先進的な教育プログラムで注目を集める学校を特集するこの企画。今回は鹿児島県鹿児島市の私立中高一貫校(共学校)「池田中学校・高等学校」を紹介します。
池田中学校・高等学校は学習塾を母体として創設された日本初の学校です。個別指導を基本とした学習塾のノウハウを活かし、少人数制のきめ細かな教育を行っています。また九州の私立校で唯一のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)(※)の指定校として、独自性あふれる教育プログラムを展開しており、その研究は国際的な場でも高く評価を受けています。
※スーパーサイエンスハイスクール(SSH)…文部科学省が行う、将来の国際的な科学技術人材の育成を図るための取り組み。
今回は池田中学校・高等学校のSSHの取り組みの特徴や強み、またスクールライフの魅力について、広報部 英語科広報主任の歌野先生に詳しくお話を伺いました。
この記事の目次
「21世紀の国際的なリーダー育成」に向け、全人教育を展開
まずは御校の建学の精神、及び教育方針を教えてください。
池田中学校・高等学校では「21世紀の国際的なリーダー育成」を建学の精神に掲げています。本校は全国で初の塾を母体とした学校ということもあり、その革新的・清新な校風を受け継ぎながら、先駆的な教育でこれからの社会に貢献できる人材育成を進めていくというのが目標です。
塾というと学力の向上に重点を置いた教育のイメージを持たれるかもしれませんが、本校では創設以来一貫して「全人教育」を行っています。これは創設者である池田弘氏の「水が入るバケツを大きくしないと、いくら注いでも入らない」という考えに基づくものです。幅広い教養や協働の力などが求められる国際的なリーダーの育成においても、その前提に人間的な成長が欠かせません。そのため本校では、学習だけでなく行事なども含めた学校生活全体で人間性を高めていくことを大切にしています。
高校生全員が科学研究に取り組む、池田高等学校ならではのSSHの特徴
池田中学校・高等学校では科学的な探究活動に力を入れていらっしゃるとのことですが、どのような内容を実施されているのでしょうか。
本校は九州の私立学校で唯一のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校として、約20年間サイエンス分野に特化した探究学習を実践しています。理科・数学に加え、英語や国語、データサイエンスや情報リテラシー、科学倫理も含めた教科横断的な幅広い学びを、理系の生徒に限らず全校生徒を対象に実施しているのが特徴です。
中でも特徴的なのが、毎週実施している「課題研究」という授業です。これは9つの研究班に分かれてそれぞれの研究を進めるというもので、全校生徒が高校1年生のときからいずれかの班に所属します。3年間通じて研究を行い、その成果を英語で発表するという特色あるプログラムとなっています。
9つの班で実施されている具体的な研究内容を教えてください。
いずれの班でも大学・大学院レベルの研究を行っているのですが、中でも「科学思考班1」では、江戸時代の日記に書かれた50年分の天気をデータベース化するという研究を8、9年くらい継続しており、今年度のシンガポールの国際大会への出場も予定しています。天保の飢饉など歴史的事象と天気のつながりを裏づけるデータにもなっており、さまざまな大学の先生からも興味を示していただいています。
地球規模の温暖化が進む現代において、今後の気候変動を考える上でも重要となるのではないかということで、研究内容がさらなる広がりを見せているところです。
▲令和5年度の「九州高校生徒理科研究発表大会」では、最優秀賞と優秀賞を受賞している
班ごとの研究テーマはどのように決められているのでしょうか。
基本的に新1年生がメンバーに入ってきた段階で、生徒同士で話し合ってテーマ設定をしていますが、天気の研究のように前年から引き継ぐ場合もあります。1つの班の中で2つのテーマを行うことも、同じテーマで1つの班を2チームに分けることもあり、班によって進め方はさまざまです。
最近ではすでに結論が出ているものは面白くないということで、先行研究の有無まで調べた上でテーマ設定をしている班が多いです。生徒が出したアイディアに対して大学教授にアドバイスをいただきテーマを決定することも多く、以前と比べると、研究内容だけでなくテーマ設定からレベルが上がっていますね。
成果の秘訣は、研究方法を継承できる「縦割りシステム」
▲日本代表として「台湾国際科学フェア」に参加した際の様子
御校のSSHの研究は国際的な場でも評価されているものが多いですが、成果の秘訣は何なのでしょうか。
サイエンスの分野では、データの蓄積など研究の積み重ねが説得力につながります。高校で行う研究というのはどうしても1年間で終わってしまうものが多い中で、本校は高校1年から3年までの縦割りシステムで研究を行うため、先輩たちの残してきた研究結果を踏まえ、さらに自身でも3年間かけて深めていけるのが強みです。また研究方法の継承という意味で、新しいテーマを立てても研究を自分で進めやすいという利点があります。
それは生徒だけでなく、教職員も同様です。本校は私立校のため基本的に教職員の異動がなく、それまでの研究を受け継いでいきやすい環境があります。そうやって約20年積み重ねてきたものが、世界レベルでの成果につながっているのだと思います。
また本校では約20年の歴史の中で数多くの高校や大学、企業とのつながりを培ってきました。そのつながりを活かし科学者や技術者の方からの学びや助言を得られることも、ハイレベルな研究を行う上で重要なポイントとなっています。
さらに最近では、他の学校でSSHを経験した教職員が本校の実績に惹かれてジョインするなど、良い流れも生まれています。これまでの歴史を引き継ぎつつ、新たな経験、知識を取り入れながら、本校のSSHをさらに進化させていけたらと考えています。
中高一貫の強みを活かし、中学校から科学探究の基礎を学ぶ
御校のSSHではかなりレベルの高い内容を実施されていますが、生徒の皆さんの指導に向けて工夫されていることはありますか?
もちろん高校でも教員が伴走しながら生徒の研究をサポートしていますが、中高一貫の強みを活かして、中学校の段階から科学探究の基礎的な力を育むプログラムを実施しているのが大きいと思います。中でも特徴的なのがSCP(Science Communication Program)という本校独自の探究プログラムです。
サイエンス分野に限らずどの分野でも不可欠となるコミュニケーション能力、ディスカッションのスキルを高めていくため、SCPでは中学3年間を通じてインタビューのトレーニングを重点的に行います。本校の教員から卒業生、外部の研究者まで、幅広い大人に対してインタビューを行い、最終的にその内容をスライドにまとめて発表するというのがSCPの流れです。今年度からインタビュー対象者を科学研究班のみにして、SSHとしての側面を強化しました。これを3年間繰り返し実施することで、探究に必要な力をどんどん高めています。
SSHでは英語でのプレゼンテーションを実施されているということですが、その点に関してはいかがでしょうか。
英語でのプレゼンテーションを取り入れた当初は抵抗を感じる生徒が多く、発表の舞台に立つだけで泣いてしまう生徒もいるほどでした。しかし「とにかく場数を踏ませ、できたら褒める」を繰り返すことで、生徒の英語への向かい方がここ5、6年間で劇的に変化したと思います。
先日海外留学生と本校の高校生が交流をする機会があったのですが、そこでも「もっと英語でコミュニケーションを取りたい」という声があがっていました。
高校生が英語でプレゼンテーションを行う発表の様子は中学生も見ることができるため、中学生にとっても「英語で話すのは当たり前」という意識が浸透してきています。中学校の英語の授業でもプレゼンテーション練習をしたりスピーキングテストを取り入れたりと、中学校の内から英語でのアウトプット機会を増やしています。
なるほど。中高一貫だからこそ、先輩の姿を見て学べることがスキルの向上にもつながっているのですね。中学校でのプログラムも含めた6年間のSSHを通じて、生徒の皆さんにはどのような変化がみられますか?
本校のSSHは机の上の勉強が苦手な場合でも、自分の好き・興味を活かして輝けるプログラムです。だからこそ学びに対する主体性や積極性が生まれ、その成果が生徒の自信にもつながっていると感じます。
またSSHの経験は、生徒の進学や将来にも影響を与えています。もともとは自信がなくて人の目を見て話せなかった生徒が、SSHでの研究で得たスキルや自信をもとに慶應義塾大学に進学した例もあるんですよ。
研究内容自体が高度なレベルであることに加え、英語力やプレゼンテーション能力、協働の力などグローバル社会での活躍に必要な力を総合的に育んでいけるため、総合選抜などの大学入試、さらには就職にも役立つものになってくると思います。
のびのびと主体性を育む池田中学校・高等学校のスクールライフ
▲池田中学校・高等学校の学校行事では、生徒が企画・運営を行う
御校は全体的にどのような雰囲気がある学校なのでしょうか。
比較的小規模な学校で、さらには学生寮での寮生活を送れることもあり、学年問わず生徒がお互いに助け合う親密な空気感のあるのびのびした学校だと思います。生徒同士だけでなく、生徒と教員の距離感も近いのが特徴です。
塾を母体とし、私も含め塾で働いていた経験を持つ教員が多いために、塾の個別指導や添削といった指導のノウハウが本校でも実現されており、近い距離間の中できめ細かなサポートを行っています。
また生徒の自主性を尊重する自由な校風も、本校ならではの魅力です。体育祭や文化祭などの学校行事は生徒が企画・運営を行っているんですよ。学生服で演舞を行う体育祭の応援団など、生徒発の独自性ある取り組みが受け継がれていっています。行事は中学校と高校合同で行うため、上級生が下級生を導くという、社会に出たときに欠かせない力を身につける点も魅力ですね。
池田中学校・高等学校からのメッセージ
▲池田中学校・高等学校のグラウンドから見える桜島。ときどき灰も降ってくるとのこと
最後に、池田中学校・高等学校での学校生活に興味を持った読者の方に向けてメッセージをお願いします。
本校は鹿児島県という日本の端、自然に囲まれた環境にあります。私自身神奈川県出身のため、この学校に来たばかりの頃は都会とのギャップに驚きました。しかし桜島の風景を眺めながらのびのび過ごせるという、都会にはない環境があります。そういう学校生活に魅力を感じる方は、ぜひ一度学校見学に来ていただけると嬉しいです。
歌野先生、本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!
池田中学校・高等学校の進学実績
池田中学校・高等学校の2023年度の進学実績をみると、鹿児島大学の医学部をはじめ、お茶の水女子大学、熊本大学、大阪大学、広島大学といった難関国公立大学への合格者を輩出しています。また慶應義塾大学や早稲田大学、関関同立(※)といった難関私立大学への合格者も多くなっています。
※関関同立…近畿地方の難関私立大学、関西大学・関西学院大学・同志社大学・立命館大学の略称。
■池田中学校・高等学校の進学実績(公式サイト)
https://ikeda-gakuen.ed.jp/cyukou/university
池田中学校・高等学校の生徒・保護者からの口コミ
ここでは、池田中学校・高等学校に寄せられた生徒、保護者の口コミを一部抜粋して紹介します。
(保護者)アクセスはそこまで良くないが、スクールバスでの送迎があるため安心できる。
(保護者)勉強一辺倒ではなく、コミュニケーションや礼儀など人として大切なことを教えてくれる。少人数制のため、先生の目が行き届くのも魅力。
少人数制ならではのきめ細かな指導や、SSHをはじめとする特色ある教育プログラムに魅力を感じる声が多くあがっています。また寮制度があることが自立につながったという生徒の声も聞かれました。
池田中学校・高等学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人池田学園 |
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住所 | 鹿児島県鹿児島市西別府1680番地 |
電話番号 | 099-282-7888 |
問い合わせ先 | https://ikeda-gakuen.ed.jp/inquiry |
公式ページ | https://ikeda-gakuen.ed.jp/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください