特色ある教育プログラムを実践する注目校を特集するこの企画。今回は北海道函館市唯一の私立小学校「函館三育小学校」を紹介します。
函館三育小学校はアメリカに本部を持つプロテスタントの「セブンスデー・アドベンチストキリスト教会」を運営母体とし、キリスト教精神に基づく教育を行う小学校です。1学年8名定員、2学年複式学級の少人数制教育を実践しており、「ファミリー」と呼ばれる縦割り活動が活発に行われています。
伝統的に英語教育に力を入れており、小学1年生のときからネイティブ教員と日本人教員によるチームティーチングで英語を学ぶ環境があるのが特徴です。
今回は校長の小原先生に、キリスト教精神に基づく同校の教育方針や、英語教育の特徴、少人数校だからこその魅力などについて詳しくお話を伺いました。
この記事の目次
キリスト教に基づき、献身的な子どもを育てる函館三育小学校
▲聖書に基づくキリスト教の教えをあらゆる教育活動の根幹に据える
最初に、御校の教育方針を教えてください。
函館三育小学校はキリスト教主義に基づく教育を行う学校として、マタイによる福音書にある言葉「何事でも人々からしてほしいと望むことは、人々にもそのとおりにせよ。」を校訓に掲げています。
その根幹にあるのは、「神は人に良いものを与える存在である」「神は人類を愛される」「わたしを強くして下さる方によって、何事でもすることができる」という考えです。
私たちは神によって愛される存在であるのだから、私たちも神に対して、世界に対して、自然に対して良いことをしていこう。この「神と人と自分の存在を重んじ、世の中に貢献できる人物を育成する」という本校の教育目標に基づき、児童の心の教育を行っています。
御校の校訓や教育目標は、実教育活動にどのように落とし込まれているのでしょうか。
何か特定の活動を指してというより、授業も行事も、本校のあらゆる教育活動はこのキリスト教による心の教育が元になっているといえるでしょう。
近年文科省による道徳教育が推奨されていますが、本校では創立以来、道徳を聖書や宗教に置き換えた心の教育を実施してきました。特別な教育プログラムは時代の変化に応じて変わっていく可能性がありますが、キリスト教に基づく校訓や教育目標は、時代の変化によって変わることのない考えとして本校の教育活動に根ざしています。
例えば英語教育にしても、本校の場合「語学力を身につけること」を英語教育の本質的な目標とはしていません。
海外の言語や文化という、自分にとってある意味“異質”な存在を受け入れる過程を通じて、相手のことを理解し、相手のために何ができるかを考えるという姿勢を身につけることを目的に英語教育を行っています。すべての教科、行事において、聖書の教えに基づく本質的な学びを意識した教育活動を行っているのが特徴です。
函館三育小学校のグローバル教育
「函館三育小学校」の特徴として、英語を軸とした「グローバル教育」が挙げられます。具体的にどのような取り組みが行われているのか、具体的にお尋ねしていきます。
小学1年生から、ネイティブ教員による週3回の英語教育を実施
続いて御校のグローバル教育について伺います。まず英語教育に関してどのような特徴がありますか?
本校の母体であるキリスト教会が、120年ほど前アメリカ人宣教師によって初期の学校を建て、その後、宣教師や教会の支援によって小学校が創立したという背景から、伝統的に英語教育を実施してきました。大きな特徴は、小学1年生のときからネイティブ教員による週3回の英語の授業を実施している点です。
日本人担任とのチーム・ティーチングでわからない部分は日本語でフォローしつつ、基本的に始めの挨拶からその日のトピックの説明まですべて英語で行っています。日本人教員だけでなく、英語が得意な児童が友だちに教えてあげるなど、児童同士で助け合っているのも特徴ですね。
日頃の英語学習の成果を披露する場もあるのでしょうか。
毎年9月に実施している三育祭では、英語の学習発表として全学年の児童が英語劇を披露しています。劇の内容は主にキリスト教に関連したもので、聖書の中に出てくる物語など披露をしています。
留学生とのコミュニケーションを通じ、「異国の文化を受け入れる」姿勢を培う
▲海外留学生との交流の様子
普段の英語の授業以外にも、児童の皆さんが英語に触れる機会はあるのでしょうか?
