福島県福島市にある「心あるエリート」を目指す福島成蹊中学校・高等学校の生徒たち

学力・人間力を育み「心あるエリート」に。福島成蹊中学校・高等学校の英語・理数教育

学力と人間力を併せ持つ「心あるエリート」の育成を掲げ、福島の地で未来を担う人材を輩出する福島成蹊中学校・高等学校。今回、同校中高一貫教育の教育理念と独自の取り組みについて、副校長の二瓶貴之先生にお話を伺いました。

6年分の教科書内容を3年・4年で完了させる独自の英語・数学カリキュラム、充実した理数教育、そして豊かな自然を活かした探究・体験活動まで。高度な学力と豊かな人間性の両立を目指す同校の教育方針が、東大理三合格者を生み出すなど、着実に成果を上げています。

この記事では、そんな福島成蹊の特色あるカリキュラムについて紹介します。

福島成蹊中学校・高等学校の教育目標

福島成蹊中学校・高等学校の授業風景

編集部

まず、福島成蹊中学校・高等学校の教育理念について教えていただけますか?

二瓶先生

はい。開学以来、校訓は漢時代の司馬遷が記した『史記』の一節、『桃李不言下自成蹊』です。

この言葉の大意は“薫り高い徳操を備えた人となれば、その人を慕って、多くの人々が集まってくる”と言う比喩です。末尾の2字が校名であり、本校で学ぶ生徒に対し篤実な人に成長してほしいとの願いが込められています。つまり、私たちは人間的な魅力がある生徒を育てたいと考えています。

例えば、高い学力を目指す一方で、人の痛みがわかるような生徒を育てることも大切にしています。授業だけでなく、様々な探究・体験活動を通じて、社会に目を向けその一員としての意識を高揚し、社会貢献の意識や他者への思いやりを育むよう心がけています。学力と人間性、この両方をバランスよく伸ばすことが私たちの目標なんです。これからの不確実性の高い社会を担う生徒たちには、柔軟で逞しい思考力と知性を持ち心も豊かな人つまり「心あるエリート」の育成を目指しています。

編集部

具体的にどのような方法で育成を目指されているのでしょうか?

二瓶先生

まず、基礎基本を大切にしています。基礎基本はできるまで徹底して粘り強く指導します。これが将来高い学力を身につけるために必要不可欠です。同時に、年代に応じたさまざまな探究・体験活動を通じて人間性を磨いていきます。例えば、海外研修で語学研修を行うと共に、諸外国の異文化に触れ日本文化との比較をしたり、大自然での探究・体験活動で日常とは違う不自由さ、不便さを仲間と協力、協働し、互いに励まし合い絆を深めながら人間力を育んでいくんです。

編集部

具体的にどんな力を身につけてほしいと考えていますか?

二瓶先生

まず、未来を切り拓く力です。高い思考力と幅広い教養を身につけ、どんな困難にも立ち向かえる人間になってほしい。それから、他者を思いやる心です。自分だけでなく、周りの人のことも考えられる人間に育ってほしいと考えています。

そのために、先ほども伝えた社会貢献に関しては非常に重視しています。単に自分の利益だけを追求するのではなく、社会のために汗を流せる人間になってほしい。特に私たちは福島にある学校ですから、この地域の発展に貢献できる人材を育てたいという思いが強いです。

福島成蹊中学校・高等学校の特色ある教育カリキュラム

福島成蹊は「心あるエリート」の育成を目指し、英語教育と理数教育に力を入れています。ここからは、その内容について詳しく紹介します。

理数教育:数学は6年授業を4年で完了!残り2年は大学受験対策に注力

福島成蹊中学校・高等学校の授業風景

編集部

御校では理数教育に力を入れられているとのことですが、どのような特徴がありますか?

二瓶先生

数学では、6年分の内容を4年で終わらせる独自のカリキュラムを組んでいます。本校教員が作成した独自のテキストを使い、効率的に授業を進めることで実現しているんです。

例えば、通常であれば、中学1年生で文字式の足し算や引き算をやり、中学2年生では文字式の掛け算、割り算そして中学3年生になって因数分解が出てくるんですが、本校ではこれを系統立てて一気に指導してしまうんです。そうすることで、無駄を省くことができ授業時数を有効に配分できます。

福島成蹊中学校・高等学校独自の数学テキスト

▲このような独自テキストを使用して数学を学びます

編集部

4年で授業が終わるということは、残りの2年間は何を行うのでしょうか?

