのメッセージ
▲2024年度から中学校・高等学校の副校長を務める三野先生
香川県立高松北中学校・高等学校に興味を持っているお子さん・保護者に向け、メッセージをお願いします。
本校は教育熱心な先生が多く、中学校・高等学校の先生がそれぞれの専門性を活かした授業を実践しています。部活動にも意欲的で、あいさつ・礼儀・マナーなどが身についている生徒が多いです。外国の方々との交流や地域探訪といった独自の取り組みもあり、勉強・スポーツ以外の強みも発揮していける環境です。
人との関わりを大切にしながら、目標に向かって努力したいお子さんのご入学を教職員一同楽しみにしています。
お話からも、地域や外国の方々との触れ合いを通し、視野を広げていく生徒さんたちの様子が伝わってきました。
本日は中学校選びの参考になる話を聞かせていただき、ありがとうございました!
香川県立高松北中学校・高等学校の進学実績
高松北高等学校の卒業生の多くは、国公立大学や私立大学、短期大学、専門学校などに進学しています。2023年度には、四国エリアの国立大学(香川大学・徳島大学・愛媛大学・高知大学)に、合計で15人が現役合格を果たしました。
難関といわれる関西大学・同志社大学・立命館大学・早稲田大学も例外ではなく、合計で20人がストレートで合格したそうです。そのほか、公務員・会社員としての就職を希望するケースもあります。卒業生の幅広い進路からも、1人ひとりの個性を尊重する同校の校風がうかがえます。
香川県立高松北中学校・高等学校の保護者からの口コミ
最後に、香川県立高松北中学校・高等学校の保護者から寄せられた口コミを紹介します。
口コミからも、授業・部活動・行事の充実度と手厚い学習サポートがうかがえます。そのほか、「敷地内に武道館に体育館2つ、サッカー場、野外ステージなどがあり、恵まれた教育環境において快適に過ごせる」と、施設面を評価する声も見られました。
香川県立高松北中学校・高等学校へのお問い合わせ
運営 | 香川県(公立) |
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住所 | 香川県高松市牟礼町牟礼1583-1 |
電話番号 | 087-845-2155 |
公式サイト | https://www.kagawa-edu.jp/kitaj01/index.html |
※詳しくは公式ページでご確認ください