ぽてん読者の皆さまに、今注目を集める学校を紹介するこの企画。今回は東京都港区南麻布の共学・私立中高一貫校の「広尾学園中学校・高等学校」を紹介します。
地下鉄日比谷線広尾駅すぐ、都内の一等地に位置する広尾学園中学校・高等学校。グローバル教育やキャリア教育を中心に、中学校から「本科」「医進・サイエンスコース」「インターナショナルコース」に分かれて特色ある教育が進められています。進学校として多様な進路実現をサポートしており、国内難関大学だけでなく海外進学者が非常に多いのも特徴です。
今回のインタビューでは、2007年に行われた大規模な学校改革を牽引した副校長の金子先生、そして2022年までインターナショナルコース統括長であった植松先生に、同校の特色ある教育活動についてお話を伺いました。
この記事の目次
都内屈指の人気校「広尾学園中学校・高等学校」の改革
広尾学園中学校・高等学校は1918年に「順心女子学園」という名前で女子校として開校しました。1980年代には約1700名の生徒数を誇っていた同校ですが、次第に入学者が減少し、2003年には486人まで落ち込んでしまいます。
そこで2007年に大幅な学校改革に着手し、「広尾学園中学校・高等学校」への名称変更や、女子校からの共学化、「インターナショナルコース」「医進・サイエンスコース」の新設などさまざまな取り組みを行いました。
今や広尾学園中学校・高等学校は都内有数の人気校として多くの生徒が集まり、学校関係者からの注目度も高まっています。まずはそんな広尾学園中学校・高等学校にどのような特徴があるのかを伺いました。
チャレンジの繰り返しで進化してきた広尾学園中学校・高等学校
▲インタビューにご対応いただいた金子先生
広尾学園中学校・高等学校は2007年の学校改革以来、着実に生徒を獲得する人気校となっていますが、どういった点が御校の進化や成長につながっていると思われますか?
2007年の改革の一環で行った女子校の共学化や「インターナショナルコース」「医進・サイエンスコース」の新設など、体制の変更は大きいと思います。しかしそれ以上に、限界を設けずにチャレンジを繰り返してきたことが、本校の成長に大きく影響しているのではないでしょうか。
我々は、普通なら「この学年には無理だろう」と考えてしまうようなレベルの高い環境やチャンスを生徒に与えてきました。そして生徒たちは、こちらの想定を遥かに超えるハイレベルなチャレンジで応えてくれています。さらに生徒のハイレベルな要望に教員が応える、その繰り返しがあったからこそ、本校はここまで発展してこれたのだと思っています。
刺激し合ってチャレンジが生まれる。人工衛星の打ち上げに携わる生徒も!
▲インタビューにご対応いただいた植松先生
広尾学園中学校・高等学校の生徒さんの「想定を超える挑戦」には、例えばどういったものがありますか?
現在(2024年4月時点)、本校の生徒が民間企業と協力して人工衛星の作製に取り掛かっており、今後打ち上げ予定となっています。このプロジェクトは、生徒自身が個人で企業にアプローチしたことで実現したものです。
元々は高校3年生の生徒2人がメインとなって動いていたのですが、民間企業との話を進めていく中で活動の幅が広がり、さらにメンバーを増やせることになりました。結果的に今ではインターナショナルコース、医進・サイエンスコースの後輩を加えた生徒のグループ7人で活動しています。
ただ挑戦するだけでなく、さらに活動の幅を広げられているのはすごいですね!この活動に至るきっかけは何だったのでしょうか?
広尾学園中学校・高等学校には、以前にも民間企業の衛星打ち上げに携わった生徒がおり、その生徒は卒業後ジョージア工科大学に進学しました。そういう先輩の姿を見て「自分もやってみたい」と思ったことが、今回の生徒の挑戦につながったのだと思います。
本校では他にも多くの生徒が海外大学に進学しており、夏休みの期間中に帰国して、海外大学での学びを伝える説明会を開いてくれています。先輩の姿に触発されてモチベーションが生まれ「自分は何ができるのか」と考えるようになり、多くの挑戦が生まれているのだと思います。
なるほど。仲間と刺激し合いながらハイレベルな挑戦を繰り返すという、まさに御校のあり方につながるお話ですね。
ハイレベルな挑戦の土台には、第一線で活躍する『本物』から受ける刺激も
広尾学園中学校・高等学校ではキャリア教育に力を入れているのも特徴的ですよね。先輩の姿はもちろん、そういったキャリア教育がきっかけとなって在校生の挑戦につながっているということもありますか?
おっしゃる通り、キャリア教育もハイレベルな挑戦を繰り返すという本校の風土をつくりあげる一端を担っていると思います。
その一環として、医療や宇宙工学などさまざまな分野の第一線で活躍する研究者のお話を聞く講演会を実施しています。2024年には、日本全国から30名以上の科学者やジャーナリストの方などが集結する「広学スーパーアカデミア」を開催しました。
本校のキャリア教育で大切にしているのは、生徒たちと「本物」との出会いです。そのため講演も、中学生向けに簡単な内容にするのではなく、あえてハイレベルな講演にしてもらっています。
専門特化できる環境と、それを共有できる環境が広尾学園中学校・高等学校の魅力
広尾学園中学校・高等学校にはどのような雰囲気の生徒が多いと感じますか?
3つのコースに分かれているということもあり本当にいろいろな生徒がいるのですが、一部の特別な生徒だけでなく、生徒同士のチームワークで高め合えるのが広尾学園中学校・高等学校らしさだと思っています。どうしてもインターナショナルコースや医進・サイエンスコースの活動に注目されがちですが、本科生の生徒も含めて様々な個性を持つ生徒がいて、それぞれが刺激し合うことで、学校全体のパワーが高まっていっているのだと思います。
コースごとに雰囲気は異なり、例えば医進・サイエンスコースの生徒には自分の興味のある分野について楽しそうに話してくれる生徒が多く、それを周りの生徒が興味深く聞いている、そんな雰囲気があります。インターナショナルコースでは、インターンシップやボランティア活動等の課外活動を通して、さまざまな経験をする生徒が多いですし、本科は本科で一番人数が多いこともあり、多様な興味を持つ生徒が集まっています。
それぞれのコースの生徒が得た経験が、部活動や委員会など全体交流の場を通じて学校全体に波及していく、それが広尾学園中学校・高等学校の特徴です。本校の生徒全体で学びを楽しむ姿勢を持っているからこそだと思います。
広学スーパーアカデミアを開催したときも「魅力的な講座がたくさんあるのに時間が足りない」という会話が生まれていました。このような生徒の取り組み姿勢や意識は、広尾学園中学校・高等学校の雰囲気を象徴していると感じます。
我が校の生徒は、自分が経験したことや得た知識を周囲に積極的に共有してくれます。だからこそ個々人の経験が学校全体に波及して、生徒の知的好奇心が喚起されているのだと思います。これは生徒たち自身が“貢献する”ことに価値を感じているからこそできる行為です。
それを象徴するのが、約10年に渡りインターナショナルコースの生徒が行っている、イェール大学をはじめとした海外大学の公開講義の日本語訳の取り組みです。海外の名門大学では講義内容が公開されているにも関わらず、英語であるため日本からのアクセスはそれほど多くないのです。この現状を踏まえて本校のインターナショナルコースの生徒が有志で日本語訳を行っています。
「自身の知識や経験を他者に還元する」ということを当たり前のように行っているのは、本校の生徒ならではの特徴だと思います。
主要科目のほとんどを英語で学ぶ「インターナショナルコース」
▲職員室へ入室する際のマナーの英語で掲示されています
広尾学園中学校・高等学校の特徴であるインターナショナルコースについて伺います。まずはインターナショナルコースの概要についてご説明いただけますか?
インターナショナルコースは中学校から選択できるコースで、主要科目のほとんどを外国人教員が英語で行うのが特徴です。中学校では「アドバンストグループ(AG)」と「スタンダードグループ(SG)」という2つのグループに分かれており、AGはほとんどが国際生(帰国生、外国籍生徒)、SGは主に海外在住経験のない日本の小学校に通っていた生徒で構成されています。
▲さまざまな教科で指導を行う外国人教員の皆さん
高校からはグループ分けはせず「インターナショナルコース」に一本化されます。中学校では文科省指定のカリキュラムを実施しますが、高校ではアドバンストプレイスメント(AP)(※)というカリキュラムを実施しています。
(※)アドバンスト・プレイスメント(AP):アメリカの大学の教養課程と同程度の授業を高校で実施するプログラム
インターナショナルコースでは、授業だけでなく日常的なコミュニケーションにも英語を使用するのでしょうか?
はい。インターナショナルスクールの環境に近いと思います。日本史や古文、現代文等は日本人教員が日本語で教えます。
入学時に英語が話せなかった生徒が、イタリアの大学に進学!
