特色ある教育や校風で注目を浴びる学校を紹介する本企画。今回は、宮城県仙台市にある中高一貫校(※)の「聖ドミニコ学院中学校」を紹介します。
(※)同じ敷地内には幼稚園・小学校・中学校・高等学校がある
本学院は1931年、キリスト教カトリックの「聖ドミニコ女子修道会」の修道女たちが来日したことから始まりました。そのため、キリスト教教育にまつわる独自のプログラムを豊富に導入しています。
また、少人数制で教員が生徒一人ひとりとしっかり向き合う校風があるほか、剣道部を中心に、部活動では大きな実績を残していることも注目されています。
今回は、そんな同校の教育理念、キリスト教教育に関するプログラムや部活動について、本学院中学校主任の小野先生と、法人事務局広報担当の早坂先生にお話を伺いました。
この記事の目次
幼稚園から高校まで共にある聖ドミニコ学院の建学の精神
まず初めに、聖ドミニコ学院中学校の建学の精神についてお教えいただけますか?
幼稚園から小学校、中学校、そして高等学校まで一貫してキリスト教教育を届ける「聖ドミニコ学院」の建学の精神は、「イエス・キリストの福音に基づき、神の前に平等な存在として、隣人を大切にしつつ、愛に生きる人間の育成を目的とします」というものです。
私たちはその精神をもとに、各校種でそれぞれの教育目標・方針を掲げています。中学校では「自ら学ぶ”知力”をつける」「”体力”をつけ、最後までやり遂げる生徒を育てる」「他者に対する”思いやり”を持つ生徒を育てる」の3つを教育目標としています。
聖ドミニコ学院中学校のキリスト教教育
▲聖ドミニコ学院の美しい聖堂。週に1回、中学校・高等学校合同の聖堂朝礼も行っている。
ここでは、聖ドミニコ学院中学校が力を入れるキリスト教教育のうち、「修養会」や奉仕活動、「マリア祭」などについて伺いました。
大学教授や神父様から講評をもらえる「修養会」
▲左から、聖ドミニコの肖像画、十字架、本学院のモットーである「真理」が掲げられている。
続いて、聖ドミニコ学院中学校のキリスト教教育における独自の取り組みについてお教えいただけますか?
毎年秋ごろに、日頃の行いと奉仕の心を見直すことを目的とした「修養会」という行事を設けています。修養会には、お招きした大学の教授や神父様が、聖堂に集った中学1年生から高校3年生までのすべての生徒に対し、毎回異なるテーマのお話をしてくださいます。
講話を聴いた生徒たちはその後、クラスの中で感想を交えながら、理解を深めていきます。そして最後に再び聖堂で、各クラスで話し合ったことを代表の生徒が全校生徒の前で発表し、教授や神父様から講評をいただく、1日がかりの濃密な行事です。
実際に講師の方々は、どのようなお話をされるのでしょうか?
例えば、イースター島のモアイ像の話から始まるユニークな講話もありましたね。そういう大きなスケールから、環境問題のテーマに結びつき、私たちの今があることや地球の未来をどう守っていくかというまとめに着地していきました。
中学1年生から高校3年生までの幅広い年代の生徒が参加するので、講師の方々はテーマを工夫し、噛み砕いてわかりやすく話してくださっています。
講話後のクラスでの話し合いの際、生徒のみなさんはどのような様子ですか?
クラスごとに修養会実行委員がいるので、真剣に取り組む雰囲気が出来上がっていますね。実行委員を中心に、良い意見を出し合おうと前を向く姿を見せてもらっています。また、最後に聖堂で生徒の代表が発表する場面でも、講話で学んだテーマを深く考えてくれているんだなと、それこそ高校生にも負けないくらいの熱量を見せてくれて、毎年感心しています。
奉仕の心を清掃活動で活かす
生徒のみなさんは、「修養会」で培った奉仕の心をどのようにして活かしているのでしょうか?
例えば、毎年、広瀬川の河川敷で清掃活動を行っています。広瀬川はとりたてて汚いわけではないんです。それでも生徒たちは、草むらにまで分け入ってゴミを一生懸命探し出してくれています。また、清掃そのものだけでなく、清掃活動後の振り返りではゴミが出てしまう原因について、意見を出している生徒もいました。
修養会で奉仕活動の価値に触れたからこそ、広瀬川の清掃活動の意味をよく理解して取り組んでくれているように感じています。
学校生活の傍らにキリスト教の学びがある「マリア祭」と「聖書ノート」
その他、キリスト教教育と結びつく取り組みがありましたらお教えいただけますか?
本校はカトリックの学校なので、イエス様の誕生を祝うクリスマスは大切な節目です。全校生徒が聖堂に集って、大きなミサを行っています。
また、5月には「マリア祭」というマリア様を讃えて感謝する式典も開催しています。マリア祭は、本校の幼稚園児から高校3年生までのすべての子どもたちが参加し、縦の繋がりも築き上げられる場にもなっています。
御校では、マリア祭のような縦の繋がりを意識した取り組みが他にもあるのでしょうか?
例えば、私が担当している家庭科の授業では幼稚園実習を設けています。毎年冬に、本校の隣にある系列の幼稚園で生徒たちは、手作りしたおもちゃを使って子どもたちと触れ合い、年の離れた子たちとの関わり方やコミュニケーション力を培っています。
そして高校生になると、幼児保育がカリキュラムにも組み込まれ、より本格的に子どもたちと関わる機会が増えていきます。また、子ども保育系の授業を学ぶ生徒を中心に、併設幼稚園でのボランティア活動も盛んに行われています。
その他、キリスト教教育と結びつく独自の取り組みがありましたらお教えいただけますか?
本校では、「聖書ノート」という手作り手帳を活用しています。とはいえ聖書のことだけではなく、その日の宿題や時間割、明日の予定、毎日の勉強時間、それからその日1日の感想なども一緒にまとめます。
毎日担任の先生が聖書ノートをチェックし、コメントもつけてくれるという生活が3年間続くので、ある種の交換日記のような形で、生徒との密なコミュニケーションを築く大切な習慣になっています。
キリスト教教育と結びつくさまざまな行事や取り組みを通して、生徒のみなさんにはどのような変化が見られますか?
本校の生徒の半分以上が公立の小学校から入学してくる生徒なので、多くの生徒にとって聖書は馴染みのないものなんです。初めて聖書を見るというところから学び始めますが、聖書は重いし分厚いし、文字ばかりだし、難しく感じてしまう要素がたくさんあります。
それでも一歩ずつ学びを深めていくことで、「イエス様は何を伝えたいのか」「どういう方だったのか」「どんな生き方をされたのか」という”問い”が芽生えていきます。こういった生徒たちの成長は、日々の学びや行事での経験が大きいのかなと感じています。
校外学習や英語研修などさまざまな行事を実施
▲オールイングリッシュで過ごすブリティッシュヒルズ!
その他、御校の特色ある行事や取り組みについてお教えいただけますか?
定期考査が終わるタイミングに、年に3回の校外学習を行っています。生徒たちのリフレッシュや学校外での学習を目的とし、美術館や博物館で芸術、歴史に触れたり、制作活動などの体験学習を行ったりしています。また、冬の校外学習は毎回、スキー教室です。スキー教室でも班分けを縦割りで編成し、学年を越えた時間を過ごす行事としています。
その他にも、遠足や野外活動として民泊体験、オールイングリッシュの環境下で過ごす英語研修など、年間を通してさまざまな行事を行っています。
▲野外活動でのカヌー体験やスキー。縦割り班で学年を越えた交流ができる
師との出会いで成長する聖ドミニコ学院中学校の部活動
▲全国大会出場の常連校の剣道部
次に、聖ドミニコ学院中学校のクラブ活動の特色についてお教えいただけますか?
本校では、剣道部が全国大会出場の常連校でして、顧問である佐々木和代監督の非常に熱心な指導のもと、生徒は目覚ましい活躍を見せてくれています。
剣道の技にとどまらず、人間としての成長も重んじられる方で、剣道ができる環境や支えてくれる周りの人に感謝することを部訓にも掲げられています。こうした師としての姿勢に生徒たちも魅せられ、より一層ひたむきに剣道と向き合っていくようになりましたね。
全国大会出場は、彼女が顧問だからこそ実現した部分も大きいと感じています。
顧問の先生は、部活動でどのような指導をされるのでしょうか?
剣道の技術だけでなく、「人間としての成長」に関わることを熱心にご指導くださっています。また、大会前には剣道部員全員に手紙を書いてくれた時もあります。生徒一人ひとりにメッセージを書き止めて、非常に丁寧に生徒たちと向き合ってくださっていますね。
他にも、部員一人ひとりとのコミュニケーションを大切にしているのはもちろんのこと、生徒のモチベーションを高めるために手作りの動画を贈ったり、良いパフォーマンスができるようにマッサージをしてあげたりするんです。ここまで全力になってくれる監督は、なかなかいないんじゃないかと思っています。
▲「感謝」の心を育む剣道部の部訓の旗
剣道部に入部した生徒のみなさんは、どのような変化が見られますか?
部活動の3年間を通して、見違えるほど成長していますね。それも人格者である監督の傍で、剣道の学びと共に人としてのあり方も磨かれていくのだと思います。そうして部員たちはクラスの中でも、部活動で身につけた姿勢を自然と体現するようになっているんです。
部活動の生徒のみなさんの様子についてお教えいただけますか?
どの学年もすごく仲が良いですし、特に縦の繋がりも他ではあまり見られない絆があるように思います。例えば剣道部には、規律や上下関係の厳しさがありつつも、固く結ばれた信頼関係が築かれていることも感じられます。
聖ドミニコ学院中学校からのメッセージ
▲左から、インタビューに答えてくださった聖ドミニコ学院法人事務局の早坂先生と、中学校主任の小野先生
最後に、聖ドミニコ学院中学校に興味をお持ちのお子さま・親御さまに向け、メッセージをお願いします。
私たちの学校の規模は小さいですが、それだけに本校を選んでくれる生徒は絆が強く、みんな個性豊かです。
小学校から聖ドミニコ学院に通い、学院が好きで中学校に進学してくれる子や、先ほどお話したように剣道を打ち込む子がいるほか、環境を変えて心機一転、聖ドミニコ学院中学校に入って頑張りたい子もいます。
そんな彼らが関係性を築き上げながら、互いに理解しようと成長する様子が、我々教員からも目に見えてわかります。それに”他者に対する思いやり”を持つ生徒を育てることは、本校の教育目標でもあります。こうして生徒たち自身が教育目標に歩み寄ってくれているのも、非常に誇らしく思います。
本校に入学してくださる生徒のみなさんには、聖ドミニコ学院だからこそ、アットホームな、そしてのびのびとした環境の中、学校生活を過ごしてもらえるよう、私たちも全力でサポートしていきたいと思っています。
本校には、生徒を第一に考えてくれる熱心な先生が多いと感じています。先生と生徒の距離が近く、毎日多くの先生と話す機会があるのも、本校ならではの魅力ですね。ささいな雑談から相談に発展し、さらには面談に結びつくことも少なくありません。
実は私自身は高校の卒業生ですが、こうした先生たちの愛ある指導は、当時から変わっておりません。温かい関係性を築きながら、落ち着いて勉強や部活に向き合いたいという子にはぴったりな学校だと思います。
少人数の学校環境だからこそ、聖ドミニコ学院中学校では、生徒同士の絆や先生方との関係性が深まり、学習や部活動も充実するのだなと思いました。貴重なお話をありがとうございました!
聖ドミニコ学院中学校・高等学校の進学実績
聖ドミニコ学院中学校・高等学校の2023年度の学合格実績としては、国公立大学である宮城大学に1名、私立大学である東北福祉大学に5名、東北学院大学に8名、東北文化学園大学に3名、仙台白百合大学に1名、尚絅学院大学に3名、宮城学院女子大学に4名、そして武蔵野美術大学に1名の合格者を輩出しています。
■進路実績(聖ドミニコ学院中学校・高等学校の公式サイト)
https://high.dominic.ac.jp/career/
聖ドミニコ学院中学校の卒業生の声
聖ドミニコ学院中学校の卒業生から寄せられた声を紹介します。
■学校資料より抜粋
https://jh.dominic.ac.jp/pamphlet/jh/2023/#page=13
聖ドミニコ学院中学校の卒業生は、生徒一人ひとりと向き合える少人数制のクラスを高く評価していました。また、同校の高校生たちとの交流があったりと、学年を越えた繋がりが築ける学校生活にも満足していた様子も見られました。
聖ドミニコ学院中学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人聖ドミニコ学院 |
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住所 | 宮城県仙台市青葉区角五郎2-2-14 |
電話番号 | 022-222-6337 |
問い合わせ先 | https://jh.dominic.ac.jp/contact/ |
公式ページ | https://jh.dominic.ac.jp/ |
公式パンフレット | https://jh.dominic.ac.jp/pamphlet/junior_pamph_2025.pdf |
※詳しくは公式ページでご確認ください