この記事では、特色ある教育に取り組む“注目の学校”として、北海道函館市にある「函館白百合学園中学校・高等学校」をご紹介します。
東京ドーム約5.5個分の広大な敷地に校舎を構える函館白百合学園中学校・高等学校は、学校法人白百合学園が運営する私立の中高一貫女子校です。同法人が全国に展開する7つのカトリック系ミッションスクールのなかで最も歴史が古く、中学・高校ともにキリスト教の精神に基づいた豊かな人格育成を目指しています。
中学1、2年生ではすべての英語の授業で日本人とネイティブ教員によるチームティーチングを行うなど、英語教育に尽力している点が大きな特徴です。また、高校は総合進学コース・看護医療系進学コース・特別進学コース(LB)の3コース制で、生徒一人ひとりの目指す進学先や人物像に寄り添った学習カリキュラムが組まれています。
今回、ぽてんでは函館白百合学園中学校において入試広報中学主任を務める安部あゆ先生にインタビュー取材を行い、同校の教育方針や学習カリキュラムの特色などを詳しく教えていただきました!
この記事の目次
「隣人愛」精神に基づく函館白百合学園の教育理念
まず、函館白百合学園中学校・高等学校の教育方針について教えてください。
本校における建学の精神は、「従順・勤勉・愛徳」です。正しいことに対して従順に従い、能力を磨いて社会へ貢献し、愛を持って周囲と接するといった意味があり、なかでもカトリックを基盤とした「隣人愛」を大切にした教育活動を行っています。
「隣人愛」とは身近な人を大切にすることで、1878年(明治11年)にフランスのシャルトル聖パウロ修道女会から3人の修道女が函館を訪れて女性と子どもにその教えを伝えたことが始まりです。本校だけでなく白百合学園全体として「隣人愛」の考え方を受け継いでおり、他者を自分自身のように愛し、優しく手を差し伸べるような人になってほしいという想いがベースにあります。
たとえば週1回ある授業の「宗教」では、思いやりの心や奉仕の心、当たり前に生活できることを感謝する気持ちを育みます。また、毎日の朝礼時にも聖書朗読や聖歌を歌う時間があり、聖書の一節にフォーカスして意味を考える時間も設けています。
さらに、心を落ち着かせてその日・その時間を大切に過ごせるよう、毎日朝礼前の時間帯で静かに時間を過ごす「サイレントアワー」や瞑目の時間を設けています。朝礼や終礼、食前食後の際にも毎日お祈りをしていることも特徴です。
お祈りは、世界中の人々にとって、自分が当たり前だと感じている環境が当たり前ではないこと、様々な環境で過ごしている人々の幸せを願って行っています。毎日、お祈りを通して身近な人から世界中の人々について考えることも、校訓である「従順・勤勉・愛徳」や「隣人愛」の精神を身につけていく上で重要な意味を持っていると思います。
▲玄関ホールをはじめ、校内のいたるところにマリア像が設置されています
「宗教の授業」では、具体的にどのような学習によって思いやりの心や奉仕の心、感謝の心を育めるのか教えてください。
この授業では、白百合学園の歴史や聖書を学び、キリストの教えに基づく価値観を育んでいます。
たとえば当学園の歴史については、3人の修道女の方がフランスから函館という未知の地に派遣された際に「どのような想いで子女に向けての教育や福祉活動を行ったのか」を学びます。また、聖書には「当たり前にできていることのありがたさ」に関する教えがたくさん書かれているので、授業ではそれぞれの教えをひとつひとつ読み解いていく形です。
▲「宗教の授業」を通じて、社会における自分の役割や使命について考えます
こうした宗教の授業があることから「生徒も教員も全員クリスチャンですか?」と聞かれることもあるのですが、決してそういうわけではなく、現に私もクリスチャンではありません。あくまで本校はカトリックの教えを大切にして教育活動を行っており、思いやりの心や奉仕の心、感謝の心を育むことは宗教に関係なく大切であると考えています。
社会貢献意識を育むボランティア活動の取り組み
「宗教の授業」のほかに、思いやりの心や奉仕の心、感謝の心を育成する取り組みがあればご紹介ください。
本校には「社会活動委員」と高校生が中心となって活動する「福祉局」があり、委員会活動の一環としてボランティア活動を行っております。牛乳パックやテレホンカードを回収して寄付したり、クリスマス募金などの募金活動で得られた募金を「難民を助ける会」や「国境なき医師団」などへ寄付しています。
また、能登で起きた震災時には「現地はどのような状況で、地域の方はどのようなことに困っているのか」を福祉局が全クラスに向けて発信し、募金活動によって集まった義援金を寄付しました。いろいろなところにアンテナを張って募金やリサイクルなどの活動を計画するなど、大変積極的に取り組む生徒が多いですよ。
ほかには、中学1年生は総合探究の時間を使って地域の保育園や子ども園へ出向き、園児とのふれあい活動を行っていることも本校ならではの特徴だと思います。
▲こども園でのボランティア活動を通じて、幼児教育に興味を持つ生徒も多くみられます
函館白百合学園の実践重視の英語教育プログラム
続いては、函館白百合学園中学校における大きな特色となっている「英語教育」についてお話を伺っていきます。
ネイティブ教員と日本人教員によるチームティーチングの特徴
御校では英語教育にもかなり力を入れているそうですね。どのような魅力があるのか具体的に教えてください。
本校では、週に6日間英語の授業がある学年もあり、英語を学ぶ時間を多く確保しています。また、中学1・2年生の間は基本的にネイティブ教員と日本人教員によるチームティーチングで授業を行っていることも特徴のひとつです。発音や表現の仕方などはネイティブ教員が、文法的な部分は日本人教員が指導することで、正しく効率的に英語を習得できます。
ちなみに、ネイティブ教員たちは副担任としても生徒と関わるため、たとえば休み時間や掃除の時間、放課後など、授業以外の時間にもネイティブ教員とのコミュニケーションは日常的に行っています。生徒から積極的に話しかけているほか、ネイティブ教員からも「最近どう?」「宿題できた?」といった感じで気さくに声をかけています。
英語劇とプレゼンテーションで育む表現力
▲オールイングリッシュで実施される英語劇の様子
御校では、英語で発表する機会も多く設けているそうですね。
はい。学校祭の「白百合祭」において、中学2年生は英語劇を、3年生は英語のプレゼンテーションを発表する機会を設けています。
英語劇の台本はネイティブ教員が作成したオリジナルで、台詞はすべて英語です。『不思議の国のアリス』や『ハリーポッター』、『アラジン』といった物語をベースとして生徒が楽しく演じられるようなアレンジがされており、英語を表現する楽しさを実感できる良い機会になっています。
▲『アラジン』のストーリーをベースとした英語劇。衣装も本格的です!
一方、プレゼンテーションのテーマは生徒自身が決めています。和菓子などの日本の食文化や、函館について、白百合学園について話す生徒が多く、海外の方に向けて紹介する形のプレゼンテーションを実施しています。
▲中学3年次に行われるプレゼンテーションは、3年間の英語学習の集大成です
安部先生が見て来られたプレゼンテーションの中で、特に印象に残っている発表があればご紹介ください。
函館は海外のお客様が多いこともあり、そのシチュエーションを想定して“バスガイドさん形式”で函館のまちを紹介したプレゼンテーションがとても印象的でした。「日本最古の観覧車がありますよ」「四角いタイプの昔ながらの電柱が今も使われています」といった豆知識がふんだんに盛り込まれていて、函館白百合らしい素敵な発表だったと思います。
函館市民、あるいは日本人にとっては当たり前でも海外の方にとっては未知のことも多いですし、文化の違いによって注目する部分が異なる場合も多いです。そのため、ネイティブ教員は英語のスキル面だけでなく「どのように表現したら海外の方に伝わりやすいか」「どうしたら日本の文化の魅力を上手に伝えられるか」を意識して生徒のサポートを行っています。
小学生の英語教育をサポートする「英語アシスタント」で力試し
校内での発表のほかに、英語関連の取り組みがあれば教えてください。
中学生を対象に、近隣の小学校で英語教育のお手伝いをする「英語アシスタント」といった取り組みも行っています。小学生と交互に並んで一緒に歌を歌ったり、困っていたらアドバイスをしてあげたりする活動です。
逆に小学生を本校に招いて英語のアクティビティを実施することもあり、生徒は普段の授業で習得したことを活かして積極的に取り組んでいます。
異文化理解を深める語学研修プログラム
ところで、函館白百合学園中学校・高等学校では異文化交流にも力を入れているそうですね。
はい。中学3年次の修学旅行先として福島県の「ブリティッシュヒルズ」を訪れ、英会話レッスンや異文化体験を毎年行っています。
▲中世英国の村を再現した「ブリティッシュヒルズ」での語学研修
▲ブリティッシュヒルズでは本格的な英国式テーブルマナーも体験!
コロナ禍前までは、シャルトル聖パウロ修道女会を設立母体とするフィリピンの姉妹校で任意参加で高校生対象の海外研修を実施しており、ボランティア体験や英語での会話を主体とするホームステイ体験を通してたくさんの学びを得られていました。
個々の進路に応じた函館白百合学園の3コース制カリキュラム
高校では、3コース制で学習カリキュラムが組まれているそうですね。
はい。自身の進路希望や目指すべき将来像に応じて選択できるようになっています。各コースの特徴について説明しますね。
まず、「総合進学コース」は4年制大学や短大、専門学校、就職などの幅広い進路に対応しているコースです。各教科指導に加えて独自のキャリア教育である『WillB プログラム』も取り入れながら、社会で生き抜く力の習得や、自分に合った進路の発見などをサポートしています。
「看護・医療系進学コース」は看護・医療系の大学や短大、看護系の専門学校への現役合格を目指すコースです。理系科目に重点を置いた学習カリキュラムが整備されているほか、現役の医療従事者による最先端医療に関する講演や総合病院での医療実習といった体験型の学びも充実しています。
そして、「特別進学コース(LBコース)」は部活動などと勉学を両立したい生徒におすすめのコースで、LB特講という無料の講習でしっかりと着実に現役合格するための学力をつけていきます。第1講は終礼後すぐ、第2講は部活動後の18時半から行われるため、部活生も安心して部活動と勉強の両立ができます。
多くの難関大学合格実績もあり、授業も進学を意識した内容となっています。さまざまなことにチャレンジしながら自分の可能性を見つけることが可能となっており、将来的にリーダーとして活躍する女性の育成を目指しています。
御校独自の『WillB プログラム』について、具体的な内容を教えてください。
『WillB プログラム』を実施している「総合進学コース」は高校3年間かけてゆっくりと自分の進路を見つけていくコースとなっており、『WillB プログラム』では進路を考える土台になるような多彩な活動を用意しています。
たとえば、企業への就職に興味がある生徒に向けてさまざまなジャンルの企業のインターンシップやビジネスマナー・エチケット講座を実施したり、保育士を志す生徒を対象に幼児教育に関する講座やピアノ講座を提供したり、異文化や国際交流に興味を持っている生徒へ韓国語の講座を行ったりといった形です。
将来的にどのような仕事に就きたいのか、それを踏まえてどのような進学先を選べばいいのかを、多彩な体験を通じて決めることが可能です。
▲「WillB プログラム」で実施された歯医者でのインターンシップ
▲書店でのインターンシップ
▲店頭における商品陳列のインターンシップ
▲幼稚園でのインターンシップ
生徒の皆さんは、『WillB プログラム』をどのような意識で取り組んでいらっしゃいますか?
特にインターンシップにおいては大変さを感じる場合もあるようですが、自分の進路として考えた時に「その仕事が合っているのかどうかを見極められるチャンス」といったポジティブな意識で取り組んでいる生徒が多いです。
また、実際にその仕事に携わっている方に会って話を聞くことで、働くことの大変さや意義などを深く学べることも生徒にとって有意義であると思います。
函館白百合学園の充実したスクールライフ
続いて、函館白百合学園中学校・高等学校での校風や行事についてお話を伺いました。
個性を尊重し自己肯定感を育む学校生活
御校の生徒さんの雰囲気を教えてください。
入学当初は大人しい雰囲気ですが、だんだん賑やかになっていきますね。本校ならではの広々とした環境のなか、のびのびと学校生活を楽しんでいる生徒が多いです。
▲敷地内には寮もあり、快適な設備空間のなかでワイワイと楽しい寮生活を送る生徒がたくさん
また、ありのままの自分でいることをとても大切にしている学校なので、生徒の自己肯定感は非常に高いと思います。自分の良さや相手の良さをしっかりと理解し、互いに高め合っている様子がさまざまなシーンでうかがえます。
カトリック校ならではの行事と多彩な学校イベント
御校の行事について、主なものをご紹介いただけますか?
カトリック系ミッションスクールならではの宗教行事としては、1日かけて自分を見つめなおす時間を持つ「修養会」があります。この日は教科の授業を一切行わず、神父様の講話を聴いたり、1年間でできるようになったことや誰かのために取り組んだことなどを文章にまとめたりして、より良く生きていくための方向を見つける大切な行事です。
また、入学後すぐに行う、ろうそくの光を見つめ、人々の光となれるように心に灯をともす「学園灯式」、クリスマス時期に実施する「クリスマス会」などもあります。そういった宗教行事は、聖書の教えや本校の校訓について改めて考える貴重な機会となっています。
▲クリスマスツリー点灯式では、聖歌を歌いながらカウントダウンを行って点灯の瞬間を迎えます
▲創立者である3人の修道女の墓参も大切な行事です
そのほかにも、遠足や宿泊研修、体育祭、合唱コンクール、文化祭といったイベントも豊富で、中高合同で行う行事も多いです。
ちなみに、高校の看護医療進学コースでは地域の町内会の方と一緒に鬼ごっこをしたり、運動会を開催したりといったイベントも実施し、地域の方々との交流をはかっています。医療系への進学を考えている生徒たちなので、幅広い年齢の方とコミュニケーションをとることも、とても大切な経験となります。
また、本校の校舎が災害時の避難所に指定されていることから、地域の方とともに避難訓練を行うこともありますよ。
▲町内会の方との交流は高校生にとっても、とても良い刺激になります。
函館白百合学園からのメッセージ
最後に、函館白百合学園中学校・高等学校に興味をお持ちの方へメッセージをお願いします。
本校はアットホームな雰囲気にあふれており、少人数制によるきめ細かな学習指導の成果が各種模試等で顕著に表れています。また、2023年度から非認知能力を計測するシステムを導入しているのですが、その結果を見ると本校生徒の自己効力感が非常に高く、多様性を大切にしながら自分の良さを認めて学校生活を送っている生徒が多いことがうかがえます。
特に英語劇やプレゼンテーションなどの発表を行ったあとはどのコンピテンシー(行動特性)にも顕著な伸びがみられており、行事等を通じて大きく成長できる学校だと思います。まずはぜひ学校祭などの行事や学校説明会にお越しになり、生き生きと過ごす生徒の様子から本校の魅力を感じていただけたら嬉しいです。
生徒の個性を尊重し、魅力を高める教育を行っている函館白百合学園中学校・高等学校だからこそ、豊かな人間性や高い学習能力を育めるのだと感じました。本日はたくさんのお話をありがとうございました!
国公立大から難関私大まで:函館白百合学園の進路実績
函館白百合学園中学校・高等学校では、例年多数の大学へ合格者を輩出しています。2023年度においては新潟大学医学部医学科、岩手大学や福島大学などといった国公立大学をはじめ、上智大学・立教大学・明治大学などの難関私立大学にも多くの生徒が合格を決めています。
また、各種ジャンルの専門学校へ進学する生徒も多いほか、就職する生徒も例年一定数みられます。
公式:函館白百合学園中学校・高等学校「令和5年度進学・就職合格状況」
卒業生・在校生が語る函館白百合学園の魅力
函館白百合学園中学校・高等学校の卒業生・在校生からは、教員による指導・対応の良さや設備環境の充実度、のびのびとした校風などを高く評価する声がたくさん挙がっています。また、各種行事に大きなやりがいを感じている生徒も多く、充実した学校生活を送れそうだと感じました。
▲右にスクロールすると写真を見ることができます
函館白百合学園中学校・高等学校へのお問い合わせ
問い合わせ先 | 函館白百合学園中学校・高等学校 |
---|---|
住所 | 北海道函館市山の手2丁目6-3 |
電話番号 | 0138-55-6682 |
公式ページ | https://www.hakodate-shirayuri.ed.jp/shirayuri/ |
※詳しくは公式ページでご確認ください