函館ラ・サール中学校・高等学校の「大部屋の寮生活」で磨かれる人間力とは|中高一貫校

独自の教育を実践する注目の学校を紹介する本企画。今回は、北海道函館市にある中高一貫の男子校「函館ラ・サール中学校・高等学校」を紹介します。

同校では、ラ・サール修道会の教えのもと、「困った人を助ける」という教育を実践。中学・高校の期間を通して学力と人間力をバランスよく育んでいきます。

また、函館ラ・サールならではの特徴として、半数以上の学生が寮生活を送っているということが挙げられます。50人の大部屋生活という他校には見られない環境の中で、人との関わり合いを学び、一生の宝となる友人関係を築いていくのです。

今回は、そんな函館ラ・サール中学校・高等学校の小川教頭と総務部長の菱井先生に、同校の教育理念や寮生活の様子、6年間で身につく力などについて詳しくお話を伺いました。

学びを活かして社会に貢献できる人材を育てる函館ラ・サール中学校・高等学校

函館ラ・サール中学校・高等学校の小川教頭先生と総務部長の菱井先生

▲インタビューに答えてくださった小川教頭(左)と総務部長の菱井先生(右)

編集部

まずは、函館ラ・サール中学校・高等学校の教育理念について教えていただけますか?

小川先生

世界中で約1,000校を運営しているラ・サール修道会の学校すべてに共通するのですが、「ENTER TO LEARN, LEAVE TO SERVE」という教育理念を掲げています。これには、学校での学びを活かして社会に貢献できる人材になって欲しいという願いが込められています。

ラ・サール修道会には、「後回しにされて(Last)、忘れられていて(Lost)、必要最小限しか与えられえない(Least)」という、”3つのL”の子ども達に対して教育の機会を与えるという理念があります。

世界中のラ・サール校を見ると、本当に各校それぞれに違いがあります。例えばフィリピンでは、政治家を何人も輩出するような学校もあれば、ストリートチルドレンの教育に力を注ぐような学校もあるんです。

日本では、ひょっとするとそこまでの社会的な格差は感じないかもしれません。しかしながら、私たちもラ・サールファミリーとして、「自分の置かれた恵まれた環境だけを見るのではなく、困難な状況にある人を見捨てずに何かできるようになってほしい」ということは、生徒たちによく伝えています。

困難な状況にある人に目を向け、手を差し伸べるための教育を実践

函館ラ・サール中学校・高等学校の授業風景

編集部

「困った人に手を差し伸べる」ということを実践できるような人になるために、何か具体的な活動を行っているのでしょうか?

小川先生

困難に直面した人たちから支援の依頼がくると、すぐに学校全体で対応をします。例えば、先日の能登半島地震のときにも、校内に募金箱を設置して、集まった募金をお送りしました。ただ募金を募るだけでなく、現地の人の様子がわかるような映像を流すなどして、生徒たちに考えさせるようにしています。

ラ・サール会の中でも助け合いの活動をしていて、トルコとシリアのラ・サール会の施設の近くで空爆があったときには、同じように募金を集めて支援しました。

こうした活動を通して、「何かあったらすぐ行動する」ということを保護者にも生徒にも伝えるようにしています。

菱井先生

また、世界中のさまざまな環境にいる人に目を向けるため、世界のラ・サール校の生徒との交流活動も行っています。

例えば、東アジアのラ・サール校とは、チームを組んで定期的にZoomで情報交換をしています。生徒も参加して英語でコミュニケーションを取りながら、自分たちができることを考えてもらいます。

参加する人数は限られますが、実際にタイやフィリピンのラ・サール校を訪れることもあります。貧困状態にある現地の子どもたちと一緒に生活をすることで、自分がどう感じるのか、何ができるのかということを考えるんです。

日本のラ・サール校は、世界の中でも裕福な地域にある学校です。もちろん日本にも苦しいことはたくさんありますが、「世界を見るともっと苦しんでいる子どもがたくさんいる」「それに対して何ができるかを考えなければならない立場にある」ということを、しっかりと伝えなければならないと思っています。

諦めない精神を大事にして、勉強や行事にも全力で取り組む

函館ラ・サール中学校・高等学校の雪中運動会の様子

▲生徒たちが全力で準備して挑む、学校名物の雪中運動会。そりレースや雪中綱引きなど、ここでしかできない体験が盛りだくさん。

編集部

ほかにも、先生方が生徒と日々接する中でよく伝えていることや大事にしている理念があれば教えてください。

小川先生

「表面的に何か困難な状況に陥っても、諦めずにチャンスを狙って粘り強く取り組む」ということですね。

創始者であるラ・サールが最初に学校をつくったとき、家族に反対され、仲間に裏切られ、1度は挫折して引きこもってしまったということがあったんです。ですが、仲間からの声で活動を再開して、諦めなかったからラ・サール校ができました。

諦めないということはラ・サールの教えの一つであると思っていますし、それを生徒にも伝えるようにしていますね。

編集部

日々の学校生活の中で「諦めない」ということを実践しているようなエピソードがあれば教えていただけますか?

菱井先生

勉強についていけない生徒にもとことん寄り添って二人三脚で進めていくなど、日常生活の中で実践し、生徒の背中を押すようにしています。

小川先生

行事でいうと、2月にやっている雪中運動会が良い事例かもしれません。

雪中運動会は、雪の中で綱引きや騎馬戦、そりを使ったリレーなどをおこなうという名物イベントなのですが、インフルエンザなどの感染症が流行していたり、雪が不足していたりすると開催できないため、中止になってしまうことも多いんです。

人間がコントロールできるようなことではないので最後の最後まで開催可否はわかりませんが、毎年、どんな状況であれ最後まで全力で準備しています。

結果としてダメになることもありますが、準備を頑張ったという事実は無駄ではありませんし、「自分の力ではどうしようもないところでこういう結果になることもある」というアンハッピーな体験をすることも、学校生活の中でとても大事なことだと思うんですよね。

編集部

トラブルから学んで次につなげるということと、もちろん条件が揃えば開催されますから、手を抜かずに準備しておくことが大事だということですね。今後の人生を生き抜くうえでもとても大事なマインドなのではないかと思います。

函館ラ・サールの、50人規模の大部屋で人間力を育む寮生活

函館ラ・サール中学校・高等学校の外観

▲学校全景。緑色の屋上があるあたりが寮の建物部分で、中学寮・高校寮に分かれている。

編集部

函館ラ・サール中学校・高等学校に通う生徒のうち、6割~7割くらいは寮生活を送っているとお聞きしていますが、寮にはどのような特徴があるのでしょうか?

小川先生

本校の寮は学校の敷地内にあって、そこで生活している生徒のおよそ半分が道外から来ています。非常に多様性のある環境が築かれているのが、大きな特徴だといえますね。

高校1年生からは4人部屋になるのですが、それまでは50~60人の大部屋で一緒に生活します。夜も、部屋に並べられている2段ベッドで全員一緒に寝ます。全国さまざまな場所から来た生徒が、同じ部屋で一緒に過ごしていますよ。

編集部

50人というのはすごいですね。他校だと2人部屋や個室になっているような寮が多いですよね。

小川先生

そうですね。ここまでの大部屋は、全国でわが校だけですね。自衛隊でも4人、鹿児島ラ・サールでも8人程度が通常なので、桁が違いますよね(笑)。

函館ラ・サール中学校・高等学校の寮生活の様子

函館ラ・サール中学校・高等学校の寮生活の様子

函館ラ・サール中学校・高等学校の寮生活の様子

函館ラ・サール中学校・高等学校の寮生活の様子

函館ラ・サール中学校・高等学校の寮生活の様子

函館ラ・サール中学校・高等学校の寮生活の様子

スクロールで寮生活の様子をご覧いただけます→

トラブルを乗り越えることで磨かれる対人能力

函館ラ・サール中学校・高等学校の文化祭の様子

▲団結力が生まれるから、学園祭などの行事も大盛り上がり。

編集部

多感な時期の生徒が一部屋に集まるとトラブルも起きそうな気もしますが、皆さんどのような様子で過ごしているのでしょうか?

小川先生

一言でいうと、しっちゃかめっちゃかですよ(笑)。叩かれた、引っかかれた、モノがなくなった、お菓子を食べられた、悪口を言われたといったトラブルが頻発します。

このような環境の中で、自分と他者の超えてはいけないライン、破ってはいけないルールというのを、集団で学習していくんです。「これはやったら駄目だよね」という共通理解を皆が持つようになったら、成功だと思っています。

菱井先生

本人たちにとってみれば本当に苦しいと思います。他者との衝突が日々起こるなかで、我慢しなければならないことがたくさん出てきますからね。時として感情が爆発してしまうことも、ないわけではありません。

もちろんそういうことになったら私たちは仲裁しますし、保護者にも連絡して必要なケアを行います。そんなことを繰り返しながら、自然と人との距離感を学び、対人能力を磨いていくんです。

編集部

小学校を卒業したばかりの子がそういう環境に飛び込むのは苦しい面も多いと思うのですが、その中で必然的に人との関わり方を学んでいくのですね。ちなみに、スマホが禁止されていると伺ったのですが、これにはどのような理由があるのでしょうか?

菱井先生

SNSなどで行われるようなコミュニケーションは短文のやりとりが中心で、気持ちを省略して伝えるような文化がありますよね。

小学生の頃からそういうコミュニケーションに慣れている子たちが寮に入ってくると、それが原因でトラブルが起きることも多いんです。物事が思うようにいかないと、「キモイ」とか「だるい」など、人を傷つけることを平気で言いますからね。

ですが、それではダメだと理解して、お互いがどうやったら楽しくいられるか考えられるようにならなくてはいけません。それが、スマホを禁止している大きな理由です。

スマホから離れてお互いに向き合うことで、徐々にしっかりとした内容で話すようになりますし、相手の表情や立場を考えて人と人とのコミュニケーションが取れるようになってきます。

編集部

生徒一人ひとりの成長により、徐々に全体の雰囲気も変わっていきますか?

菱井先生

中3くらいになるとまとまりができていき、高校生になったらもう人間関係が出来上がってきますよ。

学園祭ではクラスの企画に投票して順位をつけるのですが、高校1年生が優勝することが多いです。団結力の賜物ですね。高2になると外部の生徒が同じクラスに入ってきますし、高3になると受験モードが高まってくるので、高校1年生が最も団結力を発揮するんです。

編集部

最初から気の合う人だけではなく、そうではない人も含めて一緒に生活し、絆を深めていくという経験は、函館ラ・サールの寮生活だからこそ得られる貴重な経験だなと感じました。

小川先生

そうですね。高校3年生にもなると、何かあったときにトラブルを仲裁してくれるなど、私たちが多くを語らなくても阿吽の呼吸で対応してくれるようになるんですよ。6年間で本当に大きな成長を感じますね。

また、最近は家庭で兄弟のいざこざを経験したことがないひとりっ子の生徒も増えています。そういった経験をさせたいから、わが校を選んだというご家庭も多いんですよ。

卒業後の宝となる「タフさ」と「強固な友人関係」

函館ラ・サール中学校・高等学校の授業風景

編集部

これからの人生を送るうえでもとても貴重な経験かと思いますが、寮生活を終えて卒業した生徒からはどのような声が聞こえてきますか?

菱井先生

卒業してはじめて、自分たちが特殊な環境にいたということがわかるという声はよく聞きますね。「どこでも生きていける気がする」と言っていますよ。大学の教授などから、「ラ・サールの生徒はタフだ」と言われることもよくありますね。

先ほどの「諦めない」という話にもつながるかもしれませんが、この環境での生活を諦めるとなると寮から出るしかありませんからね。必然的に、他人を受け入れて「どうやったらこの環境で自分が心地よく過ごせるか」ということを考え続けるタフさが身につくんですよね。

小川先生

卒業してからも、「高校の友達が一番気が合うし深い話ができる」という声もよく聞きます。皆、卒業してからもずっとつながっていて、ずっと仲良くしているようですよ。

編集部

一緒にたくさんのことを乗り越えたからこそ、強い絆が生まれているのですよね。卒業してからもずっとつながっていられる友達ができるというのは、とても素晴らしいことですね。

文武両道を実践!団結力が部活動でも力を発揮

函館ラ・サール中学校・高等学校の遠足での記念撮影

編集部

函館ラ・サール中学校・高等学校では、花園出場経験があるラグビー部をはじめとして、部活動でも高い実績を残しています。学業と両立して結果を出すのは大変かと思いますが、そこにはどのような要因があるのでしょうか?

菱井先生

中高一貫校で寮もあるので、ラグビーのようなチームプレーの場合、メンバー同士が分かり合って連携できるというのは大きな強みかと思います。

勉強との両立に関しては、もともとしっかりと勉強もやりたいという意思を持った子たちが選んでくれているというのはあると思います。わが校にはスポーツ推薦枠はありませんし、入試を突破しないと入学できませんからね。

成績が悪いと大会に出られないという規定もあるので、部活によっては勉強会を開くなどして、勉強しながら練習していますよ。

編集部

一緒に生活しているから、メンバーのこともよくわかるし、チーム力が高まりそうですね。学業と両立するという姿勢も素晴らしいと思いました。

函館ラ・サール中学校・高等学校からのメッセージ

函館ラ・サール中学校・高等学校の校舎

編集部

最後に、この記事を読んで函館ラ・サール中学校・高等学校に興味を持たれた方にメッセージをお願いします。

菱井先生

わが校には、中学1年生から親元を離れて寮から学校に通っている生徒がたくさんいます。

中学1年生から大部屋生活を始めるというのは生徒にとっても保護者の方にとっても勇気が必要な決断だとは思いますが、6年間で本当に大きな成長が見られると思いますので、ぜひその先にある未来を大事にしてこの寮に入っていただきたいなと思いますね。

物理的には家族の距離が離れますが、お互いへの想いが湧いて絆が生まれますし、「子どもが優しくなった」という声をいただくことも多いんですよ。生徒から家族に手紙を書く「文の日」という取り組みがあるのですが、手紙をいつまでも大切に保管しているという親御さんも多いようです。

小川先生

函館ラ・サール中学校・高等学校にはいろいろなタイプの生徒がいますが、それぞれが自分の夢に向かって努力できる学校です。

いい大学を出て働くということももちろん素晴らしいことですが、人によってはそうではないですから、6年間の濃密な学校生活の中で自分の道を見つけてほしいと思いますし、私たち教師もそれを全力で支援します。

過去、私が教えた生徒の中で特に印象に残っている子が2人いるのですが、1人は、美容師を目指して専門学校に進みました。「パリで活躍する美容師になりたい」という彼の夢にしびれて全力で応援したいと思った私は、親御さんを説得して専門学校の推薦書を書きました。

もう1人は、大学に行かずに役者になりました。その子の両親も役者なのですが、彼は最初からその道に決めていたわけではなく、6年間考えに考えて最終的に役者の道を選択しました。「親の力は使わないで下積みから始める」という強い心を持って巣立っていき、少しずつ活躍の場を広げているようです。

このように、さまざまな未来の選択肢を考え、選んで、羽ばたいていける学校だと思いますので、興味を持たれた方はぜひ、函館ラ・サール中学校・高等学校で濃密な学生生活を送っていただければと思います。

編集部

インタビューを通して、函館ラ・サール中学校・高等学校には、学力だけではなく人間力を高められるような唯一無二の環境があると感じましたし、とても濃密な6年間が送れるということがよくわかりました。

本日は、たくさんの貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

函館ラ・サール中学校・高等学校の進学実績

函館ラ・サール中学校・高等学校の図書室の様子

北海道屈指の進学校である函館ラ・サール中学校・高等学校では、ほとんどの生徒が難関校を含めた道内・道外の4年生大学に進学しています。

2023年度の進学状況を見ると、北海道大学、京都大学、東京工業大学などの有名国立大学の合格者を複数輩出。また、早稲田大学、慶応大学、上智大学、東京理科大学をはじめとする難関私立大学にも、例年安定的に合格者を輩出しています。また、国公立・私立ともに、医学部医学科に合格し進学する生徒も多いです。

また、2021年からは「特進コース」が新設されているため、東大・京大・医学部などを目指し、結果を残していく生徒は今後も増えていくと予想されます。

■進路実績(函館ラ・サール中学校・高等学校公式サイト)

https://www.h-lasalle.ed.jp/shs/about/univ/

函館ラ・サール中学校・高等学校の口コミ

函館ラ・サール中学校・高等学校の芸術鑑賞会の様子

▲芸術鑑賞会のようす。校内のみならず校外での体験も充実している。

ここでは、函館ラ・サール中学校・高等学校の保護者の声をご紹介します。

寮生活は子どもにとって大きな成長の機会になっている。寮の先生・寮母さんもひとりひとりの様子をしっかり見てくれて、面倒を見てくれている。

文武両道を実践していて、スポーツにも熱心に取り組んでいる。

体育大会や合唱コンクールなどの行事も盛んで、クラスごとに団結して取り組む姿勢が素晴らしい。

授業以外でも定期的に補習を行うなど、生徒のレベルに合わせた学習指導が行われている。

学力向上だけでなく、人格形成の面でも満足しているという保護者が多いようです。特に寮生活を送る学生の保護者からは「他の学校にはない成長の機会がある」という声が多くあがっていました。

函館ラ・サール中学校・高等学校へのお問い合わせ

運営 函館ラ・サール学園
住所 北海道函館市日吉町1-12-1
電話番号 0138-52-0365
公式ページ https://www.h-lasalle.ed.jp/

※詳しくは公式ページでご確認ください