ぽてん読者の皆さんに注目の学校を紹介するこの企画。今回は広島県広島市にある完全中高一貫校の私立女子校「ノートルダム清心中・高等学校」を取材しました。
同校は今から70年以上前の1950年、当時日本で教育活動をしていたナミュール・ノートルダム修道女会の外国人シスターとイエズス会司祭・カトリック信徒の熱い思いにより誕生した学校です。当時の日本は終戦後であり、原爆投下により焼け野原となった広島で「子どもたちのための学校を設立したい」という思いで誕生しました。
そんな同校では、現在もカトリックの教えに基づいた、豊かな人間性を育む教育が行われています。また、世界各地に120校に及ぶ姉妹校を有していることから、その環境を活かしたグローバル教育にも力を入れています。
今回は、ノートルダム清心中・高等学校の校長補佐・神垣しおり先生と、広報担当の石井翔太郎先生にインタビューさせていただきました。
この記事の目次
愛ある心の清い人を育てる、ノートルダム清心中・高等学校の教育理念
最初にノートルダム清心中・高等学校の教育理念について教えてください。
本校の教育理念は「心を清くし 愛の人であれ」です。
「心を清く」とは、無垢な心という意味ではなく、物事の本質を見極める確かな知性と豊かな人間性からもたらされる“清さ”を指します。本校がもっとも大切にするものであり、『ノートルダム清心』という学校名の由来にもなっています。
また、「愛の人であれ」に表れる愛を重んじるというのは、キリスト教の教えにもある、「一人ひとりが神様から愛されている存在」という意味であり、「互いを大切にしあう」という意味もあります。
本校では、このような“愛のある心の清い人”を育てるため、他者への感謝や互いに助け合うことの大切さを学べる機会をたくさん用意しています。
しっかりと学力を身につけ知性を磨くとともに、その力を社会に“良心”をもって貢献できるような人を育てる学校です。
▲校内の掲示板にはさまざまな言葉が記され、学校生活のあらゆるシーンで学びや気づきを得られる
ボランティアや国際理解教育を通して学ぶ、心を育てるMJプログラム
▲心の教育のための授業「MJプログラム」で行なったブラインドウォーク。視覚障害者と介助者の立場を経験。
ノートルダム清心中・高等学校では「他者への感謝や互いに助け合うことの大切さを学べる機会」を用意されているとのことですが、どのようなお取り組みでしょうか?
カトリック学習やボランティア、国際理解教育、人権や平和学習などを行う「MJプログラム」という取り組みがございます。これは、本校の設立母体であるナミュール・ノートルダム修道女会を設立したマザー・ジュリーの頭文字をとったプログラムで、心の教育のために立ち上げました。
週1回、ホームルームの時間に行い、卓上の学びだけでなく体験を重視して取り組んでいます。例えば、ブラインドウォーク(※)や車いす体験などを行い障がいのある方の立場を体験したり、ときには特別支援学校の皆さんと交流したりすることもあります。
(※)1人がアイマスクで視覚を遮断し、もう1人が誘導をしながら歩き回って、視覚障がい者の感覚を擬似体験すること
生徒の皆さんの反応はいかがですか。
ブラインドウォークをしたときには、「これまでは気にしたことがなかったけれど、視覚障がい者にとってはさまざまな危険がある」という気づきがあったようです。普段は見逃してしまう障がい者の方の立場や苦労を理解したいと考え、さらに話を発展させ、「車椅子ではこんなところが大変そう」など話し合う様子が見られます。
他にも、心の教育につながる取り組みはありますか?
