独自の教育を実践する注目の学校を紹介する本企画。今回は、大阪府豊中市にある中高一貫の女子校「梅花中学校・高等学校」を紹介します。
梅花中学校・高等学校は、1878年に大阪で始めての女子校として創立されました。以来、146年の長きにわたり、キリスト教主義教育校として、キリスト教に根ざした教育を行っている歴史ある伝統校です。同校は、創立当初から国際色豊かな教育活動を実践しており「英語の梅花」と呼ばれてきました。
今回は、そんな梅花中学校・高等学校の教育方針や独自の取り組みについて、同校の校長を務める菅本大二先生、入試広報部長であり数学科教員の大石一星先生、聖書科教員の山口教子先生にお話を伺いました。
この記事の目次
梅花中学校・高等学校が目指す「愛なる女学校」とは?
▲取材に対応いただいた菅本大二校長と同校創立者である澤山保羅氏の肖像
最初に、梅花中学校・高等学校の建学の精神や教育方針についてお聞かせいただけますか?
本校は、キリスト教の牧師であった澤山保羅先生が、後に日本女子大学を設立した成瀬仁蔵先生の協力を得て1878年に創立した学校です。
キリスト教に基づき、他者への愛と奉仕の精神を備える自立した女性を育成することを建学の精神とし、日本人信徒によるキリスト教主義教育校として誕生しました。なお、併設校として梅花幼稚園と梅花女子大学も運営しています。
教育目標としては、「愛・平等・自由」を掲げています。その言葉の意味するところは「恵みに感謝し、隣人を大切にしよう」「自分をみつめ、多様な価値観を認め合おう」「自己を磨き、自ら道を切り拓こう」です。この教育目標も梅花学園全体で共有しています。
本校創立に尽力した成瀬先生は、「梅花は愛なる女学校にならなければいけない」と言いました。およそ150年前の創立当初から「愛」という言葉は本校にとって大切な言葉であり、ベースとなる考え方として息づいています。パンフレットや年間目標ほかさまざまなシーンで「愛」が使われており、本校のキーワードとなっています。
「愛」という言葉を大事にしている御校には、どのような生徒さんが多いと感じますか?
とても朗らかで明るい生徒が多く、みんな挨拶を欠かさない印象がありますね。
本校のスクールモットーは「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」です。それを実践するために、私は2023年4月の校長就任時から毎朝、登校する生徒に挨拶をするために校門前で立っています。
最初は、生徒から返ってくる挨拶は少しぎこちなかったのですが、それから1年経つと、みんな笑顔で率先して挨拶をしてくれます。昼間に校内ですれ違うときも生徒の方から手をふってくれ、私が手をふり返さないと怒られるぐらいです(笑)。
見返りを求めない「愛」を学ぶ、キリスト教教育
▲取材に対応いただいた聖書科担当の山口教子先生
御校のキリスト教教育について、お伺いできますか?
まず、校長先生のお話の補足になりますが、成瀬仁蔵先生がおっしゃった「愛なる女学校」の愛は、聖書に基づく神様の愛のことです。私が生徒たちによく言うのは、見返りを求めない、ギブアンドテイクでもない、神様の愛は一方通行の愛だということです。
本校では、毎日の礼拝や聖書の時間を通じて「愛なる女学校」の愛を実践できる女性をめざしています。本校に入学して初めて聖書に触れる生徒も多いので、日々の積み重ねの中で少しずつ神様の愛を理解し、向き合っていきます。
去年2023年の卒業生に「聖書のどこの箇所が好きか」と尋ねたところ、多くの生徒がスクールモットーである「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」の箇所を挙げました。最初は意味がわからなかった生徒たちも、6年間または3年間の学びを通じて、この聖書の言葉が彼女たちの心に深く根付いたことを実感し、とても嬉しく思いました。
生徒さんがキリスト教の教えを知る機会について教えてください。
本校では、朝の礼拝で聖書を読んで讃美歌を歌い、1日がスタートします。4月と10月には宗教週間があり、6月には花の日礼拝、12月にクリスマス礼拝といった特別な礼拝があります。
▲中学校の全校礼拝
御校がめざしている生徒のあり方についてお伺いできますか?
人にはそれぞれ個性がありますので、一人ひとりの違いを認めて常に相手の立場に立って考え、責任をもって行動できる人になってほしいと思っています。
そのために、自分のことだけではなく自分以外の人、目の前の人、自分と気が合う人だけではなく、苦手な人がいたとしても「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」を実践できるように教育指導しています。
その先にあるのは、生徒たちが自分自身を愛し、同時に友達や他の人々を大切にできるようになることです。この「愛なる教育」は、勉強や友達関係、家庭生活など、すべての面に影響を与え、愛を伝えることで、すべてが良い方向につながっていくと考えています。
英語力と国際力を高める、梅花中学校・高等学校の特徴的な取り組み
▲取材に対応いただいた入試広報部長で数学科教員の大石一星先生
続いて、梅花中学校・高等学校のグローバル教育についてお聞かせください。
本校の中学校は「進学チャレンジコース」と「舞台芸術エレガンスコース」に分かれており、進学チャレンジコースは英語の授業時間数を多めにとっています。また、朝にリスニングを行う、英語検定を受験するなど「英語の梅花」と言われる所以となる取り組みを多く行っています。
本校の高校に関しては8つの専攻に分かれており、その中で「国際教養専攻」については約3ヶ月の語学留学をカリキュラムに組み込んでおり、また、iPadを使って国際教育を行っています。
▲国際教養専攻のiPadを使った授業風景
校内に、英語専用エリアがあるとお聞きしたのですがどのようなスペースなのでしょうか。
「EOS/English Only Space」があり、その名の通り英語のみを使用するスペースとなっています。ここは、誰でも自由にお昼休みにお弁当を食べながらネイティブの教員と会話をする「ランチタイムイングリッシュ」の部屋としても使われています。
EOSのもうひとつの取り組みのひとつとして、English Elite Member Dayがあります。英検2級以上を取得している生徒は、English Elite Memberとしてディプロマと記念タグが授与され、さらなるスキルアップがめざせる取り組みです。英語専用エリアならではのハイグレードなプログラムがメンバー限定で行われます。これは中学生も高校生も共通のプログラムとなっています。
▲「EOS/English Only Space」でのランチタイムイングリッシュの様子
海外への留学や修学旅行で視野を広げ、自分の将来像を描いていく
▲海外からの留学生と一緒に学ぶ国際教養専攻の生徒たち。留学生の受け入れも行っている
語学留学について伺いたいです。高校の国際教養専攻の生徒さんは、カナダに留学されるのでしょうか?
今年度は、今ちょうど留学中です。本来はカナダなのですが、コロナの影響で昨年度と今年度に限り、ニュージーランドに行っています。来年からは再びカナダに行く予定で準備を進めています。(取材は2024年5月中旬)
ニュージーランド留学は、どのように行われるのでしょうか?
現地では、一人ひとり別々のホストファミリーがあり、現地のリアルな生活を体験することができます。日本人だけ集まって、本校の生徒が一緒にということはなく、みんなバラバラに一般家庭にホームステイします。その上で現地の複数の高校に分かれて学びます。
ホームシックになったり、プレッシャーを抱えたりすることもありますが、現地学校の担任の先生や留学を手配してくれているコーディネーターが手厚くサポートしてくださいます。
現地での様子等についてはコーディネーターからこまめに報告が入ります。コーディネーターは生徒本人とコミュニケーションを取っているため、本人の声を本校にきちんと届けてくれます。
国際教養専攻の生徒さんは、さまざまなカリキュラムで英語力を高めているわけですね。
国際教養専攻以外の専攻でも、希望者が参加できるオーストラリアへの短期留学制度がありますし、中学3年の修学旅行はハワイです。高校2年の修学旅行は海外と国内の選択制ですが、オーストリアとチェコの2カ国を訪れる修学旅行で、海外の文化や言語を体験するカリキュラムを設定しています。
中学生のハワイへの修学旅行に向けて、授業で何か工夫されていることや取り組まれていることがありますか?
習熟度別にクラスを分け、そこにネイティブの先生が入って実践的な英会話を通してリスニング能力を上げる取り組みを行っています。
中学2年生では、国内ですが「インターナショナルキャンプ」といって、イングリッシュスピーカーとオールイングリッシュで過ごす英語研修を行っています。また、ネイティブの外部講師を招いて少人数のグループで英語を使ったアクティビティやゲームを作って学ぶプログラムもあります。
そういった海外に行く機会が多い御校の場合、進路にも影響を与えることがあるのでしょうか?
進路に関しては生徒一人ひとりをチーム指導しているので一概に言えないですが、梅花女子大学の国際関係の学科に内部進学する生徒もいますし、英語検定を積極的に取得して関西外国語大学や大阪大学の外国語学部をめざす生徒もいます。国際関係大学に進んで将来は国際的な仕事に就いてみたいと思っている生徒もいます。
また、来週から本校の卒業生13名が教育実習に来るのですが、割合としては英語の教員免許を取る卒業生が多いです。
梅花中学校・高等学校の高大連携授業とクラブ活動について
▲放課後の図書室での自習の様子
そのほか御校の特徴的な取り組みがあればお聞かせください。
本校の併設校に梅花女子大学がありますので、医療・看護の道を志す生徒は大学の看護学科で学ぶことができます。いわゆる高大連携授業ですね。
高校1年生は1学期に1回くらい、2年生は2回くらい、3年生になると毎週土曜日の授業は同大学に行き、最新設備の演習室や実験室を使って、大学の先生の指導を受けながら、より実践的な学びを体験できます。
医療看護専攻だけでなく、こども保育専攻であれば同大のこども教育学科と、調理・製菓専攻は、食文化学科や管理栄養学科と、舞台芸術専攻はエレガンス科目の梅花歌劇団「劇団この花」と連携しています。高大連携授業で連続性がある学びを確保できるのは併設の大学を持っている本校の強みのひとつです。
▲チアリーディング部「RAIDERS」は中学・高校ともに圧倒的な実績を残す。梅花女子大学にも同名のクラブがあり、活動を続けられる
御校のチアリーディング部が強豪とお聞きしたのですが、そちらもぜひ伺いたいです。
そうなんです。彼女たちは全国制覇をめざして毎日練習しています。オフィシャルの休みは正月三が日しかないという噂です。ライバル校が存在していまして、互いに優勝と準優勝を繰り返しているので、名実ともに日本一になれるように日々がんばっています。
チアリーディングが目立っていますが、新体操部も実績を残していますし、吹奏楽部は関西大会へ行ったりといろいろなクラブが積極的に活動しています。中学高校とも、体育系も文化系もたくさんあり、楽しいクラブ活動ができると思います。
梅花中学校・高等学校からのメッセージ
最後に、御校に興味をもったお子さまや保護者の方に向けてメッセージをお願いします。
校長挨拶などで強調しているのは、私は「花咲か」校長先生をめざしているということです。「花」は、生徒みんなの満開の笑顔です。
本学園の理事長が「学び、楽しく、美しく 梅花学園」というキャッチフレーズを推し進めようとしているのですが、その「楽しい」の一つの表現が笑顔です。私が毎朝生徒たちに挨拶を行っているのも、その一環なんですね。
その笑顔の背景には、生活面の安心安全と学習面での成長の両立があります。本校でなら、安心して学び、学校生活を楽しむことができると思います。もし本校に興味をもっていただけたのであれば、ぜひ一度足を運び、学校の雰囲気を感じてみてください。
本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
梅花中学校・高等学校の進学実績
梅花中学校・高等学校では近年、国公立大学や難関私立大学への合格実績が伸びています。
多くの生徒が学科試験免除で受験できる指定校制推薦入試を利用して進学しており、2023年度(2024年3月卒業)の指定校推薦枠としては、関西大学、関西学院大学、京都女子大学、同志社大学、立命館大学ほか多数。また、キリスト教学校教育同盟校の推薦枠としては、青山学院大学、国際基督教大学、フェリス女学院大学ほか多数あり、大学・短期大学あわせて約160校、約740名が指定校制推薦枠を獲得しています。
併設校である梅花女子大学へは学内推薦で進学することができ、毎年約3割の生徒が同大学に進学しています。これは併設の大学をもっている中高の中では多い数字かと思います。本校生徒は入学検定料・入学金免除の適用があり、成績によっては授業料免除などの特待生制度があります。
舞台芸術専攻に関しては、本校在学中に宝塚音楽学校に合格することを目標にする生徒もおり、11年連続で合格者を輩出しています。2024年度は3名が合格しました。
■進学実績(梅花中学校・高等学校公式サイト)
https://www.baika-jh.ed.jp/learning_step/leading/
梅花中学校・高等学校の卒業生・保護者の口コミ
ここからは、梅花中学校・高等学校の口コミを紹介します。実際に通学していた卒業生や保護者の声をまとめました。
※記事中の高校の8専攻は2025年度から5コース(特別進学コース、看護医療コース、グローバルコース、舞台芸術コース、キャリアデザインコース)に生まれ変わります。
梅花中学校・高等学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人 梅花学園 梅花中学校・高等学校 |
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住所 | 大阪府豊中市上野西1-5-30 |
電話番号 | 06-6852-0001(代) |
問い合わせ先 | https://www.baika-jh.ed.jp/contact/ |
公式サイト | https://www.baika-jh.ed.jp/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください。