独創性溢れる校風や特色ある教育プログラムで注目される学校を紹介する本企画。今回は、静岡県藤枝市に位置する私立の中高一貫女子校「藤枝順心中学校・高等学校」の魅力をお届けします。
110年以上の歴史を持つ伝統校である藤枝順心中学校・高等学校。そんな同校では礼法教育やDX教育に力を入れており、気品、教養、豊かな感性を持ち、自覚を持って行動できる女性の育成を目指しています。授業以外の生徒の活躍も目覚ましく、なかでもサッカー部や柔道部は全国でも指折りの戦績で名を馳せている部活動です。
今回は藤枝順心中学校・高等学校の戸田校長先生、DX担当の佐藤先生に同校の魅力や教育の特色について詳しくお話を伺いました。
この記事の目次
藤枝順心中学校・高等学校の教育目標は「清楚・芳香・忍耐」
まずは藤枝順心中学校・高等学校の建学の精神や教育に対する想いについて教えてください。
本校は白梅をシンボルとしています。梅は、寒い冬を耐えて春一番に花を咲かせます。香りは人の心を和ませ、実は人の糧となり、枯れたら香木になる。そんな梅のように我慢強い女性を育てたい、という想いで教育にあたっております。
昨今、忍耐や我慢といった言葉は避けられがちですが、これなくして人生はありません。
教育目標についてはいかがでしょうか。
本校が掲げる教育目標は、「清楚」「芳香」「忍耐」です。清らかで控えめな中に、けじめある態度と美しい気品を備え、匂うような高い格調と知的な教養、豊かな感性を兼ね備えた生徒を育てます。さらにルールを守ることに誇りを持ち、自身を律し、意志を持ち実践できることを大切にしています。
私たちが育てるのは真面目な生徒です。これらは一朝一夕では身に付きませんが、小さなルールを守ることから始めて、世の中・人生を甘く見ないことの重要さを学校にいる間に気付かせ、自分で自分を育てていくという流れを大切にしています。本人の「自覚」を重視し、我々教師は主体的な実践を通して自己形成ができるよう指導しています。
気品溢れる女性を育てる「藤枝順心中学校・高等学校」の礼法教育
藤枝順心中学校・高等学校の教育目標はカリキュラムに色濃く反映されており、その代表的な例が礼法教育です。ここからは、同校ならではの気品溢れる女性を育てる授業を紹介します。
社会に出たときの立ち居振る舞いを学べる「礼法授業」
▲礼法授業でマナーを学ぶ生徒たち
御校ならではの珍しい授業として礼法授業が脚光を浴びていますが、どのような内容でしょうか?
礼法授業とは、世の中に出たときに恥をかかないよう、きちんとした心得を育てる授業です。立ち居振る舞いについて学べる「礼法」という教科書に沿って、週に1時間、3年間に渡り、例えばお茶の出し方や贈り物をお渡しするときの手の添え方、上座・下座への意識などを細かく学びます。
1年から3年までカリキュラムが決まっており、初めは挨拶から入ります。相手を立て、話をよく聞いてから自分の意見を述べるといったように、人との関わり方の基本をきっちりと教えているのがポイントです。中学から本校に入学している生徒は6年間授業を受けますよ。
生徒からは礼法授業についてどのような反響が寄せられていますか?
