この記事では、特色ある教育に取り組む“注目の学校”として、広島県広島市にある「広島学院中学校・高等学校」をご紹介します。
私立の男子校である同校は、高校では生徒を募集しない完全中高一貫校です。設立母体はカトリック修道会のイエズス会であり、その創設者であるイグナチオ・デ・ロヨラの生き方に基づいたリーダー育成プログラム「Ignatian Leadership Program(ILP)」を中心に探究的な教育指導を行っています。
また、同校では理数教育にも力を入れており、理系分野における知識や技術を全国の中高生と競い合う「数学オリンピック」や「科学の甲子園」などのイベントへ積極的に参加。主体的にチャレンジする生徒が多く、これまでに数多くの賞に輝いています。
今回、ぽてんでは広島学院中学校・高等学校の広報主任・中村先生にインタビュー取材を行い、同校の教育方針や学習カリキュラムの特徴、校風などを詳しく教えていただきました!
この記事の目次
“仕えるリーダー”の育成を目指す広島学院中学校・高等学校
▲広島学院中学校・高等学校では募金活動などの奉仕活動が盛んに行われます
まず、広島学院中学校・高等学校の教育理念について教えてください。
本校は、イエズス会が1956年に原爆で壊滅した広島の復興を目的として設立した学校で、カトリックの標語でもある「Men for others, with others(他者のために、他者とともに生きる人間)」の育成が教育目標です。
私たち教員はよく“仕えるリーダー”と表現するのですが、決して利己心の満足や立身出世のために行動するのではなく、他者のために行動することが大切であると考えています。この理念は事あるごとに生徒たちへ伝えており、中高6年間の学校生活を通じて生徒たちの心に深く根付いていると感じます。
▲敷地内にあるマリア像も生徒たちの成長を見守っています
「Ignatian Leadership Program」による探究的学びが“気づきの力”を高める
“仕えるリーダー”の育成に向けて、具体的にどのような指導を行っていらっしゃるのでしょうか?
イエズス会の創設者であるイグナチオ・デ・ロヨラの精神に基づき、「Ignatian Leadership Program(ILP)」というリーダー育成プログラムを実施しています。
具体的には、教員は生徒の学習環境を整備して基礎的なことのみを教え、生徒自身が「体験」→「内省」→「実践」→「評価」といったプロセスを通じて主体的な学びを深めていけるようにサポートする「イグナチオ的教授法」をベースとした取り組みです。
これはいわゆる探究活動のような形で、すべての学年において週に1時間授業を行っています。また、高校2年生の1・2学期には各教員が自分の専門科目や得意分野に即したゼミナールを開講しており、生徒たちは自身の興味・関心に合ったゼミを受講してテーマに沿った探究を進めます。知的好奇心を深め、人格陶冶に結びつけることがこの活動の狙いであり、本校ならではの特色です。
具体的にどのようなゼミがあるのかご紹介ください。
たとえば私が過去に開設したのは、自身が経験してきた弓道や陶芸をテーマとしたものです。「Q(キュー)学」や「陶学」と称しました。ほかの教員の講座もビットコイン学や言語学、音楽アンサンブルなどバリエーション豊かで、なかには「沖縄をカロリーメイトだけの食料品のみで沖縄戦の足跡を4日かけて50km歩く」といった「命どぅ宝学」といった講座もありますよ。
生徒たちはいずれも主体的に取り組んでおり、ゼミの授業を受けているときの生徒たちの眼差しや友達とのやり取り、探究を進めるうえでの行動からたくさんの成長を感じています。私たちが講座を通じて成長を促しているというよりは“自然に成長している”印象で、私たち教員にとっては生徒たちの成長に気づける大変有意義な機会ですね。
特にどのような面において成長を感じていらっしゃいますか?
