特色ある教育プログラムで次代を担う人材を育成する、注目の学校を特集するこの企画。今回は東京都板橋区にある私立中高一貫共学校「淑徳中学校・高等学校」を紹介します。
学校法人大乗淑徳学園の運営する淑徳中学校・高等学校は、1892年に創立された130年超の歴史を持つ伝統校です。大乗仏教精神に基づく心の教育を根幹に、中学生全員の最大3か月の海外研修や高等学校の「留学コース」における1年間留学など、特色ある国際教育を展開しています。近年では難関大学や海外大学への進学者が増加しており、その進学実績も注目されています。
今回は副校長である五島德之先生に、同校の教育理念や「心の教育」などの教育プログラムの特徴を伺いました。
この記事の目次
「利他共生の心」を備えた有為な人を育む、淑徳中学校・高等学校の教育理念
▲インタビューにご対応いただいた五島先生
まずは御校の教育理念を教えていただけますか?
淑徳中学校・高等学校の前身となる淑徳女学校を創設された浄土宗の尼僧・輪島聞声(わじま・もんじょう)先生は、「進みゆく世におくれるな、有為な人間になれよ」という理念を唱えられました。本校でもその志を受け継ぎ、大乗仏教の精神に則って有為な人材、つまり社会の役に立つ人材の育成を目指しています。
そのメッセージを生徒にも分かりやすい言葉で具現化したのが、淑徳中学校・高等学校の教育理念である「LIFE・LOVE・LIBERTY」の“3つのL”です。LIFEはすべての生命を尊ぶ心、LOVEは自分を愛するように他者を愛する無償の愛、LIBERTYは社会の束縛から解放された自由な心を意味します。仏教の心を現代に生かすこの“3つのL”を、本校の教育の柱に据えています。
御校の目指す「有為な人間」というのはどのような人物像なのでしょうか。
有為な人間というのは、自身の夢の実現を通じて社会の役に立てる人間だと考えます。夢を叶えるためには、当然教養や知識を身につける必要があります。一方で自身の夢の実現を社会に役立てていくためには、学力・知力だけでなく豊かな人間性と倫理観を備えていることが不可欠でしょう。本校の教育は、この学力と情操をバランス良く持った有為な人物を世に送り出すことを目指しています。
また有為な人間というのは、必ずしもリーダーシップを持ち主役として輝く人だけを指すわけではありません。本校が創立以来大切にしているのが、大乗仏教の教えである「利他共生の心」です。利他共生の心とは、他者に生かされて他者を生かし、共に生きることを意味します。周囲に対する優しさを持ち、共に生きていける利他共生の心を持つ人こそが、これからの時代に求められる有為な人物だと考えています。
淑徳中学校・高等学校の心の教育を象徴する「淑徳の時間」
御校の教育理念を浸透させる取り組みとして「心の教育」があると伺ったのですが、こちらはどのような内容なのでしょうか。
本校の心の教育を象徴する伝統的な取り組みが、建学の精神や仏教の教えを学ぶ「淑徳の時間」です。淑徳の時間は中高6年間を通して週に1回実施されています。
中学校の淑徳の時間では、本校の校祖である輪島聞声先生、そして学園を発展させた学祖の長谷川良信先生の思いや生き方を学んでいきます。また仏教の教えから人生に必要な力を学び取る仏教教育も実施しています。
仏教教育では具体的に、どのようなことを学ぶのですか?
中学校に入学したばかりの生徒は仏教の基礎知識を学ぶこともありますが、どちらかというと身近な課題を仏教の教えから考えるという内容が多くなっています。例えば「電車で必要な人に席を譲りたいけれどその勇気が出ないときにどうするのか」や「満員電車でイライラしてしまうときの心の落ち着け方」など、生徒にとって本当に身近なことをテーマとしています。僧籍を持つ教員が法話のような形でお話をするため、自分の日常生活や人生にとって為になるお話を聞けるのが特徴です。
なるほど。高校の「淑徳の時間」の内容も教えてください。
高校でも建学の精神や仏教の教えを学ぶのですが、さらに発展した形として探究型学習も行っています。校祖や学祖だけでなく世の中で有為な活動をしている人を調べたり、「共生」をテーマにSDGsの探究活動を行ったりと、自分自身が有為な人間となっていくためにさらに学びを深める教育活動を行っています。
学校行事も生徒が主導。心の教育を通じた“3L”の浸透が、主体性につながる
淑徳中学校・高等学校での心の教育が生徒さんの行動に表れているなと感じる瞬間はありますか?
生徒の主体的な取り組みが生まれているのは、本校の心の教育の1つの成果なのではないでしょうか。例えば高校では有志でSDGsに関する活動を行う「SDGs+(プラス)」という団体が発足されています。生徒会を中心に生まれた団体で、最初は5、6人だったのが今では30人近い生徒が参加して積極的に活動しています。
また本校では昔から学校案内を生徒が行っており、元々は教員側が生徒を指名していたのですが、それも最近では生徒が主体的に参加する形に変わりました。こういった動きからも、利他共生の心が育っていることを実感しています。
▲購買部のお弁当の容器を再利用可能なタッパーに変更するなど、SDGs+ではさまざまなアイディアを実現
生徒の主体性という点では、体育祭や文化祭などの学校行事の運営主体が生徒中心になってきているというのも大きな変化です。体育祭は種目から生徒が考えているんですよ。体育祭では組を誕生月で4つに分けた縦割りで実施しているのも特徴で、高校3年生が中学1年生にいろいろと教えています。そういう姿からも、“3L”の教えが根付いていることを実感します。
さまざまな人の講演を聞く「仏教行事」で生徒の感性を磨く
他にも、心の教育のための取り組みはありますか?
毎朝の「朝のおつとめ」や年間4回の仏教行事など、折に触れて感性を育む機会を設けています。「朝のおつとめ」では中学生の日直の生徒や希望生徒が集って皆で般若心経を読経しているのですが、そこでは校長先生や教員が必ず短いお話をしており、仏教の教えに触れられる機会となっています。
▲「朝のおつとめ」が実施される90周年記念室。中心には阿弥陀様が安置されている
また仏教行事では、外部から人をお呼びしていろいろな講演をしてもらっています。海外出身の方にもお話いただくことで、国際情勢の理解や、本校の“3つのL”の普遍性を知る機会にもなっています。
海外の方は、例えばどのような方にお越しいただいているのですか?
淑徳大学には仏教に精通されたチェコ出身の教授がいらっしゃるため、お釈迦様の誕生を祝す4月の「花まつり」の際にはその方をお呼びし、チェコスロバキア政権下でのご自身の経験などをお話いただきました。
またお釈迦さまが悟りを開かれたことを記念する12月の「成道会」では、ウクライナ出身でウクライナの民族楽器・バンドゥーラの演奏家のカテリーナ・グジー様にお越しいただきました。チェルノブイリ原発事故の影響で町から一家全員強制退去されたというご自身の過去や、現在母国で戦っている親族がいるというお話をしていただきました。
お話を聞いた生徒さんの反応はいかがでしょうか。
やはりお話を聞くことで初めて知ることも多いため、勉強にもなりますし、感じ入ることも多いようです。お話を聞いている際に他者への理解に努めようという姿勢が感じ取れるのも印象的でした。
例えば、ある絵が得意な生徒は、お話を聞いて描いた絵をカテリーナさんに届けていました。先ほどの「電車で席を譲る勇気」の話に通じますが、他者を思い行動に移す勇気が自然と育まれているのだなと感じましたね。
クラス全員が1年留学!淑徳中学校・高等学校の国際教育の特徴
続いて御校の国際教育について伺います。高等学校ではクラス全員留学制度があるとのことですが、こちらの特徴を教えていただけますか?
本校は他の学校に先駆けて40年以上前から国際交流の取り組みを開始しており、この「クラス全員留学制度」は本校が日本で初めて導入して以来約35年継続して実施しています。
クラス全員留学は本校の高校の「留学コース」の制度で、高校1年生の1学期修了後にクラス全員で海外で1年間の高校生活を送るものです。アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドの5か国にある約20校の提携学校から留学先を選択可能となっています。留学先の選択肢が豊富にあることから、コロナ禍でもほぼ中断することなく実施できました。
クラス全員留学のメリットは、全員が同時期・同じ期間留学することで留学した生徒とそれ以外の生徒との間にカリキュラムの進捗の差が出ないことです。またクラスが留学経験者という、いわゆる同志の集まりとなることで、クラス全体の目的意識を底上げできる点も魅力といえるでしょう。
「クラス全員」とはいっても同じ学校に通うのは2、3人のため、留学先で同じクラスの生徒同士固まってしまう心配もありません。もちろんその分大変なこともありますが、1年間さまざまな苦労に直面するからこそ身につけられる力というのは大きいと思います。
1年後に帰国した生徒さんからは、やはり大きな成長を感じますか?
本当にすごく成長を感じます。特に英検の結果は顕著ですね。準1級は当たり前で、1級を狙える生徒がいる程です。TOEIC900点を超える生徒もいます。上智大学や早稲田大学、慶應義塾大学といった難関私立大学にAO入試で合格する生徒や、国公立大学に挑戦する生徒など、進路の面でも大きな影響を与えています。
実践的な英語に触れる「IP」や全員の海外研修など、中学校から国際感覚を磨く
留学コースの他、全校生徒を対象とした特徴的な国際教育はありますか?
中学1年生を対象に、教科の英語に加えて英語を使って探究や調べ学習を行う授業「IP(International Perspective)」を行っているのが特徴です。
IPではクラスを3つに分けた少人数制のクラスで、ネイティブ教員による英会話を中心とした授業を行っています。IPの授業を実施する「イングリッシュ・スタジオ」はカフェのような空間で、中学1年生で初めてネイティブ教員と話す際にもリラックスできるような工夫を行っているのもポイントです。
▲カフェのような空間でネイティブ教員と会話できる「イングリッシュ・スタジオ」
また中学3年生のときに全員が海外研修を体験できるのも本校の国際教育の魅力です。グローバル社会で活躍していく上で、早い段階から世界を知って広い視野を身につけることは重要な要素となるため、中学校の内に海外を経験できる機会を用意しています。
中学3年生の海外研修は、1週間と3か月から選べます。滞在先ではホームステイしながら英語のみで過ごすため、中学生活で身につけた英語力やグローバル感覚を、実際の海外で試す良い機会となっています。そこでさらに海外での経験を積みたいと思った生徒が高等学校での留学コースを選択するという流れになっています。
淑徳中学校・高等学校からのメッセージ
▲約35年の歴史を持つ「留学コース」は1年留学しても3年で卒業できる特別カリキュラムで、海外大学への進学率も高い。
最後に、淑徳中学校・高等学校での学校生活に興味を持った読者の方に向けてメッセージをお願いします。
本校が大切にする「利他共生の心」というのは、他者と関わるからこそ育んでいけるものです。だからこそ、学校生活の中でいろいろな人と関わって成長していくことはとても大切だと考えています。本校の6年間でのさまざまな経験を経て、人に対する優しさや愛情を持ち、グローバルに活躍できる人材を育んでいけたらと考えています。
また淑徳中学校・高等学校ではキャリア教育の一環として、生徒のご両親が先生となってお話する機会を設けているのも特徴です。学校とご家庭とで協力しながら、お子様の成長を見守っていけると嬉しいです。
淑徳中学校・高等学校の進学実績
淑徳中学校・高等学校の過去5年の現役合格実績は毎年増加しています。2023年度の合格実績をみると、東京大学や京都大学といった最難関大学を始め国公立大学への合格者を数多く輩出しており、また早慶上理ICUへの合格者は100人を大きく超える結果となっています。医学部医学科への現役合格者も輩出しています。
また海外大学への進学実績が増えているのも特徴です。海外大学志望者へのサポートも充実しており、留学コース以外の生徒が海外大学に進学している例もあります。
■淑徳高等学校の進学実績(公式サイト)
https://www.shukutoku.ed.jp/achievement/result
淑徳中学校・高等学校への保護者・在校生の口コミ
▲最上階の5階には見晴らしの良い屋上庭園もあり、晴れた日は東京スカイツリーも見渡せる。
ここでは、淑徳中学校・高等学校に寄せられた保護者や在校生の方の口コミを一部抜粋して紹介します。
在校生を中心に多く寄せられたのが、校舎の魅力を評価する声です。学園ドラマの撮影場所に使用されたこともある、洗練されたデザインのキャンパスで学校生活を送ることに多くの在校生が魅力を感じているようです。
また仏教教育や学習サポート、学校行事への高評価も多く聞かれました。
▲開放感のある廊下にガラス黒板など充実の設備を備える校舎。武道場と第二特別教室を兼ね備えた「洗心館」には茶道室もある(スクロールで写真がご覧いただけます→)
淑徳中学校・高等学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人大乗淑徳学園 |
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住所 | 東京都板橋区前野町5-14-1 |
電話番号 | 03-3969-7411 |
問い合わせ先 | https://shukutoku.ed.jp/forms/contact |
公式ページ | https://shukutoku.ed.jp/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください