ぽてんをご覧の皆様に、注目の学校をご紹介する本企画。今回ご紹介するのは、群馬県太田市にある私立の「ぐんま国際アカデミー初等部」です。
国際人の育成を主軸とし、ほとんどの教科を英語で教える「英語イマージョン教育」を実践しているぐんま国際アカデミー初等部。語学力の向上にとどまらず、英語での授業を通して、社会を見つめたり、探究心を育んだりするカリキュラムも充実しています。
この記事で紹介する初等部(小学校に相当)に加え、中学校、高等学校に当たる中高等部があり、小中高12年の一貫教育を実現しています。
今回は国語科主任の山根先生に建学の精神や、授業の様子、特色ある教育カリキュラムなどについて、お話を伺いました。
この記事の目次
リーダーたる国際人を育成する。ぐんま国際アカデミー初等部の教育理念
まず、ぐんま国際アカデミー初等部の沿革や教育理念、校訓について、お聞かせいただけますか。
本校は2005年に創立されました。旗を振ったのは、群馬県太田市長で、現在は本校の理事長も務める清水聖義です。地方都市ながら北関東随一の工業都市であり、海外に進出企業も多い太田市に、英語教育が充実した学校を作りたいという発想から出発しました。
2002年に国による構造改革の柱としての特区構想が持ち上がった後、太田市は英語教育特区として、英語で様々な授業を学んで日常的に英語に浸る(=イマージョン)教育を施す「英語イマージョン校」の私学校設立について2003年に申請を行いました。その結果、構造特区の第1号として認定を受け、創立が決まったのです。
非常に変化が激しい時代にあって、激動の国際社会に柔軟に対応し、リーダーとして活躍できる能力、そして知識を備えた国際人を育成するというのが、一番大きな教育理念になっています。日本人としてのアイデンティティーを確立するとともに、世界の多様な異文化を理解することにも力を注ぎ、世界のあらゆる分野で活躍できる人材の育成を目指しています。
そしてその教育理念を実現させるためにとっている手法が、英語イマージョン教育です。ある言語の中にどっぷりと子どもたちを浸していくなかで、高い言語能力の習得はもちろんですが、知識や技術の習得につなげていくことを狙いにしています。
校訓としては三つの言葉を掲げています。まずは知性を指す「Knowledge」、創造の「Creativity」、最後に、品格を指す「Dignity」です。
これは、日本人として、国際人としての品格を身に付けていくということを示しています。子どもたちに思い切った、自由な発想を持ってもらいたいと、そういった思いを込めて、この三つの言葉を掲げています。
「12年間」を通して取り組むぐんま国際アカデミーの英語教育
ここでは、ぐんま国際アカデミー初等部の大きな強みである英語学習について、詳細をうかがいました。
初等部6年間で5,000時間を超える英語の授業
ぐんま国際アカデミー初等部のカリキュラムの特徴について、ご説明いただけますでしょうか。
本校は初等部、中等部、高等部と1年生から12年生までの一貫校になっていますが、12年を通して英語イマージョン教育を実践しています。
初等部では、国語、社会科、家庭科を除く全体の約7割にあたる教科において、全て英語で指導をしています。英語で行われる授業は初等部の6年間で5,000時間を超える規模です。英語力の基礎を培うのはもちろんですが、探究学習にも取り組み、中等部、高等部につなげていくのが初等部の役割です。
中高等部は、国際バカロレア機構が提供する、「国際バカロレア教育」(IB)の認定校になっており、国際的な教育プログラムで本格的に英語を学びます。バイリンガル、多様な文化からなる環境の中で、英語を介して物事を客観的に捉え、思考し、判断する力を養っていきます。本校が目指す、人種、国籍、世界観の違いにとらわれない真の国際人を養成するべく、その手助けをします。
中等部では、11歳から16歳を対象としたMYP(Middle Years Programme)と呼ばれる、概念や探究に基づいた基礎学習を行います。高等部では、バカロレアの卒業資格、認定資格がもらえるディプロマ・プログラムを行っています。
これは、16歳~19歳までが対象で、所定のカリキュラムを2年間履修し、最終試験を経て所定の成績を収めると、国際的に認められる大学入学資格(国際バカロレア資格)が取得できるというものです。最終的にはこちらの修了を目指し、12年間一貫で英語教育を行って、高い英語力と語学力と思考力を身につけさせていくというプログラムになっています。
外国人の先生が常に指導に関わる「英語イマージョン教育」とは
▲授業だけではなく、学校生活のさまざまな機会でネイティブの先生とコミュニケーションをとる
英語イマージョン教育について、初等部の様子を具体的にお教えいただけますか。
初等部1年生においては、幼稚園、保育園を出たばかりの子どもたちですので、言葉に関しても、生活についても、まさに一からのスタートとなります。
例えば言葉については、身近な生活に必要な英語を身につけるところから始めていきます。教員の体制としては、1クラスおよそ30人前後ですが、その一つのクラスに、英語を主に教える外国人担任と、日本人担任の2人を置いています。外国人担任の英語ネイティブ教師は母国での教育免許を持っており、指導経験が豊富な人ばかりです。
ここで非常に重要なのが、外国人の先生が、ただ英語を教えるだけではなく、担任として一緒に児童と生活をしていく、つまり児童たちの指導に常に関わっていくということです。この部分が、一般的なALT(外国語指導助手)の先生とは全く異なっている点です。
外国人の先生と休み時間に一緒に鬼ごっこやドッジボールで遊んだり、給食では配膳したりと、様々な時間を一緒に過ごします。さらに、朝と帰りのホームルームの時間や委員会活動も英語でやりとりしますし、校内放送も、最初にまず英語で放送し、必要に応じて日本語を補足します。初等部では、子どもたちが、英語が当たり前の環境に徐々に慣れていく場であるともいえます。
初等部に入学した時点で、児童間でそもそも英語力に差がある状況なのでしょうか。
もちろん、個人差はあります。例えば、イマージョン教育を行う幼稚園を卒園した児童もいますし、100%日本語の環境で過ごして入学してくる児童もいます。入学時点では英語で指示されたときに、周りを見ながらでもよいので、指示の通りに動けるようになっていると、学校生活にスムーズに馴染めるでしょう。
なお本校は、幼稚園、保育園の放課後に週1、2回参加いただけるプレスクールを群馬、東京に設けています。外国人の講師と英語だけでやり取りをするイマージョン環境の中で、初等部学校生活で必要な言語、マナーを身につけます。一般的な幼児英語教室とは異なり、英語だけで歌を歌ったり、ゲームや工作をしたりしながら、自然に語彙力を育て、言葉を身につけるカリキュラムを実践しています。
本校への入学を検討いただけるのでしたら、プレスクールでも実践しているような、先生の簡単な挨拶や指示が理解できれば問題ないと思います。
加えて、学習のサポート体制も充実させています。放課後に、補習時間(全学年)や自習時間(主に高学年)を設け、少人数グループやマンツーマンでのきめ細かい指導を行っています。また、Google Classroomを各教科で活用し、教室以外の場所や家庭でも、児童が自主的に学習を進められる環境を整えています。
毎日話すことでどんどん英語に慣れていく子どもたち
日本語の環境で過ごしていた子どもたちが、どのように英語に慣れていくのでしょうか。実例を交えてご紹介いただけますでしょうか。
日々の積み重ねで少しずつ言葉の力がついてくると考えています。2023年度の1年生を見ておりますと、最初は先生が言うことが全然わからず、不安そうな子はもちろんいました。
それでも、例えば「今日の天気はどんな天気?」「今日の日付は?」などの基本的な会話を繰り返していくと、1年生の折り返しくらいには先生の話が何となくわかり、不安を感じずに過ごせるという状況になっていますね。
授業では英語を使いますが、子ども同士のやりとりについては、日本語・英語のどちらを使うのでしょうか。
どの言葉を使うのかは、子どもたちに委ねています。子どもたちに選択する力を身につけてもらいたい、という思いからです。例えば、日本語がわからない相手に対しては、もちろん英語で話していかなければなりませんし、友達同士で、意思疎通は日本語の方がしやすいのであれば日本語で構いません。
一方で、授業や委員会活動などは、英語での活動時間です。教員が中心になって励ましながら、英語で話すことを促しています。
教科を横断するぐんま国際アカデミー初等部の多彩な授業
▲理科の授業の様子。多くの授業が英語を使って行われる。
普段の授業の特色について、ご紹介いただけますか。
本校では、探究的なプログラムを普段の授業に多く取り入れているのが大きな特徴だと思います。また、一つの教科にこだわらず、教科間のコラボレーションも盛んに行われています。
5年生の理科の授業の事例をご紹介します。ネイティブの教員の指導で、天気について学んでいた時のことですが、例えば「台風がどうやって起こるのか」「どんな被害が起こるのか」などを学んだ場合、本校ではその知識をテストで確認して終わりではありません。
理科の知識はもちろん、理科で使う英語を学び、さらにICT(情報通信技術)の活用も掛け合わせて、自分たちで台風に関するニュース動画を制作するというプロジェクトを行います。番組で使う台風の写真や動画をインターネットから探してきて、自分で英語による解説やナレーションをつけるなどして、最後は校内で発表します。
こうしたプロジェクトは一例ですが、なるべく一つの教科にとどまらず、学んだ知識がさらに生きたものになるような授業を組み立てるようにしています。子どもたちがしっかりと考え、発信して、様々なスキルや自身につながるような授業を心がけています。
国語の授業に力を入れ、児童・生徒の論理的思考力を伸ばしていく
山根先生がご担当の国語は英語を使わない科目の一つです。どのような取り組みをしているか教えてください。
インターナショナルスクールとの大きな違いとして、本校では、自国の言語を知る国語教育は非常に重要だと考えています。初等部の国語の授業時間は6年間で1,512時間ですが、国が定める国語の標準授業時数(1,377時間)よりも、135時間多く確保しています。
本校は、語学力の習得だけではなく、高度な思考力の習得も目標に掲げており、母語が確立していない状態で、外国語での高度な論理的思考を行うことは困難です。そのため、イマージョン教育では国語(母語)の指導を重要視し、授業で1年生から百人一首に親しんだり、自分の考えを述べる課題作文活動に力を入れたりしています。
授業の一例をご紹介すると、2023年度の1年生の国語の授業で「うみのかくれんぼ」という説明的文章を読みました。ハマグリと、タコと、カニの仲間であるモクズショイという、海の生き物がどうやって自分の姿を敵から隠すのかということに触れた内容です。
先ほどご紹介した5年生の学習と同様に、読んで終わりではなく、子どもたちには自分が調べたい海の生き物を本から探して、1枚のシートに特徴をまとめてもらいました。さらに、図工の教員と連携して、その調べた生き物が隠れる様子を、図画工作で表現するという発展学習も行いました。
▲国語と図工の授業を連携して実施。
自分が調べた思い入れのある生き物を、さらに図工で表現するというところが、子どもたちにとっては印象深かったようです。自分で調べたものだから上手に作りたいとか、自分で調べたものだからこんな工夫をしたいというように、非常に積極的に取り組んでいました。
また、保護者の方に褒められて「次はこの生き物について調べてみたい」とさらにモチベーションが上がったり、友達の作品の工夫を見てすごいと感じたり、探究学習の良さが表れた例でした。校訓にある、知性と創造とがうまく結びついた例だったと感じています。
自叙伝やニュース番組を制作し、自らの言葉で伝える学習発表会
▲年に1回、児童が様々なテーマでプレゼンテーションする学習発表会。児童は長い時間をかけて念入りに発表準備をする。
そのほかに、学習面で特徴的な取り組みがあれば、ご紹介いただけますか。
年間の主要イベントの一つが、3月に開催する学習発表会です。児童1人あたり、1日で、英語での発表を1本、日本語での発表を1本、音楽の発表を1本します。年度ごとにテーマなどは変わりますが、その学年の集大成を披露する場となっています。毎年、様々な発表があるため、保護者の皆様が大変楽しみにしています。
印象的だったものを挙げると、ある年の6年生が英語で自叙伝を書いて発表したことが思い浮かびますね。自分が生まれてから、今に至るまでの12年間の歩みを振り返って、発表し、皆が興味深く聞き入っていました。
2023年度の5年生は、社会と国語の融合で、社会科で学んだ農業や水産業、SDGsの取り組みなどから、深掘りしたいトピックを考えて、ニュース番組形式の発表をしました。司会者を立てたり、専門家のコメンテーターの役をする人を置いたりと役割を決めて、グループ発表をしました。
時間的な制約とともに、発表は1人3本ありますので、児童にとっては非常にハードだと思います。ただ、学習発表会に向けての1か月は、教員のサポートを受けながら、皆、集中して準備に取り組み、毎年しっかりと全員が発表しています。
本校は開校以来「自分の言葉で伝える」ということを非常に大切にしていまして、児童は当日、原稿を見ないで話します。何度も練習し、本番の成功につなげる。発表会の存在は、準備期間も含めて、子どもたちが大きく成長する重要な機会になります。
ぐんま国際アカデミー初等部からのメッセージ
▲インタビューに応じてくださった国語科の山根先生
それでは、ぐんま国際アカデミー初等部に関心をお持ちの方へ、メッセージをお願いします。
語学教育が、本校の一番の強みであることは、読者の皆様にもお分かりいただけたかと思いますが、もう一つ言えば、教室にいながらにして異文化に触れられる点も非常に大きいと考えています。
本校の外国人教員は、9カ国から来ています。日本人教員も様々な海外経験を積んでいる教員が非常に多く、いろいろな価値観を学べる、非常に素晴らしい環境の整った学校だと思います。
ユニークな環境の整った学校ですので、将来、世界を舞台に活躍したいと思っている皆さんは、ぜひ本校を検討していただければうれしく思います。
本日はインタビューのお時間をいただき、ありがとうございました。
ぐんま国際アカデミーの進学実績
ぐんま国際アカデミーの中高等部は、例年様々な大学への合格実績を出しています。国際バカロレア機構が提供する、国際的な教育プログラムである「国際バカロレア教育」(IB)の認定校であることから、IBのスコアを参考にする選考で合格する人も目立ちます。
2024年度の実績を見ると、国公立では北海道大学や名古屋大学、東京外国語大学などに合格者を輩出しました。また私立は、早稲田大学や上智大学、国際基督教大学などの難関大学に合格しています。米国や欧州を中心に、海外大学の実績も多く、例年学年の1〜2割程度の生徒が海外大学へ進学しています。
■ぐんま国際アカデミーの進学実績(公式サイト)
https://www.gka.ed.jp/support/result/
ぐんま国際アカデミー初等部の保護者の口コミ
▲ハロウィンイベントを楽しむ児童たち
口コミでは、ぐんま国際アカデミー初等部の最大の特徴である、語学力を伸ばすカリキュラムが充実している点について、高い評価が寄せられていました。また、多くのネイティブの先生を擁し、12年間の小中高一貫教育を通して、英語イマージョン教育を実施している点にも関心が高いようです。
ぐんま国際アカデミー初等部へのお問い合わせ
運営 | 学校法人 太田国際学園 |
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住所 | 群馬県太田市西本町69-1 |
電話番号 | 0276-33-7711 |
問い合わせ先 | https://www.gka.ed.jp/contact/ |
公式ページ | https://www.gka.ed.jp/ |
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