鹿児島純心女子中・高等学校の学校行事「聖母行列」

鹿児島純心女子中・高等学校:キリスト教精神とグローバル教育で未来を拓く|中高一貫校

この記事では、特色ある教育に取り組む"注目の学校"として、鹿児島県鹿児島市にある私立の女子中高一貫校「鹿児島純心女子中学校・高等学校」をご紹介します。

1949年に創立された同校は、キリスト教精神に基づく教育と充実したグローバル教育が大きな特徴です。校訓「心清きものは幸いなり」のもと、心の教育と知力のバランスを重視しながら、生徒一人ひとりの可能性を最大限に引き出す教育活動を展開しています。

さらに、同校はカナダへのターム留学や短期研修、オールイングリッシュで行われるグローバルスタディーズプログラムなど、国際的な視野を育む様々な取り組みを行っています。また、特徴的な英語教育や探究活動を通じて、グローバル社会で活躍できる人材の育成にも力を入れています。

今回、ぽてんでは鹿児島純心女子中学校・高等学校の今村先生、伊地知先生、永田先生にインタビュー取材を行い、同校の教育方針やカリキュラムの特徴などを詳しく教えていただきました!

鹿児島純心女子中・高等学校の校訓「心清きものは幸いなり」

鹿児島純心女子中・高等学校の校舎

編集部

最初に、鹿児島純心女子中・高等学校の校訓について教えてください。

今村先生

本校の校訓は「心清きものは幸いなり」です。これは聖書の一節「心清きものは幸いなり、その人は神を見る」から取ったもので、マリア様の汚れなき心に倣う生き方を示しています。本校が理想像とする聖母マリアのように、人々の幸せのために苦労を自ら引き受けるような、人からも神様からも喜ばれるような女性の育成を目指しています。

また、校訓にある「清さ」とは一途な生き方を示しており、学ぶ姿勢にも通じます。一つの教科に対して真摯に向き合うという意味もあるのです。そのため、毎授業の始めに、この言葉を唱えることで、1時間ごとに確認しながら授業を始めています。

伊地知先生

毎回授業の始まりに校訓を唱えることで、原点に立ち返り、振り返る機会になっています。これが長年続いているんです。英語の授業では英語版で校訓を唱えているんですよ。

編集部

御校では心の教育にも力を入れられていると聞きましたが、これもこの校訓を実現するためのものなのでしょうか。

今村先生

はい、おっしゃる通りです。本校の心の教育への取り組みは、まさに校訓を実現するための重要な要素となっています。本校では、生徒たちの全人的な成長を目指し、知力の向上だけでなく、心の発達にも大きな力を注いでいます。この方針は、多様な体験型行事を通じて具現化されています。これらの行事は、生徒たちが実際の体験を通じて学び、成長する機会を提供し、校訓の実現に向けた重要な役割を果たしています。

特に、本校の特徴的な取り組みである平和教育は、心の教育の中核を成しています。本校は太平洋戦争の苛烈な状況を直接経験しており、その歴史を踏まえて、生徒たちに戦争に対する深い洞察力と平和の尊さを伝えることを重視しています。これは、次世代を担う生徒たちの心を育む上で非常に重要な要素だと考えています。

さらに、本校の教育方針は、心の教育と知力の向上のバランスを取ることを基本としています。特に近年は、「探究」という形式を取り入れ、生徒たちが自ら学び、自走する力を身につけることに力を入れています。この自主的な学びのアプローチは、単に知識を得るだけでなく、自己を深く理解し、他者と協調する能力を育むことにもつながっています。

このように、本校の心の教育への取り組みは、体験学習、平和教育、自主的な学びを通じて、校訓の実現を目指すものです。生徒たちが知力と心の両面でバランスよく成長し、未来を切り拓く力を養えるよう、日々の教育活動に取り組んでいます。これらの取り組みは全て、校訓に掲げられた理想の実現に向けた重要な要素となっているのです。

心を磨く教育の実践:キリスト教精神と平和学習

鹿児島純心女子中・高等学校で学ぶ生徒たちの様子

▲インタビューに応じてくださった伊地知先生と生徒たちの様子

編集部

鹿児島純心女子中・高等学校で大切にされている心を磨く教育について、具体的な取り組みを教えてください。

今村先生

本校では、6年間の教育を通じて生徒たちの心を育てることに力を入れています。人に優しくなることは、心が育つことの表れだと考えています。この6年間で、協調性や社会性も身につけていきます。これらは、これからの時代を生きていく上で非常に重要な基礎になると考えているからです。

具体的には、心を磨く教育の一環として、中学1年生から高校3年生まで、週1時間の宗教の授業があります。本校の前身は聖名会というカナダに本部を置く修道会のシスターによって設立された「聖名高等女学校」ですが、鹿児島純心女子中・高等学校となった現在も校長先生はシスターです。宗教の時間にシスターの先生から教わることで、生徒たちの価値観や世界観が広がると考えています。

また、年間を通してキリスト教的な行事があります。これらの行事を通して、生徒たちはキリスト教の価値観を体験しています。

伊地知先生

6年間の学校生活を経て、祈ることの大切さを身に染みて感じている卒業生たちは少なくありません。特に災害や地震などの出来事が起きた際、直接現地に赴いて助けることができない状況でも、祈りを通じて思いを寄せることの重要性を学んでいます。

本校では、他者の気持ちに寄り添い、その立場になって考えることを大切にしています。この経験は卒業後にも影響を与え、カトリックの信者でない生徒でさえ、卒業後に教会に通うようになったケースもあります。このように、祈りの習慣は単なる宗教的行為を超えて、他者への共感や世界とのつながりを感じる手段として、生徒たちの人生に深く根付いているのです。

修学旅行を通じた平和学習:長崎・沖縄での体験型教育

鹿児島純心女子中・高等学校の生徒たち

▲沖縄のキレイな海に向かって仲良く並ぶ生徒たち

編集部

心の教育の一環として、平和学習にも力を入れられているとのことでしたが、具体的な取り組みを教えていただけますか?

伊地知先生

本校では日常的な授業に加えて、修学旅行でも平和学習を取り入れています。中学1年生で長崎に行き、中学3年生で沖縄に行きます。単なる観光ではなく、教会を巡ったり、原爆被災地を訪れたり、沖縄では沖縄戦について学び、慰霊碑を回ったりします。

本校は戦時中に創立された学校なので、他の地域がどのような影響を受けたのかを学ぶことで、平和の尊さを生徒たちに感じてもらいたいと考えています。

永田先生

日常的に平和学習を受けている本校の生徒たちにとって、修学旅行での学習は目新しい学びではありません。ですが、机上で学んだことを現地を訪れて実際に肌で感じることで、「本当にこういうことがあったんだ」と実感を深める良い機会になっていると思います。

編集部

修学旅行の事前学習や事後学習はどのように行われるのでしょうか?

伊地知先生

年によって異なりますが、例えば沖縄の場合、「沖縄の光と影」というテーマで取り組んだことがあります。観光業として明るい未来がある一方で、過去を振り返ると影の部分もあります。現在でも基地問題など課題があります。

生徒たちは事前に自分たちで調べ、現地で学んだ後、帰ってきてからプレゼンテーションを行います。このプロセスを通じて、より深く平和について考える機会を提供しています。

生徒の成長:教育環境が育む「優しさ」と「社会貢献マインド」

鹿児島純心女子中・高等学校の生徒たちの様子

▲体験学習でみんなで食事を作っている様子。仲の良さが伺えます。

編集部

生徒さんたちの成長について、特に感じられることはありますか?

永田先生

本当に優しい子たちが多いと感じています。これは平凡な言葉かもしれませんが、本校の教育環境がそういった優しさを育んでいるのだと思います。

例えば、高校で探究活動に取り組む際、周りの困りごとを解決しようとする姿勢が見られます。特に、物事ではなく人に焦点を当て、困っている人にどう寄り添えるかという視点で考える生徒が多いですね。

編集部

具体的な例はありますか?

永田先生

ある生徒の例をお話しします。この生徒は中学3年生の時の卒業レポートでアレルギーについて取り上げました。自身もアレルギーを持っていたことがきっかけです。この生徒は、自分や家族がアレルギーを持っているため食事に困ることがあり、特別な準備をしてもらうことへの申し訳なさも感じていたそうです。そこから、同じような悩みを持つ人々のために何かできないかと考えたようです。

高校に進学してからも、同じテーマを探究活動で継続し、アレルギーを持つ人が安全に食事ができるよう、町の飲食店マップを作成して提供したいと提案していました。

アレルギーという個人的な課題から始まり、社会貢献につながる提案にまで発展させるといったように、周りの人々への思いやりに繋げる姿勢が見られるんです。

編集部

このような探究活動は、生徒たちにどのような影響を与えていますか?

今村先生

探究活動を通じて、生徒たちは協調性や社会性を身につけていきます。人に優しくなることは、心が育つことにつながります。

そして、こういった経験が6年間の学校生活を通じて積み重なっていくことで、将来の人生の基盤になっていくと考えています。安心安全な環境の中で、生徒たちは自分の関心事を深く掘り下げ、それを社会貢献につなげる力を養っているのです。

グローバル教育の特色:カナダ留学と国際プログラムの充実

鹿児島純心女子中・高等学校の授業の様子

鹿児島純心女子中・高等学校では、心の教育以外に、グローバル教育にも力を入れています。ここからは、同校の特色あるグローバル教育(海外留学・グローバルスタディーズプログラム・カレパスENGLISHの活用)について詳しく紹介します。

カナダへのターム留学と短期研修:異文化体験と語学力向上の機会

カナダへのターム留学の様子

編集部

グローバル教育の特徴的な取り組みについて教えていただけますか?

伊地知先生

本校では、カナダへのターム留学と短期研修を実施しています。カナダに姉妹校があり、両校で連携して留学プログラムを運営しています。

ターム留学は9月末から12月中旬までの約3ヶ月間で、短期研修は夏休みの3週間です。中学生、高校生合わせて各プログラムに10名ほどが参加します。これらは全て希望制です。

編集部

ターム留学と短期研修の内容に違いはありますか?

伊地知先生

どちらもホームステイを行うのは同じです。

短期研修では、生徒たちの希望や学習スタイルに合わせて、2つの異なるコースを用意しています。1つ目のコースは、集中的な英語学習を希望する生徒向けです。このコースでは、朝から夕方まで1日7時間にわたり、しっかりと英語の勉強に取り組みます。2つ目のコースは、学習とアクティビティのバランスを取りたい生徒向けです。このコースでは、午前中は英語の勉強に集中し、午後はさまざまな課外活動や文化体験に参加します。このように様々な場所を訪れたり、カナダの教会を見学したりします。本校の創立にはカナダのシスターが関わっているため、そのルーツを辿る意味もあります。

生徒たちは自分の目標や興味に応じて、最適なプログラムを選択することができます。

またターム留学に関しては、語学学校で英語に慣れたあとに現地の学校に通います。語学学校終了時のテストの結果に合わせて、各自の英語レベルに合ったクラスで学ぶことになるため、無理なく学べます

編集部

生徒たちの反応はいかがですか?

伊地知先生

短期研修の生徒たちは異文化体験を楽しんでいます。ターム留学の生徒たちは、語学力の向上を実感しているようです。どちらのプログラムも、生徒たちの英語学習へのモチベーションアップにつながっています。

最近、3か月間のターム留学に参加した生徒のレポートを読む機会があったのですが、日本人が英語を苦手とする理由についての興味深い調査内容でした。日本人が英語を話す習慣があまりないことが主な原因ではないかという仮説を立て、カナダで学ぶ他の国からの留学生たちにもリサーチを行い、その結果、英語を話す機会を多く持つことが語学力向上に非常に効果的であるという結論に至ったのです。

この経験を通じて、その生徒は3か月間のターム留学が非常に有意義だったと感じたようです。このような具体的な成果からも、本校の留学プログラムが生徒たちの語学力と異文化理解の向上に大きく貢献していることがわかります。

鹿児島純心女子中・高等学校の英語暗唱スキット弁論大会の様子

▲「日本人が英語を苦手とする理由について」のレポートは英語弁論大会で発表された

グローバルスタディーズプログラム:オールイングリッシュで世界を学ぶ

編集部

純心では学内で実施する英語漬けのプログラムもあるそうですね?

伊地知先生

はい、グローバルスタディーズプログラムという3日間オールイングリッシュのプログラムを実施しています。そこでは、九州大学や京都大学、東京大学などの海外留学生を招いて、世界の問題や鹿児島の問題について一緒に考えます。鹿児島の問題というのは、例えば桜島の火山灰や女性の社会進出などのテーマです。これらについて英語でプレゼンテーションを行います。留学生とのディスカッションを通じて、グローバルな視点を養うことができます。

また、このプログラムによって、生徒たちは自分自身を振り返りながら、英語を話す姿勢や恥ずかしがらずに間違いを恐れないことの大切さを学びます。留学生の話を聞きながら、グローバルな問題に取り組む意欲を高めていきます。

編集部

参加者はどのような生徒が多いのでしょうか?

伊地知先生

カナダ留学に参加した生徒たちの意識が特に高く、参加率も高いです。ただし、このプログラムは全ての生徒に開かれており、自由参加です。

カレパスENGLISHの活用:自主学習と進路サポートに有効

鹿児島純心女子中・高等学校の英語授業の様子

▲英語授業の様子

編集部

日常的に行われているもので、特徴的な英語学習の取り組みはありますか?

伊地知先生

中学2年生と3年生では、毎時間速読を取り入れています。また、7月からはカレパスENGLISHというウェブ上の教材を導入しました。

これは単語、文法、リーディング、リスニングなどをiPadを使って自分のペースで学べるものです。英検の各級に対応した内容も含まれているので、中学1年生から自分のレベルに合わせて学習を進められます。

編集部

カレパスENGLISHはどのように活用されるのでしょうか?