国際理解教育ということで、ユニセフやJICAの方に講演していただいて世界の現状を学ぶ機会があります。先日も、ユニセフ広島県事務局の方が主催されている「世界が100人の村だったら」というワークショップに参加しました。参加した生徒たちは、世界には大きな格差があること、困っている人がたくさんいるという現実を知り、これからどう生きるか、自分たちにできることはなにかを学べたようです。
このような経験の影響もあってか、本校の生徒は困っている人を見るとすぐに声をかける生徒が多いです。先日も、駅で外国人の方が困っている様子を見て、声をかけ案内をした生徒がいました。結果、学校には遅刻してしまいましたが、それでも他人を助けたいという温かい思いやりを持っていることに、人としての成長を感じますね。
▲国際理解教育の一環として参加された「パレスチナとつながる講演」
学んだことを「社会の良心」として活かす、ノートルダム清心マインド
ノートルダム清心中・高等学校からは毎年多くの生徒が難関国公立大学へ進学されているそうですね。
国立大学を目指す生徒は確かに多いのですが、私たち教員は、あくまで生徒の希望に寄り添い、一人ひとりが自分で学びたいことを学べるように応援しています。本校の生徒は、「名門大学へ行きたい」というよりも自分の興味を突き詰めていくタイプの生徒が多く、その結果、今そのようになっているという感じです。
本校にはよく卒業生が遊びに来てくれるのですが、先日卒業生から、とても誇らしい話を聞けました。いわゆる「高学歴」で社会へ出た生徒でしたが、さまざまな経験を経て、「困っている人を助けたい」との思いで聴覚障害者のサポートをする企業の一員として立ち上げに関わっているようです。
本校の目指している「学んだことを社会の良心として活かす」をまさに体現してくれていることがわかり、また困っている人を放っておけない、そして自分の興味を突き詰めていく本校の生徒ならではの姿だと感じ、誇らしく思いましたね。
卒業生以外にも、このような社会の良心として自分の力を使っていくという姿は見られ、最近だと図書委員の生徒たちがとても頑張っていました。
本校の隣に「けんしんこども園」があるのですが、そこの園児たちに読み聞かせを計画したようです。そこから、もっと交流を深めていこうということで、図書委員から本校のホームルーム委員会に繋ぎ、総合学習として園児を本校に招待し、スタンプラリーなどをしました。
▲こども園の園児と交流する生徒の皆さん
また別の機会には、図書委員が駅前の展示スペースに本を展示して、小さい子どもたちを集めて読み聞かせもしました。今は、「ただ読み聞かせるだけではなく、もっと絵本の世界を楽しんでもらおう」ということで絵本のシーンに合わせてBGMを作り、それを流しながら読み聞かせができるよう準備してくれています。
毎時間ある“瞑黙”で心を鎮め、メリハリをつける習慣が身に付く
他にも、ノートルダム清心中・高等学校ならではのお取り組みがあれば教えてください。
本校の伝統的な取り組みとして、「瞑黙」があります。これは目を閉じて自分の心を落ち着かせ、自己と向き合うための取り組みです。本校では瞑黙を授業開始前に行い、前の時間と次の時間の切り替えができるようにしています。
女子校ですので、休み時間はとても賑やかに過ごしていますが、集中が必要な時はしっかり切り替えられる、そんな生徒が多いです。
▲食堂で仲良くランチタイムを楽しむ生徒の皆さん。後方には先生の姿もあり、学校のほのぼのした雰囲気が伝わる。
ノートルダム清心中・高等学校のグローバル教育
ノートルダム清心中・高等学校では、コミュニケーションツールとして使える英語力を身につけるため、ネイティヴスピーカーの講師による英語授業を実施し、英会話だけではなく「英語で考えて自分の言葉で発信」できるようプレゼンテーションなども行っています。
他にも、長期休暇中にはオールイングリッシュでグループワークを行うグローバルスタディーズプログラムや、英語でディベートをする取り組みもありますが、最も特徴的なのが、国際交流の機会の多さです。
ここからは、同校の特徴的な取り組みでもある国際交流について紹介します。
海外の姉妹校との国際交流では、留学やホームステイの受け入れも実施
ノートルダム清心中・高等学校で実施されている国際交流について教えてください。
本校は外国に触れる機会をたくさん設けています。海外の姉妹校との交流ではアメリカや韓国、フィリピンなどにある姉妹校を訪問したり、またホームステイで受け入れた生徒と本校で一緒に学んだりしています。
また、国際交流をする上で、自分の国の文化を伝えることも大切だと考えています。そのため、母国である日本の文化を知る目的で、茶道、華道や書道、坐禅、浴衣の着付けなど日本文化を体験し学ぶ機会を設けております。
国際交流をする生徒の皆さんの様子はいかがですか。
私は音楽の科目を担当しているのでその立場から言いますと、「音楽は世界共通だ」ということを実感したようです。共通の曲を知っているとわかると一気に場が和み、言葉がなかなか通じない中でも皆でワイワイできる、音楽で一つになれたという経験をしていました。
その経験がきっかけとなり、生徒たちの距離が一気に縮まったようで、留学生自身のこと、留学生の国の歴史的背景などを積極的に学んでいこうという姿勢が高まったと感じます。
山岳部や古典文学研究部なども。ノートルダム清心中・高等学校の部活動
ノートルダム清心中・高等学校の部活動について、どのようなものがあるのか教えてください。
体育部では、水泳部や陸上部などのメジャーな部活のほか、広島県の中学校でも数少ない山岳部があります。登山というのは、実は体力だけでなく、地形図を読み取る力など頭を使うことも多く、そういうことが得意な生徒が多い年はインターハイに出場することもあります。
文化部も非常に多く、放送部や合唱部のほか、古典文学研究部などもあります。最近は放送部もビデオコンクール部門で優勝するなど活躍しています。単に情報のアナウンスにとどまらず、番組制作に力を入れており、現在は本校の歴史を動画にしたいと奮闘中です。
先日、合唱部が「東京国際コンクール」という国際的なコンクールに参加する機会がありました。インドネシアやフィリピン、中国や韓国などアジア圏の学校が多く出場していたのですが、本校の生徒たちは海外の団体のパフォーマンスに圧倒されたようで、「心が震える体験をした」と話していました。この時の体験を経て、自分たちにはまだまだ伸び代があると気づき、いろいろと模索してくれています。
また、昨年度の学園祭では「アンパンマンのマーチ」の合唱と寸劇を披露しました。この時は映画やドラマ、アニメの主題歌を選び、馴染みの曲や懐かしい曲などで老若男女の心に響くプログラムを組んでいました。生徒が企画し、私は音楽的な指導をしただけなんですが、寸劇にも出演するよう生徒から迫られ、主役のアンパンマン役をさせていただきました(笑)。
▲2023年度の学園祭で合唱と寸劇を披露した、石井先生と高校合唱部の生徒の皆さん。子どもたちを楽しませたいという思いが伝わる。
また、古典文学研究部は、広島県で数少ない競技かるたを行う部活で、漫画の「ちはやふる」がきっかけで一気に人気の部活となりました。こちらも県内では珍しい部活ということもあり、部活内での競争が激しく、競い合いながら頑張っています。
ノートルダム清心中・高等学校からご家族・お子さまへのメッセージ
▲右から中学校長補佐の神垣しおり先生、広報担当の石井翔太郎先生
最後に、この記事をご覧いただいているご家族・お子さまへ、メッセージをお願いいたします。
ノートルダム清心中・高等学校は、広島市の西区の小高い丘の上にあります。校舎は緑豊かな木々の中にあり、市内を一望できる学びの場が広がっています。そうした恵まれた環境の中で、さまざまな地域から集まった生徒同士が刺激を受け、かけがえのない今を味わい、将来の自分を培っていくための多感な時期を大切に過ごすことができるよう、私たちは尽力しています。
そして、一人ひとりに与えられたさまざまな恵みや力を、できる限り皆と協力しながら高めあい、人間性も知性も成長していけたらと思っております。
本校の強みは、生徒はもちろん、磨かれた教育環境のもとで、生徒たちの力を引き出そうとしている教職員一同です。教職員の男女比は大体半々、年齢も20歳代から60歳代までバランスよく揃っています。学校創設からこれまで学校運営に尽力してくださってきた修道女は、残念ながら減っておりますが、その分も私たち教職員が新しい時代を紡いでいこう、新たな道を歩んでいこうとしております。
読者の皆様にはぜひ興味・関心を持っていただき、公式サイトの閲覧はもとより、学園祭や音楽会、美術書道展などの公開行事に足を運んでいただければ幸いです。
本校をより身近に感じてもらえる機会を作るため、2024年度はミニオープンスクールを4回実施いたします。少人数のグループごとに、在校生と一緒に校内を回りながら質問ができる形を考えております。
本校には多感な時期を本校で過ごす過程で優しさや知性を身につけた生徒がたくさんいます。そうした生徒と触れ合う良い機会ですので、興味のある方はぜひご参加ください。
ノートルダム清心中・高等学校の進学実績
ノートルダム清心中・高等学校では、多くの生徒が難関の国公立・私立大学に進学しています。
国公立大学への進学率が高く、東京大学へは毎年2〜3名ほど合格、国公立大学医学科へは2023年度は合計16名が合格、国公立大学全体では合計96名が合格しています。
また、いわゆる「早慶上理(※)」と呼ばれる難関私立大学へは2023年度は合計37名が合格しています。
(※)難関大「早稲田大学」「慶應義塾大学」「上智大学」「東京理科大学」をまとめた名称
■進学状況(ノートルダム清心高等学校公式サイト)
https://www.hiro-seishin.ed.jp/educates/course/
ノートルダム清心中・高等学校の生徒・保護者からの声
ノートルダム清心中・高等学校の在校生と保護者の声から、いくつか抜粋しました。
個性を大切にする校風で、他人を否定しない生徒が多いと感じます。
先生たちがとにかく穏やかで優しいです。注意をするときもやんわりと、でも本人がしっかり気づくように導くような言い方をするとのことで、安心してお任せできます。
このような声からも、ノートルダム清心中・高等学校がのびのび成長できる良い環境であることが伺えますね。
ノートルダム清心中・高等学校へのお問い合わせ
問い合わせ先 | 学校法人ノートルダム清心学園 ノートルダム清心中・高等学校 |
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住所 | 広島市西区己斐東1丁目10番1号 |
電話番号 | 082-271-1724 |
公式サイト | https://www.hiro-seishin.ed.jp/ |
※最新情報は公式サイトをご確認ください。