二瓶先生

大学入試対策です。難関大学については過去問題を数多く解き出題傾向や難易度の理解が必要です。それにかかる時間をしっかり確保する必要があります。そのため、残りの2年間を大学入試の問題演習に活用できるカリキュラムを組んでいます。特に英語と数学に関しては、十分な演習時間を確保できるようにしているのが強みです。

高校1年生で3年生までの授業が概ね終わるため、高校1年生で3年生向けの模試を受け始める生徒が出てきます。

観察・実験重視の理科教育

福島成蹊中学校・高等学校の理科観察・実験風景

編集部

理科の授業ではどのような工夫をされていますすか?

二瓶先生

理科では観察や実験を多く取り入れるようにしています。やはり、自分の目で見て、手で触れて体験することが大切だと考えているからです。教科書で学ぶだけでなく、実際に観察、実験をすることで「本当にそうなるんだ」という実感を持ってもらえます。これが理解を深める上で非常に重要なんです。

最近は観察や実験をあまり行わない学校も増えていると聞きますが、本校では可能な限りその機会を設けています。

編集部

生徒さんの反応はいかがですか?

二瓶先生

とても好評です。観察や実験を通じて理科への興味が深まる生徒も多いですし、理解度も上がります。これが最終的には大学受験でも良い結果につながっているんじゃないかと思います。

英語教育:英検2級以上の取得率が50%超え

福島成蹊中学校・高等学校の英語授業の風景

編集部

福島成蹊が力を入れられている英語教育について教えてください。

二瓶先生

本校では英語教育も非常に重視しています。英語に関しても6年分の内容を中学校3ヵ年で終わらせるための独自のカリキュラムを組んでいます。数学と同じように、教員作成の独自テキストを使用しています。

編集部

英語検定にも力を入れているそうですね?

二瓶先生

昨年の実績でいうと、高校生40名のうち、1級取得者が1名、準1級が12名、2級が22名でした。中学生も46名中、準1級が4名、2級が15名います。

本校は入学時点で英語が特別できる生徒たちばかりというわけではありません。それでもこれだけの結果が出せているのは、やはり本校のプログラムの成果だと自負しています。普段の授業の質の高さが結果に反映されているんだと思います。

海外研修旅行の実施

福島成蹊中学校・高等学校の海外研修旅行(カナダ・バンクーバー)

▲カナダでの海外研修旅行の様子。みんな良い笑顔です。

編集部

海外研修旅行も実施されているそうですね。

二瓶先生

はい、中学3年生でカナダのバンクーバー、高校2年生でベトナムとカンボジアに行きます。西洋と東洋の文化をしっかりと理解できるようなプログラムを目指しています。

中学3年生のカナダ研修旅行は、主に語学研修に重点を置いています。学んだ英語力を実際にどの程度使えるかを確認することが目的です。本校は福島にあり、海外渡航が初めての生徒も多いため、これまで培ってきた英語力をどう発揮できるかを重視しています。

研修旅行中はホームステイを行い、日中は様々な散策活動、見学研修を実施しています。例えば、ビクトリア市街の自由散策や市街観光をはじめ、先住民(ファーストネーション)の村を訪問して民俗学を学ぶなど、多彩なプログラムを用意しています。これらを通じて海外文化の理解を深めると共に、現地にある姉妹校を訪問し学校交流も行っています。

また、週末にはホストファミリーと丸1日を過ごす経験も設けています。カナダで叶えたい要望(観光やショッピングなど)をホストファミリーが叶えてくれる機会でもあります。ホストファミリーとの絆が深まる中での体験は、充実した1日になることは間違いありません。

このように、語学力の向上と実践、異文化理解、そして自己成長の機会を提供することを重視してプログラムを構成しています。

編集部

ベトナムとカンボジアの研修はどんな内容なのですか?

二瓶先生

こちらは国際理解が目的です。

また、アンコールワット等の遺跡群の見学研修も行います。世界史を学んでいる生徒たちにとって、実際に古代の遺跡を目の当たりにすることは貴重な経験となります。

現地の衛生環境や街の様子を観察することも重要です。街の活気、特に道路を走るバイクの多さは印象的です。街中を大量のバイクが走り回るので、人々は道路をどうやって渡っているのかと不思議に思うほどです。この光景は日本では想像しがたく、現地に行って初めて体験できる刺激的な風景と言えるでしょう。さらに、少し離れた農村地域は、日本とは大きなギャップがあります。こうした経験は、生徒たちにとって非常に新鮮で印象深いものだと思います。

現地の子供たちとの触れ合いを通じて、生徒たちは彼らの目の輝きや純粋さを感じ取ることができます。日本の子供たちと比べると経済的な格差はありますが、そんな格差を感じられないほどみんな充実した生活を送っていることが分かるんです。現地に行って初めてわかることがたくさんあり、そういったことを数多く学ぶことができました。

この経験を通して、生徒たちは幸福感や生活の充実について考え直す機会を得ています。研修旅行は単なる観光ではなく、価値観や幸せの概念を再考する機会にもなっているようです。

福島成蹊中学校・高等学校の海外研修旅行(アンコールワット遺跡)

▲アンコールワット遺跡の前でも記念撮影。

編集部

生徒たちの反応はいかがでしょうか?

二瓶先生

ほとんどの子供たちが「また行きたい」という肯定的でポジティブな感想を持って帰ってきます。これまでの卒業生の中には、大学進学後にホストファミリーを再訪問したり、留学をする生徒もいました。また、この経験をきっかけに海外の大学への進学や留学を考える生徒も出てきています。全体的に、生徒たちはこの研修旅行をとてもポジティブに捉えているようです。

編集部

海外研修へ行く前に何らかの準備は行われるのでしょうか?

二瓶先生

ベトナムやカンボジア出身の福島在住の留学生の方々、特に福島大学に通われている方々をお招きして、現地の様子やしきたりなどについて学ぶ機会を設けています。

また、生徒たち自身で調べ学習を行い、しおりの作成なども分担して取り組みます。このような事前準備活動を通して、研修旅行当日を迎えるようにしています。

進学実績と学習サポート:予備校と同等の受験指導の提供

編集部

英語教育、理数教育以外で、福島成蹊中学校・高等学校ならではの取り組みはあるでしょうか?

二瓶先生

補講授業を重視しています。通常の授業が終わった後、毎日16時45分から18時15分くらいまで補講の時間を設けています。補講は全員参加のものと、希望制のものがあります。基本的には高校1年生くらいまでは、数学と英語にかかる比重が非常に大きいです。学年が上がるにつれて、数学と英語だけでなく、理科や社会に割く時間も増えていきます。

また、子供たちのレベルに合わせて指導を行っています。ハイレベルの子供たちにはより高度な内容をどんどん与えていきます。一方、全体的に基礎固めが必要な場合は、それに応じた指導を行います。このように、子供たちの能力や必要性に応じて指導を適切に分けて実施しています。

編集部

東大や京大を目指す生徒へのサポートは別にあるそうですね?

二瓶先生

はい、高校1年生で「東大受験グループ」を作ります。このグループには東大や京大などの受験に向けた特別なサポートをしていきます。3年間、このような指導体制で取り組んでいくんです。

2023年度は成果が表れ、福島県内私立学校初の東大の理科三類に合格者を輩出できました。難関大学への合格者も増えています。

特筆すべきは、合格者の得点です。開示された成績データを見ると、本校の生徒たちは難関大学の合格者平均点よりも高い点数で合格していることが分かりました。本校では英語と数学の2教科で他の受験生より高得点を取れており、これが合格につながっている大きな要因だと思います。

これからはもっと組織的に取り組んで、毎年東大合格者を出せるようにしていきたいと考えています。

 福島成蹊中学校・高等学校の人間力を育成する体験活動

編集部

福島成蹊では勉強以外の活動にも力を入れていると聞きました。どんな取り組みをされているんですか?

二瓶先生

私たちは様々な体験活動を通じて生徒たちの成長を促すため、特に福島県の豊かな自然を活かした活動に力を入れています。

例えば、臨海教室では海で泳ぐ体験を行っています。東日本大震災以降、福島県内の子どもたちは海で泳ぐという機会が激減しています。そのためか、昨年までは「初めて海に来た」という生徒も多くいました。だからこそ、海で泳ぐ経験や、万が一遭難したときの対処法、さらには人を助ける技術として心肺蘇生法を学ぶ機会も設けています。

編集部

他にはどんな活動がありますか?

二瓶先生

東北以北では最高峰である燧ヶ岳(2,356m)に登る登山体験があります。また、福島は雪も多いので、スキー教室も行っています。それから林間教室でキャンプもします。これらの活動は、家庭ではなかなかできない体験ばかりです。

編集部

こういった活動の目的は何ですか?

二瓶先生

私たちが目指しているのは、不確実性の高い社会をたくましく生きる力を育成することです。勉強で培う忍耐力や精神力も大切ですが、様々な探究・体験活動から得られた経験や達成感は携わった者でなければ味わえないものばかりです。日常とは異なる実体験から養われる人間力の向上も必要だと考えています。

編集部

体験活動を通じて、具体的にどんな力を育てたいんですか?

二瓶先生

まず、自信をつけてほしいんです。時にはつらい経験もあるでしょう。でも、仲間と励まし合いながら一つ一つ乗り越える。そういう経験と自信が次の「やってみよう」につながります。新しいことに挑戦してみようという気持ちを育みたいのです。

それから、命を守る力も大切です。海での安全管理や心肺蘇生法の習得は、まさに命に関わる知識と技術です。

編集部

なるほど。体験を通じて実践的な力を身につけるんですね。

二瓶先生

そうです。学力だけでなく、人間力を大きく育てたいんです。私たちが目指しているのは、先ほども伝えた通り「心あるエリート」の育成です。日本や世界、そして福島県にも貢献できる人材を育てたい。そんな思いで教育に取り組んでいます。

編集部

体験活動を通じて、生徒さんの反応はいかがですか?

二瓶先生

本当に良い反応です。最初は不安そうな顔をしている生徒も、活動を終えるころには自信に満ちた表情に変わっています。「また挑戦したい」という声もよく聞きます。こういった経験が、将来の困難を乗り越える力になると信じています。

受験を考えている生徒・家庭へのメッセージ

福島成蹊中学校・高等学校の授業風景

編集部

最後に、福島成蹊の受験を考えられているご家庭にメッセージをお願いします。

二瓶先生

知的好奇心旺盛で学ぶことが好き、何事にも積極的にチャレンジする姿勢がある、人の役に立ちたいという思いを持っている、そういうお子さんは本校にピッタリだと思います。

私たちは、そのような子どもたちを「心あるエリート」へと育てていきたいと考えています。高い学力と豊かな人間性を持ち、将来は日本や世界、そして地元福島のために貢献できる。そんな人材を育てることが、私たちの使命だと思います。

私たちの教育理念に共感してくれる生徒や保護者の方々に、ぜひ本校に来ていただきたいですね。お待ちしています。

編集部

本日はありがとうございました。

福島成蹊中学校・高等学校の進学実績

福島成蹊中学校・高等学校の2023年度の進学実績は以下の通りです。

国公立大学では、東京大学に2名(理科三類1名、理科二類1名)、京都大学に1名(理学部理学科)、一橋大学に1名(ソーシャル・データサイエンス学部)、東北大学に1名(医学部保健学科)、福島大学に1名(農学群食農学類)、福島県立医科大学に3名(看護1名、保健科学2名)。

私立大学では、慶應義塾大学に医学部2名、理工学部1名、早稲田大学に3名(創造理工学1名、社会科学1名、人間科学1名)、東京理科大学に6名(理1名、創域理工2名、経営3名)など、多数の合格者が出ています。

特に医学部医学科は、東京大学、慶應義塾大学2名、防衛医科大学校3名、国際医療福祉大学2名、東北医科薬科大学2名の10名が合格しています。

このように、福島成蹊中学校・高等学校は国公立大学や私立大学、文科省管轄外の大学校、専門学校など多岐にわたる進学実績を持っています。

在校生・卒業生からの声:福島成蹊の口コミ

福島成蹊中学校・高等学校の在校生、卒業生からの声をまとめました。

(在校生)県内や全国のトップクラスの先輩や難関大学に進学した先輩方と同じ環境で学べることを誇りに感じた。

(卒業生)東大受験科というクラスで切磋琢磨し、勉強がつらくても仲間と支え合って頑張れたことを感謝しています。また、先生方のサポートが志望校合格に大きく寄与したと思います。

これらの声から、福島成蹊では生徒たちが仲間と一緒に学力に励み、それを先生方がサポートされている様子が分かります。自分の学校に誇りを持てるということは、それだけ学校生活に満足できていることの証を言えるのではないでしょうか。

福島成蹊中学校・高等学校への問い合わせ

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