独自の探究学習&理数教育が魅力!「十文字中学・高等学校」の主体性を育む教育とは|中高一貫校

独自の教育を実践する注目の学校を紹介する本企画。今回は、東京都豊島区にある中高一貫の私立女子校「十文字中学・高等学校」を紹介します。

同校は、1922年の創立以来、常に次代を見据え、先進的な女子教育を続けている伝統校です。2023年度からは探究学習を刷新し、6年間の体系的な探究プログラムを通して、挑戦力・創造力・表現力・傾聴力・共感力・自己肯定力の向上を図っています。また、数学については2022年より独自の学習プログラムを導入しました。

今回は、そんな十文字中学・高等学校の教育理念や特徴的な取り組みについて、校長を務める横尾先生にお話を伺いました。

心身を鍛える、十文字中学・高等学校の「自彊術体操」と校風

編集部

最初に、十文字中学・高等学校の建学の精神や教育目標、校訓についてお聞かせください。

横尾先生

本校は1922年に、社会で活躍する女性の育成を目指して創立されました。建学の精神は「身をきたへ心きたへて世の中にたちてかひある人と生きなむ」です。

設立者であり初代校長である十文字ことは、社会に出て役に立つ人として生きていってほしいとの想いを持ってこの学校を作り、そのためには高い志を持ち、その志を実現するために、心も体も鍛えましょうと謳っています。

そして、本校の校訓は「自彊不息(じきょうやまず)」です。これは中国に伝わる易経の文言で、自分自身を鍛えることをやめない、決めたことをずっとやり続ける精神を意味します。これを体現するために、本校では毎朝「自彊術体操」を行っています。

自彊術体操は、十文字ことが学校を作る際、出資者となった夫の十文字大元が病を治すに至った動き、動作を体操にしたものです。毎朝、校庭で全校生徒が自彊術体操を行っています。

十文字中学・高等学校の自彊術体操

▲毎朝行われる自彊術体操

編集部

生徒さんには定着して、日常生活の一部という感じでしょうか?

横尾先生

そうですね。毎朝行っているので習慣になっています。健康を意図した体操なので、朝に行うことで頭がすっきりするという生徒もいますし、これを行わないと1日がスタートしないと言う生徒もいます。

チャレンジ精神を発揮できる校風

十文字中学・高等学校の学校説明会

▲生徒主体で行われる学校説明会

編集部

十文字中学・高等学校の生徒さんの特徴等がありましたらお聞かせください。

横尾先生

本校には、主体的に活動する生徒が多いと思います。例えば、生徒広報委員会があり、学校説明会は生徒主体で行います。

カフェテリアを紹介したい人、制服を自慢したい人、お気に入りの場所を紹介したい人、部活を紹介したい人など、生徒たちが自分で発案します。生徒にプレゼンの権限を与えており、何を話してもいいので、さまざまなテーマや切り口で、自分たちでイチから広報内容を作り上げます。

本校は、枠組みを決めて、この中でやりなさいではなく、いろいろなことに挑戦できる環境を用意しているので、生徒たちはとても伸び伸びと学校生活を過ごしながら、いろいろなことにチャレンジしています。

探究力・自己表現力を養う「自己発信コース」を設定

十文字中学・高等学校の十文字探究DAY

▲中高全校生徒参加の十文字探究DAYの様子

編集部

十文字中学・高等学校の探究学習について教えてください。

横尾先生

2023年度より新たな形での探究学習をスタートしました。6年間の体系的な探究プログラムを通して、挑戦力・創造力・表現力・傾聴力・共感力・自己肯定力の向上を目指し、学年ごとに探究を行っていきます。

中1では人間探究、中2では企業インターン型探究、中3では社会課題解決型探究と、成長に合わせて深めていきます。

特徴的なのは、高校で「自己発信コース」を設立したことです。これは、自分の興味があることを探究して発信する実践的な学びが特徴のコースで、探究の時間が週4時間、他のコースの4倍以上あります。

さらに、探究を進めるために必要なスキル、ディスカッション力・リサーチ力・プレゼンテーション力を身につける授業も週1時間設けています。それらのスキルを活用してより深い探究をしていくことになっており、地域創生やビジネスプランと掛け合わせてさまざまな探究活動を行っています。

編集部

そのような探究活動を通して、生徒さんはどう成長されますか?

横尾先生

最初は根拠を上手に調べられなかった生徒たちが、考えて組み立てる力がつき、論点、根拠を示しながらデータを集めて、議論を展開していくようになります。

また、探究学習の成果を発表する機会として、年に1回、中1から高3まで全校生徒参加の「十文字探究DAY」を開催しています。探究DAYでは自分が発表する側でもあるし、発表を聴く、受ける側にもなります。今年2024年1月に行いましたが、聴いている側が質問をして、議論し合うことができていました。そういう形でお互いに思考を深めていくことができるようになったのも探究の成果だと思っています。

編集部

>印象に残っている生徒さんの発表のテーマはありますか?

横尾先生

実用的なもので感心した探究がありました。女性アスリートが、全盛期を終えると仕事がなくなってしまうことに着目し、女性だけの引越業者を作り、自分の空いている時間に仕事ができる、セカンドキャリアの形成といったことをビジネスプランとして発表していた生徒がいました。

ただ単に自分の興味だけではなく世の中で求められていることに関する内容だったので説得力がありました。

他にも自分の興味を超えて、世の中の問題に着目した取り組みとして「空き家プロジェクト」があります。地域に目を向け、空き家がたくさんあることに気づき、それをどうにか活用しようとさまざまなアイデアを出し合い、空き家プロジェクトや大塚駅の開発について探究しました。今年(2024年)は、巣鴨地蔵通り商店街の活性化を考えています。

自分の世界観を超えて世の中に目を向けてみるとさまざまな問題が見えてきます。

編集部

中学1年生の「人間探究」、これはどういった探究をされるのでしょうか?

横尾先生

有名人でも身近な人でもいいのですが、自分ではない誰かにフォーカスし、その人がどんな半生を生きていたか、どんな思いで人生を過ごしていたかなどを研究して、自分の生き方と重ね合わせることで自分の価値観を深めていくプログラムになっています。

あまり深く人生について考えることはないと思うのですが、こうして他者の人生を調べることによって、よりどころとなる信念のようなものに触れる、貴重な経験になったと思います。

>編集部

中2の企業インターン型探究(コーポレートアクセス)での様子はいかがですか?

横尾先生

これは企業から、本当に困っているテーマを課題として出されるので、かなり苦しみながら行っていました。その課題を解決するというよりも、企業からのアドバイスもいただきながら、どのような視点でどのように切り崩していくのか、どこに着目するのがいいのかをみんなで話し合って、少しずつそれが形になっていきます。

最初は苦労しますが、1年間続けると考える力が繋がっていくので、6年間の中でも一番良い経験になっていると思います。

昨年度(2023年度)は、イオンリテール・オカムラ・キモノハーツ・テクマトリックス・LINE ヤフー・塩野義製薬・大和ハウスでした。

企業インターン型探究は学校で用意したプログラムですが、生徒個人としてもいろいろなところで果敢に挑戦しています。例えば、もうずいぶん前ですが、NECがSDGsに積極的に取り組んでいるということを聞きつけて、直接NECに電話して、取材を依頼してアポを取って取材した生徒がいました。

主体的に行動するのは、昔から受け継がれている本校生徒の気質です。

十文字中学・高等学校の企業インターン型探究(コーポレートアクセス)

▲企業インターン型探究(コーポレートアクセス)の様子

学童でのボランティアに国内&海外大学の授業体験も

編集部

そのほか特徴的な取り組みのご紹介もお願いします。

横尾先生

校外との連携としては、「子どもスキップ」という豊島区のプロジェクトがあり、本校生徒が近隣小学校の学童へボランティアに行っています。

このほか大学との連携プロジェクトでは、成城大学や台湾の大学のご協力のもと、本格的な大学の授業を体験します。成城大学では「異文化コミュニケーション」「ビジネス概論」の授業を受け、大学生に交じって社会の問題点を一緒に議論しました。

台湾の大学からは、18の大学から教授にご来校いただき、本校で授業をしてもらいました。グローバルな視点を養うきっかけにもなり、海外大学への興味が出た生徒もいます。

十文字中学・高等学校の台湾の大学の先生による授業

▲台湾の大学の先生による授業を終えての記念撮影

生徒の学習意欲を刺激する「十文字中学・高等学校」の理数教育

ここからは十文字中学・高等学校の理数教育について伺いました。数学では独自の学習プログラム「J-PALM」、理科では好奇心を刺激する教室「サイエンスパーク」を中心に紹介します。

自分のスタイルで学べる独自の数学プログラムを導入

十文字中学・高等学校の数学個別最適化

▲個別最適化プログラム「J-PALM」を使った数学の授業の様子

編集部

十文字中学・高等学校の理数教育について教えてください。

横尾先生

本校の理数教育で特徴的なのは数学の個別最適学習プログラム「J-PALM」です。これは生徒の理解度や習熟度に合わせて個別に学びを深めることができる独自の学習プログラムとなっています。

目的としては、受け身ではなく、自走する生徒を育てたいということです。まず、一斉授業で概念を学び、その後は個々に学習計画をたて、自由進度で学習を進めていきます。スピード感や深さ、学び方は自由です。

例えば、黙々と教科書や問題集をすすめる、友達と話し合ったり、先生に聞いたり、動画視聴などいろいろな学習方法があり、それを自分で設計していきます。その中で目的が達成されるまで軌道修正しながら学びを深めていきます。中学生は1人1台のChromebookを貸与しているので、Chromebookを活用しています。

編集部

「J-PALM」を導入して、どのような変化がありましたか?

横尾先生

与えられること、教えてもらうことが当たり前だった生徒が、自分で調べたり人に聞くなど自主的に学ぼうとするようになりました。

与えられるという教育の概念を壊し、自分から学ぶこと、自分から求めていくことを大事にしています。逆に求めなければ何も進まないため、自分から学ぶ姿勢が定着したというメリットがあります。

編集部

自分で調べたり、自分で進んで聞いたりすることが増えたのでしょうか?

横尾先生

そうです。例えば中学1年生で絶対値を習いますが、わからない生徒が「絶対値って何?」と隣の生徒に聞きます。聞かれた生徒は「教科書のここに書いてあるじゃない」といった感じで話が展開していきます。わからないまま放置しないことが大切なのです。

わからないからといって諦めてしまうとますます遅れてしまいますが、自分で調べて自分で自分を理解させていくわけです。友達の力を借りながらでもいいです。本当にわからなかったら先生に聞きながらでもいいです。そうやって何とか自分で解決に導いていく粘り強さも徐々に定着してきたと感じます。

編集部

先生に聞くだけじゃなくて、友達にもすぐ聞けるようなプログラムになっているということでしょうか?

横尾先生

そうですね。机を寄せ合ったり、1人で黙々と問いたり、「J-PALM」ではスタイルを変えながら行っているので、例えばあるときはグレード別に分けてみたり、あるときは1人でやりたい人と相談したい人で分けてみたり、勉強の仕方で分けてみたり、いろいろあります。縦横無尽な形で行っています。

遊びながら学べるグッズで自然科学への好奇心を刺激

十文字中学・高等学校のサイエンスパーク

▲十文字中学・高等学校のサイエンスパーク。生徒の知的好奇心を引き出してくれる

編集部

そのほか理数教育についていかがでしょうか?

横尾先生

理科で使用する実験室には、「サイエンスパーク」と呼ばれるコーナーを用意しています。ここには生徒たちが実際に見て触れて遊びながら自然科学を学べるグッズをたくさん置いているので、休み時間になると多くの生徒で賑わっています。

サイエンスパークにはいろいろな実験道具や器具を備えており、顕微鏡などの高価なものや、日本の最先端科学研究所である理化学研究所で使われていたスーパーコンピューター「京」のシステムボードとCPUなどの貴重なものもありますが、自由に触っていいよという環境にしています。

コマは回転すると重心を高くしようとする性質があり、その特徴を生かして遊ぶ「逆立ちコマ」や、力学の原理を応用した玩具である「ドリンキングバード」もずっと見ていられると人気です。

十文字中学・高等学校のサイエンスパークにあるドリンキングバードと逆立ちゴマ

▲力学原理を応用したドリンキングバード(左)。逆立ちゴマ(右)では、回転と重心について学ぶことができる。

十文字中学・高等学校からのメッセージ

十文字中学・高等学校の横尾校長先生

▲取材に対応いただいた十文字中学・高等学校の横尾校長先生

編集部

最後に、十文字中学・高等学校に興味を持ったお子さまや保護者の方に向けてメッセージをお願いします。

横尾先生

本校では、生徒自らが考え、判断し、行動することを大事にしています。そのため生徒たちの行動はとても主体的です。部活や行事はもちろん、勉強に対しても積極的に学ぶ姿勢を持っています。

その主体的な行動は人生を豊かにしてくれると思います。小学生のうちは自分から何かを始めるのが苦手だったお子さまも、主体性を持った集団の中にいると自然と主体的に行動できるようになってきます。それが学校の持つ力です。

ぜひ本校で秘めたる力を見つけ、伸ばしてほしいと思います。もし本校に興味を持っていただけたのであれば、ぜひ一度足を運び、学校の雰囲気を感じてみてください。

編集部

本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

十文字中学・高等学校の進学実績

十文字中学・高等学校では、ほとんどすべての生徒が進学しており、国公立大学や難関私立大学の合格実績も多くあります。

2024年の進路としては、卒業生徒数225名のうち90.3%が現役で大学に進学、0.4%が現役で短大に進学、1.8%が現役で専門学校等に進学、7.5%が次年度受験等となっています。

2024年度の合格実績は、国公立大学に9人、早慶上理に33人、GMARCHに78人が合格しています。

現役進学者の系統別大学進学状況としては、理工学系が31.3%、人文科学系が25.2%、社会科学系が25.2%、教育・芸術・家政学系が18.3%となっています。

■進路実績(十文字中学・高等学校公式サイト)https://js.jumonji-u.ac.jp/2024_jumonji_DB2025_55.pdf

十文字中学・高等学校の卒業生・保護者の口コミ 

ここからは、十文字中学・高等学校の口コミを紹介します。実際に通学していた卒業生や保護者の声をまとめました。

(卒業生)校外学習やオーストラリア研修など様々な経験ができます。先生方はみんなとてもやさしいです。中高一貫校なので、高校の先輩と関わりあえることは貴重だと思います。受験についての情報ほかいろいろなことを教えてもらいました。高校受験はなく、十文字高校に入れたことも良かったです。体育館はリニューアルしてとてもキレイです。冷暖房が完備されているので一年中過ごしやすいです。

(卒業生)可愛いセーラー服と進学実績に惹かれて選びました。校則は厳し目だと思いますが、だからこそ、みんなきちんとしており、風紀を乱すような生徒はおりません。勉強面は大学受験に向けてクラス分けがあるので安心です。先生方は熱心で、わからないことがあれば放課後でも丁寧に教えてくれます。部活動にも力を入れている文武両道の学校です。

(保護者)もともとはおとなしい性格だった娘が十文字に入学してから明るく活発になりました。カフェテリアではアイスクリームを販売しており、友だちと一緒におしゃべりをしながらアイスクリームを食べていると楽しそうに話しています。品があるセーラー服で、特に夏服が気に入っているようです。立地も良く、安心して通わせることができる学校だと思います。

十文字中学・高等学校のカフェテリア

▲アイスクリームも販売/カフェテリア

十文字中学・高等学校へのお問い合わせ

運営 十文字中学・高等学校
住所 東京都豊島区北大塚1-10-33
電話番号 03-3918-0511(代表)
問い合わせ先 https://forms.office.com/pages/responsepage.aspx?id=KArNRx7OekqPXaw3hs0WZgyRW72ZcVJAvoU3ZeIMC9JURTlUNlQxMVgzN0ZLWk9WTk9NVTRWWUNYNi4u
公式ページ https://js.jumonji-u.ac.jp/

※詳しくは公式ページでご確認ください