生徒に“ばんそう”する「鹿児島第一中学校・高等学校」の自主性を伸ばす教育|中高一貫校

ぽてんをご覧の皆様に、注目の学校をご紹介する本企画。今回は、鹿児島県霧島市にある私立の中高一貫の共学校「鹿児島第一中学校・高等学校」です。

グローバル教育や探究学習に注力する同校では、生徒一人ひとりの個性、良さを伸ばすことを主眼に、教員が伴走し、自主性を育む教育を実施しています。グローバル教育ではイングリッシュキャンプなどで英語を使うことへの抵抗をなくし、探究学習ではユニークなアイデアを発言できるような雰囲気作りに力を入れています。

今回は中学の大迫教頭先生、中学広報主任の野田先生、高校広報主任の初瀨先生に、建学の精神や、特色ある教育カリキュラムなどについてお話を伺いました。

生徒の個性を伸ばす、鹿児島第一中学校・高等学校の建学の精神

鹿児島第一中学校・高等学校の校舎の写真

編集部

鹿児島第一中学校・高等学校の建学の精神についてお聞かせいただけますでしょうか?

大迫先生

本校の建学の精神は「個性の伸展による人生錬磨」です。人は誰しも、その人にしかない個性を持っています。それぞれに合った仕事や生き方をしてこそ、存分に力を発揮でき、働きがいや生きがいを感じて生きていくことができます。建学の精神には、生徒一人ひとりの生まれ持った個性を引き出し、伸ばして、学校を卒業してからも、進路・職業などを通して、生涯にわたり練磨していく、という思いが込められています。

より伝わりやすい言葉としては「キミの個性に全力ばんそう」という言葉をオープンスクールなどのチラシやパンフレットなどに載せています。平仮名の「ばんそう」には、三つの意味が込められています。「伴奏」、そして「伴走」。もう一つは、「創造」する意味の「創」を使った「伴創」という造語です。

「伴奏」は、中高一貫の6年間で、一人ひとりが奏でるメロディー、個性をより華やかなものにするために教師がよりそい一緒に発揮していくということ、「伴創」は子供たちそれぞれが描く未来像を、一緒に創り上げていくという意味です。

そして「伴走」については、描いた未来像を実現させるために、生徒を前から無理やり引っ張るのでも、後ろからどんどん追いやっていくわけでもなく、生徒それぞれのペースに合わせ常に横に寄り添って、一緒に悩んで考えて走っていく。在学中だけではなく、卒業後も続いていく、という思いを込めています。

編集部

一人ひとりの個性を伸ばすという建学の精神のもとで、先生方は、生徒たちにはどのように接していらっしゃるのでしょうか。

大迫先生

高校生の例ですが、行事で生徒から「こうしたい」と意見が出てきた際は、「それは駄目だよ」と言うのではなく、「まず企画書を上げてごらん」と促し、教員が一緒にその企画書をブラッシュアップしていきます。そうすることで、生徒はのびのびとアイデアを創出することができます。

一方で、生徒と教員の距離感というのは大事です。教員は親しみやすい一方で、一定のラインは引いて相談しやすい環境作りに努めています。

鹿児島第一中学校・高等学校のグローバル教育

鹿児島第一中学校・高等学校のグローバル教育の様子

グローバル教育に力を入れる鹿児島第一中学校・高等学校。ここからは、同校の留学プログラムや普段の授業の様子についてご紹介します。

多様な留学プログラムに国内ではイングリッシュキャンプを実施

編集部

鹿児島第一中学校・高等学校で注力されているグローバル教育についてお聞かせいただけますでしょうか?

大迫先生

本校では多様な留学プログラムを用意し、毎年多くの中学生、高校生が参加しています。

高校生対象では、ニュージーランドへ留学する3ヶ月間コース(提携大学へ通うコース)と2ヶ月間コース(提携高校へ通うコース)を設けています。ホームステイしながら、向こうの学校に通うコースです。中学生対象では、2週間、オーストラリアに行くもので、同様に約2週間ホームステイをして、向こうの学校に通うものです。

最初から海外に行くことに踏み込めない生徒に対しては、国内でのイングリッシュキャンプ(英語合宿)を用意しています。2023年は、鹿児島県内の施設で英語のネイティブの先生が10名ほど参加して、1泊2日の日程で行いました。好評だったため、2024年は2泊3日に延ばして行う予定です。