函館市内にある世界各国からの短期留学生のコーディネートを行う団体様から毎年夏に留学生を紹介していただき、本校で交流を行っています。英語を使って自己紹介をしたり学校の紹介をしたりと海外の学生との交流を楽しんでいますよ。
函館には七夕に子どもたちが家や商店を巡ってお菓子をもらう「七夕まつり」という独特の文化があるのですが、その説明や簡単な実演を行った際は、少し複雑な内容なので日本語を使いました。そういった様子で、お互いの言語でコミュニケーションを取る機会になっており、本校の児童もとても楽しそうに積極的に交流しています。
海外の方とのコミュニケーションを通じて、お子様にはどのような変化がみられますか?
単純に英語力が高まるだけでなく、海外の方と触れ合う際に臆せず挨拶をしたり自己紹介をしたりと、海外の言語や文化に対する抵抗感が薄れているのが大きな変化だと感じます。
ある児童からは、学外で「英語で外国人に道案内ができた」というお話を聞いたこともありますよ。学校生活の中で海外の方と関わる機会が多くあるからこそ、本校の教育で大切にしている「相手を理解し、受け入れる」精神が、しっかりと身についていることを実感しています。
函館三育小学校の心を育む教育
ここからは、キリスト教にまつわる活動や学年の壁を超えた交流など、函館三育小学校の心を育む教育について、詳しく伺っていきます。
日々のお祈りや礼拝で、子どもたちに聖書の教えが浸透
感性・心を磨く教育のテーマについても伺います。あらゆる教育活動の根幹にキリスト教精神を据えているというお話がありましたが、それを全校児童に浸透させていくためにどのような取り組みを行っていますか?
朝の礼拝や土曜日の教会プログラムを通じて聖書の教えを学んでいます。またすべての授業の開始前にお祈りを行う、授業や行事では必ず聖書の言葉と紐づけた目標を掲げるなど、日々の学校生活で常に聖書や宗教を意識できるよう配慮しているのも特徴です。
そのため日頃の生活の中でも、何か良いこと、悪いことが起こったときに聖書の言葉を想起する子どもが多いんです。例えば何か行事を行ったときなどに作文や日記を書いてもらうと「事故もなく無事に終わったのは、神様の御守りがあったからです」という感謝の言葉が自然に出てきます。聖書の教えが、児童の生活や生き方に活かされているんだと感じますね。
朝の礼拝や土曜日の教会プログラムには、児童の皆さんはどのような様子で参加されているのですか?
礼拝でのお話や教会プログラムが大好きな児童ばかりで、皆楽しく参加していますよ!土曜日の教会プログラムは学校ではなく五稜郭にあるセブンスデー・アドベンチスト函館キリスト教会を尋ねます。
そこで、お話を聞くだけでなく、「アクティビティ」という聖書の教えを体感できるプログラムも行っています。皆で一緒に讃美歌を歌ったり、礼拝や聖句を使ったゲームを行ったりと、皆とてもいきいきと取り組んでいます。
▲土曜日の教育プログラムでは皆で讃美歌を歌ったりゲームをしたりしながら聖書の教えを体感
縦割り活動による学年を超えた関わりで「相手のために行動する」姿勢を育む
その他にも、児童の皆さんの心の教育に関して、御校ならではの特徴があれば教えてください。
1学年の定員が8名で、2学年が複式学級という環境の中で、「ファミリー」と呼ばれる縦割り活動を実施し、さまざまな行事や集会などをこの形式で行っています。
やはり異年齢で関わることが多いと、同世代同士の関わりよりも意思疎通で困難が生じる場面が多いんですよね。だからこそ、本校の校訓につながる「相手を受け入れ、相手のために行動する」という姿勢を養っていけると考えています。
▲掃除などさまざまな活動を縦割りで行う
ファミリーで行う活動の1つに、毎年6月に行う「全校宿泊学習」があります。1年生から6年生まで全員で出かけ、そこで行うプログラムも部屋割りもすべて縦割りとなっています。上級生が下級生のお世話をし、そこで安心して楽しく過ごした下級生は自らが上級生になったときにその経験をまた下の子に還元していく。その積み重ねでリーダーシップを育んでいく取り組みです。
1年生だと親元を離れて宿泊することに不安を感じる子も多いのですが、「最初は不安だったけれど、行ってみたら本当に楽しかった」「来年が楽しみ」という下級生からの声が多く挙がっています。縦割りの「ファミリー」だからこそ安心して楽しめているのでしょう。
またこの宿泊学習はコロナ禍で最近まで中断してしまっていたのですが、久しぶりに再開したときには上級生から「久しぶりに全員で行けて良かった」という声も挙がっていました。学年問わず皆が楽しみにしてくれているのは、本当に良い時間を過ごせているからこそだと思います。
▲全学年で行く宿泊学習が大人気!楽しみながらリーダーシップを身につけられる
そういった縦割りでの活動を通じて、お子様同士の相互理解や思いやりが育まれているんですね。逆に小規模校だからこそ、お子様同士の関わり合いなどにおいて配慮していることはありますか?
