「順天中学校・高等学校」が実施する、社会貢献型の探究学習とグローバル教育|中高一貫校

独自の教育を実践する注目の学校を紹介する本企画。今回は、東京都北区にある中高一貫の共学校「順天中学校・高等学校」を紹介します。

国際社会で社会貢献できる人材の育成を目指す同校では、社会貢献を目的とした探究学習を実施しています。また、グローバル教育にも力を入れ、海外研修の機会が多く、毎年「トビタテ!留学JAPAN(※)」に選出されています。
(※)トビタテ!留学JAPAN:文部科学省が展開する留学促進キャンペーン

今回は、そんな同校の建学の精神や独自の教育活動について、教育支援センター長の片倉先生にお話を伺いました。

「探求」から「研究」へと進化する順天中学校・高等学校

順天中学校・高等学校の外観

編集部

まずは、順天中学校・高等学校の建学の精神についてお聞かせください。

片倉先生

本校の建学の精神は「順天求合(じゅんてんきゅうごう)」です。「順天」とは、自然の摂理に従うということです。「求合」は、今で言えば「探求」であり、真理を探求するという意味です。自然の摂理にしたがって真理を探求する建学の精神のもと、和算家であった福田理軒が1834年に創設した「順天堂塾」が本校の起源となっています。

そして、2026年4月に控えた本校と北里研究所との合併に向け、「探究から研究へ、そして未来を創る人となる」をスローガンとして掲げています。

北里研究所は北里大学や病院を運営する学校法人であり、医学・生命科学の研究機関です。日本の医療分野で幅広い活動を展開し、社会に貢献している北里研究所の一員になります。

中学高校では探究学習を学び、大学へ行くと「探究」が「研究」になるわけです。2026年から本校は北里大学の付属校になるので、中高と大学との連携を深めて、中高大一貫の教育をしていきたいという考えが込められています。

主体性・多様性・恊働性を養う「順天中学校・高等学校」の教育

順天中学校・高等学校の図書室と校舎

編集部

では、御校の教育方針について教えてください。

片倉先生

2000年以降、本校では国際社会で活躍する人材の育成を目標に掲げてきました。それを実現するために、3つの指針を設けています。

1つは『進学教育』で中高一貫教育による学力の定着・向上によって、国立大学や難関私立大学への進学を目指すことです。志望の大学へ進学することで、その先にある夢や希望を実現できるものと考えています。

2つめは『国際教育』で、国際化した社会で主体的に行動するために身につけるべきことを学びます。具体的には、英検取得、国際理解、国際交流、海外体験の4つ分野における実践的な教育活動を行っています。

3つめは『福祉教育』で、自分のためだけに動く人間ではなく、誰かのために動ける人間になることを目指します。心を磨き、豊かな人間性を身につけるために、ボランティア活動の機会を提供しています。

これら3つの教育指針を重視した上で、3つの資質・能力を定め、養い、高める学びを展開しています。

編集部

3つの資質・能力とはどういったことでしょうか?

片倉先生

1つは「創造的学力」、クリエイティブな考え方です。主体的に課題を発見し、それを解決するために創造的な考え方ができる資質・能力が必要です。

2つ目は国際対話力です。これは英語力だけではなく、相手の価値観や文化、それらをも理解することによって生まれる、本当の意味での対話力を指します。

3つ目は「人間関係力」です。協働性・社会性と言い換えることができます。AIやロボットにはもっていない『思いやりや社会性』を備えた豊かな人間関係を作っていきましょう、ということです。

国際交流が豊富な、順天中学校・高等学校のグローバル教育

順天中学校・高等学校のラーニングコモンズ

編集部

国際教育が特徴と拝見しましたが、どのような取り組みをされているのでしょうか?

片倉先生

本校は世界各地の学校と姉妹校提携しており、国際交流のために高校生が来校します。つい最近はタイやニュージーランドから、今年(2024年)10月にはオーストラリアから来る予定です。研修生とは演奏会やお茶会、書道などの文化交流を行います。それによって、海外の人たちの考え方を知り、理解できます。また、海外の人が持っている日本のイメージを聞くこともできます。

また、本校では海外からの留学生を受け入れており、現在は3名の留学生が本校生徒と一緒に学んでいます。非英語圏の生徒でイタリア、ノルウェー、フィンランドから来ています。本校の生徒とは英語でコミュニケーションをとりながら、少し日本語を教えることもあるようです。

編集部

御校の生徒が海外へ行く機会もあるのでしょうか?

片倉先生

中学3年生の7月中旬から9月の終わりまでの2ヶ月半、ニュージーランドへのホームステイ研修があります。1学年は100名余おり、希望制で33名、約3分の1が参加しました。33名は一緒の学校へ行くのではなく、1つの学校には2人までです。都市も何ヶ所かに分かれます。日本人同士でばかり行動しないようにするための配慮です。

高校でも2年の夏休みに語学研修があります。理系の生徒たちはオーストラリアのブリスベンに行って、近くの大学で、大学レベルの理科の実験などの授業を現地の高校生と一緒に学びます。その大学は生命科学系で医学部があるのですが、科学実験的なことを取り上げてくれたり、日本にはない犯罪捜査学科があり、例えばルミノール反応や遺伝子のチェックなどの実験を行ってもらえたりして大変興味深かったようです。

留学経験者による丁寧な指導と企画力で、毎年「トビタテ!留学JAPAN」に選出!

編集部

国際教育について、御校ならではの特徴を教えてください。

片倉先生

本校の生徒は、毎年「トビタテ!留学JAPAN」に選出されています。

2019年には本校から5人も参加できました。全国にある約5000の高校の中から700名が選ばれるため、8校に1人ぐらいしか行けない計算になるので、かなり多いことがおわかりいただけるかと思います。去年と今年は3名ですが、それでも多いです。

編集部

とても多いですが、選ばれるために御校で何かサポートをされているのでしょうか?

片倉先生

過去に「トビタテ!留学JAPAN」に選出されたOB・OGに協力してもらい、申請書の書き方から面接対策まで丁寧に指導してもらっています。

また、「トビタテ!留学JAPAN」の審査は企画力が重要です。ただ「語学研修したい」だけでは絶対通りません。

例えば、ある生徒は、有名なジャズクラブ、ブリューノートがあるニューヨークの音楽学校へドラムを習いに行きました。

別の生徒はカンボジアに英語を教えに行きました。この生徒は帰国生で、自分がアメリカにいたときに、いろんな国の人が学校に来たそうです。英語を勉強して母国に帰ると、キャリアにつながるそうです。それで、カンボジアの人のために英語を教えに行ったのです。

この生徒は卒業して5年になるのですが、『カンボジア教育支援活動』が後輩に受け継がれ現在まで続いていたのですが、今年に入り現地との連絡が出来なくなりました。ですから、縁を復活させて教育支援したいとの生徒有志から直談判があり、「カンボジアに行かせてほしい」と、生徒3名、先生2人でカンボジアへ行く予定です。これこそが探究心です。

社会貢献につながる順天中学校・高等学校の探究学習

順天中学校・高等学校の授業風景

▲探究学習は、教室のほか探究学習用のPBLルーム(右)も活用できる

編集部

順天中学校・高等学校の探究学習について教えてください。

片倉先生

本校はボランティア教育を熱心に行っているため、社会貢献型の探究学習が多いです。

軽視されがちな保健体育・芸術・技術家庭科・道徳の教科をとても大事にしており、本校ではこれらの教科をクロスカリキュラム化しています。福祉や地域社会に関わる現実的なテーマを題材に、高齢者施設や保育園、障害者施設などを訪れ、さまざまな人と触れ合いながら、相手の立場になって考えることや支え合う気持ちを育んでいます。

例えば、保育園の子どもたちにおもちゃを作るという課題に対して、安全性を検証したり、子どもが興味を持つかどうかを創造的に考えてみたりします。これには、各教科の要素が含まれています。そして、作ったおもちゃで子どもが喜んでくれれば、自己肯定感が上がり、社会貢献の重要性を学べます。

探究学習としては、先ほど言ったようなカンボジアでの国際的な探究もありますが、高齢化が進んだ近所の団地の活性化を考えることも探求です。いずれにしても、本校が行っているのは、社会貢献のための探究なのです。

編集部

社会貢献型の探究学習は生徒の皆さんの価値観や考え方にも影響しそうですね。御校の生徒の特徴として感じるものがあれば教えてください。

片倉先生

本校はボランティア活動を行っている学校なので、自分が目立ちたいというよりも「誰かに役立つことをしたい」「自分と周りを幸せにしよう」と考えている生徒が多いと思います。

また、学習はインプットだけではなく、アウトプットが大事ですが、本校にはアウトプットがきちんとできる生徒が多いと感じます。その背景には、本校にはコミュニケーションを取る授業が多いことがあると思います。グループで討論して仲間と一緒に解決しようとする生徒が多い印象です。

アフリカでの社会貢献につながった事例やコンテスト受賞経験も

編集部

御校の探究学習で印象に残っているものがあれば教えてください。

片倉先生

いくつかありますが、まず社会貢献につながった事例として、アフリカのザンビアという国の課題解決につながった事例を紹介さえていただきます。ザンビアは女性の地位が低く、生理用品が不足しているため生理の日には学校に行けず、勉強が遅れるというのです。そこで布ナプキンの作り方を共有したそうです。ところが現地にはスナップボタンがなく(有っても劣悪)ため困りました。

そこで、最寄りの王子駅の駅長さんに話したところ、協力してくれるということで、掲示板に情報を掲示し、回収箱を置かせてもらい寄付を募ったところ、2500個くらいのスナップボタンが集まりました。すぐに現地に送り、また集まったら送るという活動をしています。現在は、スナップボタンを使わなくてもいい布ナプキンを開発中です。

編集部

他にも印象に残っているものはありますか?

片倉先生

理系の探究学習の事例ですが、日焼け止め成分が海に流れてサンゴに与える影響をテーマにしたものがあります。ベンゾフェノンという成分が淡水域生態系に及ぼす影響を調べたもので、アイデアコンテスト「つくばScience Edge2024」においてGlobal Link Queensland賞とブースポスター賞の2つを受賞しました。

この受賞によって、今年(2024年)の夏にオーストラリア・ブリスベリンで開催されるグローバルリンククイーンズランドへの招待権が授与され、この国際発表会へ行くことが決まりました。そこでは英語で研究内容を発表します。

日本人も少し出ますが、東南アジアの高校生が大勢参加します。東南アジアは理系がすごいです。国を上げて科学技術を上げようとバックアップしています。相当刺激になると思います。

順天中学校・高等学校の校内に貼られた受賞告知ポスター

▲「つくばサイエンスエッジ2024」での受賞を祝す校内掲示ポスター

順天中学校・高等学校からのメッセージ

順天中学校・高等学校の教育支援センター長の片倉先生

▲取材に対応いただいた、教育支援センター長の片倉先生

編集部

最後に、順天中学校・高等学校に興味を持ったお子さんや保護者の方へメッセージをお願いします。

片倉先生

進学実績を見ていただくとわかると思うのですが、約半分ぐらいの生徒が国公立大学・早慶上理・GMARCHに進学します。本校の生徒は、学習レベルに上下差があまりありません。一般的な私学は成績によってクラスを分けますが、本校はフラットです。

理系が好きだったり、英語が好きだったりという興味によるクラス分けはありますが、成績レベルはほとんど変わらないので、ヒエラルキーができることはないです。しかも、ボランティアや福祉に興味がある、人に対して優しい生徒が多いので、過ごしやすいと思います。

興味をお持ちの方は、ぜひ説明会やオープンスクールにお越しください。

編集部

本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

順天中学校・高等学校の授業風景

▲休憩時間中の生徒の様子からは、仲の良さそうな雰囲気が伝わる

順天中学校・高等学校の進学実績

順天中学校・高等学校の図書室

▲約4万冊を所蔵する図書室。生徒たちの知的好奇心を満たしている。

順天中学校・高等学校では、毎年約9割の生徒が現役で4年生大学に進学しています。

2023年度の実績としては、卒業生250名の49%、中高一貫生の57%が国立大学、早慶上理(早稲田大学、慶応大学、上智大学、東京理科大学)、GMARCH(学習院大学、明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)の難関私立大学、医歯薬大学に進学しています。

また、全体の31%は、成蹊大学、成城大学、明治学院大学、國學院大學、武蔵大学、日本大学、東洋大学、駒沢大学、専修大学などの実績のある伝統校・有名私立大学に入学しました。

2023年度合格者数としては、国公立大学には24名、早慶上理には70名、GMARCHには159名が合格しています。

■進学実績(順天中学校・高等学校公式サイト)
https://www.junten.ed.jp/contents/shingaku/

順天中学校・高等学校の図書室内の自習スペース

▲図書室内にある自習スペース。多くの生徒が活用している。

順天中学校・高等学校の卒業生・保護者の口コミ

順天中学校・高等学校のグラウンド

▲屋上には広いグラウンドが。部活やイベントなど学校生活を充実させてくれる

ここでは、順天中学校・高等学校の卒業生や保護者から寄せられた口コミを一部抜粋して紹介します。

部活と勉強だけでなく、海外研修や文化祭などの楽しいイベントがあり、通って良かったと思っています。自習室もあり、わからないところはすぐ先生に教えてもらえます。本人の頑張り次第ですが、ほとんどの生徒が現役でMARCH以上に進学します。

学習面でのサポート体制が充実していて、熱心な先生が多いと思います。進学校のイメージがあるかもしれませんが、勉強と部活を両立している人はたくさんいます。先生も友だちも学校生活も、総合的に良かったと思えます。

主体性を重んじている指導をしているため、伸び伸びと学校生活を送っています。行事も生徒主体で行い、体育祭・文化祭はとても盛り上がりました。学校全体で勉強への意識が高く、運動部も活発です。文武両道で積極的な子が多い印象です。

先生と生徒、先生と保護者の距離が近く、何か気になったことがあれば、遠慮せず先生に意見や要望を伝えることができる雰囲気でした。また、学校は保護者の意見や要望にきちんと耳を傾け、反映してくれました。安心して子どもを預けることができました。

順天中学校・高等学校のカフェテリア

▲明るい雰囲気のカフェテリアも完備。メニューが豊富で保護者の負担軽減にも貢献している

順天中学校・高等学校のへのお問い合わせ

順天中学校・高等学校のラーニングコモンズ

運営 学校法人順天学園 順天中学校・高等学校
住所 東京都北区王子本町1-17-13
電話番号 03-3908-2966
問い合わせ先 https://www.junten.ed.jp/contents/inquire/
公式ページ https://www.junten.ed.jp/contents/

※詳しくは公式ページでご確認ください。