伊地知先生

英語の授業では、自習する時間を10分間設けています。この時間で、生徒自身が苦手とする部分の学習に取り組むのですが、カレパスENGLISHを使うことでより効果的な自主学習が可能になると考えています。

さらに、カレパスナビという関連サービスを使用すれば、生徒の英語力と学業成績に基づいて、適切な海外大学を診断してもらえます。そのため高校3年生でカレパスナビを通じて英語テストを受けることによって、生徒たちは自分の現在の英語力でどの程度の海外大学に進学できる可能性があるかを知ることができるのです。このように、グローバルな進路選択のサポートにもなっています。

また、カレパスナビはすでに55の大学と提携があり、点数に基づいて奨学金も含めた形で海外大学への進学サポートも行っています。

編集部

その他にも特徴的な取り組みがあれば教えてください。

伊地知先生:中学1年生では、特にフォニックス(※)に力を入れており、主に1学期の間集中的に行っています。綴りと音声の一致を学ぶことで、単語の習得がしやすくなります。
(※)綴り字と発音との間に規則性を明示し、正しい読み方の学習を容易にさせる方法の一つ

例えば、生徒たちが「なぜこの単語はこのような綴りなのか」と疑問に思っていた謎が、フォニックスを通じて解き明かされることがよくあります。この「謎解き」の過程で、生徒たちは大きな喜びや驚きを感じます。「へえ、そうなんだ!」という発見の瞬間が、学習意欲を高め、記憶の定着を促進するんです。

個人差はありますが、私が中学生の頃と比べても、生徒たちの発音は格段に上手くなっていると感じますね。

入学希望者へのメッセージ:グローバル人材育成と豊かな人間性の両立

鹿児島純心女子中・高等学校で広報を務める今村先生

▲今回インタビューに応じてくださった今村先生

編集部

入学を考えている生徒や保護者の方々へ、メッセージをお願いします。

伊地知先生

来年度からは、本校の入試で「英語で話す」テストが導入されます。小学校で英語が教科化されたこともあり、多くの生徒が英語に興味を持っています。私たちは、できるだけ多くの生徒に英語の楽しさを味わってほしいと考えています。

入試では英語1教科だけの受験も可能ですし、国語、算数、英語の組み合わせでも受験できます。ぜひ自由にチャレンジしてみてください。入学後は、生徒一人ひとりを大切に育てていきます。

今村先生

本校では、人間教育をしっかりと行いながら、6年後の進学先についても幅広い選択肢を提供できるよう努めています。英語教育の充実や海外大学への進学サポートなど、グローバルな視野を持った人材育成に力を入れています。

同時に、キリスト教精神に基づく教育を通じて、思いやりの心や平和への意識を育みます。これらの要素が調和した教育環境で、生徒たちは豊かな人間性と確かな学力を身につけることができます

私たちは、生徒一人ひとりの可能性を最大限に引き出し、将来の夢の実現をサポートします。ぜひ本校で充実した6年間を過ごし、自分の未来を切り開いていってほしいと思います。

鹿児島純心女子中・高等学校の評価:保護者からの声

先生に質問しやすい環境が整っており、生徒の能力に応じた対応をしてもらえます。(保護者)

体育館などの設備は新しく整っています。図書館の蔵書も豊富で、本好きな生徒には良いと思います。(保護者)

教師やシスターは生徒をしっかりと見守り、適切に指導してくださいます。丁寧な言葉遣いで接してくださるようです。(保護者)

部活動は時間的な拘束が厳しくないため、塾通いや長い通学時間の生徒でも参加しやすいようです。子どもたちは楽しみながら活動していると思います。(保護者)

学習環境がしっかりと整い、教師やシスターの指導やサポートも手厚い様子が伺えます。子どもたちが学習や部活に専念しやすい学校であることがわかりますね。

鹿児島純心女子中・高等学校の進学実績

鹿児島純心女子中・高等学校の校門

鹿児島純心女子中・高等学校の主な進学先(2024年度実績)は以下のとおりです。

  • 国公立大学:14名(九州大学、鹿児島大学、宮崎大学、大分大学、高知大学、福岡教育大学、大阪公立大学、福岡県立大学など)
  • 私立大学:69名(上智大学、東京理科大学、明治大学、青山学院大学、法政大学、津田塾大学 聖心女子大学 同志社大学、立命館大学、関西学院大学など)
  • 短期大学:16名
  • 専門学校:12名

九州の有名国立大学や、SMARTを中心とした難関私立大学への合格者も多く輩出しています。

鹿児島純心女子中・高等学校の基本情報

名称 鹿児島純心女子中・高等学校
住所 〒890-8522 鹿児島県鹿児島市唐湊4丁目22番2号
アクセス
  • JR 郡元駅下車 徒歩10分
  • 鹿児島市電 純心学園前電停下車 徒歩12分
  • 鹿児島交通バス 純心女子学園前(18・19番線・15-2番線)下車
問い合わせ先 電話番号: 099-254-4121
FAX: 099-252-7688
問い合わせフォーム
公式URL https://www.k-junshin.ed.jp