インターナショナルコースの生徒さんに関するもので、印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
中学校のSGから高校のインターナショナルコースに進学し、海外大学に進学した生徒のエピソードを紹介します。
SGの生徒は入学時点では英語を話せない生徒が多いのですが、その生徒も例外ではありませんでした。ですがその生徒は3年間努力し、高校に進学してからも英語を活かして海外大学のオンラインコースを履修したり、大人が参加するマネジメント講座に参加する等の課外活動をしました。
そして夏休みにイタリアのボッコーニ大学でデータサイエンスを学んだことがきっかけで、ボッコーニ大学に3年間の学費免除の条件で進学しました。それだけでなくアメリカの大学約20校にも出願して、合格しました。
▲広尾学園中学校・高等学校の生徒は海外大学から多くのオファーを受けている。北米大学のスカラシップ一覧には奨学金も明記
その生徒は夏休みにイタリアの大学で学んだとのことですが、このような海外大学での研修は学校で参加募集をされているのでしょうか。
人工衛星の打ち上げプロジェクトのように生徒が個人的にアプローチすることが多いですが、生徒の学びたい分野に関連する課外活動を探して学校側からアプローチすることもあります。
自分の興味のある分野が固まっていない生徒もいるので、学校では幅広い分野の課外活動を用意するようにしています。高校生向けのものはあまりないので、大学生向けの講座や企業インターンなどにアプローチをかけることが多いです。
圧倒的な数の海外大学進学実績を誇る!海外進学を後押しする“APプログラム”
広尾学園中学校・高等学校は海外大学への合格者が非常に多いとのことですが、どのくらいの合格実績があるのでしょうか。
2023年度には約190人が海外大学に合格しました。今後も多くの海外大学への合格と進学を見込んでいます。(※進学実績の詳細)
海外大学への合格実績は首都圏でも群を抜いていますよね。これほど多くの合格者を輩出している背景には何があるのでしょうか。
本校では文科省が定めた高校3年間の必修カリキュラムを高校1年次に先取りで履修し、高校2年・3年次にはアメリカの大学レベルの授業であるAPのカリキュラムを進めています。このことが海外大学への進学実績の基盤になっているといえるでしょう。
APの受講者は年に1回実施される試験で良い成績をおさめることで米国大学の単位に変換可能です。高校生のうちに単位を取得しておけば、留学期間を短縮できるぶん学費節約にも繋がるなど、さまざまなメリットが得られます。それが本校生徒の海外進学を後押ししているのではないでしょうか。
広尾学園中学校・高等学校には帰国生の生徒さんも多いので、自然に海外大学への進学を志すという雰囲気もあるのでしょうか。
帰国生が多いことで、海外への進学も選択肢に入っているという状況はあると思います。ただし我々は生徒に、「国ではなく、学びたいことをベースに進路選択をする」ことの重要性を伝えるようにしています。
例えば宇宙工学を学びたいのであれば、日本よりも環境・設備が整っているアメリカの大学の方が良いかもしれません。しかし日本で先端の学びが得られる分野で学びを深めたいのであれば、日本の大学を志すべきだと思います。
「海外大学への進学」だけに捉われるのではなく、自分のやりたいこと、将来を考え、より良い学びが得られる環境を選んだ結果、海外大学への進学が増えているというのが現状です。
生徒だけでなく保護者の方も、進学実績だけで広尾学園中学校・高等学校を選んでいるわけではないというのは感じています。これからの時代を生きていくために必要な力を子どもに身につけさせたい、という意識を持つ方が広尾学園中学校・高等学校に来てくれていますよ。
都心の一等地で送る広尾学園中学校・高等学校のスクールライフ
▲広尾駅からすぐの位置にある広尾学園中学校・高等学校
広尾学園中学校・高等学校は広尾駅すぐ近く、六本木ヒルズやオマーン国大使館などに程近い都心の一等地に位置しています。ここからは、恵まれた環境の中にある9階建ての校舎で送る広尾学園中学校・高等学校のスクールライフを紹介していきます。
インターナショナルな雰囲気の中で過ごせるスクールライフ
広尾駅周辺は大使館が多いなど、インターナショナルな雰囲気があるのが特徴的ですね。
創立100年を超える中で街並みも変化していますが、このインターナショナルな雰囲気は昔から変わりません。学校と大使館とのつながりもあり、大使館の式典の際には本校の吹奏楽部の生徒が演奏することもあります。
▲昼休みに限らず使用できるカフェレストラン
キャンパス内では、どの場所が生徒さんに人気ですか?
中庭で過ごす生徒が多いです。校舎の中にもフリースペースがあちこちにあるので、皆思い思いに過ごしていますよ。
昼食はカフェレストランで取る生徒も多いです。お昼だけでなく放課後も自由に使えるので、昼食時に限らずここに集まっていることも多いと思います。
サイエンスラボでは、最新の設備で研究者レベルの研究ができる
▲最新機器の揃うサイエンスラボで実験中の広尾学園中学校・高等学校の生徒
広尾学園中学校・高等学校は3つのコースがありますが、校舎はどのように分かれていますか?
広尾学園中学校・高等学校では学年ではなくコースごとにフロアを分けています。医進・サイエンスコースは5階、6階にあり、6階には「サイエンスラボ」という、化学、生物、物理に特化した3つの実験室を備えています。
▲日本語と英語で表現されている研究結果
医進・サイエンスコースでは専門的な研究をしているのですか?
医進・サイエンスコースの研究は「既存の研究の先をいかなければ研究とは言えない」という方針をとっています。そのため大学のレベルと同等か、それ以上の研究が進められています。教員の想定を超えるハイレベルな研究が進んでいる点は、まさに本校の特徴を象徴していると思います。
▲サイエンスラボにはマウスの目の組織を薄く切る機械など最新機器が揃う
サイエンスラボに最新の機器が揃っていることも、研究がハイレベルであることを示していますね。
サイエンスラボには、生徒がコンクールで獲得した研究支援金100万円で残してくれた人工気象器もあります。中学校、高校の枠にとらわれず、いろいろな実験をできるのも本校ならではの魅力ではないでしょうか。
週3回までの部活動。時間を区切ることでメリハリのある学園生活を実現!
広尾学園中学校・高等学校では部活動も盛んなのでしょうか?
はい。運動部も文化部も活発で、特にチアリーディング部とディベート部は活発で、全国大会常連で輝かしい実績も残しています。ただし部活動の日数は週3回までとしています。限られた時間の中で最大限のパフォーマンスを発揮できるようにしながら、バランスのとれた学園生活を実現しています。
広尾学園中学校・高等学校からお子様、保護者へのメッセージ
最後に、広尾学園中学校・高等学校に興味を持ったお子様や保護者の方に向けてメッセージをいただけますか?
「不易流行」という、「変わらない本質的なものの中に新しい変化を取り入れていく」という言葉があります。それはとても大切な考えではありますが、これまでの学校現場はその言葉を言い訳にして、時代に大きく遅れてしまっている現状があるのではないでしょうか。
広尾学園中学校・高等学校は、生徒にさまざまな経験を提供できる学校でなければならないという責任を持っています。だからこそ時代に追いつき、むしろ時代を先取るような学習環境を提供していければと思っています。
金子先生からもあった通り、本校には自身の得意分野を活かして社会に貢献したいという思いを持った生徒が多いのが特徴です。我々も、生徒自身の得意分野をもっと深めていけるような環境を提供できたらと考えています。
広尾学園中学校・高等学校では、学校内だけでなく社会とつながりながら学びを深められる環境があります。そういう環境に魅力を感じるお子様や保護者の方は、ぜひ説明会や学園祭にお越しいただき実際に見ていただけたらと思っております。
インタビューを通じて、中学生・高校生という枠を超えてさまざまな経験ができ、さらにそれを還元していける環境があることが伝わってきました。金子先生、植松先生、本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!
広尾学園中学校・高等学校生徒・保護者からの口コミ
ここでは、広尾学園中学校・高等学校の在校生や卒業生、保護者の方からの口コミを一部抜粋してご紹介します。
都心の最高の立地、環境の中で充実した学びを得られるのが魅力。
医進・サイエンスコースでは最新の設備で、他にはない学びが得られていると感じる。
インターナショナルコースにはさまざまなバックボーンを持つ生徒が揃っており、学校の中に多様性を感じられる。全校生徒で交流できる機会も多く、さまざまな個性を認め合う風土が生まれている。
先生からさまざまなイベントのアナウンスがある。積極的に行動することで、学内にとどまらず校外でも多様な経験を積むことができる。
広尾駅からすぐという素晴らしい立地に魅力を感じる声が多く寄せられています。また医進・サイエンスコースやインターナショナルコースといった多様な学びの環境がある一方で、勉強だけでなくさまざまな経験の中で自分を成長させられる環境があることも多くの口コミから伝わってきました。
「広尾学園中学校・高等学校」の基本情報
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