樹徳中学校・高等学校が大切にする「心の教育」と「論理力」に迫る|中高一貫校

この記事では、特色ある教育に取り組む注目の学校として、群馬県桐生市にある私立・共学の中高一貫校「明照学園樹徳中学校・高等学校」をご紹介します。

同校を運営する学校法人明照学園は、大正3年(1914年)に浄運寺の住職の野口周善によって、女子を対象とした仏教主義による全人教育を目標に裁縫伝習所として創立されました。2001年には群馬県で初となる中高一貫教育を開始し、心の教育を中心に据えて「知識を備えつつも人のために尽くせるリーダー」の育成を行っています。

また、論理力を伸ばす授業を意識しており、理数教育に強い学校としても知られています。医学の道を志す生徒も多く、医学部医学科をはじめ医療系を目指す生徒のための特別講座を通年で実施しています。

今回は、そんな樹徳中学校・高等学校の教育内容について、副校長の薊法明(あざみのりあき)先生にお話を聞かせていただきました。
(※)冒頭の画像の右側に写っているのが薊先生。左側は明照学園理事長・樹徳高等学校校長の野口秀樹先生、真ん中は樹徳中学校校長の辻村好一先生

心の教育を大切にし、AI時代のリーダーを育成する樹徳中学校・高等学校

樹徳中学校・高等学校の薊先生がインタビューを受けるようす

▲今回インタビューをお受けいただいた樹徳中学校・高等学校の薊副校長

編集部

本日はよろしくお願いいたします。初めに、創立110周年を超える伝統校である御校の教育理念について教えていただけますか?

薊先生

わかりました。樹徳中学校・高等学校のスクールミッションを一言で表すと、「AI時代のリーダーにふさわしい知識を備え、智慧と慈悲との調和のとれた、物事に感謝できるすぐれた人材の育成」を目指すこととなります。

この教育理念には、野口理事長や辻村校長が朝礼などで生徒によく話しているように、日本に留まらず国際社会に出て、さまざまな場面で他の人に貢献できる人になってほしいという想いが込められています。

自分に能力がなければ、人に貢献することもできません。中高の6年間で勉強だけではなく心の教育もしっかりと行い、AI時代になっても必要とされるような「知・徳・体」のバランスの取れた人を育成したいと考えています。

樹徳中学校・高等学校の校舎に置かれた阿弥陀仏

▲樹徳中学校・高等学校の生徒は、登校したらまず阿弥陀仏に合掌し、教室へ向かう

樹徳中学校・高等学校の生徒が花祭りを行うようす

▲毎年4月には、お釈迦様の誕生を祝う花祭りを開催

毎朝読む「樹妙」は卒業後も生徒の生き方に影響を与える

樹徳中学校・高等学校の生徒が読む「樹妙」の表紙

編集部

心の教育を大切に考えているというお話がありましたが、樹徳中学校・高等学校ならではの取り組みがあればご紹介いただけますか?

薊先生

本校では、オリジナルで作った本「樹妙」を毎朝拝読し、その内容を自分の中に落とし込んで生活をしようという取り組みを行っています。

樹妙の内容、例えば「美しいものを美しいと思えるのはあなたの心が美しいからです」とか「打算的な行為は必ず浅い底が見えるものです」、「怠けると後がむなしい」、「奪い合えば足りぬ、分け合えば余る」といった中学1年生にも理解できる内容になっています。

樹徳中学校・高等学校が使用する「樹妙」

▲「樹妙」には、人間性の向上につながるような言葉が200ページ以上に渡って記されている

編集部

この取り組みに対して、生徒さんからはどのような感想が寄せられていますか?

薊先生

樹妙に書かれていることは、一見当たり前の内容ですが、その内容の大切さに気づかされることが多いんです。卒業生からは「卒業してから樹妙の内容の重みがわかった」と言ってもらうことが多いです。

また、10年以上前に卒業した生徒が海外に引っ越すことになり、「樹妙を処分してしまったけれど、海外に持っていきたいので1冊ください」と言って本校を訪ねてきたこともありました。樹妙は卒業した後も彼らの心の支えになっているのだと感じます。

樹徳中学校・高等学校の生徒が教室で読書するようす

▲樹妙以外にも読書を勧める同校では、毎朝10分間の読書時間も設けている

樹徳中学校・高等学校が「理数教育に強い中高一貫校」で上位に選ばれる理由とは

樹徳中学校・高等学校の生徒が図書館で勉強するようす

樹徳中学校・高等学校は、大学通信社が2023年に発表した「理数教育に力を入れている中高一貫校」のランキングで関東地区で11位、群馬県の学校としては唯一選出されるなど、理数教育に強い学校として知られています。

