ぽてん読者の皆様に、今注目の学校を特集するこの企画。今回は東京都文京区の中高一貫共学校、広尾学園小石川中学校・高等学校を紹介します。
広尾学園小石川中学校・高等学校は、2021年の校名変更、共学化によって新たに生まれた学校です。東京都港区にある広尾学園中学校・高等学校との教育連携のもと、海外大学への多くの進学実績を誇る広尾学園の教育システムを取り入れたグローバル教育や、多彩なキャリア教育を展開しています。
2024年度から完全中高一貫校となり、2024年12月には増築校舎の完成を控えているなど、さまざまな教育改革が進められている同校。そんな広尾学園小石川中学校・高等学校の教育理念や、インターナショナルコースをはじめとする教育プログラムの特徴などについて、校長の松尾廣茂先生にお話を伺いました。
この記事の目次
新スタートを切って多くの注目を集める広尾学園小石川中学校・高等学校
早速ですが、広尾学園中学校・高等学校の教育連携校という形で2021年に「広尾学園小石川中学校・高等学校」として新たなスタートを切り、現在を迎えた率直なご感想をお聞かせいただけますか?(取材は2024年4月実施)
ありがたいことに、新たな形となった本校に多くの受験生や保護者の方から関心を寄せていただいていることを実感しています。注目を集める大きな要因はやはり、難関大学や海外大学への進学実績を多数持つ広尾学園の教育連携校であるという点でしょう。
それに加えて、生徒数自体はコンパクトながらインターナショナルコースの生徒が多く国際色が強いという、本校の独自の校風に魅力を感じてご受験いただくケースも少なくありません。さらに近年、本校では海外大学も含めて進学実績が向上していることから、進学面でも期待されていると感じます。
▲生徒たちが多様な進路を歩んでいることを物語る大学案内や過去問の数々
「自律と共生」に基づき、グローバルに活躍できる人材を育てる
広尾学園小石川中学校・高等学校の教育方針を教えていただけますでしょうか。
本校では「自律と共生」の教育理念のもと、人間力を高める教育を目指しています。
グローバル社会で活躍していくためには、問題解決能力を高める「自律」、他者を思いやり物事に取り組む「共生」が欠かせません。本校のあらゆる教育活動を通じて自律と共生の力を備えた魅力的な人間を育てていきたいと思っています。
御校の志す自律と共生は、それぞれどのような意味合いを持つのでしょうか。
「自律」とは自分をコントロールして能動的に学習する力だと考えます。学ぶ楽しみを知り、主体的に学ぶ姿勢を持つ生徒を育んでいくというのが本校の目標です。その一方で、いろいろな人からの学びを素直に吸収していく姿勢も重要です。その学びを自分の中に落とし込んだ上で自分なりのオリジナルをつくっていくことこそが「自律」だと考えています。
また「共生」とは自身の成長過程において、友達や周囲の人と切磋琢磨し合い、学び合う力だと考えます。誰しも目標に向かって頑張る中でくじけてしまう瞬間があるでしょう。そんなときに頑張ろうと言い合える仲間がいるからこそまた前を向くことができる、その関係性を「共生」と捉えています。
本校ではこの「自律」と「共生」の力をともに伸ばしていくことが、個人だけでなく集団を成長させていくと考えています。自律の心を持って物事に取り組むことは自分自身を成長させますが、その中で時に自分にない部分を友達に見出して、羨ましく思うこともあるでしょう。
そのときに「羨ましい」という感情で終わらせず、友達から学び取っていく「共生」の心を持つことで、さらに自身を成長させることができるのです。そして身に付けた力を集団の中に還元していくという循環の中で、学校という集団全体が成長していくのだと考えています。
▲勉強や部活、学校生活のあらゆる場目で「自律と共生」を育むことを重視
夢を語るオリエンテーション合宿などを通じて、生徒・教職員に教育理念を浸透
御校の教育理念「自律と共生」を生徒の皆さんに落とし込んでいくために実施している取り組みがあれば教えてください。
「自律と共生」の考えを浸透させる最初の機会として、中学校入学後すぐの4月にオリエンテーション合宿を行っています。そこでは生徒一人ひとりに夢や目標を語ってもらったり、「共生」の考え方についての講話を行ったりしています。
中学校に入学してすぐの生徒さんは、例えばどのような夢を語るのでしょうか。
医者や弁護士など具体的な職業を挙げる生徒もいますが、その時点ではまだ思い浮かばないという生徒も少なくありません。ある生徒は「周りを笑顔にする仕事に就きたい」という夢を語ってくれました。具体的に何をして皆を笑顔にしていくのか、それは本校での6年間で探していけば良いと思っています。
その時点で具体的ではなくても、こうなりたいという姿を思い描くことが大切なんですね。
夢というのは変わっていくものですし、夢の達成自体が重要ではないと考えています。それよりも本校では、自分の目標に対して今どれだけチャレンジできるのかという姿勢を大切にしています。
そして学校生活の中でどんどんチャレンジしていく上でも、「共生」の心が重要となります。共生の心をもって自分の弱みを友達に対してオープンにできる関係性を築くからこそ、周囲に対して臆することなくチャレンジができるのです。友達との良い関係性の中で、夢や目標に向かってさまざまなチャレンジをしてもらいたいということをオリエンテーション合宿の場でも伝えています。
そういったメッセージは、オリエンテーション以外の機会にも伝えられているのですか?
はい。校長講話を行うこともありますし、校舎入口に設置しているホワイトボードにも節目節目で、私からのメッセージを記載しています。
教育理念を浸透していく上で意識しているのは、生徒だけでなく教職員全員に向けてもメッセージを発信するということです。人間的な魅力を持つ生徒を育てていく上でも、校長の私を含む教職員全体で、あるべき大人の姿を率先垂範で示していけたらと思っています。
校長先生からの明確で力強いメッセージや、その理念を体現する教職員の方たちの姿があることは、生徒の皆さんにとっても学校生活を送る上で心強い指針となりますね。
インターナショナルコースやキャリア教育などの特色あるカリキュラム
▲けやきをシンボルとする広尾学園に対して、イチョウをシンボルとする広尾学園小石川中学校・高等学校
広尾学園小石川中学校・高等学校は2021年の校名変更に伴い、インターナショナルコース・本科コースの2コース制となりました。広尾学園との連携の強みを活かしたグローバル教育やキャリア教育などを推進する一方で、「自律と共生」の理念に基づく同校ならではの独自性ある教育を展開しています。
そんな広尾学園小石川中学校・高等学校の特色ある教育プログラムを紹介します。
多様なバッググラウンドを持つ生徒が集うインターナショナルコース
▲豊かな国際色を感じる広尾学園小石川中学校・高等学校の校舎内の風景(スクロールで写真がご覧いただけます→)
御校のインターナショナルコースの特徴を教えてください。
インターナショナルコースは、帰国生など既に英語力を持つ生徒を対象としたアドバンストグループ(AG)と、入学してから英語力を伸ばしていく生徒を対象とするスタンダードグループ(SG)に分かれます。AGでは英語の授業の他、数学や理科の授業でも英語で授業をしているのが特徴です。
▲インターナショナルコースのAGクラスの授業風景(スクロールで写真がご覧いただけます→)
SGはゼロから英語を学んでいくクラスです。本校には多くの外国人教員や帰国生がおり、日常的に英語に触れる中で確実に英語力を育んでいける環境があります。SGの生徒でも中1の夏休み近くには英語の聞き取りがほぼできるようになっているなど、その成長スピードには目を見張るものがあります。
友達など周囲の環境に刺激を受けながら英語力を高めていけるのは、まさに御校の「共生」の理念が生きているといえますね。
その通りです。また、生徒同士の交流から、語学力だけでなく文化的な面でも吸収する部分が多いのも特徴ですね。
特に欧米で育った生徒はディスカッションや発信力に優れた子が多いことから、グローバル社会で活躍するために重要な発信力を帰国生から自然と学べる環境があります。逆に帰国生が日本人生徒から日本文化を学ぶこともあるなど、友達と触れ合う中で国際感覚を学び合える環境があるのは本校の大きな財産だと思います。
広尾学園との共催や独自のプログラムで、多彩なキャリア教育を展開
▲広尾学園と共催の講座には、天文学や宇宙に関するものも多い
広尾学園との教育連携の一環として、キャリア教育も両校で共催されているのですよね。
キャリア教育は本校独自のものと広尾学園と連携して行うものとがあり、年間を通じて多彩なプログラムを展開しています。共催プログラムは両校の生徒が一緒に参加するため、生徒同士の交流機会にもなっています。
広尾学園との共催で特徴的なのが「広学スーパーアカデミア」です。広学スーパーアカデミアは最先端の研究をする科学者や最前線で活躍するジャーナリストなどを招いた「超一級講座」で、中学1年生から高校2年生までの生徒がさまざまなジャンルから興味のある講座を選択できます。
過去には心臓外科医の先生のお話を聞く講座なども実施しました。生徒にとっては単に医療知識を学ぶだけでなく、命の重みや死生観を考える良い機会となったようです。
また、広尾学園との共催で行っている海外大学のキャンパスツアーも特徴です。海外大学の入試課の方からカリキュラムの特徴等を説明してもらい、現地の大学にいる広尾学園の卒業生に案内してもらってアドバイスを受けるなど、海外大学を目指す生徒にとって大いに刺激を受けられる機会となっています。
御校独自のキャリア教育の例も教えてください。
一例として、東京藝術大学と連携して行っているアート体験講座があります。そこでは「鋳造」をテーマとしたアートや、東アジアの絵画技法である漆工芸「沈金」の制作体験を行いました。
また別の例として、東京都立産業技術高等専門学校と連携しロボットプログラミング講習も実施しています。プログラミングをしてロボットを走らせるという内容で、生徒たちは決められたコース以外も走られるようさまざまな工夫をしていました。1回失敗してもすぐ再トライする姿勢に、講師の方たちも驚いていました。
文教地域に立地するメリットを活かし、多様な学びを展開
▲立地を活かした学びだけでなく、校舎内にも学びを引き出す工夫がたくさん。これは階段の壁に高度別の雲の説明が描かれている様子
御校は東京都文京区という、文教地域に立地しているのも特徴ですよね。その強みを活かした取り組みはあるのでしょうか。
本校から程近い位置にある、約90年の歴史を持つ日本最古の東洋学専門図書館『東洋文庫』と連携協定を締結しています。本校の生徒は学生証を提示すればいつでも東洋文庫に入館可能となっており、第2の図書館のような位置づけとして利用させていただいています。
展示を見るだけでなく、学芸員や研究員の皆さまからの特別講義や東洋文庫の特色を活かしたワークショップなど、博学連携教育も展開しています。
また、男子学生寮『公益財団法人和敬塾』とも連携協定を締結しており、総敷地面積約7,000坪の中にあるグラウンドやテニスコート、武道場などを利用させていただいています。今後もさまざまな形での交流を図っていけたらと考えています。
こういった多様な学びを提供する取り組みの背景にあるのが、経験を大切にする本校の教育方針です。キャリア教育もそうですが、その時点では深く理解はできなくても、知らなかった世界を知ったり、活躍するかっこいい大人の姿を見たりするだけでとても刺激的な経験となりますよね。そういった経験を、新たな学びを広げるきっかけにしてほしいと思っています。
完成予定の増築校舎には、生徒の主体的な学びを引き出す「ラーニングコモンズ」も
2024年12月に竣工を予定されている、広尾学園小石川中学校・高等学校の増築校舎の特徴を教えてください!
増築校舎は本校舎と同じく地下1階、地上4階建てで、130名収容の多目的ホールや教室、カフェテリアなどに使用することを予定しています。
その中でも特徴的な機能が、1階の1フロアを活用した図書館を併設したラーニングコモンズです。生徒の主体的な学びを促進する空間となることを予定しています。
▲自習室から眺める建築中の校舎の様子
今まさに建築中ということで、生徒さんも日々完成していく様子を眺めながら楽しみにしていらっしゃるのではないでしょうか。
生徒は解体から校舎が出来上がっていく様子をずっと見ているため、建築に興味を持ち、その関係の進路を志す生徒も出てきているようです。そういった声を受けて、建築工学に関する講座を夏期講習に新たに追加しました。
また直接進路選択にはつながらなくても、徐々に出来上がる建築現場を間近に見られることは生徒にとっても貴重な経験となっています。例えば建築現場は建物よりも、むしろ基礎工事に時間がかかるというのも生徒にとっては新たな学びになったようです。勉強や人としての成長も、工事と同じく基礎が大切だという生きた教訓になったのではないかなと思います。
広尾学園小石川中学校・高等学校からのメッセージ
最後に、広尾学園小石川中学校・高等学校での学校生活に興味を持ったお子様、保護者の方に向けてメッセージをお願いします。
ここまで「チャレンジする心が大切」だとお話してきましたが、中学受験に向けて頑張っているお子様と保護者様も、まさにチャレンジしている最中だと思います。
たとえ現時点で難しい目標だったとしても、お子様がそれに向かってチャレンジする心を持っているのであれば、保護者の方にはどうステップを踏んでいくのかを一緒に考えていってほしいと思っています。一歩一歩頑張ったのであれば、たとえ志望校に合格しなくても、その努力はお子様の人生のどこかで必ず結実します。
本校では、お子様のチャレンジの心を学校と保護者の皆さんと一緒に育てていきたいと考えています。そういう教育に魅力を感じる方は、ぜひ本校に来ていただけると嬉しいです。
松尾先生、本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!
広尾学園小石川中学校・高等学校の生徒のメッセージ
ここでは、広尾学園小石川中学校・高等学校の学校案内に掲載されている生徒のメッセージを一部抜粋して紹介します。
生徒の皆さんのメッセージから、「自律と共生」のもとでクラスメイトと切磋琢磨し、自身の目標に向かってチャレンジできる環境であることが伝わってきました。また授業の楽しさ、教員の魅力を挙げる声も多く、先生方の熱心な指導のもとで学びの楽しさを実感できているようです。
■広尾学園小石川中学校・高等学校の学校案内
https://hiroo-koishikawa.ed.jp/hk/wp-content/themes/hk/assets/dp/guidebook_2024/#page=1
広尾学園小石川中学校・高等学校へのお問い合わせ
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