小規模校は児童同士、教員と児童が近い距離で関わり合えるというメリットがありますが、一方で好むと好まざるとに関わらず、目の前にいる存在を受け入れざるを得ないという限られた人間関係ならではの状況が生じるのも確かです。もちろんそれが他者理解につながるというプラスの面はありますが、子どもにとって苦しい場面や困り事が出てくることもあるでしょう。
そのため、教員は子どもの様子を見極めながら、困り事があるとき、にすぐ気づいてサポートできるようにしています。誤解によるすれ違いが生じている場合、言いたいことを言えずに困っている場合など、学習面だけでなく人間関係の面もつねに気にかけてフォローしています。児童一人ひとりに目が届きやすいというのも、少人数制のクラスだからこそのメリットですね。
▲少人数制だからこそ、児童をよく見てきめ細かくサポート
函館三育小学校からのメッセージ
▲インタビューにご対応いただいた校長の小原先生
最後に、函館三育小学校の学校生活に興味を持った読者の方に向けてメッセージをお願いします。
今回いろいろと本校の魅力をお話させていただきましたが、話だけではお伝えしきれない部分もあると思います。機会があれば、ぜひ一度本校に足を運んでいただき、子どもたちの元気な姿を見ていただきたいです。
子どもたちの様子や教職員との関わり方をご覧いただければ、より一層本校への興味や関心が深まると期待しています。皆さんのご来校をお待ちしています!
小原先生、本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!
函館三育小学校の保護者の口コミ
▲グループ学習やハンドベル演奏など、少人数制の環境でいきいきと学校生活を楽しめる
ここでは函館三育小学校の公式サイトに掲載されている保護者の声の一部を紹介します。
(保護者)入学してまず一番最初に驚いたことは、上級生が下級生のお世話を一生懸命していることです。(中略)優しくしてくださった上級生や先生方のおかげで、すぐに学校生活に慣れることができました。(中略)三育小学校の先生は全生徒の名前だけでなく、性格までよく知っていて、一人ひとりにあった対応をして下さいますので、子供を安心して通わせることが出来ると思います。
引用元:函館三育小学校の公式サイト
(保護者)「より良く生きる力」を小学校生活の中で育んで頂いています。生きづらい現代において生き抜く力、他人を思いやりより良く生きる力をつける教育があると感じています。
引用元:函館三育小学校の公式サイト
(保護者)最終的な決め手となったのは校内にあるサポート(学童保育)の存在でした。(中略)現在も、仕事が忙しく帰りが遅くなりそうな時でも、サポートのおかげで安心して働くことができ大変助かっています。
引用元:函館三育小学校の公式サイト
キリスト教精神に基づく心の教育、学習面・人間関係へのきめ細かなサポートなど、温かい校風への高評価の声が多く聞かれました。ネイティブ教員による英語教育を入学理由に挙げる方が多く、レベルの高い英語に苦戦しているお子様に対しても熱心に指導してもらえるという声もありました。
また19時までの学童保育があることも、働いている保護者の方にとって大きな魅力となっているようです。
函館三育小学校のお問い合わせ
運営 | 学校法人三育学院 |
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住所 | 北海道函館市桔梗5丁目26-1 |
電話番号 | 0138-34-2115 |
問い合わせ先 | https://saniku.sakura.ne.jp/contact/ |
公式ページ | https://saniku.sakura.ne.jp/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください