雲雀丘学園中学校・高等学校の「興味・関心」を育てる探究学習と行事設計|中高一貫校

特色ある教育に取り組む“注目の学校”を紹介するこの企画。本記事では、兵庫県宝塚市にある私立中高一貫校「雲雀丘学園中学校・高等学校」を紹介します。

ひとりひとりの興味を引き出す自由度の高いカリキュラムが豊富な同校。教員に加え、事務長や図書館司書などが行う探究ゼミや、大学・企業とコラボして行う探究プロジェクト、生徒自らがいちからプランを練り作り上げる研修旅行などを通して、自己理解を深め、将来のあるべき姿を見極めることができます。また、生徒の自主性を重んじることで、企画力などのスキルが磨ける点も特徴です。

今回は、そんな雲雀丘学園中学校・高等学校の教育理念や取り組みについて、入試広報部部長の今岡先生にお話を伺いました。

「やってみなはれ」精神を大切に。雲雀丘学園中学校・高等学校の教育理念

調理実習をする雲雀丘学園中学校・高等学校の生徒たち

編集部

まず初めに、御校の教育理念について教えてください。

今岡先生

雲雀丘学園は、創立以来「孝道」を基本とした人間教育を大切にしてきました。これは、サントリーの創始者であり、学園の初代理事長でもある鳥井信治郎の「親孝行な人はどんなことでもりっぱにできます」という言葉に由来します。「親は子の成長を願い、子は親に感謝し尊敬する」という心が、やがて社会のために尽くす気持ちの軸となると考えています。

編集部

家庭との繋がりのようなものも意識しているということでしょうか。

今岡先生

はい。本校では、「教育」ではなく、「共育」という言葉をよく使っています。家庭と学校が協力して生徒を育て、保護者や教員も生徒と一緒に学ぶ。さらには地域の方や企業の方なども巻き込んで学びを発展させていく。これが、雲雀丘学園が目指す理想の共育の形です。

鳥井信治郎が口癖のように言っていた「やってみなはれ」の精神にもとづき、学校の枠を超えた自由度の高い教育プログラムを積極的に取り入れているのが、本校の特徴のひとつです。

楽しみながら進路を見極める。雲雀丘学園中学校・高等学校の探究学習

探究学習に力を入れている同校では、雲雀丘学園の教員が行う「探究ゼミ」と、大学や企業と連携して行う「探究プロジェクト」があります。生徒の自主性を重んじており、いずれも強制ではなく参加希望型で開講されています。

自分の興味を知るきっかけに。学内で行う「探究ゼミ」

授業を受ける雲雀丘学園中学校・高等学校の生徒たち

▲探究ゼミの「日本語ディベート」の講座

編集部

まずは「探究ゼミ」について詳しく教えていただけますか?

今岡先生

探究ゼミは、放課後や昼休みなどに週1回〜月1回のペースで開かれる講座で、20もの種類があります。いずれも教員の専門性を活かしたオリジナルの内容で、ゼミのテーマに興味を持った生徒が集まるんです。

募集は年に2回ほどあり、どのタイミングからでも参加できます。たとえば、中学2年生までは部活動が忙しかったけれど、3年生で引退したら少し余裕ができたからこの講座を受けてみようかな、とか。大学の講座のようなイメージで、自由に選択できます。

編集部

希望制とのことですが、参加を強制しないのはなぜなのでしょうか。

今岡先生

「先生に言われたから」「親に言われたから」ではなかなか熱も入らないと思うからです。本校ではほとんどのカリキュラムで「全員参加・強制参加は絶対にしない」という教育方針を取っています。生徒自身が自分の興味にもとづき、希望して参加することが最も重要だと考えているんです。

編集部

違う学年の生徒が一緒に講座を受けることもありますか?

今岡先生

あります。たとえば、「日本語ディベート」という講座では、中学1年生と高校2年生の生徒が一緒に学んでいます。

編集部

今講座名がひとつ出ましたが、他にも探究ゼミで特徴的なものがあれば教えてください。

今岡先生

どの探究ゼミもおもしろいのですが、特に紹介したいものが2つあります。まずひとつは、本校の事務長が行う「メンタルをうまく活用しよう!」という講座です。昔高校野球をやっていた自身の経験から、スポーツにおけるメンタルの考え方を応用して、心を整える方法を読み解く内容になっています。

もうひとつは、本校の図書館司書が行う「ビブリオバトル」。これは自分の好きな本の内容を観客に説明し、バトル形式で繰り広げる書評合戦のような講座です。ビブリオバトルは全国大会があるので、毎年出場を目指して頑張っていますね。

編集部

どれもとても楽しそうな内容ですね。講座を受けた生徒はどんなふうに成長していると感じますか?

今岡先生

普段の授業ではわからないような、自分の向き不向き・興味関心を知るきっかけにしてくれていると思います。「興味がわかないことがわかった」というのも立派な気づきですから、私たちとしても「講座の内容が合わないと思えば自由にやめていい」というスタンスです。

「なんで勉強しなくちゃいけないの?」という疑問を抱えたまま授業を受け続けるのではなく、その学びにどんな意味があるのか理解することが大事なんです。自分の興味を探ることは、自分に合った進路を決めることにも繋がります。

ストレスなく学習に挑むことが学力を伸ばすコツだと思うので、本校としても生徒が自分の興味をあらためて知り、将来の姿を掴むきっかけにしてほしいという思いで探究ゼミを開いているんです。

自走力を磨く。学校を飛び出して行う「探究プロジェクト」

編集部

続いて「探究プロジェクト」についても詳しく教えてください。

今岡先生

こちらは、大学や企業とコラボして、長期休暇などに行う探究学習です。準備段階として本校での事前講義を挟むものもありますが、ほぼ全てのプロジェクトで現地へ出向き、最後にレポートを作成するという流れになります。

編集部

実際にどんなことをするのでしょうか。

今岡先生

たとえば「細胞医薬の最前線をみてみよう」と題して鳥取大学医学部の研究室を見学したり、「未来のモビリティの必要条件を考えよう」ということでブリヂストンにお邪魔したりします。全部で25以上もの種類があるので、必ず興味のあるものが見つかると思います。

編集部

特に印象的だったものはありますか?

今岡先生

どれもおもしろいですが、「グリコの「セブンティーンアイス」からマーケティングを学ぶ」というテーマが印象に残っていますね。駅や商業施設で見かけるアイスの自動販売機「セブンティーンアイス」ですが、実は本校の食堂にも設置していまして。それをきっかけに江崎グリコさんにお声がけをしたことで、この講座が実現しました。CM撮影を本校でしていただいたりもして、なかなか深いお付き合いをしています。

編集部

探究プロジェクトの成果をコンテストに応募した生徒もいるのだとか?

今岡先生

はい。甲南女子大学とコラボして「「和食」を日本・世界から捉える」という探究プロジェクトを行っているのですが、これに参加した生徒が講座の中でヒントを得て探究を行い、「中高生探究コンテスト」の「好き部門」で最優秀賞を受賞しました。

編集部

すばらしいですね!どのような内容だったのでしょうか。

今岡先生

応募したテーマは「和菓子を世界に伝えたい to Afria」です。日本食に馴染みがないアフリカに和菓子を知ってもらいたいと考え、柏餅をアフリカ風にアレンジしたという内容でした。

まず、現地でよく食べられるタピオカの原料のキャッサバやひよこ豆を使って柏餅を作り、試作品を近所のアフリカ料理屋さんに持っていきました。お店の人に「いいね」と言ってもらえたので、今度はコンゴ総領事館にアポを取って、領事の方に食べてもらいました。そこでもらったコメントや今後の課題をまとめて、コンテストに応募したんです。

編集部

すごい行動力ですね。内容を考える際、先生方は手伝ったりするのでしょうか?

今岡先生

私たち教員は特に介入しません。もちろん相談を受けたらサポートしますし、レポートの文章添削程度はしますが、基本的には自由に動いてもらいます。というのも、「やってみたい!」という想いさえあれば、生徒はどこまでも自走してくれるからです。生徒が心地よく動ける距離感をはかりながら、厳しく制約することなくのびのびと取り組んでもらっています。

研修旅行の全工程を生徒が決める。雲雀丘学園中学校・高等学校の企画力を磨く教育

プレゼンテーションをする雲雀丘学園中学校・高等学校の生徒

編集部

御校では、研修旅行でも変わった取り組みをされていると聞きました。

今岡先生

そうなんです。中学3年生の11月に行う研修旅行では、生徒自身がどの県で何をするかを決めるんです。まず、中学2年生の1月にひとりひとりが自分の興味にもとづいてプランを立て、クラス内でプレゼンテーションをします。そこで選ばれた生徒は、クラス代表として学年プレゼンテーションに挑みます。

ここで最終候補に残ると、リーダーを中心に集まった生徒で検討チームを結成し、中学3年生の9月までに旅行代理店と旅程や内容を打ち合わせ、当日を迎えるという流れになります。2024年度は13人が学年プレゼンテーションを行い、投票の結果6プランが選ばれました。

編集部

つまり、研修旅行の行き先が複数あるということですか?

今岡先生

はい。2024年度は、東京、横浜、山梨、金沢、福岡、長崎の6箇所に行く予定です。どの行き先にも、「文化と建造美に触れる旅」「食と住を探究する旅」「戦前と戦後の文化の違いを探究する旅」など明確なテーマがあり、生徒はそれぞれ好きなプランを選んで参加することができるんです。多い場合は40〜50名、希望者が少なければ10名ほどで行くこともあります。

編集部

生徒が出したプランの中で、特に印象的だったものはありますか?

今岡先生

戦国史好きの生徒が提案した「史跡探訪プラン」がおもしろかったですね。メジャーな観光スポットも巡りつつ、主にその土地に残る史跡を訪れ、毎晩「軍議」を行うといったものでした。軍議では、今日訪れた史跡はこういうもので、武将たちがどんなふうに合戦をして、訪れた自分たちは何を感じたのか共有するという内容で。とても個性的なプレゼンテーションでした。

編集部

すごく楽しそうな取り組みですが、生徒にプランを考えさせる主な狙いはどこにあるのでしょうか。

今岡先生

自己理解を深め、自分の興味をアウトプットして周りを巻き込みやりたいことを実現させる機会にしてもらいたいと考えています。良いプランを立てるには、まずは自分が探究したいことを自分で理解する必要がありますよね。さらに、プランを実現するためには自分の考えを魅力的にアピールする力も問われます。自分が良いと思っていても、独りよがりなプレゼンテーションでは誰もついてきてくれません。そこをどううまく伝えて成功に導くかのプロセスを学んでもらいたいと考えています。

また、企画段階では予算を考慮しながら、スムーズな旅程、集団行動の動線や細かいルールまで、すべて生徒にプランを組んでもらいます。教員は少し手助けするくらいであとは見守るだけ。当日も基本的には生徒に任せてついていくだけなんです。お金や時間を視野に入れた企画力を実践的に磨けるのは、他校ではなかなかできない経験なのではないかと思います。

雲雀丘学園中学校・高等学校からのメッセージ

談笑する雲雀丘学園中学校・高等学校入試広報部部長の今岡先生

▲お話を伺った今岡先生

編集部

最後に、記事をご覧のお子さんと保護者の方に向けてメッセージをお願いします。

今岡先生

本校は、自発的に学び、気づきの機会を得るカリキュラムが豊富な学校です。「これが自分の進むべき道だ」と納得したうえで巣立ってほしいと考えているからです。いろいろと興味関心はあるけれど、将来何がしたいかわからないという方にはぴったりだと思います。

参加自由型の探究学習に代表されるように、私たちが用意した機会を掴みにいくのは生徒自身です。ですから、「なんでもやってみたい!」というような、好奇心旺盛で積極的な方に来てほしいと考えています。ぜひ学校説明会などにも足を運んでいただき、雲雀丘学園を進路のひとつにしていただければと思います。

編集部

カリキュラム全体を通して、生徒自身が自発的かつ楽しみながら自己理解を深められる工夫があることが印象的でした。また実践を通してプレゼンテーション能力や企画力を磨く機会が豊富な点も魅力に感じました。本日はありがとうございました。

雲雀丘学園中学校・高等学校の進学実績

雲雀丘学園中学校・高等学校の正門

過去3年の現役進学率が87%と非常に高い同校。毎年、難関国公立大学や有名私立大学に多数の生徒が進学しています。

2024年度は、東京大学、京都大学、大阪大学、大阪公立大学などの国公立大学に、高校3年生の34.2%にあたる92名が現役合格しました。また、早稲田大学、慶應義塾大学、東京理科大学、関西大などの私立大学に401名が現役で合格を決めています。

■近年の大学合格実績(雲雀丘学園中学校・高等学校公式サイト)
https://www.hibari.jp/education/success.html

雲雀丘学園中学校・高等学校の保護者の口コミ

最後に、雲雀丘学園中学校・高等学校に通う生徒の保護者から寄せられた感想の一部をご紹介します。

校風をはじめ、先生方の熱心さ、施設、学力、教育レベル、学校のサポートなど、総じて良い学校だと思います。生徒も基本的にまじめで、何事にも真剣に取り組もうと頑張る子どもが多いと感じます。

頑張りたい生徒はとことん頑張れるし、マイペースにやりたい生徒もそれが許される環境です。それでも最終的には大学入試に向けたサポートをしっかりしてくれるので、バランスが取れていると感じます。

子どもがのびのびと楽しそうに通っていて安心しています。図書館や自習室などの施設も充実しているのも良い点です。お昼休みに人工芝のグラウンドで好きなことをして過ごすのが気持ち良いそうです。

上の子が通っている進学校と比べても、雲雀丘学園はとても面倒見が良い学校だと感じます。子どもの興味を引き出し、将来の可能性を見つける機会を作ってもらえるので、とてもありがたいです。こんな経験は個人ではなかなかできないので、絶対に将来に活きると思います。

子どものペースに合わせて成長を見守ってくれるという声が多数上がっていました。一方で、進学にも非常に力を入れており、受験のサポートも手厚いようです。全体的に満足度が高い口コミが多いのが印象的でした。

雲雀丘学園中学校・高等学校へのお問い合わせ

運営 学校法人 雲雀丘学園
住所 〒665-0805 兵庫県宝塚市雲雀丘4-2-1
電話番号 072-759-1300
問い合わせ先 雲雀丘学園中学校・高等学校
公式ページ https://www.hibari.jp/

※詳しくは公式ページでご確認ください