ぽてん読者の皆さまに、今注目の学校を紹介するこの企画。今回は、埼玉県春日部市にある私立・共学の中高一貫校「春日部共栄中学高等学校」にインタビューを行いました。
「世界で活躍する真のリーダー育成」を目指す同校では、年に2回の講演会やコース別の探究活動など、体験型重視の学びの機会を数多く提供しています。
また、文武両道をモットーにしており、文化系・運動系ともに部活動が非常に盛んに行われていることも特徴です。
今回は、そんな春日部共栄中学高等学校の生徒が得られる学びや学校生活について、中学入試担当委員長の遠藤先生に詳しくお話を伺いました。
この記事の目次
「本物」に触れる体験で世界のリーダーを育てる春日部共栄中学高等学校
▲ネイティブの講師と楽しく会話をすることも日常的な風景となっている
最初に、春日部共栄中学高等学校の教育方針について教えていただけますか?
わが校の建学の精神は、「至誠一貫」です。至誠一貫とは「至高の誠実さの心を一生涯貫く」ということですが、簡単に言うと「どんなことがあってもちゃんと貫いて、実践していきましょう」ということです。
多様化する時代の中で今後さまざまな困難に直面すると思いますが、この至誠一貫の精神で乗り越えていけるような「世界のリーダー」の育成を目指しています。
この建学の精神は、本校のモットーである「文武両道」というところにもつながっています。わが校では勉強や部活はもちろんのこと学校行事にも力を入れていて、「本物に触れる機会をふんだんに設ける」ことを重視した教育活動を行っています。
その一例として、さまざまな分野で活躍している著名人による講演会を年に2回開催しています。先日は、南極観測船に実際に乗られた方にお越しいただき、その生の体験談を聞かせてもらいました。
学校行事は「楽しい思い出作り」という側面も大切ですが、「さまざまな世界に触れて視野を広げる」という側面もとても大切だと考えています。こうした想いのもと年間を通じてさまざまな種まきを行っているというのが、わが校の特徴のひとつです。
最初の2年間で「人間形成」をしっかり行うことが成長の鍵
遠藤先生は中学校1年生の担任をされているとお聞きしていますが、この段階で特に意識して指導していることがあれば教えてください。
中学1・2年生は、人間形成の基礎を培うとても大事な時期です。生徒の人格面は成績にも影響すると考えていますので、この段階ではとにかく「人としての成長」を重視した指導を行っています。
具体的にどのような形で指導を行っているのでしょうか?
日常生活の中で「善悪の判断ができる」「人の話が聞ける」「相手のことを考えて行動できる」など、人として当たり前のことができるようしっかりと伝えることを意識しています。
中学校低学年のうちは、こうした当たり前のことができない子も多いんですよね。例えば、カバンをぶつけてしまって謝りもしないといったこともよくあるんです。学校内ではそこまで大きな問題にならないかもしれませんが、社会に出た時には通用しませんから、ささいなことでも見過ごさずにしっかりと指導するようにしていますね。
また、中学生は多感な時期なので人間関係のささいなトラブルが生じることもあります。本人にそんなつもりがなくても人を傷つけてしまうようなこともありますから、そんな時は間に入って「相手の気持ちを考える」という当たり前のことをしっかりと教えています。
昔は家庭で当たり前に指導されていたことが、時代とともに変わってきていますよね。私たちが当たり前だと思っていることも、しっかり言葉にして伝えることが大切なのかもしれませんね。
おっしゃる通りです。私は約20年この学校で教員をやっていますが、常に同じ指導をしても必ず壁にぶち当たるんですよね。時代とともに変化していくので、その時の子どもたちに合わせた指導がとても大切だと感じます。
遠藤先生に限らず、親身になって指導してくれる先生が多いのでしょうか?
そうですね。学校全体の雰囲気としてとても面倒見がいいというのが、春日部共栄中学高等学校のいいところだと思っています。
生徒たちとの距離も近くて、普段からとしっかりとコミュニケーションを取るようにしているからこそ、生徒間で何かトラブルがあったときにも違和感に気づき「どうしたの?」と声をかけてあげられるんです。
「自主自律」と「自学自習力の強化」を目的とした教育改革
開校から20年を迎えた春日部共栄中学高等学校では、教育制度の大改革を実施し、2022年度から「二期生」「完全5日制」「45分7限制」など、新たな教育体制をスタートさせました。
ここからは、その新しい教育制度の特徴や改革の目的について詳しくご紹介しましょう。
「完全5日制」「45分7限制」で土曜日の時間を有効活用
▲生活手帳に勉強の予定や結果を書き込み、自学自習の習慣をつけていく
2022年度に行われた教育改革で、どのような点が変わったのか教えていただけますか?
まず大きいところでは、従来隔週で行われていた土曜日の授業を廃止し、その代わりに平日の50分授業を45分に短縮して7限を新設しました。
土曜日の授業がなくなることで、その時間を部活動の時間にあてることもできますし、自学自習の時間を増やすこともできます。「午前中に部活動を行ったあとに2~3時間自学自習を行う」といったように、時間を有効に使うことができるようになります。
また、自学自習をサポートするためのサービスとして外部の方が質問に対応してくれるようなしくみも用意しているので、わからないことがあれば相談しながら学習を進めることもできます。
単に自学自習の時間が創出されたというだけでなく、それをサポートするしくみまで用意されているのは素晴らしいですね。
土曜日の授業がなくなったことで、それまで実施していたカリキュラムに影響はないのでしょうか?
土曜日の授業はなくなりますが、7限ができたので総授業時間が減ったということはありません。
1回の授業時間が5分短縮された分、教員側もしっかりと用意しなければならないというのはありますが、そういう環境作りも含めて意識して行っています。生徒もそれについてきてくれるので、今までのカリキュラムはしっかりとキープできていますよ。
「政治・経済」「IT・医学」に特化したコースで未来につながる専門性を高める
▲オススメの本を紹介して一番読みたくなった本を決める「ビブリオバトル」は、プログレッシブ政経コースのプログラムのひとつ
平日に7限の授業が増えたことで、新たに充実させたカリキュラムなどもあるのでしょうか?
新たに「プログレッシブ政経コース」と「IT医学サイエンスコース」という2コース制を導入し、専門性を高める学びの時間を設けました。どちらのコースを選んでも普段の授業の内容には差はありませんが、新設された7限の時間を活用して、中学1年生のときからコース別の活動を行っていきます。
「プログレッシブ政経コース」では世界の政治や経済、「IT医学サイエンスコース」ではITや医療、科学について学ぶのですが、いずれのコースも、第一線で活躍している方の話を聞いたり、ディベートをしたりなど、普段の授業とは違った本物の体験ができるプログラムとなっています。
▲IT医学サイエンスコースで実施しているDNAの抽出実験のようす。先進的な実験を取り入れて成長につなげている
どちらのコースを選ぶかは受験するときに選択するのでしょうか?
中学受験の際にコースを選びますが、途中で変更することも可能です。自分が所属していないコースの講義を受ける機会もあるので、さまざまな経験をする中で、自分の将来に向けて選択をしていってもらえればと思っています。
「学習習慣作り」を目指して中間テストを廃止
2022年度から、春日部共栄中学高等学校では中間試験を廃止したと伺っていますが、これにはどのような狙いがあるのでしょうか?
「日々の学習習慣を身につける」ということが目的です。
従来は「テストの2週間前に試験範囲を配り、1週間前から部活を停止する」というスケジュールで中間テストを実施していましたが、それだとどうしても直前になって集中的に対策を行いがちですよね。
ですが、本来は大切なのは日々の学習ですし、その成果を発揮するのが中間・期末テストです。さらに、長い目で見ればそれが大学入試につながります。
理想的な学習習慣作りをするにはどうすればよいかということを考えた結果、中間テストを廃止して、その代わりに継続的な単元テストを実施することとなったんです。
一夜漬けの学習ではなく、毎日の学習習慣作りを重視しているというわけですね。生徒さんから聞こえてくる声や、感じている効果について教えていただけますか?
中間テストを廃止したかわりに単元テストが多いので、「またテストだよ」「勉強しなきゃ」といった声は聞こえてきますね(笑)。
例えば、中1の英語の授業では週に1回単語テストが行われます。25問出題されて2問間違うと不合格になるので、しっかりと準備して挑まなければなりません。また、不合格になったら土日を挟んで週明けに追試テストを行うので、週末に復習をすることになります。
こうしたことを粘り強く取り組んでいくことで、少しずつ効果は出てきたように感じますし、今後ももっと出てくるのではないかと思います。追試でもまた不合格になる子もいますが、不合格になったことで悔しがって勉強する子は多いんですよ。
単元テストの準備をするのは、先生方も大変なのではないでしょうか。
大変ですが、学習習慣づくりができていないと本質的な学習効果は得られませんからね。
「成績が伸びないから予備校に通うために部活を辞める」なんて口にする子もいますが、予備校に行けばなんとかなるわけではありません。自分自身で受験に向けてマネジメントできていないと予備校にいっても意味がないですし、予備校を優先するために学校の勉強をおろそかにしてしまっては本末転倒です。そういう子をなるべく作りたくないと思いながらやっています。
もちろん予備校に行っていただくことは全然かまいませんが、わが校は、外部の塾や予備校に行かなくても校内で学習が完結できる環境を用意しています。講習もありますし、放課後の質問も大歓迎です。土曜日も、先ほど申し上げたような質問対応サービスもあります。
これはわが校の大きなメリットだと思っていますので、そういったものを活用しながら学習習慣を身につけていって欲しいと思います。
勉強だけでなく、これから社会に出ていくうえで不可欠となる自己マネジメントの力も育ちそうですね。校内のサポートだけでも日々の学習が完結できるというのも、とても素晴らしい環境だと思います。
県大会・全国大会出場の強豪校も!文武両道を実現する秘訣
冒頭で「文武両道」というお話がありましたが、春日部共栄中学高等学校では、県大会や全国大会への出場経験があるような部活も多くあるんですよね。
そうですね。水泳、男子テニスなどの運動部のほか、吹奏楽部が全国大会に行ったり、囲碁将棋部が県大会で優勝したりと、運動系・文科系問わず成果を出しています。高校は野球部が強いので、高校野球が好きな方は名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。
勉強との両立は難しい部分もあるのではないかと思いますが、部活動でも成果を出すために何か工夫されていることがあれば教えてください。
「限られた時間でいかに質の高い練習をしていくか」という意識付けが最も大事だと思っています。顧問がその意識付けを行うことで生徒たちがついてきてくれて、結果が出せているというケースがほとんどですね。
そしてそれを成功させるには、日々、密にコミュニケーションを取ることが不可欠です。顧問と生徒の間ではもちろんのこと、顧問・担任・保護者がしっかりと横の連携を取ることで、生徒の変化もいち早くキャッチしながらサポートすることができます。
学校全体で、コミュニケーションを大事にするという意識が根付いていることが、わが校の強みであると感じています。
結果を出しているような部活では、やはり強い選手や経験者が集まってくるというようなこともあるのでしょうか?
もちろん、もともと力を持った経験者が入ってきてくれるということはありますね。そういう子たちが結果を出すことで、周りの子たちも触発されて練習を頑張り、結果を出すというサイクルも生まれています。
ですが、わが校の方針としては、全国から強い選手を集めて強化するというよりは、近隣の地域から集まった子たちをいかにして育てるかを大事にしています。高校の野球部は甲子園出場経験もあるような強いチームですが、それでも埼玉・東京・千葉などの近隣の県から来ている子がほとんどなんですよ。
日々のコミュニケーションによる信頼関係が根本にあるからこそ、限られた時間の中でも一体となって結果を出すことができているわけですね。
生徒や保護者との距離が近いのが春日部共栄の魅力
これまでお話しいただいたこと以外に、遠藤先生が感じている春日部共栄中学高等学校の魅力があれば教えてください。
「面倒見がいい」というところでしょうか。生徒とのコミュニケーションを重視するという話をしましたが、保護者の皆さんとも密に連絡をとってしっかりとサポートするということを大切にしています。
年に2回、保護者の方にお越しいただいて面談をするのですが、それとは別に、電話をしたり学校にお越しいただいたりすることもよくあります。私のクラスには35人ほどの生徒がいるのですが、1年間でほぼすべてのご家庭に個別にお声がけして来ていただきました。
電話や面談で、例えばどのようなことをお話しされているのですか?
学校から連絡が来るとなると、最初は本人も保護者の方も「何か悪いことがあったのか」とびっくりされるのですが、必ずしも悪いことではないんですよ。
「こういうことができるようになった」とか、「こういうことに気づいてやってくれた」といったちょっとした変化や成長もお伝えするようにしていますし、入学して慣れない環境で元気がない子がいればご家庭の様子を伺うために連絡することもあります。
もちろん、前期の成績があまり良くなかったとか、何度か指導したことが改善されないとかいう理由で連絡することもありますが、これも決して悪い意味じゃなくて、しっかりと保護者の方と共有することが大事だと考えているんです。そうすることで、心配していることが伝わりますし、次やらないようになるという抑止にもつながりますからね。
先生と連携がとれていると保護者の皆さんも安心ですね。生徒さんから、「親に電話しすぎだよ」といった声は出ないのでしょうか?
さじ加減が難しい部分もありますが、子ども達との関係性さえできてしまえば反発されることはないですよ。もちろん嫌がることもありますけど、「電話をかけるには理由があるんじゃないかな」と言えば受け入れてもらえます(笑)。
保護者の方も、入学したての頃は心配も多く抱えていますよね。最初は特にこまめに連絡をとって手取り足取りサポートしながら、最終的には勉強面でも生活面でも自律できるように成長を促しています。
保護者の方から実際にどのような声が聞こえてきますか?
すごく信頼を置いてくれて、「学校で勉強が完結できて予備校に行くお金が浮いたので、子どもと先生で受験校を決めて好きなだけ受験させてください」なんて言ってくださった親御さんもいらっしゃいましたね。さすがに勝手には決められないので承諾は得ましたけども(笑)。
卒業後に遊びにくる生徒も。生徒が楽しく通う春日部共栄中学高等学校
▲ネイティブ講師との文化交流プログラム「K-SEP」。弾ける笑顔から学校生活を楽しんでいることが伺える
春日部共栄中学高等学校の好きなところや、入ってよかったと思うことについて、生徒さんから聞こえてくる声はありますか?
やはり、学校が楽しいという声が多いですね。中学校は小学校とは環境が大きく変わりますし、私立校の場合、電車通学も始まります。友達もいなくて、みんな不安な顔をして学校生活をスタートするんです。
でも、時間が経つにつれてみんなの表情が明るくなっていき、1年が終わるころには「クラス替えしたくありません」と言ってくれたりするんです。そういう時は私も大きな達成感を感じますね。私が昨年担当した高3のクラスの卒業生が、暇さえあれば学校にやってきたりもするんですよ。
楽しかったという思い出が強く残っているのと、先生との信頼関係があるからこそ、卒業後も遊びに来てくれるんでしょうね。
そうですね。そうやって学校に愛着を持ってくれるのは嬉しいですよね。
先日はせっかく来たので在学生に対して一言しゃべってもらったのですが、すごく感銘を受けたり勉強のやる気に火が付いたりする生徒もいて、とてもよい循環が生まれているなと感じましたね。
春日部共栄中学高等学校からご家族・お子様へのメッセージ
最後に、記事をご覧のお子さん・保護者の方に向けてメッセージをお願いします。
わが校の校風について「生徒との距離が近い」「面倒見がいい」ということをお伝えしましたが、実際の雰囲気は見てみないとわからないと思います。興味を持っていただけた方は、ぜひ説明会や文化祭などの機会に学校にきていただき、その雰囲気を感じてみてください!
インタビューを通じて、春日部共栄中学高等学校には生徒の視野が広がるたくさんの魅力的な教育プログラムがあるということと、それを支える先生方の親身なサポートがあるということがわかりました。興味を持たれた方は、是非足を運んでみてください。
本日はたくさんの貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!
春日部共栄中学高等学校の進学実績
春日部共栄中学高等学校は「国公立大学現役合格」にこだわった指導を行っており、毎年数多くの現役合格者を輩出。2024年度は、北海道大学・東北大学・東京外国語大学などを筆頭に、国公立大学に合計78名が現役合格しています。
中学生のころから築き上げる「毎日の学習習慣」が、大学受験成功への鍵を握っているといえるでしょう。
■近年の大学合格実績(春日部共栄高等学校公式サイト)
https://www.k-kyoei.ed.jp/hs/guidance/achievements/
春日部共栄中学高等学校に通う生徒・保護者の声
先生と生徒の距離が近く、何でも相談できる、しっかりと勉強をサポートしてもらえるという声が多くみられました。
春日部共栄中学高等学校へのお問い合わせ
問い合わせ先 | 春日部共栄中学高等学校 |
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