卒業生からの反響が多いですね。「在学中は厳しく感じたけれども、人の話を黙って聞けるだけで評価されます」と。大人にも子どもにも共通しますが、人の話を聞けない人が増えている、という現状の現れでもありますね。
ですから、些細に感じることかもしれませんが一事が万事です。本校ではこうした礼法一つひとつを身に付けて、素敵なお嬢さんになって卒業してもらいます。“礼”は相手への敬意ですが、自分自身に対する敬意でもあります。礼法の教科書は、社会に出てからも大事に扱われるケースが多いようです。
毎回の感想文から成長を実感できる「講話」
▲藤枝順心中学校・高等学校では月曜日の1時間目に「講話」があり、全校生徒が一堂に会して校長先生の話に集中します。
礼法授業のほかにも、御校ならではの礼法教育があれば教えてください。
礼法授業に加えて「講話」も本校ならではのカリキュラムです。月曜日の朝1時間目に約30分、全校生徒が姿勢を正しく保ち、私の話を集中して聞く。中学生も高校生もこれを3年間継続します。講話の内容はさまざまで、毎回違う話をします。
例えば、創立記念日の前に創立者の生い立ちや学校設立にかけた想いを話したり、地元の方々からご指摘いただいた内容を話したり、などです。中学生にとっては難しく感じる場合もあるかもしれませんね。どこかで思い出してくれたら良い、といった気持ちで話しています。
講話は生徒さんにどのような学びや影響を与えているとお考えですか?
講話の後には毎回全校生徒に感想を書いてもらいますが、この書き溜めた感想文で生徒自身が成長の軌跡を確かめることができています。3年生が終わる頃に1年の感想を振り返り、「私ってこんなに幼かったんだな」と気付く生徒も多いですね。
私は全校生徒の感想文を読んでおり、特にサッカー部のキャプテンの成長には感銘を受けました。きちっとB5用紙に最後まで書くことを3年間継続し、リーダーとして部員を導く覚悟や心構えを見せてくれました。内容も素晴らしかったです。
多くの生徒がこのように講話への感想文を通して内面の成長を見せてくれます。特に中学生は1年生から3年生までの成長が著しく、伸びしろが大きいものです。学年を重ねるにつれて己を振り返りながら自分自身の成長を確認し、自覚を持って卒業していきます。
やはり講話の組み立ては、生徒の成長を促せるよう工夫されているのでしょうか。
講話では、当たり前のことが当たり前にできるように、スタンダードを教えます。要するに中庸ですね。個性溢れる生徒の成長を見ながら、“これだけはきちっと身につけて卒業してほしい”“社会においてこれだけは必要”といった内容を伝えています。
生徒の感性を磨く情操教育も意識しています。とはいえ、特別素晴らしいことを話すわけではありません。校庭に咲いている花を紹介したり感想を述べたり愛でたり…といった内容です。しかし、それを楽しみに自分自身の心を磨き、卒業していく生徒も多くいます。
心のコントロールやテーブルマナーも。実践的にマナーを学ぶ機会も充実
御校では行事を通してマナーを学ぶ機会も多いそうですね。
立ち居振る舞いは集団行動から学ぶことも大切です。修学旅行を例に挙げれば、高校だと5泊6日のように長く生徒同士でいるとだんだんわがままが出てきます。そういう心を抑えコントロールすることも教えますし、「集まったら私語は慎む」といったことも教えます。
修学旅行は、ホテルでの過ごし方や食事のテーブルマナーも含めて学んだことを実践する良い機会です。一つひとつ、多様な面から教養を身につけられるよう工夫しています。
修学旅行のほかに特徴的な取り組みはありますか?