また、医療の道を志す生徒を対象とした特別講座も実施しており、医学部医学科に進む生徒が毎年複数いるのも特徴です。

ここからは、同校の理数教育への取り組みについて詳しく伺っていきます。

「論理力」をつけることが理数系の成績アップにつながる

編集部

樹徳中学校・高等学校は理数系に強い学校として知られていると思いますが、その理由はなんだとお考えでしょうか。

薊先生

本校が国語を大切にしていることと関係があるのではないかと考えています。その中でも特に論理力を大切にしており、国語や総合学習の授業では「考える力」を育てることを意識しています。

これが、文系の読解力だけではなく、理数系科目に求められる「スピーディーな論理力の展開」に必要な力にも繋がっているのだと思います。

編集部

論理力を伸ばすための具体的な取り組みとしては、どのようなものがありますか?

薊先生

中学では、水曜日の7時間目の総合学習の時間に「Literas(リテラス)論理言語力検定」(※)の1〜3級取得を見据えた授業を実施しています。
(※)社会課題を材料に、社会で活躍するために必要な言語能力を「語彙運用力」「情報理解力」「社会理解力」の領域で育成・測定するもの
検定の結果は年々上昇傾向にあり、生徒が論理的に物事を理解する力を鍛えられていることが明らかになっています。

数学は先取りを意識、理科では実験を重視

樹徳中学校・高等学校の生徒が白衣を着て顕微鏡を覗くようす

編集部

理数系の授業の内容についてもご紹介いただけますか?

薊先生

本校では先取り教育を行っていますが、特に数学は他の科目以上に早いペースで取り入れています。また、問題を解いて数学力をつけるための時間をしっかり確保し、教員の数も多く配置しています。

さらに、中学3年生から習熟度別のクラスに分かれるので、苦手なお子さんに対してもしっかり対応できるような環境があります。

理科では、なるべく多くの理科の実験を行えるよう、2時間連続の授業を週に1回設けています。

実際に理科の実験は、教科書の内容を理解する補助的なものですので、準備等が大変なこともあり、あまり実験を行わない学校もあるかと思います。本校はその実験に力を入れており、生徒が興味を持って学習に取り組む一助にしております。

実験が終わった後、生徒達が私のところに来て、その日に行った実験の話をしてくれることがあります。その中でも、すりおろした野菜を瓶に入れ、過酸化水素水を入れると泡を立てて反応し、最後には反応の勢いで蓋が飛ぶという実験の話を楽しそうにしてくれことが印象に残っています。

生徒はそれが野菜に含まれるカタラーゼという酵素が過酸化水素と反応したからなのだと熱く説明してくれるのですが、私の知識が追いつかず彼等の熱量に圧倒されてしまいました。

編集部

実験では手を動かして自分の目で結果を確認できるので、教科書だけで学ぶのとはまた違う経験になるのでしょうね。

薊先生

そう思います。また、熟練した教員と一緒に質の高い実験を行っているため、生徒が理科に興味を持つきっかけになっていると感じます。

興味を持つことは、力を伸ばす上で大切なことです。理数系に苦手意識を持たずに前向きに取り組めるような環境づくりを行っていることも、本校が理数系に強い学校と言っていただける理由なのだと思います。

医療系を目指す生徒向けの特別講座では高名な医師による講演も

編集部

御校は、医療系の道を目指す生徒さんも多いそうですね。

薊先生

はい。具体的には、2023年度の卒業生37名のうち、6人が現役で医学部医学科に進学しました。割合的には、ほかの学校さんより少し多いのではないかと思います。

編集部

入学時からずっと医学の道を志しているというケースだけではないと思うのですが、6年間の中で、生徒たちが医療系の分野に関心を深めるようなきっかけがあるのですか?

薊先生

本校では、医療系を目指す中学1年生から高校1年生までを対象とする「医療倫理・医系進学講座」を通年で開講しているので、その影響はあると思います。

この講座は月に1〜2回、放課後に実施していて、茂木健一郎先生や香山リカ先生など高名な医師による講演や、国立大学医学部の過去の入試問題を使った演習、インフォームドコンセントについて学んだ後に取り巻く問題や課題について調べるなどの取り組みを行っています。

編集部

講座を受けた生徒さんの変化をどのようにお感じですか?

薊先生

医療現場の厳しさを理解すると同時に、人を助ける尊い仕事だということも改めて認識し、「この道に進みたい」という思いを固める機会になっていると感じます。

講座の内容は比較的難しいのですが、自分で調べる楽しさを感じられるような内容を意識しているので、モチベーションが生まれ、「医学部や医療系学部の進学に向けて頑張っていけそうです」と言ってくれる生徒もいます。

東大や企業と連携。樹徳中学校・高等学校のSTEAM教育や探究学習

樹徳中学校・高等学校の生徒がロボットを組み立てるようす

編集部

樹徳中学校・高等学校が力を入れている教育には、ほかにどのようなものがありますか?

薊先生

2023年度から取り入れているSTEAM教育(※)や探求学習の一環として、例えば東京大学と協定を結んだ学校だけが参加できる「金曜特別講座」をオンラインで受講したり、群馬大学の理工学部の先生をお招きしてロボット制作に挑戦しながら自ら課題を解決する力を伸ばしています。
(※)科学・技術・工学・アート・数学を総合的に学び、課題を自ら見つける力や物事を多面的に捉え解決する力、新しい価値を創造する力を身につける教育

樹徳中学校・高等学校の生徒が特別講座を受けるようす

▲東京大学と連携したオンライン特別授業は毎週金曜日に開かれる

薊先生

また、企業様の協力のもと探究学習や総合学習に結びつくような授業も行っています。

2023年度にはトヨタ自動車様が主催する「トヨタ未来スクール」というオンラインプログラムに参加し、カーボンニュートラルやSDGsなどについて考えました。

ほかにも、社会に出た時に役立つ創造力や自分で答えを見つけ出す力を育むプログラム「SCHOP Creative Course(スコップ・クリエーティブ・コース)」を受講しました。さまざまな分野のプロの方がビデオを通じてナビゲート役となり生徒が課題に挑戦するもので、視点の広げ方や発想の仕方など、普段の授業とは違ったスキルを身につけることができました。

編集部

これからの時代に求められる力を伸ばすための教育に力を入れているのですね。授業を受けた生徒さんからはどのような声があがっていますか?

薊先生

生徒は楽しみながら学んでいますし、「発想の仕方の勉強になる」という感想もありました。ほかの生徒の発表を聞くことが気づきや視野の広がりにつながるケースもあり、これからも外部の優れたプログラムを積極的に取り入れたいと考えています。

2024年度はすでに飲料メーカーのUCC様が提供するプログラムに参加してコーヒー豆の原産国である南アフリカなどの地域の特色を学びながら、持続可能な発展について学びました。

小規模教育の強みを活かし、きめ細かい指導を行う

樹徳中学校・高等学校の生徒が富士山で記念撮影するようす

▲中学1、2年生は高原学校として隔年で富士山と尾瀬を訪問する

編集部

樹徳中学校・高等学校の先生方は、生徒や保護者の皆さんとどのような関係性を築いていますか?

薊先生

大学進学の希望を叶え、全員笑顔で卒業してほしいというのが全ての教員の願いです。そのため、生徒が自分の進路を実現できるように最後まで諦めずに頑張ってもらえるような環境づくりを意識しています。

例えば、教員は生徒のやる気を引き出すような声掛けを大切にしており、保護者の皆さまとも電話などで密に連絡を取り合っています。

また、本校は1学年の人数が30~40名と小規模ですが、教員は中学では1学年に4人以上ついています。生徒も教育もそれぞれ個性がありますので、それらをお互いに認め合う環境づくりを大切にしています。

また、挨拶や掃除、授業中の姿勢や言葉づかいなど、当たり前のことを当たり前にできなければいくら勉強ができても駄目だということも、日頃からさまざまな機会に生徒に伝えています。

編集部

ご家庭で教えられるような礼儀や習慣なども含めて、親身になって日々伝えていらっしゃるのですね。

薊先生

はい。もちろん、ご家庭でもこのような教育をしっかりしていただいていますが、学校でもできる限りのことをしたいと思っています。

ご家庭と協力しながら子どもを支えるため、もし何か問題が起きたり、また起きそうなときにはご家庭ではこういうふうにしていただき、学校ではこういうふうにしたいと思うのですがいかがですか?」と提案させていただき、しっかりと役割分担をしながら力を合わせて生徒のサポートをしています。

樹徳中学校2年生の生徒が立志の誓いを読み上げるようす

▲昔の元服の年齢にちなんで中学2年時に「立志式」を行う。生徒は立志式に向けて自分の将来について考え、立志の誓いとして文集にまとめる

編集部

そんな樹徳中学校・高等学校で過ごした生徒さんは、どのような人に成長していくのでしょうか。

薊先生

本校の卒業生には、大学の先生方に目を掛けてもらえる人が多いと聞きます。可愛がられるということは、長幼の序をわきまえて、目上の人にはちゃんとした接し方ができるということだと思います。

当たり前のことを当たり前にすることを重視する本校の教育が、このような場面で活きているのではないでしょうか。

また、学校に遊びに来てくれる卒業生も多く、本校で過ごした日々を大切に思ってくれていると感じます。卒業生が来訪した時は必ずチェキで写真を撮るのですが、その数は1年で100枚以上にのぼり、在校生がよく通る廊下に掲示しています。

樹徳中学校・高等学校の生徒が茶道の授業を受けるようす

▲礼儀や作法の教育にも力を入れる樹徳中学校・高等学校では、茶道の授業も行っている

樹徳中学校・高等学校からのメッセージ

樹徳中学校・高等学校の音楽部の生徒が発表を行うようす

▲音楽部の活動の様子。オンとオフを上手に切り替えながら勉強、部活、遊びに一生懸命取り組むことを推奨している

編集部

最後に、記事をご覧のお子さんや保護者の方にメッセージをお願いします。

薊先生

樹徳中学校・高等学校を運営する明照学園や樹徳高校は2024年で創立110年を迎えました。また、中高一貫校としては24年目を迎えます。

10年以上前は、本校に対して「真面目で勉強が大変」というイメージを持つ塾や小学校も多かったのですが、現在は生徒がとても伸びのびと学校生活を送っているというイメージに変わっているようです。

もちろん勉強もしっかりしますが、中学時代から過度に勉強させてしまうと生徒が疲弊してしまうので、現在は6年間のスパンで緩やかな先取り学習を意識しています。生徒の苦手な部分は補習などでフォローし、大学進学という出口をできる限り良いものにしたいと思っています。

進学実績で本校を選んでいただくケースもありますが、本校は何より心の教育を大切に考えており、安心安全な環境で生徒がさまざまな経験ができる環境があります。ご興味をお持ちいただけたらお気軽にお問い合わせください。

編集部

本日は、ありがとうございました!

樹徳中学校・高等学校の進学実績

樹徳中学校・高等学校では、「自ら取り組む」ことによって学ぶことの真の喜びを実感できれば、成績は確実に伸長すると考え、「自ら勉強に取り組める生徒」を念頭に置いた学習指導を行っています。

難関校に合格する生徒も多く、2024年度の大学入試では国立私立を問わず多くの大学合格者を出しました。

また、医学部医学科には9名が合格しています。

近年の大学合格実績(樹徳中学校・高等学校の公式サイト)
https://www.jutoku.ed.jp/high/career

樹徳中学校・高等学校の保護者や卒業生の口コミ

樹徳中学校・高等学校の行事やクラブ活動に臨む生徒たち

▲お寺での節分会や文化祭、修学旅行など楽しい行事がいっぱい。クラブ活動も盛んで、陸上部の大豆生田さんは、中学3年時に全国大会の女子棒高跳びで優勝した(画像右下)

最後に、樹徳中学校・高等学校の保護者や在校生の声を紹介します。

(保護者)少人数の学校なので、先生方の面倒見がとても良く、授業以外でも熱心に教えてくれます。

(保護者)生徒のことを真剣に考えてくれる学校です。茶道や華道など、ほかの学校ではできない経験もたくさんできます。

(保護者)子どもへの声掛けをしっかりしてくださいますし、何かあると先生がすぐに連絡をくれるので安心です。

(卒業生)特に数学で先取り学習を行っており、高校3年になる頃には受験勉強に集中できます。

(卒業生)先生方は熱心で生徒との距離がとても近く、楽しい思い出ばかりの学校でした。

口コミでは、教員の熱意や面倒見の良さを評価する声がたくさんあがっていました。

樹徳中学校・高等学校へのお問い合わせ

運営 学校法人明照学園
住所 中学:群馬県桐生市稲荷町4-12
高校:群馬県桐生市錦町1-1-20
電話番号 中学:0277-45-2257
高校:0277-45-2258
公式ベージ 中学:https://www.jutoku.ed.jp/junior/
高校:https://www.jutoku.ed.jp/high/

※詳しくは公式ページでご確認ください