生徒たちが全体の前でレポートなどを発表している様子を見ていると、気づきの力が深まっていることを感じて「こんなことまで考えられるようになったんだ」と感激します。教科書に書かれているような一般論ではなく、「自分が体験したことを通してこんなことに気づき、こう考えるようになった」などと自らの意見として発信できるようになる生徒が多いです。
そういった発表ではほかの生徒から拍手や歓声が沸き起こり、発表した生徒の自信につながります。また、発表を聞いた生徒たちも大きな刺激を受けており、相乗効果でどんどん成長し合っているように感じています。
広島学院中学校・高等学校が強化している「理数教育」
広島学院中学校・高等学校では、中高一貫の6年間でゆとりある学習指導を行っています。そのなかでも1956年の設立当初から特に力を入れているのが「理数教育」です。
ここでは、同校における理数教育の特色について詳しくお話を伺いました。
充実の環境を整えている。理系への進学希望者は全体の4分の3
御校の理数教育について、特徴を教えてください。
本校では、設立当初から理数教育に力を入れることを宣言し、特に理科に関しては当時としては最新の設備を導入するなど環境整備に尽力しました。その方針はしっかりと受け継がれており、現在も充実した環境下で教育・指導を行っております。
実際に理系学部への進学を希望する生徒が多く、高校2年次に文系・理系のクラス分けがあるのですが、理系の生徒が全体の4分の3を占めている状況です。
「数学オリンピック」や「科学の甲子園」といった外部イベントで数々の賞を受賞
理数教育の一環として、外部の理数系イベントにも積極的に参加されているそうですね。
はい。本校では「数学オリンピック」や「地学オリンピック」、「科学の甲子園」など、理系を中心とした学問で全国の中高生と競い合うイベントへの参加を促しているんです。参加は任意ですが、教員が張り紙をして募集をかけると立候補者がたくさん集まり、どの生徒も主体的に練習に励んでいます。
やはり本校の生徒は自ら進んで学びを深めていくことに対して強く、これまで名誉ある賞を数多く受賞しています。先輩からの一子相伝といえるような教えがあったり、理数系の教科書づくりに携わっているようなプロフェッショナルな教員がいたりと、環境に恵まれていることも強さの秘訣かもしれません。
ちなみに、科学オリンピックにおいて例年上位の成績を収めている学校とは顔見知りにもなりますし、卒業生が進学した先の大学とも繋がるなど、ネットワークの強化にも役立っています。たとえばかつては大学の宇宙系の設備を使わせていただいたこともありますし、連携先の大学の方にお越しいただいてキャリア教育に関する講演を行っていただくこともあります。
また、イエズス会としての繋がりも世界規模にあり、そういったネットワークを活かした教育指導を展開できていることは本校における大きな魅力だと思います。
広島学院中学校・高等学校のスクールライフ
▲体育祭は縦割りで学年を越えてチームを組みます。男子校ならではの迫力ある競技・応援に大盛りあがり!
続いて、広島学院中学校・高等学校の校風や部活動、行事といったスクールライフに関してお話を伺いました。
好奇心旺盛な生徒が多数!教員は生徒の主体的行動を後押しするのが得意
御校にはどのような生徒さんが在籍されていますか?
男子校ならではの特徴かもしれませんが、知的好奇心の高い生徒が多いと感じています。
また、自主性が高い生徒もたくさんみられます。本校には生徒の主体的行動を後押しすることが上手な教員が多いため、もともと消極的な性格の生徒もどんどん積極性が高まっていますよ。
クラブは横の繋がりが強い。部活だけでなく関心を持ったことを深めていける
▲バレーボール部の練習風景
御校におけるクラブ活動の特徴をご紹介ください。
本校は運動部・文化部ともに種類が多く、たくさんの生徒が参加しているのですが、実はほかの学校に比べると練習時間は従来から多くありませんでした。たとえば、運動部には「練習は週2回のみ」といった決まりがあります。
また、行事は縦割りで行うこともあるのですが、クラブ活動に関しては6年間横の繋がりが自然と強くなりますので、学年ごとに異なる雰囲気がありますね。
なかには活動に消極的な生徒もいますが、何においても目立つことが必ずしも良いというわけではなく、関心を持ったものを深く追求して自分なりの花を咲かせられる場所を探せばいいのではと考えています。
「祈りの集い」などの宗教行事はあるが、宗教色はそれほど強くない
御校はカトリックのミッションスクールですが、宗教関連の行事はたくさん行われているのでしょうか?
例年5月と10月に、カトリック研究会が主催している「祈りの集い」が毎朝聖堂で10分ほど行われます。それ以外全員の生徒が関わる行事は入学式や卒業式などの行事の際に祈りの時間がある程度で、宗教的な行事が多い学校ではありませんね。
教員も私を含め多くがカトリックの信者というわけではありませんから、その点を不安に感じている方も気楽にお越しいただけたらと思います。
ちなみに「祈りの集い」への参加も任意なのですが、そのなかで教員や生徒が順番に話をする時間があり、普段消極的で大人しい性格の生徒が積極的に自分の話を繰り広げる、といったこともあって面白いですよ。
40人ほど収容可能な小規模の聖堂で、テスト当日の朝などは話を教員が担当します。さすがにテスト勉強が忙しく、5人程度しか参加しないこともあるのですが、話が面白い生徒がいるときは満員で、立ち見が出るほど人気です(笑)。集いの最後には、話題に即した聖句の朗読と聖歌、暫くの沈黙の時間があり、神様に祈りを持ちます。
そういった行事の中でも“自分の居場所”を自主的に探して、自分なりに楽しく生活している生徒が多いですね。
どんなものでも作ってくれる「ロサド先生」は生徒や教員の宝
ほかに、御校での学校生活において特徴的なことがあればご紹介ください。
校舎の裏山にある小屋に「ブラザー(Brother)」という階級のスペイン人修道士・ロサド=マヌエル先生がいらっしゃり、本校の主(ぬし)というか仙人のような方です。もう50年以上、学校のさまざまなものを作ってくださっています。
たとえばロッカーや教卓、靴箱などで、例年入学式の前日には手作りした木製ハンガーをひとつひとつ綺麗に包み、生徒の机に丁寧に置いて行かれるのが毎年恒例の姿です。本当にどんなものでも作ってくださり、たとえば野球のバットや太鼓の達人のバチなんかもロサド先生にとってはお手のものです。
生徒たちは自分たちが日々触れているハンガーや教卓、下駄箱などがロサド先生による手づくりであることを知っており、大切に扱っています。また、ロサド先生のところに行けば希望者はタダで丸刈りにしてもらえるため、ときどき頭を刈ってもらいに彼の小屋を訪れる生徒もいますよ。決してペナルティというようなものではなく、男子だけの集まりですから、その方が楽だとか、みんなでお揃いにしたというような楽しみの一環ですね。
ちなみにロサド先生に関する取材を受けることも多く、数年前にはテレビ番組にも取り上げていただきました。まさに本校が誇る名物先生ですね。
広島学院中学校・高等学校からのメッセージ
最後に、広島学院中学校・高等学校に興味をお持ちの方へメッセージをお願いします。
本校は山の中、旧広島藩の庭園「翠江苑」という丘に設けられた学校なので、大自然のなかで伸びやかな学校生活を送っていただけます。中高の多感な時期をそういった環境で過ごせることは大きな魅力だと思いますし、面倒見の良い教員にしっかりと見守られ、優秀で個性豊かな友人とともに過ごす6年間は貴重な財産になると思います。
その一方で教育指導に熱心であり、東大や医学部への進学者数も多い学校ですので、受験が近づいてくれば勉強に集中する時期も出てくると思います。しかし、疲弊することなく最後まで頑張り通せる生徒が多いです。これは宗教観が根付いている環境、大自然に包まれている環境の為せる業といえるかもしれません。
このような豊かな教育環境でゆったりと、かつしっかりと学びたい方は、ぜひ本校を検討していただけたら嬉しいです。
自然環境や教育環境、人間環境などあらゆる環境に魅力があふれる御校での生活を通じて、人間力も学力も大きく成長できそうだと感じました。中村先生、たくさんのお話をありがとうございました!
広島学院中学校・高等学校の進学実績
広島学院中学校・高等学校は、例年国公立大学や難関私立大学へ多くの進学者を輩出しています。たとえば2024年度卒業生においては東京大学へ17名、京都大学へ10名、広島大学へ23名といった素晴らしい実績を残しており、優秀な生徒が多い学校として有名です。
学部としては理系が多く、特に医学部への進学率が年々高まってきている印象です。
広島学院中学校・高等学校の卒業生・在校生の口コミ
広島学院中学校・高等学校の卒業生・在校生からの評判は高く、特に学習環境や校風、教員の対応などに関して満足しているケースが多いです。保護者からは、のどかなエリアに位置するため治安が良いことや、国公立大学や医学部への進学率が高い点などを高く評価する声がたくさん挙がっていました。
広島学院中学校・高等学校へのお問い合わせ
運営 | 広島学院中学校・高等学校 |
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住所 | 広島県広島市西区古江上1丁目630 |
電話番号 | 082-271-0241 |
問い合わせ先 | お問い合わせフォーム https://www.hiroshimagakuin.ed.jp/ contact/ |
公式ページ | https://www.hiroshimagakuin.ed.jp/ |
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