独自の教育を実践する注目の学校を紹介する本企画。今回は沖縄県宜野湾市にある中高一貫の共学校「沖縄カトリック中学高等学校」を紹介します。
同校は、沖縄県で唯一の中高一貫教育を行うミッションスクールであり、キリスト教の教えをもとにした心の教育に重きを置いています。また、海外にルーツを持つ生徒が多く、留学生の受け入れも行う同校では、グローバル教育にも力を入れており、国立大学や難関私立大学のほか、海外大学へ進学する生徒もいます。
今回は、そんな同校の教育方針について、教務部・広報ご担当の知念先生にお話を伺いました。
この記事の目次
自分を認め、他者を思いやる心を育む、沖縄カトリック中学高等学校
まずは、沖縄カトリック中学高等学校の教育方針についてお聞かせください。
本校では「神への祈り」「人への奉仕」「真理の探究」の3つをモットーに掲げています。「神への祈り」は、感謝の心を育て、「人への奉仕」は、他者に対して愛と奉仕の気持ちを実践し、「真理の探究」は、知恵を獲得を目指すということです。
これらのモットーには、「あなたは神の愛に支えられています、あなたには人を愛する人間になってほしい」というメッセージが込められています。人はどうしても自分中心になりがちですが、まずは生徒自身が神に愛されていることを認識して、その愛を受け止めた上で他者に対する思いやりの気持ちを持ちながら、人として成長していってほしいというのが本校の教育方針であり、願いです。
本校は1学年60名程度の少人数制の学校なので、教員と生徒との距離が近く、また生徒同士の距離も近いという特徴があります。生徒には、このような環境の中で自分を認めながら、そして相手を認めながら成長し、生き抜く力を育んでほしいです。
3つのモットーを体現しているような、御校ならではの取り組みなどはありますか?
モットーのひとつ「人への奉仕」を具現化した取り組みの一つに、ボランティア活動があります。募金活動や清掃、病院でのクリスマスキャロル、聖ドミニコ修道女会が運営するタイの孤児院への支援活動、ウクライナ支援など、さまざまなボランティア活動を行っています。
▲ボランティア活動に励む沖縄カトリック中学高等学校の高校生
沖縄カトリック中学高等学校のグローバル教育
沖縄カトリック中学高等学校は留学生の受け入れ事業に協力しているため毎年留学生を受け入れ、海外留学を経験しない生徒でも異文化交流ができる環境です。ここからは、同校のグローバル教育について紹介します。
語学留学に異文化交流。中学2年生から参加できるプログラムあり
▲オーストラリアにホームステイ中の生徒の皆さん。
沖縄カトリック中学高等学校のグローバル教育について、具体的な取り組みをご紹介いただけますか?
本校のグローバル教育で特に力を入れているのは、イギリスへの語学研修とオーストラリアへのホームステイです。
イギリスへの語学研修は、現地で英語能力別にクラス分けを行い、レベルに応じたさまざまな体験をするプログラムで、例年20〜30名ほどの生徒が参加します。中学2年生から参加可能で、期間は3週間程度、毎年7月に実施しています。
イギリスへの語学研修中はどのようなことを体験できるのでしょうか?
体験学習では、ショッピングへ行く年もあれば、川下りなどの自然体験をする年もあります。日常生活の中で英語を実際に使うことを目的にしているので、コミュニケーションに繋がるような、さまざまなプログラムが用意されています。
また、他県や他国からも留学に来ているので、他の生徒とのディスカッションをします。ディスカッションのテーマはその時によって異なりますが、他国の生徒が自分の考えをハッキリ表現する様子を見て、自分の意見を伝える大切さを学ぶ生徒が多いようです。
自分の考えを発表するまでは不安もあるようですが、共感してもらい安心したという経験から、“他者を認めることの大切さ”に気づいたり、または自分の意見とは違う意見をもらい視野が広がったりするようですね。
イギリス語学研修中は他国の生徒も一緒に寮生活をしているため、ディスカッション以外にも、関わることは多々あります。自国の文化について話したりする機会もあり、ユーモラスな生徒は沖縄の余興としてエイサーを披露したと言っていました。英語が堪能な生徒は、面白い話をしたそうで、イギリス留学を通して、初めて自分を表現する体験や自分らしさを発揮することができた生徒もいるようです。
▲イギリス語学研修中の生徒の皆さん。
オーストラリアへのホームステイはどのようなプログラムでしょうか?
オーストラリアへのホームステイプログラムは異文化交流・異文化理解を目的にしたプログラムで、例年10〜20名でオーストラリアの姉妹校へ訪問を行うプログラムです。高校2年生を中心に参加希望者を募り、毎年3月末に2週間程度の期間、実施しています。9月にはオーストラリアの姉妹校から本校にホームステイをする、交換留学も行っています。
オーストラリアへのホームステイ中はどのような経験ができるのでしょうか?
オーストラリアはホームステイですから、語学のほかに、それぞれの家族における自分の立場を考え、自分の立ち振る舞いや人間関係について学ぶようです。大人数の家庭にステイする生徒もいるだろうし、夫婦だけの家庭に行く生徒もいます。その中でそれぞれのコミュニケーションの取り方を学びます。
先ほどの話と同じですが、そうした中で、自分の意見をしっかり言わないといけない、自分が何をしなければいけないのかに気づくことが多いようですね。
また、イギリスもオーストラリアも共通して生徒からよく聞くのは、日本の凄さや謙虚さを称賛されたということです。それは、自分では気づかなかった自分のアイデンティティを認識・確立できたということだと思います。また、自分がどうすればいいのかを考えるきっかけになった、自分と向き合うことができたという声もよく聞きます。
海外にルーツを持つ生徒や留学生が多く、日常的に多様性に触れる機会がある
▲海外にルーツを持つ生徒も多く在籍
他にも、グローバル教育について御校ならではの特徴があれば教えてください。
本校は、もともとフィリピンやアメリカなど海外にルーツを持った生徒が多く在籍しており、学校生活の中では多様性を日常的に感じることができます。さらに、アメリカだけでなくチェコスロバキアなどさまざまな国からの短期留学を受け入れることもあります。
今年も海外から中学1年生が来る予定ですが、それ以外にここ4~5年ぐらい継続して、野球留学で台湾から来ている生徒たちが十数名います。(※2024年6月時点)高校受験で本校の入試を受けて入学し、高校3年生まで本格的に高校野球に打ち込みます。日本の野球を経験したいということで始まり、最初は少なかったのですが、どんどん繋がりができて、今では定着しています。
▲台湾からの留学生とともに甲子園を目指す野球部
いろいろな国のルーツを持つ生徒さんや海外からの留学生と一緒に過ごす中で、プラスになっていると感じることがあればお聞かせください。
やはり異文化を日常で感じることができることだと思います。例えば給食が違っていたり、体調が悪くなったときに食べるものが国によって違っていたりします。進学に向けてのスタンスもそれぞれで、そういったことが日常の会話の中であるので、いろんな考えがあって、いろいろな可能性があることを生徒たちはいつの間にか感じていると思います。
中学1年生からGTECを全員受験。海外大学へ進学する生徒も
ほかに英語教育・グローバル教育に関連して取り組んでいることがあれば教えてください。
本校では、ネイティブスピーカーの教員によるオールイングリッシュ授業をしており、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能の英語力を測定するGTECに年に1回、全員受験に取り組んでいます。中学1年生から高校3年生まで年度ごとに受験するため、着実に実力アップをしながら最終的には語学を身につけることで、生徒の可能性の広がりを目指しています。
実際、英語力が身につきに進学に繋がり、海外大学を目指し合格した生徒もいます。
もともとは英検に取り組んでいたのですが、入試制度が変わるということと、いろいろな英語の能力を使っていきたいというところで、本校はGTECに移行しました。
感性と心を磨く、沖縄カトリック中学高等学校の宗教教育
▲6月に行われる平和ミサ
次に、沖縄カトリック中学高等学校の感性・心を磨く教育についてお聞かせください。
本校はカトリックの学校なので、週に1回、宗教の授業があります。この授業では、聖書を通じて情操教育や道徳を学びます。キリスト教の考えやカトリックの世界観を通じて、これらを理解し、善悪の判断等を身につけていきます。
日常生活の中では、朝礼でのお祈りと聖歌で1日が始まり、終礼でお祈りをして1日が終わります。食事の場面でも食前・食後の祈りがあります。
また、毎週水曜日は全体朝礼の中で、本校の校長先生であるフェルナンデス デニス神父が聖書の一部を取り上げ、それを具体的に説明していく「みことば朝礼」があります。みことば朝礼では、そのときの社会情勢、学校や生徒の状況に合わせて内容を変えています。
例えば新入生が入ってきた4月には、「自分の価値をしっかり認めていきなさい、すべての人は平等に愛されている、あなたたちは価値ある人です」というメッセージを、分かりやすい言葉で生徒にもリアルにイメージできるような例を挙げて説明しています。
日常生活の他にも、宗教行事などはあるのでしょうか?
4月には入学ミサ、6月は戦没者の慰霊を祈る平和ミサ、卒業するときには卒業ミサを行い、メイン行事としては「クリスマスミサ」があります。クリスマスに向けてミサを行い、イエス・キリストの生誕を描いた聖誕劇を実施します。各学年が自分たちでアレンジして劇を作り上げ、それぞれのメッセージを込めて発表します。
▲クリスマスミサでの聖誕劇
このような宗教行事を通して、生徒さんの成長を感じることはありますか?
生徒たち自身も気づかないうちに人への奉仕や感謝の気持ちが根付いてきていると感じますね。
例えば、「宿題が間に合わない!」とパニックに陥っている生徒がいた場合、「私がいるから大丈夫だよ」と優しく言葉をかけ、適切にアドバイスをしたりしています。大人が手を差し伸べる前に、とっさに人を思いやる言葉が出てくる生徒たちの姿は素晴らしいと思います。
沖縄カトリック中学高等学校からのメッセージ
▲取材に対応いただいた、教務部広報担当の知念先生
最後に、沖縄カトリック中学高等学校に興味を持ったお子さまや保護者の方に向けてメッセージをお願いします。
本校では、まずは安心できる環境を提供していきたいと考えており、カトリック的な考えを持って、きめ細かな指導を心がけています。それぞれの生徒を認めながら、最終的には6年後にしっかりと外へ羽ばたけるように、自分の道を見つけることができ、進学できるように、人格形成と学力の両面で取り組んでいる学校です。
また、本校はグローバルな雰囲気のある学校なので、学校生活の中で、いろいろな環境の子どもたちと触れ合うことができ、視野が広がります。自分に自信がないお子さんや、やりたいことが今はわからないというお子さんでも、6年間を通して、いろいろな人たちのアドバイスを聞き、助けてもらい、教員と生徒が一緒に歩んでいくことで、誰もが必ず自分がやりたいことを見つけられる学校であると自負しています。
語学研修やホームステイを軸にしたグローバル教育に加え、他国にルーツを持つ生徒や留学生とともに学ぶ中で、広い視野を養えること、キリスト教の教えをもとにした人格形成と学力の両面でさまざまな取り組みを行っていることがわかりました。本日は貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。
沖縄カトリック中学高等学校の進学実績
▲沖縄カトリック中学高等学校の進路指導室。赤本がズラリと並び、生徒が自由に手に取れるようになっている。
沖縄カトリック中学高等学校では、ほとんどの生徒が大学に進学しており、国立大学や難関私立大学への合格実績もあります。
2024年度は、千葉大学、埼玉大学、長崎大学、島根大学、琉球大学、山梨県立大学、沖縄県立芸術大学の国公立大学に合格しています。そのほか上智大学4名、同志社、青山学院大学、立命館大学、東京農業大学など難関私立大学をはじめ、さまざまな私立大学への合格者を輩出しています。また、海外の大学を受験し、合格した生徒もいました。
■進路実績(沖縄カトリック中学高等学校公式サイト)
https://ocjs.catholic-okinawa.ed.jp/learning/course/performance/
沖縄カトリック中学高等学校の卒業生の声
ここからは、沖縄カトリック中学高等学校の卒業生の声を紹介します。
卒業生の声からは、心の教育に力を入れている同校ならではの「自分たちが大切にされていると感じる」という声が多数見られました。また、そんな心の平穏を感じられる環境の中で勉強にも集中できていることがよくわかりました。
▲平和巡礼で祈りを捧げる生徒の皆さん。
沖縄カトリック中学高等学校へのお問い合わせ
運営 | 沖縄カトリック中学高等学校 |
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住所 | 沖縄県宜野湾市真栄原3丁目16番1号 |
電話番号 | 098-897-3300 |
問い合わせ先 | https://ocjs.catholic-okinawa.ed.jp/contact/ |
公式ページ | https://ocjs.catholic-okinawa.ed.jp/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください