福山暁の星女子中学・高等学校の「生徒が主役」の革新的な学びに注目|中高一貫校

ぽてん読者の皆さまに、今注目の学校を紹介するこの企画。今回は、広島県福山市にある私立・女子高の中高一貫校「福山暁の星(あけのほし)女子中学・高等学校」にインタビューを行いました。

「他者のために生きる」という建学の精神を掲げる同校では、新しいことにチャレンジすることで世の中を良くしていける自立した人材の育成を目指しており、テストの点数などのものさしだけでは測れない多面的な能力の育成に力を入れています。

2023年度からは、「学びのタイプ」によってコースを分けるという革新的なコース制を導入し、学び方から自分で選択するという、生徒主体の学びを実現しています。

今回は、そんな福山暁の星女子中学・高等学校の生徒が得られる学びや学校生活について、池田先生、白水先生、近石先生のお三方に詳しくお話を伺いました。

「挑戦によって世の中を良くしていく人材」を育てる福山暁の星女子中学・高等学校

福山暁の星女子中学・高等学校の池田先生、白水先生、近石先生

▲取材にご対応いただいた池田先生(右側)、白水先生(中央)、近石先生(左側)

編集部

最初に、福山暁の星女子中学・高等学校の建学の精神について教えていただけますか?

池田先生

本校はカトリックの女子校で、「Women for Others. 〜他者のために生きる女性の育成〜」を建学の精神の大きな柱として掲げています。

また、創設当時のシスターの言葉の中には、「冒険」という言葉がよく登場しています。「他者のために生きる」というと一般的には自分がやりたいことを我慢して他の人に合わせるというイメージがあるため、「冒険」とは相反すると思われるかもしれません。

しかしそうではなくて、ここには「自分で新しいことにどんどんチャレンジすることによって、世の中を少しずつ良くしていこう」という意味合いが込められていると考えています。「伝統の上にあぐらをかいてはいけないよね」というメッセージが、私たちの中に今も残っているんです。

編集部

ホームページに登場する言葉の中で、「Servant Leadership」という言葉も印象的だったのですが、こちらはどのような意味があるのでしょうか?

白水先生

「Servant」は直訳すると「召使」なのですが、意味合いとしては「他人に奉仕し、協働して導いていく」というリーダー像を指しています。自分だけでなく、他人が面白いと思っていることに目を向けることで、世の中を引っ張ってほしいということです。

つまり、「自分のチャレンジも他人のチャレンジも大切にしながら自己実現を果たしていく」というメッセージが、この言葉に込められているんです。

生徒を主役に!自分で学び方を選ぶ「学びのタイプ」別のコース制

福山暁の星女子中学・高等学校の高校2年生のポスターセッションのようす

編集部

続いて、福山暁の星女子中学・高等学校の特徴的なカリキュラムについて教えていただけますか?

池田先生

わが校では、2023年度から中学校に新たなコース制度をスタートさせました。一般的にコース制というと、成績や分野で分けられているものをイメージされるかもしれませんが、わが校のコース制は生徒たちの「学びのタイプ」でコースを分けているというのが特徴です。

私たちは長年この学校で生徒と接する中で、大きく分けて2つのタイプの生徒がいると感じていました。

1つ目のタイプは、実践形式でやりたいことにどんどんチャレンジし、できることを増やしていける「枠にはまらない自由な発想の持ち主」です。2つ目のタイプは、いきなり大きな舞台に出るのは緊張してしまうけれど、できることをコツコツ増やす中でやりたいことを見つけていける「真面目な頑張り屋さん」です。

前者に対応したコースが「Creative Learning」、後者が「Update Learning」という名称です。時期としては中2・中3が対象で、PBLをベースとした探究学習や英語と数学の個別最適な学びなど、それぞれのタイプに適したプログラムを用意しています。

昔は、どちらかというと後者の学び方を重視する傾向がありましたが、実際にはどちらが好ましいということはありません。どちらのタイプも、わが校の「世界に求められるような人材を育成する」という目標につながってくるんです。

生徒のタイプによって心地よいと感じる学び方は異なりますので、それを尊重してサポートするというのが、わが校のコース制度の特徴です。

編集部

なぜ、成績や分野ではなく「学び方」という観点でコースを分けることにしたのでしょうか?

池田先生

大人がいろいろなことの決定権を持ってしまっているという点を見直して、もう1回、子どもたちを主役に戻すということが一番の目的です。

冒頭で「他者のために生きる」や「冒険を促す」という教育理念をご紹介しましたが、一方で今の子ども達の実態はというと、“さとっちゃってる”ような子がとても多いんですよね。とりあえず何も言われないようにとか、自分で考えずに指示待ちをすることが当たり前になっていたりするんです。

でもそれは子どもだけに問題があるのではなくて、大人が子どもの力に蓋をしてしまっている部分もあると考えたんです。特にわが校は小規模な女子校なので、ついつい丁寧すぎるほどに手を差し伸べてしまうんですよね。家庭学習に関しても、言われた宿題をちゃんとする力は必要です。ですが、そこで止まってしまってはとても残念なんですよね。

このような部分を根本から見直した結果、「学び方」の部分から自分で考えて選択してもらおうということになったんです。

白水先生

テストの得点などによるコース分けは、教員が引いた基準にその生徒が達しているかどうかで線を引くような、ある意味、分断を生むような発想ですよね。

わが校が大切にしているのは、学び方も含めて選択肢を広げ、その多様な選択肢の中から自己決定できる生徒を育てるということなんです。

「インディペンデント・シンカー」とも呼んでいるのですが、誰かが決めたことに従うのではなく自立して物事を考え判断できるような人に育ってほしいと願っています。

中1の1年間でじっくり自分と向き合い、自分の意志で学び方を選択

福山暁の星女子中学・高等学校の中学1年生の「動きの中で考える数学」の授業風景

編集部

どちらのコースにするかは、いつ選択するのでしょうか?

池田先生

中1の1年間で、じっくり学び方の体験をしてもらい、自分がどちらにタイプが合っているかを考えてもらいます。そして、中2に進級するタイミングで選択します。

編集部

コースの選択にあたっては、先生方が生徒一人一人の個性に併せてアドバイスをされるのでしょうか?

近石先生

もちろん生徒のことはよく観察して、他の教員とも情報共有しながらどちらのタイプに当てはまりそうかはよく考えますね。

ただ、面談をすると、教員側が思っていたコースと本人が行きたいコースが異なるケースもあります。そういうときは、しっかりと対話をしながら、最終的には生徒の想いを尊重するようにしています。

池田先生

教師側が生徒のタイプを見定める努力をするというよりは、生徒が自分で気付くためのしかけ作りに力を入れています。教師側が考えすぎると、つい口を出したくなってしまいますので(笑)。

例えば体験授業のあとに振り返りをしたり、それを友達に聞いてもらったりといった形で、1年間かけてじっくりと自分と向き合う時間を設けるようにしているんです。

私たちは基本的に口出ししないようにしていますし、保護者の皆さんにも、親が決めるのではなく子どもの考えを尊重していただくようにお伝えしています。

偏差値や点数では測れない、「非認知能力」の向上を目指す

福山暁の星女子中学・高等学校のオーストラリア修学旅行の集合写真

編集部

福山暁の星女子中学・高等学校が新設された2コースでは、どのようなことが学べるのでしょうか?

池田先生

自由な発想が持ち味の生徒が該当する「Creative Learning」コースでは、まだ世界にない問いをみつける力を磨きます。

着実に頑張る力のある生徒が該当する「Update Learning」コースでは、質の高い自学自習能力を身につけます。

学びのプロセスは異なりますが、いずれのコースも基礎学力や認知的な能力だけでなく非認知能力を高められるようなカリキュラムとなっています。そして、テストの点数など目に見える基準だけでなく、主体性などの部分に重きを置いて多面的に能力を評価します。

編集部

いずれのコースも、ただテストで点数がとれるということをゴールにしているのではないということですね。

池田先生

そうですね。わが校の歴史の中にはみっちり受験勉強させることを重要視していた時代ももちろんありましたが、それだけではこれからの時代に活躍できるような人材は育ちません。

大学入試でも総合型選抜や学校推薦型選抜の割合が増えてきており、いわゆるペーパー試験以外の部分を重視する傾向にもなってきています。時代の変化に合わせて、学び方も変えていかなければならないと考えています。

探究型教育が充実。高校生平和大使として活動する生徒も

福山暁の星女子中学・高等学校の生徒が出席した平和大使の結団式

▲平和大使の結団式。福山暁の星女子中学・高等学校の生徒が堂々と発言している

編集部

福山暁の星女子中学・高等学校では、福祉・平和・国際などをテーマとする探究型の教育にも力を入れているとお聞きしています。

生徒さんの中には、「高校生平和大使」として活動されている方もいらっしゃるそうですが、具体的にどのような活動をされているのでしょうか?

池田先生

平和大使に関しては、在学中の生徒も含めて過去に3名が高校生平和大使に選ばれた実績があります。

広島は原爆を経験した県でもありますので、街頭に立って署名を集めてスイスのジュネーブまで届けに行ったり、講演の場で高校生の目線で平和について訴えたりといった活動を行っています。

福山暁の星女子中学・高等学校の生徒が平和大使として活動しているようす

▲スイス・ジュネーブの国連本部まで署名を届けに行くなど、平和大使として多くの取り組みを行った

池田先生

平和大使の任期は1年ですが、その期間の任務が完了したからそれで終わりということではなく、次の平和大使のサポーターとして、卒業後も活動を続けている生徒もいます。

学校としても、暁の星の在学生だからということではなく、その後も含めて、見届けて応援したいと思っているんです。

編集部

在学中の活動だけでなく、平和への想いや後輩たちをサポートしたいという気持ちが、心に根付いているんですね。

子ども食堂立ち上げやスルメの研究も!生徒の自発的な挑戦するカルチャー

福山暁の星女子中学・高等学校の生徒が聖歌を歌っている様子

編集部

そのほかにも、探究的な活動として、生徒が実際に取り組んだ事例があれば教えてください。

池田先生

例えば、こども食堂(※)について自分でいろいろ調べて、活動をもっと世の中に周知するために新聞を立ち上げた生徒がいましたね。
(※)子ども1人でも利用できる、無料もしくは低額で食事ができる食堂

編集部

素晴らしいですね。簡単にできることではないかと思いますが、先生方が意識付けをしたりサポートしたりしているのでしょうか?

池田先生

こちらが意識付けを行うというよりは、生徒が自然に実施してくれている印象ですね。

学校としても、活動したことを校内で発表してもらったりオープンスクールの場などで外部の人に発信したりなどはやっていますが、それを学校のウリにしているわけではありません。

興味関心やちょっとした問題意識のような、小さい種みたいなものを、否定しないで大事にしてあげるということが大切なのではないかと思います。

福山暁の星女子中学・高等学校の講堂

白水先生

総合的な学習や探究の時間を、教員にとって都合のいい枠に当てはめたり、教員の基準で研究の価値を判断したりしないというのが、わが校のポリシーです。

一応、探究テーマに関しては「命・福祉・平和・国際」という枠組みを設けてはいますが、「どんな内容でもいいから、最後はそこにつながればいい」というスタンスなんです。

例えば少し変わった事例として、スルメの研究に打ち込んだ生徒もいました。スルメがとても好きな子だったのですが、女子では結構めずらしいですよね。「このままだとスルメの市場が廃れてしまうから、女子校生たちのニーズがあるスルメが開発できないか」ということを考えたんだそうです。

編集部

面白いですね。そういうさまざまな小さな種を応援する風潮があるからこそ、芽が出て育っていくということなのでしょうね。

白水先生

そうですね。活動している先輩たちの姿を見て、後輩たちが興味を持って活動を受け継いだり、自分なりに新たに企画したりするようになりますし、それが文化・風土として根付いていっていると感じています。

挑戦しようとする人たちを応援する雰囲気が学校全体にあるというのが、わが校のいいところなのではないかと思います。

合格実績だけでなく、入学後の学びを重視して進路選択を支援

福山暁の星女子中学・高等学校の図書館

編集部

ここまでのお話で、福山暁の星女子中学・高等学校では生徒さんの主体性をとても大切にされているということが伝わってきましたが、進路指導はどのように行っているのでしょうか。

池田先生

進路指導のあり方も再検討している段階なのですが、まずは「進路指導」という言葉を取り払って「進路支援」としていこうと思っているんです。

難関大学に合格したなどという実績も大事ですが、大学合格がゴールではありません。「入学後に何を学び、さらにその先自分がどう生きたいのか」を考えて進路を選択することを、しっかりとサポートしたいと思っています。

編集部

生徒が将来を考えるためのサポートとして、実際に行っていることがあれば教えてください。

池田先生

わが校は同じカトリック系の大学である上智大学と高大連携協定を結んでいます。

シスターが学生として上智大学に通っているというようなつながりもありますので、希望する生徒が実際に大学を訪問して話を伺ったり、教会を見学させてもらったりする機会を設けています。

また、今後は大学院生と対話する機会も設けたいと思って計画中です。学部生にはどうしても受験勉強のノウハウが聞きたくなってしまいますから、大学院生の話を聞くことで、入学後の学びに意識を向けて欲しいと思っています。

白水先生

上智大学さんには、大学が立ち上げた海外の企業でボランティアできるようなしくみがあります。連携協定をとおしてわが校の生徒がこうした活動に参加することもできるため、大学入学後だけでなく卒業後の実社会というところにも触れるチャンスも生まれています。

大学との協定というと大学への入口を確保するためと思われがちですが、わが校や上智大学さんが目指しているのは、そうではないんです。上智大学さんにも、早い段階から本質的な学びに目を向けている高校生を支援していきたいという想いがあるんですよ。

編集部

パンフレットやホームページに書いてある内容だけで大学を選択するのは難しいですよね。入ってみたら思っていたのと違ったということもあるかと思うので、在学中から実際の学びを肌で感じられる機会があるというのは、とても素晴らしいですね。

白水先生

地方にいると、どうしてもそういう情報や体験の機会が制限されてしまうんですよね。連携協定などを活かしながら、広い世界に目を向けるための助けができればと思っています。

福山暁の星女子中学・高等学校では「総合型入試」も受験可能

福山暁の星女子中学・高等学校の池田先生、白水先生、近石先生

編集部

最後に、福山暁の星女子中学・高等学校の入試制度についてお伺いしたいと思います。一般入試以外にも、「総合型入試」を導入されているとお聞きしていますが、これはどのような入試なのでしょうか?    

池田先生

総合型入試は、「国語で漢字が書けるか」「数学の計算ができるか」といった点数のものさしに捉われずに、生徒がこれまでどのように学んできたのかというプロセスを評価する入試です。

さきほどのスルメの話のように、学びを大きく捉えて、一人一人がこれまで夢中になって学んできたことについて発表をしてもらうんです。

面接官に向かってではなくグループ4、5人の中でプレゼンして、お互い質問し合うっていうような形式で、子ども達の共感する力ややりぬく力、成長する力などに注目して選考を行っています。

編集部

総合型入試には受験資格はあるのでしょうか?

池田先生

特に設けてないので、誰でも受験可能です。教科型の入試と選択できて、併願も可能です。

中学入試に向けては塾に通って勉強する子が多いかと思いますが、総合型入試ではそういうプロセスは求められていませんので、どんな子にもチャンスがあります。

まだ導入して数年ですが、やってみたらとても面白い入試になりました。1人で緊張してやってきて試験を受けて帰るといった入試とは全く異なっていて、帰るときには子ども達が仲良くなって帰る様子も見られますよ。

編集部

入試においても、筆記試験だけでは見えない部分を重視されているのですね。

インタビューを通じて、福山暁の星女子中学・高等学校では、生徒一人一人の自主性を尊重し、挑戦を応援するというカルチャーが根付いているということがよくわかりました。本日は、たくさんの貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

福山暁の星女子中学・高等学校の進学実績

福山暁の星女子中学・高等学校の大学合格実績を見ると、55名の卒業生のうち国公立大の合格者が12名です(2024年度の進路状況より)。また、早稲田・慶應・上智・東京理科大学などの難関私立大への合格者も毎年安定的に輩出しています。

総合型選抜・学校推薦型選抜など、さまざまな選抜方法で受験にチャレンジする生徒が増えているようです。

■近年の大学合格実績(福山暁の星女子中学・高等学校公式サイト)
https://www.akenohoshi.ed.jp/publics/index/418/

福山暁の星女子中学・高等学校に通う生徒・保護者の声

福山暁の星女子中学・高等学校の記念祭バザーのようす

▲記念祭バザーでは、来場者に生徒の作品を販売している。保護者や地域の方々との絆が深いのも同校の特徴

先生が熱心です。塾に行かなくても授業外も補習をやってくれるので助かっています。

特に英語には力を入れていて英検の取得率が高いです。

先輩後輩の上下関係を感じず、みんなとても仲がいいです!

生徒の自主性を大切にし、自立心を養う教育をしてくれます。

熱心な先生が多く、授業外でもしっかりと勉強をサポートしてもらえる、相談に乗ってもらえるという声が多くみられました。

福山暁の星女子中学・高等学校へのお問い合わせ

問い合わせ先 福山暁の星女子中学・高等学校
住所 広島県福山市西深津町3丁目4番1号
電話番号 084-922-1682
公式サイト https://www.akenohoshi.ed.jp/cyukou/