ぽてん読者の皆さまに注目の学校を紹介するこの企画。今回は広島県広島市にある「広島なぎさ中学校・高等学校」を取材しました。
広島なぎさ中学校・高等学校は中高一貫教育を行う私立の共学校です。「次世代の進学校」を目指し、生徒一人ひとりに寄り添いながら、豊かな知性と感性を身につけて、夢を実現できる力を育んでいます。同校の特徴は、五感を使って創造力を育む「創造国際科」や、自分の「生き方」を探すことをテーマとする「人間科」など、独自の教科を設定しプログラムを実施していることです。
今回は、入試広報部長の橋本佳岳先生と副部長の岡本篤先生に、建学の精神や広島なぎさ中学校・高等学校ならではの取り組みについてインタビューしました。
この記事の目次
広島なぎさ中学校・高等学校の建学の精神「教育は愛なり」
▲右から橋本佳岳先生と岡本篤先生
まず、広島なぎさ中学校・高等学校の建学の精神について教えてください。
建学の精神は「教育は愛なり」です。本校が属する鶴学園の校祖である鶴虎太郎先生の教育精神をあらわした遺訓を受け継いでおります。ですから、教職員は一人ひとりの生徒に愛を持って接しています。
教育方針は「常に神と共に歩み社会に奉仕する」です。本校では宗教教育を行なっていませんので、神というのは抽象的な存在、いわば天の誰かを指しています。天の誰かが見ているから、自分をしっかりと制御して社会に奉仕しましょうという意味で、神を自分の良心と言い換えることもできるかと思います。
また、本校独自のパーパス(目的・志)は「知性と感性、夢へのチカラ」としており、知性と感性をともに磨くことが夢を実現する力になるということを示しています。本校では4つの教育目標「21世紀型高学力の養成」「国際性の涵養(かんよう)(※)」「創造力の錬磨」「人間力の育成」を掲げており、これら4つを「知性と感性」という言葉で表現しています。
(※)自然にしみこむように養成すること
広島なぎさ中学校・高等学校では、本校で学んだ生徒たちが、知性と感性を持って、それぞれの夢へ向かってはばたけるような教育を目指しているんです。
広島なぎさ中学校・高等学校の特色あるカリキュラム
広島なぎさ中学校・高等学校では、4つの教育目標「国際性の涵養」と「創造力の錬磨」、「人間力の育成」の体得を目指した独自のカリキュラムが実施されています。ここからは、中でも特徴的な「交換留学」「創造国際科」「仕事Watching」について詳しく伺いました。
国際性の涵養を目指すグローバル教育:交換留学をきっかけに将来の夢に変化も
▲交換留学生と一緒に学ぶ姿が日常となっている
広島なぎさ中学校・高等学校の4つの教育目標に関する取り組みについてご紹介いただけますでしょうか。
「国際性の涵養」を目指す取り組みについては、海外の学校との交換留学があります。中学2年生ではニュージーランド、中学3年生ではタイ、高校1年生ではアメリカの学校との交換留学を行なっています。なかでもニュージーランドのパサデナ中学校との交流は約20年間続いており、本校の生徒が留学するだけでなくパサデナの生徒も本校に留学しています。
本校の交換留学の大きな特徴は、互いの学校の教職員がオリジナルでプログラムを作っている点です。例えば、パサデナ中学校への留学時にどの授業に参加させるのが本校の生徒にとってもっとも効果的かなどを、本校の英語科の教員とパサデナ中学校の先生が話し合って毎年検討しています。これによって、形だけでの留学でなく、本当に目指すべき効果が得られるものになっていると思います。
他にも、オリジナルプログラムだからこそのメリットはありますか?
教員の思いが脈々と受け継がれていくところですね。交換留学といっても2週間のみの滞在ですので語学力が飛躍的に伸びるわけではありません。ですが、異文化をじかに体験をすることで、生徒は大きな刺激を受けられます。実際、留学をきっかけに、国際系の学部への進学を目指したり、国際的に活躍できる仕事に就きたいと考えたりする生徒もいました。
▲中学3年生ではタイの学校との交換留学がある
海外へ留学していない生徒も、国際交流する機会はあるのでしょうか?
先ほどお伝えしたニュージーランドのパサデナからの留学生だけでなく、他の国からの留学生も毎年受け入れており、同じ年頃の外国人留学生と一緒に、授業を受けたり習字をしたり遊んだりと、他国の生徒と触れ合う機会があります。そのため、校内に他国の人がいることを生徒たちは自然に受け入れていて、他文化への理解や外国人に対するホスピタリティなども向上しています。
また、留学生に対して、学年全体で歓迎会を行っています。そこでは学年のカラーによって毎年演目は変わりますが、空手の演舞や和太鼓を披露したり、日本舞踊を踊ってみせたり、けん玉を一緒にやったりと、基本的には生徒の得意なことを活かした国際交流をしています。
国際交流において、御校ならではという取り組みはあるでしょうか?
本校では、海外からの留学生に対して、平和公園や厳島神社などの近隣の観光地を「なぎさ留学生ガイド」が紹介するという取り組みを行っています。このガイドは留学生を受け入れた学年の生徒が務めるのですが、専用の試験に合格しなければガイドになれないにも関わらず、毎年多くの希望者がいます。
広島の平和公園は世界的にも大きな意味を持つスポットなので、ガイドは責任重大ですね。
そうですね。日本のことや広島のことを深く理解していないとガイドはできないので、自分の立ち位置やアイデンティティをあたらめて考える必要があります。国際教育は、他国のことを知るだけではなく、自国の文化をいかに知ってもらうかという観点で学ぶことも重要です。そこがまた面白いところでもあると思います。
創造力の錬磨を目指す科目「創造国際科」:五感を使って感性を養う
御校の「創造国際科」というカリキュラムは他では見ない珍しいものだと思うのですが、これも教育目標を反映したものなのでしょうか。
創造国際科は「創造力の錬磨」を目指してつくられた、家庭科・技術・美術を組み合わせたような科目です。広島なぎさ中学校独自の学校指定科目として週に2時間取り組んでおり、五感を使って自分の感覚や創造力を育むことを目的としています。
例えば「彩(いろどり)」という視覚に特化した授業では、歌舞伎の隈取を互いの顔に化粧をし合い色の使い方や塗り方の与える印象について学んだり、自分のロゴマークやお菓子のパッケージデザインを制作することで視覚が人に与える印象を学んだりしています。
中学1年生の創造国際科の夏休みの課題は、セミの抜け殻を集めて個数を競うというもので、本校の伝統的なプログラムのひとつです。
生物に興味を持ってもらうことだけでなく、親子特にお父さんとのコミュニケーションを増やすことも目的の1つです。中学生になると親子で接する機会が減る傾向にあるため、この課題をきっかけに会話を持ってほしいと考えています。また、帰省先でセミの抜け殻を集めれば、ご祖父・ご祖母様との交流も深まりますよね。
保護者の方からも「セミの抜け殻集めのおかげで家族の会話が増えました」という声をいただいています。将来の夢やお父さんの仕事についてなど、いろいろ話すきっかけになるようです。
セミの抜け殻は集めておしまいではなく、兜にしたり雨傘にくっつけて作品を作ったりしています。楽しかったで終わるのではなく、最終的にものづくりに発展させるところが創造国際科の特徴です。
また大切なのは、体験を通じて何を感じたかを自分の言葉でしっかりアウトプットしていくことです。そこから「自分は将来、何を目指していくのか」というところへ繋げていけたらと考えています。
人間力の育成を目指す職業体験:多角的な視点を持つきっかけに
▲職業体験発表会。各自工夫を凝らしたプレゼンで会場は盛り上がる
御校の「人間科」というカリキュラムも興味深いですね。具体的にはどんな取り組みをしていますか。
人間科は「人間力の育成」を目指したカリキュラムです。自分の興味を広げ、多角的な視点を持ち、自分がどのように生きていくべきなのか考えるためのきっかけとなるさまざまな行事や授業があります。特徴的な学びの一つが中学3年生で行う職業体験学習「仕事Watching」です。幼稚園や福祉施設、映画館や弁護士事務所、放送局、赤十字センターなど30種以上の職場を訪問し、仕事されている様子を見たり実際に仕事を体験したりします。
本校の職業体験の特徴は、1日体験して終わりではない点です。体験前はチームに分かれて2か月で下調べを行い、体験後も1か月半かけてプレゼンの準備を行います。プレゼンはコンペ形式で、内容の良い発表は最終的に全学年に聞いてもらいます。
また、プレゼンはタブレットを使用しないルールです。ダンボールを使うなど、さまざまな工夫をして発表します。みんな「コンペに勝ちたい」と前向きに取り組んでいるのですが、中には、赤血球・白血球の役割を劇で演じて見せたりするチームもありました。とても楽しくて、生徒たちはみんな笑いながら発表を見ているのですが、そうした場面が多いのは本校らしさだと思っています。
生徒はこれらの学びを通じて仕事への興味関心を高め、社会人として生きるための資質を知り、自分自身の将来像を考えます。
印象に残っている職業体験はありますか。
林業の体験が印象的でした。直径20cmくらいの木を切り出して枝打ちをして、森から下ろしてという一連の流れを経験します。その体験をしたチームは、森の保水力や森を守ることの重要性などについて学んでプレゼンしていました。
職業体験を経て、生徒たちに変化は見られるでしょうか?
この職業体験だけでなく、創造国際科のセミの抜け殻集めなどの取り組みも含めて、すべて体験したあとに生徒自身で感じたことをアウトプットする機会があります。そうした行事や取り組みが各学年でいくつもあるのですが、これらのいくつもの挑戦や体験で感じたことを自分なりの手段で表現することの積み重ねが、生徒たちの成長に繋がっていると思います。そのためか、「将来の選択肢が広がった」と話してくれる卒業生もたくさんいるんです。
▲人間科では視覚障がい者の感覚を擬似体験するブラインドウォークも
広島なぎさ中学校・高等学校からのメッセージ
▲文化祭の様子
最後に、広島なぎさ中学校・高等学校からメッセージをお願いいたします。
本校は行事が多く、特徴的な教育も行っています。さまざまな生徒が一人ひとりに合った体験ができる学校です。
特に中学1年生は、まだ自分がどんな人間なのか、どんなことをしたいのかが定かでない生徒も少なくありません。そのような中で多様な行事や特色ある教育を体験することは、将来の展望が開けるきっかけにもなります。こうした点が伝統校とは違う本校の特徴といえるでしょう。
加えて、本校は「生徒の数だけ進路がある」という考えで進路指導を行なっています。東大・京大に進学する生徒や芸術系の大学に進学する生徒、専門学校や海外の大学進学を選択する生徒もおり、可能性が広がるような学校です。
これは、型にはめる教育ではなく、生徒各々の興味や関心のある分野に関連するようなプログラムを多種用意し、「こんなこともできるよ」「こっちにも行けるよ」と示しているためです。それが、生徒たちの夢を開くチカラになっていると考えています。
多くの卒業生が夢を叶えて本校に遊びに来てくれるのですが、これから入学する生徒さんたちにも同じように可能性をどんどん広げていってほしいですね。
広島なぎさ中学校・高等学校の進学実績
広島なぎさ高等学校では、難関の国公立・私立大学に多くの生徒が進学しています。東大・京大と医学部医学科へは2023年度は合計13名が合格、国公立大学全体では合計63名が合格しているほか、早慶上理ICU(※)へは合計15名が合格しています。
(※)難関私立大「早稲田大学」「慶應義塾大学」「上智大学」「東京理科大学」「国際基督教大学(ICU)」をまとめた名称
「次世代の進学校」として、生徒一人ひとりに寄り添った進路指導が実を結んだ形です。
■進学実績(広島なぎさ中学校・高等学校公式サイト)
https://www.nagisa.ed.jp/high/course/
広島なぎさ中学校・高等学校の卒業生・保護者の口コミ
広島なぎさ中学校・高等学校の卒業生と保護者の声から、いくつか抜粋しました。
先生のフォローを受けながら、広島なぎさ中学校独自のプログラムに自由に取り組み、可能性を広げているようです。
広島なぎさ中学校・高等学校へのお問い合わせ
運営 | 学校法人鶴学園 |
---|---|
住所 | 広島県広島市佐伯区海老山南2丁目2-1 |
電話番号 | 082-921-2137 |
問い合わせ先 | お問い合わせフォーム |
公式ページ | https://www.nagisa.ed.jp/high/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください