この記事では、特色ある教育に取り組む注目の学校として、宮城県仙台市にある共学の国立中学校「宮城教育大学附属中学校」をご紹介します。
主体的に考え、行動する力を重視する同校は、生徒が地域の人たちと交流しながら「よりよい生き方」を考える探究学習や、学校での学びを将来につなげるための「キャリア教育」に積極的に取り組んでいます。
今回は、そんな宮城教育大学附属中学校の教育の魅力について、研究主任の草刈先生とキャリア教育担当の佐久間先生に詳しくお話を伺いました!
この記事の目次
「自主・協同・明朗」を重んじる宮城教育大学附属中学校
▲4月に行われるスポーツ大会。縦割りのチームで朗らかに競い合っている。
まず、宮城教育大学附属中学校の教育目標や校訓について詳しくお話しいただけますでしょうか?
本校の教育目標は「自ら考え行動し、共に学び合い、高め合う生徒の育成」です。この目標のもと、生徒たちが自主的に問題に取り組み、他者と協力し合いながら学ぶことで、共に成長していく姿勢を育んでいます。
また、校是として「自主・協同・明朗」の3つを設定しています。「自主」は自ら目標を持ち学習や行事に進んで取り組むこと、「協同」はお互いのよさを認め、学び合い、高め合うこと、「明朗」は明るく思いやりに満ち、心豊かに生活することで、どれも生徒が将来にわたって社会で活躍するために必要な資質だと考えています。
教育目標や校是を実現するために、普段の教育においてどのような取り組みをされていますか?
生徒が日々の学校生活を通じてこれらの目標を達成できるようなさまざまなプログラムを実施しています。
生徒が自らの「生き方」を主体的に考えることを目的とした探究学習や、将来の目標を明確に持ち、具体的な行動を起こすためのキャリア教育などが挙げられます。
「よりよい生き方」を考える宮城教育大学附属中学校の探究学習
ここからは、先ほど草刈先生からご紹介のあった探究学習について詳しく伺っていきます。まず、その特徴についてお話いただけますか?
本校は今年度から「よりよい生き方を探究する生徒の育成」という研究テーマで探究的な学習に取り組んでいます。
探究学習は今教育界で注目されているキーワードの1つですが、私たちは一般的な探究学習の枠にとらわれず、学校独自のプログラムづくりを行っています。研究テーマを設定する際も世の中が求める教育の型にただ当てはめるのではなく、生徒や教員、保護者が理想とする学校生活や未来を主軸にしました。
教員に対しては会議を通じて意見を吸い上げ、生徒に対しては生徒会役員と座談会を開き学校生活に望むことや感じている課題などを話してもらいました。保護者からもアンケートを通じて「子どもたちにどのような学校生活を送ってほしいか」を聞き、これらの共通項をまとめた結果、「よりよい生き方を探究する生徒の育成」という研究テーマになりました。
2年生は山形の人たちと交流し「かっこいい生き方」を考える
探究学習の具体的な内容についてもご紹介いただけますか?
どのプログラムにおいても「試行錯誤・没頭する経験」をキーワードにしているのですが、代表的なものとして2年生が体験する山形県鶴岡市での調査研究を紹介します。
このプログラムでは「かっこいい生き方」をテーマにし、地域の方々との交流を通じて「かっこよさ」やかっこいい生き方について深く考えます。
地元の方と一緒にどのような活動を行うのでしょうか?
地元の方々のお仕事を見学したり、一緒に体験したりします。ポイントは、ただの職業体験ではなく、その仕事をする人たちの生き方に着目し、それを通じて自分の「よりよい生き方」を考えるところにあります。
具体的に挙げると、養殖関連のお仕事をしている方や、土砂崩れなどの自然災害が起きないように山の管理に従事する方、伝統産業「しな織」の文化を継承するために若い人にも使ってもらえるような商品を作ってインターネットで販売する人などさまざまです。
高齢化や過疎化が進む地域なので、高齢者が買い物をする場所に困らないように利益度外視でスーパーを作った人たちもいました。そのスーパーは都市部のお店とは異なり、ただ買い物をする場所ではなく、お客さんが人との関わりを得られる場所にもなっており、生徒たちは「人とのつながり」の大切さも学んだようです。
▲林業体験での一コマ
活動を通じて、生徒さんにはどのような発見や学びがありますか?
ある生徒は、養殖業に真剣に向き合い自分の休みを削って本気で仕事をしている姿を見て、「何かに全力で取り組んでいる人はとてもかっこいい」と感じたそうです。そして、自分自身の生き方を振り返って「自分は結局中途半端で終わってしまうことがある。あの人のように全力で取り組むかっこいい大人になりたい」と話していました。
また、子どもたちは当初、「かっこいい生き方」というと、世間から注目を浴びるような有名な人をイメージしていました。しかし、地域の方々と交流する中で、自分の仕事や生活に誇りを持ち、自分らしく生きている姿を見ることでかっこよさの定義が広がりました。
この活動があったからこそ、「かっこいい生き方」は多様であることを理解し、自分らしいかっこいい生き方を探そうとする姿勢が生まれたのですね。
その通りです。それから、山形への調査研究ではもうひとつエピソードがあります。地元の方々との交流の前日に山形の山寺を訪問したのですが、この際、実行委員の生徒が山寺での過ごし方を企画しました。
山寺を数回往復して景観を楽しむプランを体力自慢の生徒向けに考えたり、山寺で感じたことを川柳にする企画、ほかにも山寺のフォトコンテストやイラストコンテストなど、生徒主導でさまざまな企画を用意しました。
体力も趣味も異なる生徒たちに楽しんでもらうにはどうしたら良いかを実行委員が考え、自主的に土日を使って山形に下見に行った生徒もいたくらいです。既存の枠にとらわれないからこそ、みんなが楽しめる企画になったのだと思います。
自ら下見にまで行ってしまうとは、とても自主性を感じられるエピソードですね。
プレゼンのために雑誌編集者からインタビュースキルを学ぶ
調査研究での学びを発表する場はありますか?
はい。グループごとにプレゼンテーション形式で行う発表会があります。保護者の方々にも授業参観の一環として参加していただくほか、2年生は山形県鶴岡市でお世話になった方々も何名か発表を見に来ていただいています。
また、これからの時代は発表スキルも大切なので、プレゼンに向けては雑誌づくりをしている方からインタビュースキルを学ぶ機会を設けています。また、「問い作り」についても、どのように主語や修飾語を使って効果的な問いを作るかを学ぶために、外部の講師を招いて指導を受けます。そのおかげもあって、学年が上がるごとにプレゼンスキルも上がっていきます。
生徒さんの発表をご覧になっていかがですか?
発表する子どもたちからは「自分たちが学んだことをみんなに知ってほしい」という意欲が感じられます。等身大で、自分の言葉で語る様子はとても生き生きとしていますし、発表の場にいる大人も学ぶことが多いと感じます。
保護者の方々からは、「子どもがどんな人と出会い、何を学んだのかを、自分もその場に行ったような感覚で聞けた」という感想を多くいただきました。
1年生から3年生までに段階を踏んだプログラムを実施している
▲長野県茅野市での探究学習のようす。長野県の笹原地区の人からまちづくりについて話を聞いた。
先ほどは中学2年生の探究学習についてお話しいただきましたが、その他の学年はいかがでしょうか?
まず1年生は、2024年度から「すごいを見つける」という探究学習を行っています。この取り組みでは、生徒たちに「すごいとは何か?」を考えさせ、自分たちでその「すごい」を見つけ出す力を育てます。
最初に、NHKの過去の番組に登場した職人さんの動画を見せて、「この人のどこがすごいのか?」を生徒たちに考えさせ、意見を出し合います。夏休みには、NHK地域づくりアーカイブスの中から、生徒それぞれが選んだ「すごい」と思う人物や場面を見つけ、休み明けにそれを発表します。
2024年度の後半には、もっと身近な「すごい人」に目を向けてもらうために、保護者の方々のお仕事の話を聞いて「すごい」を発見する取り組みも行う予定です。
3年生の探究学習についてもご紹介いただけますか?
3年生は、長野県茅野市への調査研究があります。地域の方々と関わって生き方を考える点においては2年生の活動と大きく変わりませんが、3年生になるとそれに加えて「社会との繋がり」をより意識するようになります。
つまり、「かっこいい生き方って何だろう?」というのが2年生の問いだとしたら、「その生き方を目指していくことで社会はどう変わっていくんだろう?」という問いまで踏み込むのが3年生です。
まずは1年生で「すごい」を見つけるところからスタートし、2年生、3年生の「生き方」を考えるプログラムへと進化していくのですね。ここまでお話を伺い、宮城教育大学附属中学校では工夫し考え抜かれた探究プログラムを行っていると感じました。
教員は人事異動で変わりますが、人が変わっても探究の目的を見失うことがないよう、調査研究で訪れる場所を数年ごとに変えるようにしています。
訪問先を変えるタイミングで、教員は改めて探究を通じて何を目指すのかを原点に立ち返って話し、それを実現するために訪れる場所として最適なのはどこかを考えます。
このようにして、これからもその時々に最もふさわしい探究プログラムを考えていきたいです。
学びを将来に繋げる!宮城教育大学附属中学校のキャリア教育
宮城教育大学附属中学校は2024年度からキャリア教育にも力を入れて取り組んでいると伺いました。
はい。以前、生徒にアンケートで「今の学びが将来に繋がっているか」と聞いたところ、9割以上の生徒が「はい」と答えました。しかし、具体的に将来のキャリアにどのように結びつくのかを答えられた生徒はほとんどいませんでした。
この結果を受け、キャリアの視点を持ちながら学校生活を送るための体系的・系統的な取り組みが必要だと感じ、本格的にキャリア教育を始めることになりました。
実際にはどのようなキャリア教育に取り組んでいるのでしょうか?
「何を学び、どう生かすのか」というテーマのもと、様々な場面でキャリア教育を進めています。
まずは教員のキャリア教育の意識を高めることが必要だろうと考え、2024年4月には、文部科学省の調査官をお招きし、職員研修を実施しました。
また、「何を学びどう生かすのか」をテーマに各学年で学級活動を行っているほか、生徒たちは「キャリアパスポート」を活用しています。過去・現在・未来を見通し、自らの歩みを記録することで、キャリアの視点を養っています。
さらに、学校の玄関には、生徒たちの活動や行事の様子を映像や写真で振り返ることができるスペース「キャリアブース」を作りました。
活動が終わるたびに更新されるこのブースには多くの生徒が集まり、友人や他学年の生徒の一生懸命な姿を見ながら自分を振り返ったり、周りの頑張りに触発されたりするきっかけになっています。
宮城教育大学附属中学校は道徳授業に工夫を凝らし、心を育てる
▲道徳の授業に力を入れる宮城教育大学附属中学校。いじめをテーマにした授業では、ほかの教員も見学に集まった。
宮城教育大学附属中学校の、感性や心を磨く教育についてもご紹介いただけますか?
本校では、感性や心の発育を意識した道徳教育を行っています。授業は従来の静かな雰囲気で決まりきった答えを求めるような授業スタイルではなく、読み物教材に加え、自作の教材や動画コンテンツも使用します。
また、「どうせこれが答えでしょ」といった思考にとどまらないように、教員は発問を工夫しています。「うっ」と考え込んだり「うーん」と悩んだりしながら考えを深め、友達と意見を交わし合いながら学ぶ場面が多く見られます。
道徳の授業で草刈先生の印象に残った内容はありますか?
「いじめを許さない心」をテーマにした授業では、いじめを許さない心の定義についてみんなで考えました。
その中で、いじめを止めようと動くことも大切だけれど、自分には止める勇気がない、けれど、いじめに関する教材を読んで胸が苦しくなったりモヤモヤとした感情を抱くことも「いじめを許さない心」の一部だと考えた生徒もいて、その深い考察に大人も驚かされました。
また、教員の熱心な姿勢にも圧倒されます。道徳の授業後に担任の先生たちが集まり、お互いの授業内容を共有する場面があります。「うちのクラスではこんな意見が出た」などと紹介し合っているんです。
教員の創意工夫のおかげもあり、子どもたちは道徳の授業に対して前向きな姿勢で臨み、「将来の自分に生かす学び」と捉えてくれているようです。
そのような教育を通じて、生徒さんの心が成長したと感じるエピソードがあれば教えてください。
私が顧問を務める女子バスケットボールサークルでは最近、引退する3年生のお別れ会を開いたのですが、その場で3年生からサプライズがありました。生徒たちは、幼少期の写真を集めた自作のスライドショーを親に見せ、それぞれの親に感謝の手紙を読むという心温まる企画を実施したんです。
保護者の皆さんは涙を流しながら感謝の言葉を聞いていました。生徒たちが「こうありたい」という理想に向って、仲間と切磋琢磨して身につけた力なのだと思います。
自分の気持ちを素直に伝えることができる人へと成長したことがわかる、とても心温まるエピソードですね。
宮城教育大学附属中学校からのメッセージ
▲今回ぽてんのインタビューをお受けいただいた草刈先生(右)と佐久間先生(左)
最後に、記事をご覧の保護者の方や子どもさんにメッセージをお願いします。
本校は教員一同「チーム附属」として、生徒にどう学ばせ、どう生きていってもらいたいかを全力で考えて実行しています。
ぜひ宮城教育大学附属中学校に来て一緒に学んでいけたらと思います。
宮城教育大学附属中学校では、教師と生徒と保護者の三者がチームとなり、自分たちの理想とする学校や育ってほしいお子さんの姿を共有しながら、その実現に向かって良い教育を行っていきたいと考えています。
ご興味をお持ちいただけましたら、お気軽にお問い合わせください。
本日は、ありがとうございました。
宮城教育大学附属中学校の保護者・卒業生の声
最後に、宮城教育大学附属中学校の卒業生や保護者の声を紹介します。
口コミでは、生徒の自主性を重視する点や、質の高い熱心な指導を高く評価する声が多く見られました。
宮城教育大学附属中学校へのお問い合わせ
運営 | 国立大学法人宮城教育大学 |
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