このほか、本校には、行政など外部から様々な海外留学の案内が届きますので、生徒には参加を積極的に呼び掛けています。2024年は霧島市の留学プログラムに参加し、米国とカンボジアに行く生徒がいます。英語に常に親しめる環境が本校にはあります。

鹿児島第一中学校・高等学校が実施しているイングリッシュキャンプの様子

▲国内で、ネイティブスピーカーの先生と過ごすイングリッシュキャンプを開催している。

編集部

海外留学を経験した生徒さんの様子はいかがですか。留学前後での変化があればお聞かせください。

初瀨先生

帰国した生徒にインタビューすると、英語に対する意識が変わったとの回答が非常に多いです。「英検に取り組む気持ちが変わった」と答える生徒もいますし、長期留学した生徒は「将来は英語に関する仕事に就きたい、海外に出て仕事をしたい」と話すなど、皆、刺激を受け、視野を広げています。

2023年度は、長期留学した生徒は4名、2週間のオーストラリア留学は、中高含めて34名に達しました。イングリッシュキャンプについては当初想定していた定員を大幅に超える60名以上が参加しました。

大迫先生

海外について学ぶ機会は、語学だけにはとどまりません。世界についてより深く学べるよう、中学生では社会の授業や探究学習でSDGsについて考える機会を設けています。SDGsについて、生徒一人ひとりが自分の関心事を突き詰め、それをまとめたものを発表します。

今後、海外を舞台に仕事する機会が大幅に増えるはずです。各授業でも世界に関するトピックに触れたり、海外の人たちが当たり前と感じている文化についても紹介したりしながら、生徒の視野を広げるようにしています。

SHRや終礼に外国人教員が参加。英語を使うことへの抵抗感をなくす

編集部

鹿児島第一中学校・高等学校のグローバル教育について、特徴的なものを教えてください。

初瀨先生

普段の学校生活では、3人のネイティブの先生が常勤として勤務しており、朝のショートホームルームや終礼に参加して、連絡事項を英語で伝えるなど、日常で英語を使う場面を設けています。常に英語が身近な存在になるため、生徒の英語に関する意識は自然と高くなり、英語検定の受験申込者数は高水準となっています。高校2年生で英検1級を取得した生徒もいました。

大迫先生

中学校では、ネイティブの先生が部活の顧問に就いている例もあります。まだあまり日本語が話せないネイティブの先生もいますが、生徒は特に抵抗感を持つこともなく、英語でコミュニケーションをとっています。

編集部

英語の授業もネイティブの先生が指導されるのでしょうか?

大迫先生

普段の授業については、英語の授業と英会話の授業を別の時間で組んでいます。主に英語の授業を担当する日本人教員と、英会話の授業を担当する外国人教員で授業を展開しています。

日本人教員の授業では文法や教科書にのっとった学習を、英会話の授業では、外国人教員がリスニングやスピーキングの練習を行い、両方の力を統合する場として日本人教員と外国人教員が一緒に行うチームティーチングの授業もし、さらに語学力をつけていく、というイメージです。

英会話の授業では、日本人教員と外国人教員が、英会話しているのを生徒が聞き、それについての意見を英語で話すなどの取り組みをしています。他には、2人の教員が英語でゲームのルール説明を行い、その後実際にゲームを始める、という授業もあります。

難しい英語とか文法を使うわけではなく、会話を楽しめる雰囲気を作ることで、英語を使うことのハードルを下げていくようにしています。

編集部

英語を使うことへのハードルを下げたことで、生徒の英語力には変化がありましたか?

大迫先生

ありますね。以前、紛争中のウクライナから福岡にある系列大学に避難してきた学生を本校にお招きし、体験したことを英語で語ってもらう機会がありました。とてもつらい環境について話してくださり、生徒は真剣なまなざしで聞いていました。

お話のあと、質問タイムがあったのですが、躊躇なく英語で質問する様子がとても頼もしく思えました。ウクライナの学生さんと英語でよどみなく会話しており、英語の能力をどんどん身につけられる土壌がこの学校にあることを強く感じました。

鹿児島第一中学校・高等学校の探究学習

鹿児島第一中学校・高等学校では、生徒の個性を伸ばす探究学習に注力しています。ここでは、中高それぞれの取り組みについてうかがいました。

プログラミング、一人ひとりが課題に向き合うWebページ制作、金融教育まで実施

授業で話し合う鹿児島第一中学校・高等学校の生徒たち

編集部

探究学習についてうかがいます。まずは、鹿児島第一中学校の特色についてお聞かせいただけますでしょうか。

野田先生

中学校では、生徒が自ら問題を見つけて解決方法を考えていく、課題解決型学習(Project Based Learning、PBL)に取り組んでいます。

中学1年生では、プログラミング学習に取り組んでおり、学習ツールである「Scratch(スクラッチ)」を使ってプログラミング言語を学んだり、プログラム言語を使わず、日本語や英語で使って相手に何かを伝える力を鍛えたりしています。

2年生ではプログラミング言語を学びつつ、環境フォトコンテストなど、幅広く外部との接点も持ちます。

また、中学2年から中学3年にかけての大きな取り組みとして、「身の回りにある問題を解決する」というテーマで、生徒一人ひとりがWebページを作ってみるというプロジェクトを2024年度から始めました。

生徒が自分を見つめ、「自分は何に興味を持っているのか」「Webページを作ることで、何を発信したいのか」などをしっかりと考えたうえで制作を進めていく予定です。Webページは、生徒たちが培ってきたいろんな考え方や見方の集大成になってくると思います。どういうものが出来上がるか楽しみです。

また中学3年では、社会に出る前に必須の教養ということで、金融教育を行っています。

大迫先生

中学校のPBLでは「どんな意見であっても、否定するようなことを言わない」というルールがあります。それによって、生徒に発言をどんどん促し、発言への抵抗感をなくしています。

同時に、いろんな意見を受け入れる素地を定着させ、中学3年次に実施するWebサイト制作で集大成を発揮できるようにしていき、高校ではより発展的な学びへとつなげていきます。

地域課題に取り組む「環霧島学」に、高大連携で取り組む高度な学習

鹿児島第一中学校・高等学校の探究学習「環霧島学」での発表の様子

▲「環霧島学」と名付けた探究学習でプレゼンする生徒

編集部

高校で実施されている探究学習について教えてください。

初瀨先生

高校では「環霧島学」という取り組みをしています。霧島山を中心にした「環霧島」エリアの中で、地域の現状と課題を学習したり、地域の発展に向けて考えたりするものです。

高校1年生では、地域課題を見つけるところから始めます。当初は霧島のお祭りや、観光ボランティア、観光土産でどういった工夫ができるかなどをグループで調べたり、関係者にインタビューをしたりして、考えたことをグループ発表します。

高校2年生からは実際に環霧島でフィールドワークをしたり、自身で他のテーマを考えたりと、自由に探究に取り組みます。全校生徒の前でのプレゼンやポスター発表をします。

本校は系列校が徒歩5分圏内と、至近距離にあるワンキャンパスであるため、高大連携で学べることが強みです。

敷地内に第一工科大学、第一幼児教育短期大学、鹿児島第一医療リハビリ専門学校がありますが、発表の際には第一工科大学の先生をお招きしてアドバイスを受けています。大学の先生からより高度な知識をもらうことで、今まで思いもしなかった分野に興味を持ったり、さらに深掘りしたいと、大学の先生に詳しく聞きに行ったりする生徒も出てきます。

このように本校の教育では、中高一貫かつ、系列校が近いというメリットを存分に生かせていると考えています。

編集部

印象に残っている生徒のプレゼンテーションがあれば、教えてください。

初瀨先生

涙が出るくらい感動したのは、ある生徒が身内のことを語った発表でした。

この生徒の親族があまり知られていない難病を抱えていたのですが、様々な葛藤のなかで、周りに支えられながら学校に通っていることをプレゼンで紹介しました。そのうえで、病気の認知度を上げ、ともに理解し合える社会にしていくための方策について、自分の言葉で語り、大変胸が打たれる内容となりました。

このほか、人気のキャラクター「ポケットモンスター」についての考察や、「筋トレは必要なのか」をテーマにしたものなど、ユニークな発表が目立ちました。

編集部

探究学習をする上で先生方が大切にされていることがあれば、教えてください。

初瀨先生

生徒がやりたいと提案したことを、否定しないこと、そしてその生徒の個性が表れている部分を大切にするよう心がけています。生徒が頑張って出した意見を、より発展させるために、教員がアドバイスするなどして、サポートしていくことが、本校のベースになっています。

突拍子もないアイデアが出たとしても、「それを叶えるためにどうすればいいか」を一緒になって考えるという姿勢が当たり前になっています。

鹿児島第一中学校・高等学校からのメッセージ

インタビューに応じてくださった鹿児島第一中学校・高等学校の先生方

▲(左から)インタビューに応じてくださった初瀨先生、大迫先生、野田先生

編集部

最後に、鹿児島第一中学校・高等学校に関心をお持ちの読者の方々へメッセージをお願いします。

大迫先生

本日、私達教員3人、色違いでお揃いのポロシャツを着ています。生徒も夏に同じデザインで様々な色のポロシャツを着ます。個性って、色のこととも言えますが、いろんな色があって、いいのです。ポロシャツ一枚に、本校の形に縛られない考えが表れていると思っています。

一方でメリハリが大切です。自由で遊びを持たす部分と、切り替えるときは切り替えられる生徒というのが、本校の売りだと思っています。

このように、本校は生徒の個性、「やりたい」を大切にしたいと考えていますので、挑戦したいことがある生徒さんはぜひ本校の扉をたたいてください。逆に、最初からやりたいことが決まっていない人も大歓迎です。本校はいろんな刺激を提供します。その中でやりたいことから、自分の方向性を示せるヒントを見つけてください。

野田先生

本校では、様々なイベントを行っていますので、ぜひ見に来てください。そして、ご入学いただいて、一緒に6年間過ごしていければと思います。いろんなことにチャレンジしたい、個性を伸ばしたい、逆にやりたいことがない、夢がないなど、様々な立場の皆さんと、我々が一緒に伴走したいと思います。ぜひ一度、本校の様子を体感していただきたいです。

初瀨先生

まだやりたいことや目標が決まってない生徒さん、高校からスタートしても十分間に合います。本校は、いろんな刺激を受けながら、目標をしっかり見つけられる環境があります。入学してからも、卒業した後も、皆さんに、私たち教員は「ばんそう」していく考えです。ぜひ、本校に来ていただければと思います。

編集部

本日はありがとうございました。

鹿児島第一中学校・高等学校の進学実績

鹿児島第一中学校・高等学校では、例年様々な大学に合格者を輩出しています。

2023年度の合格実績では、国公立は22人で、地元の鹿児島大学には、医学部医学科の2人を含む8人が合格しました。国立医学部医学科については11年連続で合格者を出しています。

私立は計71人で、産業医科大学、川崎医科大学の医学部にそれぞれ1人、明治、立教、中央、法政の各大学にも合格者を出すなど、難関大学にも着実に合格実績を積み重ねています。また、系列の第一薬科大学、第一工科大学にも合格者を出しています。

■鹿児島第一中学校・高等学校の進学実績(公式サイト)

https://h-kd.tsuzuki-edu.ac.jp/news/post2955/

鹿児島第一中学校・高等学校の卒業生・保護者・在校生の口コミ 

図書館を利用する鹿児島第一中学校・高等学校の生徒

(卒業生)勉強の環境が整っており、先生と生徒同士仲が良くて和気あいあいとした雰囲気の素敵な学校。卒業後も先生方には会いに行くほど仲が良い。

(卒業生)先生方が一生懸命で, 勉強できる環境が整っていた。みんなが一つの目標に向かっていて、頑張れる。

(保護者)進路について、とても親身になって考えてくれ、日頃から生徒の特徴やレベルなど、気にかけているということが伝わる。

(在校生)個性を伸ばせてとても良い学校。大学受験に向けて確実に実力を伸ばせる。

口コミでは、丁寧で熱心な指導に取り組む先生方の姿勢や、受験勉強や学校行事などに、生徒が真剣に取り組む校風に対して、高い評価が集まっていました。生徒一人ひとりが興味が持てるような探究学習やグローバル教育の指導に、先生方が取り組んでおられ、それが快適で実りあるスクールライフにつながっているようです。

鹿児島第一中学校・高等学校へのお問い合わせ

運営 学校法人都築教育学園
住所 鹿児島県霧島市国分府中214番地
電話番号 0120-56-4608
問い合わせ先 https://j-kd.tsuzuki-edu.ac.jp/bosyu/(中学校)
https://h-kd.tsuzuki-edu.ac.jp/siryouseikyu/(高等学校)
公式ページ https://j-kd.tsuzuki-edu.ac.jp/(中学校)
https://h-kd.tsuzuki-edu.ac.jp/(高等学校)

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