校長室会食という取り組みもあります。校長と一緒に食事をとりながら、お茶の出し方を学んだり、食事をしながら質問を受けて話をするといった経験を積むんです。適度な緊張感とともにマナーを実践でき、その場だからこそ得られるものがあると思います。
社会での活躍を見越した「藤枝順心中学校・高等学校」のDX教育
藤枝順心中学校・高等学校はデジタルトランスフォーメーション(DX)教育に力を注ぐ学校としても名を馳せ、令和6年度高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)採択校としての一面も有しています。具体的な取り組みを紹介します。
「美術デザインスタイル」で認定!文科省「DXハイスクール」採択校
御校ではDX教育をどのように取り入れているのでしょうか。
本校は、令和6年度高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)採択校として認定を受けました。静岡県内では私立7校を含む合計28校が採択されており、本校はそのうちのひとつです。キャリア創造コース「美術デザインスタイル」での認定は珍しい例ではないでしょうか。
どのような背景から「美術デザインスタイル」で認定を受けたのでしょうか。
本校は、裁縫学校からスタートした背景があり、美術分野を大切にしています。そうしたなか、近年はデジタル的要素への需要の高まりを受けて、女性の活躍の場も広がっています。
本校では生徒がこうした社会の流れに沿って生徒が新たな分野にどんどん進出できるよう、「美術デザインスタイル」におけるDX教育に力を入れており、令和6年度のDXハイスクールへの応募、認定に至りました。
御校では「美術デザインスタイル」においてどのようにDX教育を進めているのでしょうか。
具体的な例として、週に2回「映像表現」という授業で、デザイン事務所でプロが使用するIllustratorやPhotoshopなどのデジタルソフトの扱いを学んでいます。3年間である程度使えるようになるため、卒業後大半は進学しますが、すぐにWebデザイン会社に就職する生徒もいますよ。
▲真剣な表情でパソコンに向かいDX教育を受ける「美術デザインスタイル」の生徒たち
DXハイスクール事業の一環として、デジタルスキルをさらに推進し土台を作るWebデザインのテキストも新たにスタートしました。3年間で教科書1冊分の知識を学び、個人でWebページを作れるようにするのがカリキュラムのゴールです。
さらに、静岡県内で活躍するデザイナー4名をお呼びした特別講座の実施にも力を入れています。DXというと多くの学校がデジタル機器の購入に予算を使いがちですが、私たちは機器購入よりそれをどう扱い問題解決するか、を重視しています。
第1回目の講座では「問いを立てる」をテーマに、デザインで創造性をどう育むか、デジタルの現状についてレクチャーいただきました。今後は専門家の方にアドバイスをいただきながら、DXのなかでも主流のAIを実際に生徒が使いWebページを加工していくといった講座を企画しています。
自分に自信をつける手段にも。生徒の自己肯定感を育むDX教育
御校では、DX教育の魅力をどのようにお考えですか?
DX教育は生徒たちに自信を与えるキッカケとなります。そこが魅力ですね。
DX教育は、単純にデジタル機器の扱いを学ぶ機会だけでなく、社会とのつながりを作り成長し自分に自信をつけるための手段としても有効です。デジタル機器を自己肯定感を高めるアイテムにしてほしいなと考えています。
DX教育は生徒さんの個性を伸ばしていくような存在ですね。
まさにその通りだと思います。実は、生徒のなかには「私はそんなにできるほうではない」とか「美術しか取り柄がない」と自分を低く評価する者もいます。そんな生徒に“自分ができることでちゃんと生きていく”という自信をつけてほしいため、DX教育に力を入れているんです。
デジタルに偏らない。生徒の未来に直結する学びも充実
▲お互いの絵画を評価し合う「美術デザインスタイル」の生徒たち
「美術デザインスタイル」でのDX教育は将来への結びつきを強く感じます。
我々は、“社会で通用するデザイナーになる”といったように“仕事をできる女性”を育てることを目指しています。ビジネス的な対応や面接対応などの礼法授業とDX教育の両輪で動いているんです。
「美術デザインスタイル」では、デジタルに偏った授業をしているわけではありません。実際に手を動かす油絵やアクリル絵の具での絵画、陶芸、伝統工芸の染めなどもしますよ。京都・友禅への弟子入りを目指す生徒もおり、伝統的な分野から最先端まで幅広く目指せるような形にしています。
「美術デザインスタイル」の卒業生から、カリキュラムや授業に対して感想が寄せられていたら教えてください。
在学中にスケジューリング能力が身に付き、卒業後も役に立っているという声を多く聞きます。在学中は課題に追われて忙しいコースですが、それがゆえに自立心を養え、管理能力が身に付くんです。
卒業生の約8割がデザイン専門学校や美術大学、4年生大学の芸術コースへ進学し、約2割がすぐに就職しますが、進学においても就職においてもスケジューリング能力がプラスになっているようです。
藤枝順心中学校・高等学校で過ごすメリハリのあるスクールライフ
▲体育祭をはじめとした学校行事や部活では生徒のイキイキとした表情が輝いています!
ここからは藤枝順心中学校・高等学校のスクールライフについてもお話をお聞かせください。御校では部活動も盛んだそうですね。
本校の生徒に対して真面目でおとなしい印象を持たれているかもしれませんが、部活動に元気に取り組む活発な生徒もたくさんいます。例えばサッカー部はインターハイ、選手権を合わせ、全国制覇10回です。柔道部はインターハイや柔道選手権で7名の日本一を輩出しています。また、バスケットボール部やバレーボール部も高い戦績を修めています。
▲藤枝順心中学校・高等学校が誇るサッカーグランド。
また、令和6年度はダンス部を新設しました。外部講師として地元のプロの方をお呼びし、ヒップホップを中心にご指導いただいています。新たな部員も募集中です。
文化部の活躍はいかがですか?
コーラス部も毎年優秀な成績を修めており、毎年関東大会に出場しています。ボランティア活動を中心に行うインターアクト部の活動も盛んです。
このように、部活をやるときは活動に全力投球し、礼法を学ぶ際はきちんとマナーを守るといったメリハリを学んで社会に出ていけるところが本校の良いところかなと思います。
藤枝順心中学校・高等学校からのメッセージ
▲本日お話を聞かせてくださった戸田校長(左)と、DX教育を担当されている佐藤先生(右)
記事の結びに、御校から入学を検討中のお子さんやその親御さんへ向けてメッセージをお願いします。
人々の暮らしは目にも留まらぬ速さで進化を続けています。SNSが広まり、現実と空想の世界の見分けが難しい時代でもあります。しかし、基本的な人間の営みは変わっていません。そこをきちっと押さえ、家庭や周囲の人々を大切に、地に足をつけ生きていければ必ず良いお嬢さんになります。
本校は厳しいと評されることもありますが、部活であれ勉強であれ好きなことに一生懸命取り組めば何をしても厳しさは感じるものです。その厳しさをやる気や楽しみに昇華できれば、大きなプラスとなるでしょう。本校はこのようにして信頼される女性を育てる学校です。ぜひ一度、見にいらしてください。
御校の教育目標「清楚」「芳香」「忍耐」に沿った伝統ある礼法授業とDX教育を代表とする革新的な教育カリキュラムにより、社会で即戦力となる魅力的な女性が多く輩出されていることに感銘を受けました。目標を持った生徒が集まる素敵な学校であることが伝わります。本日はありがとうございました。
藤枝順心中学校・高等学校の進学・就職実績
▲「美術デザインスタイル」の授業風景。興味ある分野に全力で打ち込む生徒たち
藤枝順心中学校・高等学校では、進路に合わせて普通科2コース5スタイルから自分らしい選択が可能です。キャリア創造コース「特別進学スタイル」「総合進学スタイル」「美術デザインスタイル」、地域共生コース「情報ビジネススタイル」「クックデザインスタイル」があり、進学も就職も目指せます。
進学先の例としては、筑波大学や千葉大学をはじめとした国公立大学、早稲田大学や慶応義塾大学といった難関私立大学が名を連ねているのが特徴。専門学校を目指す生徒も多くいます。
就職先の例としては宮内庁や陸上自衛隊、資生堂や日清医療食品など、多岐にわたります。インタビューでは「タツノコプロ」のような専門的なアニメスタジオに入社したり、「IKEA」のインテリアデザイナーとして採用されたり、スキルを活かして活躍する卒業生のお話も挙がりました。
進路・就職実績の詳細は公式ホームページをご確認ください。
進学状況:https://fgjunshin.net/high/situation-future/
就職状況:https://fgjunshin.net/high/situation-future2/
藤枝順心中学校・高等学校の在校生・卒業生の口コミ
藤枝順心中学校・高等学校の口コミも紹介します。
口コミでは礼法をきちんと学べる点に対して満足度の高さが伺えます。選ぶコース・スタイル次第で専門性が高い授業を受けられるポイントも魅力でしょう。
藤枝順心中学校・高等学校へのお問い合わせ
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