ぽてん読者の皆さんに、いま注目の学校を紹介するこの企画。この記事では、学校法人文京学院が運営する「文京学院大学女子中学校」の理念や教育内容、校内の雰囲気などを紹介します。
文京学院は、1924年に当時22歳だった島田依史子氏が女性の社会進出を願って創立した「島田裁縫伝習所」に起源を持ちます。100周年を迎えた現在、活躍の舞台を「世界」に定めてグローバル教育を推進しており、中学校では英語力だけでなく、インターナショナルスクールとの教育提携などを通じてグローバルな感覚を養っています。
また、礼儀や品位、規範意識や協調性を重視する「日本型教育」を大切にしており、茶道や花道の授業などを通じて伝統文化への理解を深め、海外で日本の文化を語れる「真の国際人」を育成することを目指しています。
今回は、中学副校長で中高グローバル教育担当の島田美紀先生にインタビューさせていただきました!
▲今回インタビューに対応いただいた島田先生
この記事の目次
文京学院大学女子中学校が目指す、国際社会に貢献する女性像
▲校訓である「誠実・勤勉・仁愛」が記された書
まず、文京学院大学女子中学校を運営する文京学院が創立された経緯から教えてください。
文京学院の始まりは、1924年に当時22歳だった島田依史子が創立した裁縫学校「島田裁縫伝習所」です。前年に起きた関東大震災では、多くの家庭が家長を亡くしました。創立者は、残された家族が路頭に迷うことがないよう、女性が手に職をつけ自立できるような教育が必要だと考えました。
それから100年が経ち、女性の自立はある程度進みました。しかし、まだ十分ではありません。本校では、自分の意思で道を切り開く強さと賢さ、他者の価値観に対する寛容さをもって、多様化する社会に貢献できる女性の育成を目指しています。
創立以来掲げる校訓、「誠実・勤勉・仁愛」についてもお話しいただけますでしょうか。
今の時代、3つのなかでも「仁愛」がとても大切だと思っています。「自分が良ければ良い」と考えるのではなく、クラスメイトが困っていたら助けてあげるなど、思いやりの心を持つことが必要です。
世界では、今もなお戦争が起きています。仁愛の心があればこのようなことは起こらなかったのではないでしょうか。世の中の情勢を見ても、仁愛が何より求められていると感じます。
また、「勤勉さ」も大事です。毎日少しずつ積み重ねることで実力となることを、本校の生徒は「運針」や「ペン習字」を通して学んでいます。
グローバル教育と日本型教育によって「真の国際人」を育成する
文京学院大学女子中学校では、世界で活躍する卒業生を輩出するためのグローバル教育を掲げるとともに、伝統を重んじる教育や、清掃活動や部活動などを通じて礼儀や規律、協調性を身につける日本型の教育を大切にしています。
ここからは、同校の伝統教育や日本型教育、そしてグローバル教育について紹介します。
伝統を重視:裁縫とペン習字で培う集中力と継続力
▲運針は、7分間で80cmの布を縫い進める
文京学院大学女子中学校では、「伝統教育」の一環として裁縫やペン習字の時間を設けているそうですが、その狙いを教えてください。
裁縫の時間は毎週金曜日の朝の7分間と決まっていて、白い布に黙々と運針をします。心を落ち着かせ、集中力を高めてからこれから始まる1日に臨んでもらう狙いがあります。
今の時代はスマートフォンなどを見ながら何かをする「ながら」が多いので、何かに集中する時間を設けることは重要だと考えています。
ペン習字は創立者である島田依史子の「美しい文字は一生の財産である」という考えに基づいて始まったものですが、字の綺麗さだけでなく継続する力を育むうえでも大切な時間だと考えています。
1年で600枚書くことを目標にしており、1日3枚程度を目安としています。1日に何十枚も書くのではなく、継続的に少しずつ書くことを推奨しています。小さな目標を達成し続けることで自信になりますし、計画的に目標達成に向かうことでセルフマネジメントの力もつきます。
スマホやパソコンの普及によって字を書く機会が減っているので、そういう意味でも貴重な時間だと感じます。
そうですね。ペン習字は基本に立ち返る時間であるとも言えます。
600枚書くことはとても大変なことですが、卒業生からは「やっておいてよかった」という声がたくさん聞かれます。
「文字は人なり」という言葉があるように、字は人の印象を左右します。大人になってから字を上達させるのはなかなか難しいので、中学生のうちに練習しておいて良かったと言ってくれる子が多いですね。
日本型教育の重要性:グローバル社会での活躍に不可欠な要素
文京学院では、伝統教育のほかにも、清掃活動や放課後の部活動などを通じて礼儀や規律、協調性を身につける「日本型教育」を重視されていますが、グローバル教育を掲げる一方で日本型教育も推進する狙いはなんでしょうか?
海外に出た時、「自分が何者か」を語れない人はリスペクトされません。本校では、自国の文化や伝統を理解し、それを語れる人こそ真の国際人だと考えています。
そのため、グローバル教育と日本型教育をどちらも大切にする本校の方針は、保護者の方に強く支持していただいています。
日本型教育は、結果的にグローバルに活躍できる人の育成につながるのですね。
その通りです。近年、日本型教育は海外でも注目されています。JICA(国際協力機構)のプロジェクトでは、海外の教育関係者が本校を訪れ、日本型教育の現場を視察しています。
視察では、生徒と一緒に伝統教育のお茶やお花を体験してもらいました。礼儀作法などは生徒にとっては日常的に行う「当たり前のこと」ですが、海外の方からすると特別なことです。生徒は、海外の方の反応を見ることで「自分たちがしていることは世界的に見ると当たり前ではない」ということに気づき、「大切にしなければいけないんだ」と実感することができます。
近年、サッカーの国際試合の後に会場でゴミ拾いをする日本人が話題になることが多いですが、それと同じですね。世界基準で見ることによって、自分たちの行動が評価に値することなのだと認識することができます。
海外からの視察は、生徒にとっても自国の文化や伝統の価値に気づく良い機会になっているのですね。
インターナショナルスクールとの連携で養う国際感覚
文京学院大学女子中学校が推進するグローバル教育についてもお話しいただけますか?
海外研修は中学卒業後から始まりますが、中学では体験型英語学習施設「TOKYO GLOBAL GATEWAY」や、福島県にあるイギリスをテーマにした研修施設「ブリティッシュヒルズ」を訪れ、語学研修を行っています。
また、本校はインターナショナルスクールの「アオバジャパン・インターナショナルスクール」と教育提携しています。生徒たちがアオバさんのキャンパスを訪れることもありますし、ハロウィンのイベントを一緒に開催したり、学園祭でコラボしたパフォーマンスを行うなど、さまざまな場面で交流を図っています。
インターナショナルスクールとの提携があることで、日本にいながら多様な価値観に触れることができるのですね。
ネイティブ教員とのコラボ授業:多角的視点の育成
文京学院では、高校3年までにCEFR-B1以上(※)の英語力を身につけることを目標としています。中学ではどのような英語教育を行っているのでしょうか?
(※)外国語の習熟度や運用能力を同一の基準で評価する国際標準「CEFR」が定めた基準で、B1は馴染みのある話題に関して英語で話し合うのに十分なレベル。
本校では「日常に英語がある」という環境を作ることで、英語を話すことへの抵抗感をなくすようにしています。
当然ではあるのですが、ネイティブの先生は「英会話教師」ではなく「文京学院の先生」です。英語の時間だけ接するのではなく、清掃や給食の時間など学校生活でのいろいろなシーンでコミュニケーションを取っていて、修学旅行にも引率します。そのため、英語に触れる機会が自然と多くあります。
▲文京学院大学女子中学校では英語の本をたくさん読む「多読」の授業があり、多読室には1,000冊以上の英語の本が所蔵されている。
英語の教科だけではなく学校生活の至るところで英語に触れる機会がある、いわゆる「イマージョン教育」を取り入れられているのですね。
そうです。もうひとつの特色ある取り組みとして、日本人教員の授業にネイティブの教員が参加する「コラボ授業」があります。
例えば、体育では日本人の先生がはじめに大枠を説明をして、次にネイティブの先生がシンプルな英語を使って細かい動作を説明します。英語なので戸惑う生徒もいますが、何度も同じことを言われるうちに「こういう時はこういうふうに言うんだな」というのが分かるようになり、英語での表現力を自然と培っていきます。
世界史の授業では、日本人の先生が説明したことに対して、ネイティブの先生が英語の情報を加えます。私たちは主に日本の立場からみた歴史を学んでいますが、コラボすることでその出来事が海外ではどう捉えられているのかを知ることができます。
例えば、広島や長崎への原爆投下について、アメリカではそれによって戦争終結が早まり、結果的に犠牲者の増加を食い止めたと教えられています。自分たちが正解だと思っていたことが唯一の正解ではなく、いろんな見方が存在するのだと学ぶきっかけになっていると思います。
異なる見方があることを知り、なぜ違いが生じるのかを考えることは、国際社会を生きるうえで必要な相互理解にもつながりそうだと感じました。
グローバルな探究活動:海外校交流と英語プレゼンテーション
文京学院が100周年の節目に定めた教育ビジョン「BUNKYO100」では、探究活動を核とする「自立した学習者の育成」を掲げています。中学ではどのような探究プログラムを実施しているのでしょうか?
本校の探究活動の特徴は、グローバル教育を取り入れたプログラムが充実している点にあります。
例えば「藍indigo project」という探究活動ではアオバジャパン・インターナショナルスクールさんと一緒に藍を通じて環境問題を学び、相模湾の海洋ごみ問題を考え、それをアート作品に落とし込みました。
▲「藍indigo project」で制作した作品は、「江の島国際芸術祭2023」に出展された。
▲「藍indigo project」で実際に藍染を体験した。
文京学院大学女子中学校の探求活動では、どのような力を伸ばせるとお考えですか?
グローバル感覚を身につけながら自主的に学ぶ力を伸ばせるのはもちろんですが、総合型選抜の大学受験においても大きく役立つと考えています。
総合型選抜では、面接や論文、プレゼンテーションなどを通じて、受験生の能力や学習に対する意欲を評価します。本校では自分が学んだことをプレゼンする機会も多いですし、中高を通じてさまざまな体験をするので面接で話す内容も充実します。
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大学受験だけでなく、大学生や社会人になってからも役に立ちそうなスキルですね。
そうですね。中学生のうちから多くの経験をしてトライアンドエラーを繰り返しておくと、大学生になった頃には周囲の学生に大きく差をつけることができると考えています。
文京学院大学女子中学校は2012年から2017年までスーパーサイエンスハイスクールに指定されていました。科学的な探究についても特色を教えてください。
理系大学への進学や国際社会で活躍できる科学者を目指す生徒は、高校進級時に「理数キャリア」コースを選択します。
高校から理数キャリアコースに進むことを選んだ中学生は、主に科学探究の基礎の体験・習得を行います。そして高校生になると、海外の提携校との科学交流として、タイのプリンセスチュラポーン科学高校ペッチャブリー校と双方の国を行き来し、お互いの研究成果を英語で発表します。
また、科学研究コンテストに参加してプレゼンを行う機会もたくさんあります。
科学コンテストの成果には、どのようなものがありますか?
高校の話になりますが、生徒2人が2022年に「高校生・高専生科学技術チャレンジ」という権威ある科学技術コンテストに出場し、入賞しました。2人の研究テーマは江戸時代に使われていた化粧品「小町紅」に着目したもので、翌年にはアメリカ・テキサス州で開催された世界大会「リジェネロン国際学生科学技術フェア」に出場し、「材料科学部門」の優秀賞4等を受賞しました。
世界大会に向けて、彼女たちは企業や大学の先生のもとを訪れて話を聞くなどしながら、研究をさらに深めました。努力の結果が世界大会での受賞につながり、本人たちは自信がついたようですし、周りの生徒も彼女たちに触発されて「自分もチャレンジしよう」という意識が生まれたように感じます。
文京学院大学女子中学校は生徒の主体的な学びを後押しし、その成果を大きな舞台で発表するチャンスにも恵まれていると感じました。
充実の学習環境:文京学院大学女子中学校の特色ある施設
▲かつて提携していたアメリカの学校の先生の名前にちなんだ「ジャシーホール」は、480の座席を収納する小ホールとしても使用できる。
文京学院大学女子中学校のキャンパスのコンセプトは「緑と風と光のキャンパス」。日本庭園「六義園」に隣接した緑豊かな環境で中学から高校まで過ごします。
ここからは、校内のスポットを巡りながら、文京学院大学女子中学校の生徒がどんな学校生活を送っているのか探っていきます!
伝統文化の学び舎:所作を身につける「礼法室」
▲校舎のロビーでは、中学の生徒が華道の授業で手がけた美しい生け花が出迎えてくれる。
最初にご紹介いただくこちらは和室ですね。伝統教育に関連した部屋でしょうか?
2021年に完成した新しい「礼法室」です。主に茶道の授業で使用しています。
礼法室では、ふすまの開け方など和室での作法からしっかりと学びます。お茶を点てる所作に行き着くまでに何時間もかかるので、最初の半年くらいは茶道の授業をきついと感じる生徒もいます。
時間をかけて、茶道の技術以外の部分までしっかりと身につけているのですね。
5万8000冊の蔵書:多彩な本に触れる充実の図書室
図書室にはどのくらいの蔵書があるのでしょうか?
中学や高校の平均蔵書数を大きく上回る5万8000冊を所蔵しています。特集コーナーでは、図書委員の生徒が決めたテーマにちなんだ本を紹介しています。今は「GREEN」をテーマにした本が並んでいますね。
生徒さんに人気の本にはどのようなものがありますか?
司書に聞いたところ、映画化されたこともあって、最近は辻村深月さんの小説「かがみの孤城」が人気のようですね。中学生が主人公なので、同世代の生徒の関心も高いのだと思います。
そのような話題の本は、積極的に揃えているのでしょうか?
そうですね。話題の本や、テレビで紹介された本はいち早く入荷します。図書館だよりで紹介すると、それを見た保護者が子どもに「借りてきて」と頼むこともあるようです。
生徒が塾の先生から大学受験に関するおすすめ本を聞いてきて、図書室で入荷することもありますよ。
国際人育成の一環:給食時間の食事マナー指導
お昼はカフェテリアで食べるのでしょうか?
中学3年間は給食があり、各学年が1週間ごとに交代しながらカフェテリアでお昼を食べます。例えば、3年生がカフェテリアを使用する週は、残りの2つの学年は教室でお昼を食べます。
お昼時間には、健康的な食生活や日本の食文化に関する知識を伝えているほか、食器の並べ方や魚の身の外し方などの所作も指導しています。
生徒さんたちは、あらゆる機会を使って礼儀や作法を身につけているのですね。
国際社会に出た時に美しい食事ができるようにと、創立時から食事のマナー教育にも力を入れています。
多様性を尊重:2種類のスカートとスラックスを用意する制服
▲制服の一部を撮影。気品あふれるデザインに加え、夏服ではポロシャツも選択できる自由度の高さも好評
文京学院大学女子中学校の制服の特徴についてもご紹介いただけますか?
スカートは紺とチェックがあり、生徒が自由に選べます。また、スラックスも用意しています。制服は子どもたちからも人気で、制服を見て本校に興味を持ってくれる受験生もいるくらいです。
文京学院大学女子中学校からご家族・お子様へのメッセージ
文京学院大学女子中学校の生徒さんには、どのような人が多いとお感じですか?
部活動を推奨しているので、元気な生徒が多いという印象があります。でも、そんな生徒だけではなく、物静かだけれど内に秘めたものがある子や、好きなことに黙々と取り組む子もたくさんいて、それぞれの良さが光る学校だと思います。
あと、行事が好きな生徒が多く、クリスマスコンサートや体育祭などに全力で取り組んでいます。2023年度の体育祭は大規模な屋内施設「武蔵野の森総合スポーツプラザ」で実施して、競技のリプレイを大型スクリーンにスローモーションで映し出すなど、演出にも凝っていましたね。プロの試合顔負けの盛り上がりでした。
最後に、記事をご覧の子どもたちと保護者の皆様にメッセージをお願いします。
本校は、興味のあることが明確な方や、やりたい部活が決まっている方はもちろんのこと、「何をやっていいかわからないけど何かやりたいな」と思ってる方にも向いている学校だと思います。豊富なプログラムがありますので、いろんな経験をするなかで自分の「好き」を見つけて探究し、深めていただけるはずです。
アオバジャパン・インターナショナルスクールさんとの教育提携や、学校を訪問した海外の人たちとの交流など、グローバルな感覚に触れる機会がたくさんあります。また、研究者の道に進みたいと考えている方は、実験を思う存分できる環境に魅力を感じていただけると思います。
本校のグローバル教育や日本型教育を通じて、世の中に山積する課題を解決できるような人へと育ってほしいと考えております。
世界で活躍できる女性を育てる文京学院大学女子中学校は、生徒たちの「興味の芽」を育て、それを社会貢献に役立てるように導いてくれる学校だと感じました。
本日は、ありがとうございました!
文京学院大学女子中学校に通う生徒の保護者の声
ここでは、文京学院大学女子中学校に通うお子様を持つ保護者や、同校の卒業生の声をご紹介します。
生徒の探求心を大切にする点や、世界で活躍する人を育てるグローバル教育を評価する声が目立ちました。
文京学院大学女子中学校への問い合わせ先
問い合わせ先 | 学校法人文京学院 文京学院大学女子中学校 |
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住所 | 東京都文京区本駒込6-18-3 |
電話番号 | 03-3946-5301 |
公式サイト | https://www.hs.bgu.ac.jp/ |