ぽてん読者の皆さまに今注目の学校を紹介するこの企画。今回は愛知県名古屋市の中高一貫女子校である椙山女学園中学校にお話を伺いました。
椙山女学園中学校は、名古屋の私立女子校の中でも長い歴史を持つ伝統校です。覚王山という名古屋の人気エリアにキャンパスを構え、協働学習や探究学習など生徒の体験を重視した教育を展開しています。
今回は中学校教頭・水野先生に、同校の教育理念や特徴的な教育プログラムについてお話を伺いました。
この記事の目次
「人間教育」を追求する椙山女学園中学校の教育理念
▲学校のシンボル「金剛鐘」は金剛塔に設置されており、奏鳴係の生徒によって今でも演奏が続けられている
覚王山という落ち着いた街並みに溶け込む椙山女学園中学校。キャンパス設置時の姿を残した正門や学校のシンボル「金剛鐘」などから、受け継がれてきた同校の伝統を感じられます。
椙山女学園中学校は、1905年に創設された保育園から大学院までを擁する総合学園「椙山女学園」により運営されています。まずは学園全体に共通する建学の精神や、中学校・高等学校における教育方針について伺いました。
学園全体で、一貫した「人間教育」を提供
▲インタビューにご対応いただいた水野先生
椙山女学園の建学の精神を教えていただけますか?
椙山女学園では、初代学園長の椙山正弌が提唱した「人間になろう」を教育理念に掲げ、一貫した人間教育を行っています。この“人間”には「ひとを大切にできる人間(人間性の尊重)」「ひとと支えあえる人間(協働の重視)」「自らがんばれる人間(主体性の志向)」の3つの意味が込められています。
「人間になろう」という目標は、生涯にわたって自己実現を果たしながら追求していくものです。保育園から大学院までの在籍生たちに成長段階に応じた教育を展開することで、その過程に貢献していきたいと考えています。
「体験に適した学び」を重視し、自主性・主体性を育む
多様な年代を対象とした教育を展開されている中でも、中学校・高校ではどういった点を重要視されているのでしょうか。
中学校・高校は社会で活躍できる人材の素地を育む大切な時期です。中高一貫の6年を通じ、進学だけでなくその先の社会を見据え、「自己肯定」と「他者尊重」の心を大切に、コミュニケーション能力や発信力などの非認知能力を高めていくのが本校の方針です。
特に中学校では人間に“なろう”という言葉に表される自主性・主体性を育んでいくため、体験を通じた学びを大切にしています。理科の授業では実験を多く取り入れたり、英語の授業ではネイティブ教員による少人数制の英会話授業を行ったりと、生徒が主体的に考える学びの機会を創出しています。
一方で、体験をより実りのあるものにしていくためには、前提となる基礎知識の習得が欠かせません。そのため中学校では基礎・基本にも重点を置き、学びの土台づくりを行っています。
学びを「自分ごと」として実感する協働学習
▲協働学習では、自己の意見と他者の意見をまとめていく力も養う
生徒の主体性を育む上で、授業方法に取り入れている工夫があれば教えてください。
本校の授業では、グループでの協働学習を積極的に取り入れています。教師が黒板に問題を書き解いていくという一斉授業で進めていくスタイルは、今では少なくなっています。
例えば私は中学3年生で「数学演習」の授業を担当していますが、数学は社会の諸問題の解決に導くツールでもあると体感するため、数学の知識をもとに実生活に係わる問題について意見交換を行い、課題解決に取り組む学びを実施しています。
▲1人1台所有するタブレットなど、デジタルデバイスを積極的に活用して個別最適な学びを進めている
探究的な課題解決に向けた学びを深める椙山女学園の教育プログラム
椙山女学園中学校では、総合学習や読書活動などさまざまな教育活動を通じて「人間になろう」という教育理念の実現を目指しています。ここからは特徴的な教育プログラムの内容に迫っていきます。
教育理念を追求し、探究の力を身につける総合学習
▲図書館には、中学3年生の総合学習で行う修学旅行先の特設コーナーを設置し、学びを支援
御校では「人間になろう」を追求する内容の総合学習を実施されていると伺ったのですが、こちらはどのような内容ですか?
本校では全国的に探究学習が導入される前から、「総合『人間になろう』」という探究型の総合学習を先進的に進めてきました。総合学習では中学校3年間を通して「人権」「環境」「国際理解・平和」の各分野で学びを深め、本校の志す「人間になろう」を追求しています。
同時に、自分自身で問いを立てて情報収集し、まとめ、発表する探究のステップを段階的に学習できるような内容となっています。
総合学習での学びは、具体的にどのように進められているのでしょうか?
それぞれの学年、学期ごとに設けられたテーマに応じて生徒が図書館を中心とした調べ学習やフィールドワークなどを行い、その内容をまとめ、全員が発表を行います。
クラス代表に選出された生徒がスライドを使って全校生徒の前でプレゼンテーションを行う「学年発表会」の機会もあります。お互いの学習内容や発表の仕方などを見て刺激し合い、学年が上がるにつれて表現力や説得力、聞き手を引き込む力が格段に成長していると感じます。
県下屈指の図書館環境と朝読で学びの基礎力を鍛える
今のお話にもあった図書館について伺いたいのですが、御校の図書館はかなり蔵書数が充実しているのですよね。
本校の図書館は蔵書約10万冊と県下屈指の蔵書数と広さを誇っており、本好きの生徒にはたまらない空間となっています。図書館は校内中央にあり、どの教室からも同じ距離にある本校の学びの中心です。
図書委員の活動も活発で、生徒が読む本を選ぶ目安となる「椙中100冊の本」を図書委員も協力して選定しています。本のジャンルは幅広く、「君たちはどう生きるか(吉野 源三郎)」などの話題書や、ノンフィクション、自然科学、海外の名作など、生徒の興味を惹くラインナップが揃っています。
また、図書館に置く本を書店から選ぶ「選書活動」や、図書委員おすすめの本に手作りのポップをつけるなどの活動も特徴的です。同じ年代の目線から見て魅力的な本が置かれているので、生徒にとってもより本を手に取りやすくなっているのではないでしょうか。
▲図書委員によるポップが読書意欲を喚起
その充実の図書館機能を活かして読書活動にも力を入れていらっしゃると伺いましたが、どのような内容を実施されているのでしょうか。
生徒が読書習慣を通じて学びの基礎力を身につけることを目的に、毎朝10分間全校一斉に読書を行う「朝読」を中1から高3まで実施しています。またクラスごとに課題図書を決めて皆で同じ本を読み、感想などについて意見交換する「HR読書会」を年に2回実施しているのも特徴です。
読書を通じて自身の世界を広げることはもちろん、人それぞれの感じ方を知ることで生徒の想像力や他者尊重の心を育んでいけたらと考えています。
外部と連携した食育で、「知識・技能」を多様な場面で生かす力を育む
その他にも、椙山女学園中学校に特徴的な教育プログラムがあればご紹介いただけますか?
中学校・高校共通の学びとして、和食を中心に食文化や健康、地産地消について学ぶ食育活動に力を入れています。
食育活動は、大学や企業、生産者様と連携して実施しているのが特徴です。先日は中学校と椙山女学園大学の管理栄養学科が連携し、管理栄養士を志す大学生の作った献立をいただきながら栄養価や調理過程などについて学んでいきました。高校では名古屋市中央卸売市場北部市場と連携した魚の三枚卸しなどの講座をはじめ、出汁の専門業者や青果市場の方の講座など、専門家を招いた授業を行っています。
また食育を教科横断的な学びにつなげる点も意識しています。例えば、理科でいわしの解剖を実施した後、家庭科でいわしで出汁を取る実習を実施しています。理科の知識や体験により「煮干しをそのまま入れると臭みが出るから、ここを取って入れる」などの教科をまたいだ学びが得られます。食育を切り口に多様な学びの機会を提供していけたらと考えています。
スクロールで同校の特徴のひとつの楽しみながら学ぶスタイルをご覧になれます→
食育を通じて、生徒さんたちにどのような変化がもたらされるとお考えですか?
やはり食べる行為自体が楽しいことですし、本校の食育は食べるだけでなく栽培、調理、レポート作成とさまざまな体験ができるので、生徒はその過程も非常に楽しんでいるなと感じます。
自分で体験して得たものは、実感を伴う知識として身についていきますよね。食育という楽しい体験に教科横断的な学びもかけ合わせることで、生徒たちが楽しみながら幅広い知識を身につけていけるのではないかと考えています。
椙山女学園中学校から読者に向けたメッセージ
最後に椙山女学園中学校に興味を持った読者の方に向けたメッセージをお願いします。
椙山女学園中学校では体験的な学びを通じて将来に必要な主体性・自主性を培っていくことに力を入れています。また本校では椙中三大行事と言われる文化祭・体育祭・球技大会もとても盛んです。学校行事や部活動、生徒会活動など、勉強の他にも生徒が活躍できる舞台をたくさん用意して、子どもたちの才能を育てる機会を設けています。
本校では活発で積極的な生徒たちがいろいろなことにチャレンジしています。興味を持った方はぜひお越しいただけると嬉しいです。
水野先生、本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!
椙山女学園中学校の生徒・保護者からの口コミ
ここでは椙山女学園中学校に寄せられた生徒や保護者からの口コミをいくつかご紹介します。
名古屋有数の高級住宅街にあり、アクセスも良いので安心して子どもを通わせられる。
伝統がある学校だからこそ校則も厳しいが、保護者としてはしっかり指導してもらえる安心感がある。
勉強も部活動も頑張る文武両道の空気感があることが口コミから伝わってきました。校則は厳しいと感じる方が多いものの、マナーなどをしっかりと指導してもらえるために保護者にとっては安心材料になっているようです。
椙山女学園中学校の基本情報
お問い合わせ | 椙山女学園中学校 |
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住所 | 愛知県名古屋市千種区山添町2丁目2番地 |
電話番号 | 052-751-8131 |
公式URL | https://www.sugiyama-u.ac.jp/junior/ |
※最新の情報はホームページでご確認をお願いいたします。