注目の学校を紹介する本企画。今回ご紹介するのは福島県いわき市にある共学の小中高一貫校「いわき秀英学園」です。この記事では、12年間の一貫教育も行っている同学園の中学・高校にフォーカスしてお話を伺いました。
福島県内でも指折りの進学校でもある同学園は、希望大学への進学を見据えたきめ細やかな学習フォローや先取り教育を土台に、勉強とクラブ活動の両立を目標に掲げる生徒が多いのが特徴です。
そんな「いわき秀英中学校」「いわき秀英高等学校」の学びや文武両道を実現するカリキュラム、活発なクラブ活動について、副校長の渡辺先生と陸上部の顧問を務める水口先生にインタビューさせていただきました。
この記事の目次
自立心と創造性豊かな人材育成に取り組む「いわき秀英中学校・高等学校」
まず、御校の校訓や建学の精神をお聞かせください。
私たちは、「立志・尚友・創造」を校訓に、「ゆとりある充実した教育の実現」「世界に羽ばたく若者の育成」「自立心と創造性豊かな人間性の育成」という建学の精神を掲げています。
3つの建学の精神には、中高の6年間を使ったゆとりあるカリキュラムのもと、私学だからこその教育活動を行うことで、新しい時代や国際平和を担い、社会に貢献する自律した若者を育成していきたいという思いが込められています。
高等学校の創立からスタートした本校では、大学への進学を大きな目標の一つとしています。福島県内のトップ校に並ぶ質の高い教育を実施し、国公立大学をはじめとする難関大学への進学を実現することで、生徒たちが目指す将来や夢に大きく近づけるよう指導しています。
そのため、一貫校でありながら、高校受験がない環境に甘んじることがないよう勉学にはしっかりと取り組み、一定の成績を達成することを必須としています。
一貫校の仕組みを活かし、先輩を手本に取り組む探究活動を実践
2020年の教育改革以降、より思考力を問われる傾向にある大学入試。未確定要素の多いこれからの社会で活躍できる人材の育成において、「教育」が担う役割も大きく変化しています。
そんな時代の流れを受け、「総合的な学習の時間」、いわゆる探究活動にも力をいれているという同校。いわき秀英中学校・高等学校の探究学習についてお話をうかがいました。
先輩の取り組みから学ぶ「探究テクニック」
いわき秀英中学校・高等学校の、探究学習への取り組みについてお聞かせください。
時代背景もあり、本校でも主要教科の成績だけでなく「自ら探究する姿勢」を身に付ける必要性を感じています。そのため、中高の6年間、生徒によっては小学校からの12年間をかけてさまざまな探究活動に挑戦できるカリキュラムを実施していて、そのなかで自ら学び思考する力を育んでいます。
小中高一貫校という環境を活かした取り組みはありますか。
本校の「探究学習」は、最高学年である高校生が牽引役を担っています。特に中学では、高校生が取り組む探究活動の様子をフロアの向こう側から日常的に眺められる環境です。
その環境を活かし、どのような探究活動にチャレンジしているのか、そのための調べ学習をどう行い、どのようなプレゼンテーションにまとめるのかなど、ときには見学を実施しながら、実践を交えて「探究活動に必要なテクニック」を学んでいきます。
これは小学生も同じです。お兄さんお姉さんを真似て「何かを調べてみよう」と自分たちにとって身近な郵便配達員の職業調べを行ったり、調べた内容について感想を言い合ったり。それぞれの発達段階でできることのなかで「探究活動の実践」を繰り返し、経験を積んでいきます。
テーマも手法もすべて「自由」!より深く自分の興味関心と向き合う高2の探究
▲探究活動では、クラスメイトや下級生などの前で行うプレゼンテーションの場を大切にしている
集大成となるのが、高校での探究学習ということですね。
そうです。高校からはこれまでの積み重ねを活かし、個人テーマ、小グループで取り組むテーマ、理数系の探究、地域社会の問題に取り組む課題など、さまざまな探究学習を行います。1年間のうちでも期間を区切っていくつかの探究活動に取り組む形です。
これらの取り組みから、「自分のテーマ」を決定し、高2ではその成果をクラスメイトや後輩たちの前でプレゼンテーションします。
どのように取り組むかは生徒の判断に委ねています。テーマによって個人で取り組むのか、グループで行うか、生徒自身が判断します。
生徒が主体的に取り組むことが必要不可欠なので、教員は見守り役に徹します。もちろん質問に応えたりアドバイスしたりすることはありますから、よく職員室で生徒と教員が激しく議論をしている姿を見かけます。両者とも熱心で、よりよい探究成果に結びつけようという熱意を感じます。
身近な課題に取り組むからこそ広がる「探究活動」
生徒たちの探究への取り組みについて具体例をお聞かせください。
最近の例でいうと、身近な困りごとの解決に取り組んだ中学生たちの活動が印象に残っています。
「より良い学校づくり」をテーマに探究活動を行っていた中学生たちが、「学校の『環境』を良くしよう」と、梅雨の時期に虫が入ってきてしまう校内の特定箇所の環境改善に取り組みました。その際、殺虫剤などの化学的な薬剤での駆除は簡単だけれども、もっと環境保全に目を向けた取り組みはできないかと考えたようです。
そこで、さまざまな資料や研究結果などを調べ、それらから知識を得て、ハーブに着目することに行き当たりました。虫が多く発生する校舎の中庭に、虫が嫌うとされているハーブの木を植えたり、虫がどこから来るのかを調べたり、どのような虫がいるのかを調査したりと、研究の幅がどんどん広がっていきました。
さらにハーブの木を植える前後での虫の飛来量を調べるなど、生徒たちがとても楽しそうに取り組んでいる姿が印象的でした。自分たちで考えたことを実際に試して、最終的に学校の環境が良くなる結果に結びつき、達成感を感じる経験は大きな学びにつながったと思います。
このような「学校の環境改善」をテーマとした探究活動には高校生も取り組んでいました。本校の駐車場には一部未舗装部分があります。その部分が降雨の度にえぐれてしまうため、自分たちの力で舗装できないかと考えたのがスタートのようです。
こちらも業者などのプロの手を借りるのは簡単なのですが、「自分たちの手」で解決してみたいと考えたその心意気も素晴らしいと思います。
自分たちで舗装するというゴールに向けて、目をつけたのが「舗装の歴史」です。はるかローマ時代まで遡り、水道橋を作る際に利用されたローマ式のコンクリートの存在に行きつきました。泥や石灰石などを混ぜて比較的安価かつ簡単に作ることができることや、丈夫で何百年も残っているものがあることなどを調べ上げていました。
そのほかにも実現に向けてはさまざまな問題が発覚し、そのたびにどのようにクリアするかに頭を悩ませ、調べ、自分なりに解決するというプロセスを繰り返していました。結果的に実現は難しかったのですが、自分のテーマに沿って深掘りしていく姿に、本校での学びが定着している手応えを感じました。
これらの探究活動を通して「やり遂げた」と感じている生徒は多いと思います。このような学習の成果は、今後積極的に外部のコンテストなどに参加する等の過程を経て、いずれは大学進学の際の総合選抜入試などに活かしていきたいと考えています。
探究活動の場以外にも、生徒たちの主体性が伸びていると感じる取り組みはありますか。
生徒たちから、学校の紹介動画を作りたいという声が上がり、制作しているところです。学校のホームページやYouTubeにアップして、広く本校の魅力を伝えられるものにしたいと張り切っています。
「愛校心を形にし、自分の学校に対するプライドを作り上げていきたい」という想いを抱き、積極的に行動に移そうとする生徒たちの前向きな雰囲気は、本校の特徴でもあると思います。
「勉強もクラブ活動も個別指導」の教育方針が叶える文武両道
▲陸上競技部は全国レベルの実力で、受賞歴も多数
福島県内でも屈指の成績を収める同校の陸上競技部をはじめ、勉強とクラブ活動どちらにも熱心に取り組む「文武両道」が校風として根付いているのが、いわき秀英中学校・高等学校です。
生徒たちのクラブ活動に取り組む姿勢や学習面での学校のフォロー体制などについて、お話を伺いました。
陸上部を筆頭に「何事にも一生懸命」な生徒の姿勢はクラブ活動にも反映
▲陸上競技部顧問の水口先生。ご自身も同校の陸上競技部出身
水口先生は陸上競技部の顧問をされているそうですね。間近でクラブ活動に取り組む生徒たちを見ていて、どのように感じていらっしゃいますか。
シンプルですが、とても一生懸命に活動しているという印象です。
クラブ活動の指導を行う際、生徒たちには「為せば成る」という言葉をかけることが多くあります。選手一人ひとり、レベルも目標も違いますが「自分にとっての夢や目標」に向かって努力を重ねることで必ず成果を出すことができると信じて、練習に取り組んでほしいとの思いを込めています。
2023年度は全国高等学校総合体育大会(インターハイ)に4名が出場するという成果を上げました。生徒たちも日頃の練習を通して、チャレンジを続けながら、ひたむきに努力を続けることで「為せば成る」ことを実感できたのではないかと思います。
さらに、福島県高等学校駅伝競走大会においても3年連続3位、東北高等学校駅伝競走大会では7位という好成績を収め、駅伝競技にも力を入れています。箱根駅伝の優勝校としても名を馳せる青山学院大学駅伝部に、本校の陸上競技部からの卒業生が入部を決めたということで、後輩たちにも大いに刺激になっています。
水口先生は、校外の陸上競技クラブチーム「BEAT AC FUKUSHIMA」の指導もされているそうですね。
はい。「BEAT AC FUKUSHIMA」は、陸上競技においてハイレベルな指導を受けたいと考える福島県内の中高生を対象としたクラブチームです。学校に陸上競技部がない子どもたちや、大学や社会に出てからも陸上競技を続けていきたいという夢をもつ学生たちを指導しています。
いわき秀英中学校・高等学校の生徒たちも、その一員として活動しており、特に高校生と一緒にハイレベルな練習ができる環境こそが、「BEAT AC FUKUSHIMA」の魅力でもあります。
生徒たちもチームの一員として年下のチームメイトに指導を行うなど、ともに切磋琢磨することで活動のモチベーションになっていると思います。
文化部の活躍も目立ちますね。
文化部は、自分の好きなことに一直線に取り組む生徒が多いですね。クイズ研究部は北海道・東北ブロックの代表として「東大王クイズ甲子園2023」に出場し全国第4位の成績を収めました。先輩・後輩の関係性も良く、生きいきと活動している部です。
将棋部にも、文字通り全国へ「駒」を進めた生徒がいます。普段は穏やかな雰囲気の生徒ですが、将棋の対局となると、一変して真摯な表情を見せます。昨年に続き2024年度も全国高等学校将棋選手権大会に福島県第1代表で出場する予定です。
学校全体を見ても、この生徒のように、目標に向かってコツコツ頑張る生徒が多い雰囲気があります。
一人ひとりに合わせた「対話」が生むクラブ活動での成長
クラブ活動を通して、生徒の成長を感じる瞬間はありますか。
生徒それぞれに成長を感じるエピソードがありますが、日頃の練習に一生懸命に取り組む姿を側で見ているだけに、上位入賞したときの嬉しそうな表情や、指導員である私とその喜びを分かち合ってくれるときの笑顔を見ると、ひとまわり成長したと感じますね。
こういった成功体験から、「次はもっと大きな大会で、この嬉しい気持ちを味わいたい。だからもっと努力するんだ」という決意を生徒の口から聞くことができたときは、競技能力だけでなく「心の成長」を大きく感じる瞬間です。
ご自身もいわき秀英中学校・高等学校、さらに陸上競技部のご出身だそうですね。
そうなんです。今も昔も、生徒の気持ちを尊重する雰囲気は変わりません。私自身は、生徒を指導する際は対等な関係を心がけ、頭ごなしに意見するのではなく、一人ひとりと対話するようにしています。本人が納得できないアドバイスでは、参考にしようとは思わないでしょう。
近年の好成績も、お互いに納得のいく練習メニューのすり合わせができているからこそだと感じています。それは教員と生徒だけでなく、生徒と生徒の関係でも同じで、必要以上に厳しい上下関係がないのも陸上競技部のいいところだと思っています。
グラウンド内では挨拶を徹底するなどの礼節を大切にするよう指導し、生徒たちにも浸透していますが、オフの時間は兄弟のように仲良く過ごしています。先輩は後輩の面倒をよくみますし、後輩は「先輩、先輩」と慕っている姿が日常的に見られます。
そんななかでも、注意するべき場面ではしっかりと意図を伝える姿勢が上学年にはあります。そういったメリハリのある姿勢も本校の生徒らしいと感じます。
生徒の習熟度に合わせたきめ細かな学習サポートが魅力
学習面では、クラブ活動との両立をどのようにサポートされていますか。
本校は進学校なので、クラブ活動同様に、勉強にも全力で取り組んでもらいたいと考えています。そのため、クラブ活動で実践されている「一人ひとりの頑張りをうまく引き出す」ようなアプローチを、学習面の指導でも活かしています。
授業は、国・数・英の主要3科目で30〜40人の1クラスを3等分、または4等分に分けての少人数制で行っています。一人ひとりの得意・不得意を見極めて個別に近いスタイルで指導する選択コースを多く用意し、生徒の実力を効率よく伸ばせるような取り組みを行っています。
夏休みなどの長期休暇を利用した習熟度別の補習や、50分授業を2限分連続で使用して同じ内容に取り組む「100分授業」の導入など、生徒の学習の理解度を高めることを目的に、さまざまな工夫も行っています。
学習面でも、クラブ活動と同じく、まずは身に付けるべきテクニックややるべきことがあります。例えば探究活動のノウハウを学ぶ時間などがそうです。そういった仕込みの時間を大切にすることで、身に付けたスキルや自分の個性を最大限に活かしながら成果を上げることができるよう導いていく、それが本校の教育であり、教員の腕の見せ所です。
学習面での取り組みについては、文武両道のさらなる実現に向けて、水口先生をはじめ教員たちもさまざまな試みを行い、常にアップデートを試みています。これからの本校の取り組みに期待していただきたいですね。
いわき秀英中学校・高等学校からのメッセージ
最後に受験を考えていらっしゃる保護者の方やお子さんにメッセージをお願いします。
生徒一人ひとりを伸ばし、その生徒が持ちうる力を最大限に発揮できるよう指導していくのが、本校の教育の特徴です。文武両道を実現しながら、自分の力を伸ばしたいと考えるお子さんには、ぜひ本校へ入学していただきたいですね。
ありがとうございました。
生徒の個性や能力を見極め、一人ひとりに合った指導を行ういわき秀英中学校・高等学校。その指導姿勢は、学習面とクラブ活動の両面で実践されており、生徒たちが伸びのびと、好きなことに熱中しながら学校生活を送っている様子が目に浮かびました。
いわき秀英中学校・高等学校の進学実績
毎年、ほぼ100%の生徒が大学へ進学する同校。うち、国公立大学・大学校への進学者が卒業生の半数近くを占めます。弘前大学、東北大学、福島大学などへの進学実績があるほか、医学部をはじめとする理系学部への進学も目立ちます。また、2021年度には東京大学に進学した生徒もいます。
加えてMARCH、早稲田大学、東京理科大学などの有名私立大学への合格者も多く、福島県内の進学校として実績を残しています。
■いわき秀英中学校・高等学校の合格実績(公式HPより)
https://www.iwaki-shuei.ac.jp/senior/course_01.html
いわき秀英中学校・高等学校の保護者・在校生の声
ここでは、いわき秀英中学校・高等学校の保護者、在校生の声をご紹介します。
施設の充実に加えて、生徒の個性や目標に合わせたきめ細かな学習指導、進路指導を高く評価する意見が目立ちました。大学受験対策への先生方の熱意に感謝する保護者の声も多く聞かれました。
いわき秀英中学校・高等学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人いわき秀英学園 |
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住所 | 福島県いわき市泉町字滝ノ沢3-1 |
電話番号 | 0246-75-2111 |
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